待ってました、町田康×源義経!って別に待ってなかったけど。この組み合わせありか、ありだよね!というキモチ。あ、すみません。勝手に一人で盛り上がって。そんな町田康の大ファンで全部読んでますぅ!って感じでもないんですけどね。『パンク侍、斬られて候』の映画も見てないし。
町田康さんの小説の主人公って大体中2病ですよね。あ、ごめんなさい、大体とか言って、全部読んでいるわけじゃないんですけどね。『パンク侍』『告白』『猫にかまけて』『どつぼ超然』『実録外道の条件』などなど、あといくつか読んだけどけっこう前のことで思い出せない。とにかく、そんな中途半端な一読者の個人の感想なんですけど、町田さんの小説の主人公は自意識過剰でずっと独り言を垂れ流しているような人が多いと思うんです。というかその独り言を書きとめたものが彼の小説といってもいいくらい。それできっとずっと探していたと思うんです。脳内オーディションしてたと思うんです。日本史上、町田文学の永遠の中2病を演じるのに最もふさわしい人物はだれかって。それで「この子しかいない!」ってなったのが源九郎判官義経だったんじゃないかな、想像するに。
そしてそのキャスティングは大当たり!あ、個人の感想ですけどね。父や兄たちが平家と戦って非業の死をとげ、物心ついたときから「隙を見せたら瞬間的に殺される」と言われ続けて人目をはばかるように山奥で育てられたのにくわえ、母親は超絶美人、そして自分はその母に似て誰もが二度見するほどの美形。しかも滅茶苦茶運動神経いい。しかも馬鹿じゃないっていうかむしろ頭はいい方。そんな子をまわりが放っておくはずもなく、実際放っておかなかった。この子を利用して一儲けしようとか、一旗あげようとか、一矢報いようとか自己実現シタイ!とかいう輩がわんさかあらわれるわけです。人気子役が両親やその知人、事務所やその出入りの人たちによってたかってむちゃくちゃにされしまう、っていうあれですよ。まともな大人に育つわけありません。実際、牛若丸→遮那王→九郎判官と成長していくなかで、義経はどんどん内面をこじらせていくわけです。あくまでも小説のなかでの話ですけどね。
たとえば、奥州藤原氏を訪ねる旅の途上で義経は盗賊を「誅殺」するわけだが、わざわざ「私がやりました」と立て看板を出す。しかも匿名希望で。見つかると六波羅から追手がきてしまうので。じゃあ出すなよ、という話だが、「自己顕示欲」でわけのわからない行動に及んでしまう。その旅の途中で、急に藤原秀衡のところまでいくのがイヤになってしまい、同行者の吉次を騙してこっそり行先を変えようとする。嘘をつくことに葛藤しながらも最後は「人の世というところはそういうことをしないと生きていけない」「戦争には謀略はつきもの」と正当化し、「『日常』なんてなかった」んだよ俺の時代は、と毒づき、なぜか「いまも変わらない。っていうか、擬装されてわかんない分、いまの方がやばいかもしれない」と読者に矛先を向けてくる始末。まあでも、けっこう当たっていたりしてね。ハハハ。
そんなふうに気まぐれで嘘つきなだけでなく、わがままで疑い深いんだわ、義経って子は。奥州藤原氏のもとで何不自由なく高級ニートみたいな生活を送らせてもらい、なおかつ8万人の軍勢まで与えてもらって、何の文句があるのかと普通は思うよね。それが文句たらたら。おまいら、俺の名前で「九郎義経ホールディングス」設立しておきながら株主の俺を無視していろいろ決めやがって、ていうか、それがおまいらの魂胆だったのだな、騙されるとでも思ってんのかコラ!九郎判官なめとったらあかんど!このノロマな田舎者めが!と心の中では思いながらもしばらく我慢し、とうとう耐えられなくなって京都に戻る。奥州藤原氏のほうもどうなんでしょう。いなくなってくれてほっとした部分もあったんじゃないでしょうかねえ。「いやあ、扱いにくい子だったね…」「そうねー、朗らかさがね、足りないっていうかね。まあ、育ちも育ちだから…」みたいな会話が藤原親子の間でかわされたかどうかは知らないが。
この中2病の義経のバディ役がご存じ、武蔵坊弁慶なわけですが、これもまたすごい役者つれてきましたね~。この弁慶、幼名鬼若は牛若と正反対で、ブサイクゆえに実父に殺されかけ、義父に山に捨てられ、山では嫌われ者になった。高貴な血筋にもかかわらず、勉強でがんばってそれなりに成績もよかったにもかかわらず、自分の顔がブサイクなだけでいつまでたっても注目されないどころか厄介者扱いされ……。思いつめた鬼若はグレるだけグレてひきこもる。自傷に他傷、暴力全開で暴れまわる。バイオレンスでメンヘラというこの難しい役の弁慶の存在感、素晴らしい。鬼若が抑うつ状態に陥り、闇の底から這いあがってきて、自分の決意を杉の木に語りかえるシーンなど、ほとんど主役義経を食ってしまっていますね。
義経と弁慶が清水寺で二人で読経をするシーン。ここも町田先生の演出、よかったです。なんか微妙にBL入っている感じとか。まあ、義経記全般的にBLの味付け濃い目ですけど。声を絡み付かせての経ギグのあと、めでたく二人はバディの仲となったところでシーズン1終了。シーズン2で義経はいよいよ因縁の兄、頼朝と会いまみえることに! そして静ちゃんは出てくるのか? めっちゃ楽しみです。
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ギケイキ:千年の流転 単行本 – 2016/5/12
町田 康
(著)
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千年の時を超え、現代に生きる源義経が、自らの怒涛の生涯を語り出す。激烈に滑稽で、激烈に悲痛な魂を描く、著者の新たな代表作。
- 本の長さ352ページ
- 言語日本語
- 出版社河出書房新社
- 発売日2016/5/12
- 寸法13.5 x 2.7 x 19.4 cm
- ISBN-104309024653
- ISBN-13978-4309024653
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商品の説明
著者について
1962年大阪生まれ。作家・詩人・パンク歌手。2000年「きれぎれ」で芥川賞、01年、詩集『土間の四十八滝』で萩原朔太郎賞、05年『告白』で谷崎潤一郎賞、08年『宿屋めぐり』で野間文芸賞を受賞。
登録情報
- 出版社 : 河出書房新社 (2016/5/12)
- 発売日 : 2016/5/12
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 352ページ
- ISBN-10 : 4309024653
- ISBN-13 : 978-4309024653
- 寸法 : 13.5 x 2.7 x 19.4 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 329,599位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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作家、ミュージシャン。1962年大阪生まれ。高校時代より町田町蔵の名で音楽活動を始める。97年に処女小説『くっすん大黒』で野間文芸新人賞、 Bunkamuraドゥマゴ文学賞、2000年には「きれぎれ」で芥川賞を受賞する。01年詩集『土間の四十八滝』で萩原朔太郎賞、02年「権現の踊り 子」で川端康成文学賞を受賞、05年『告白』で谷崎潤一郎賞、08年『宿屋めぐり』で野間文芸賞を受賞した(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 あなたにあえてよかった―テースト・オブ・苦虫〈8〉 (ISBN-13: 978-4120041235 )』が刊行された当時に掲載されていたものです)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2018年10月14日に日本でレビュー済み
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2017年10月20日に日本でレビュー済み
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現代に存在する霊?の義経が過去を回想するような形で自分の半生を町田節で展開する。
その描写は適度に幻想的で、ウルトラリアリズムを彷彿とさせる。
膨大な時間軸のなかで、この後史実通りに物語が展開するのか、バガボンドのように独自の
解釈をくわえながら別の世界に飛んでゆくのか、続編に期待が膨らむ内容だった。
その描写は適度に幻想的で、ウルトラリアリズムを彷彿とさせる。
膨大な時間軸のなかで、この後史実通りに物語が展開するのか、バガボンドのように独自の
解釈をくわえながら別の世界に飛んでゆくのか、続編に期待が膨らむ内容だった。
2022年4月9日に日本でレビュー済み
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義経記の大阪弁現代語訳みたいな感じです
とにかく義経がぶっ飛んでいます
なかなか面白いと思いますよ
とにかく義経がぶっ飛んでいます
なかなか面白いと思いますよ
2017年11月4日に日本でレビュー済み
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義経のエキセントリックさと町田康の文体が融合している面白さを勝手にイメージしていたので、「あれっ?」という感じが否めませんでした。
始めの方は「町田康‼」という感じのリズムを感じられるのですが、後半は若干説明的になっている印象です。頼朝挙兵以降の義経の活躍は、ここではまだ描かれず、続編に出てくるのでしょうが、中古で買うか図書館で借りるかで十分かなと思いました。
中学生に向けた、「平家物語」の関連図書としは、町田康の面白さが十分に発揮されているか疑問な点もあり、大人びた生徒に紹介するのも迷うところです。
始めの方は「町田康‼」という感じのリズムを感じられるのですが、後半は若干説明的になっている印象です。頼朝挙兵以降の義経の活躍は、ここではまだ描かれず、続編に出てくるのでしょうが、中古で買うか図書館で借りるかで十分かなと思いました。
中学生に向けた、「平家物語」の関連図書としは、町田康の面白さが十分に発揮されているか疑問な点もあり、大人びた生徒に紹介するのも迷うところです。
2018年9月4日に日本でレビュー済み
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著者の小説の中では一番好きになりました。
2017年10月21日に日本でレビュー済み
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口語調なのでスルスルと読めてしまいます。歴史小説が苦手な自分にも面白かったです。
2023年5月4日に日本でレビュー済み
とにかく面白く、一気に読んでしまった。内容的にはそこまで『義経記』から改変していないようだが、そうは思えないほど町田色が強く、読みながら大爆笑。それと同時に、主人公の圧倒的な孤独とかなしみが伝わってきてふいに胸が締め付けられるような部分もあった。
町田版の義経は、『義経記』で描かれているとおり才覚と美貌に優れた天才(自分でそのことをてらいなく言うのが可笑しい)なのだが、それゆえ普通の人に理解されないし、義経も普通の人を理解できない。そこにこの主人公の悲劇の本質があるように思う。行き過ぎた天才ゆえに地上では人々に理解されなかった義経が、現代もなお亡霊として、自らの物語を誰にというわけでもなく語り続けているのはかなしいし、その孤独の終わりのなさに凄みすら感じる。町田康氏は読み手を本気で爆笑させることができる稀有な才能を持つ作家だと思うが、人並外れた才覚・美貌を持つ人物の孤独を書くのが本当にうまいとつくづく思わされた。
町田版の義経は、『義経記』で描かれているとおり才覚と美貌に優れた天才(自分でそのことをてらいなく言うのが可笑しい)なのだが、それゆえ普通の人に理解されないし、義経も普通の人を理解できない。そこにこの主人公の悲劇の本質があるように思う。行き過ぎた天才ゆえに地上では人々に理解されなかった義経が、現代もなお亡霊として、自らの物語を誰にというわけでもなく語り続けているのはかなしいし、その孤独の終わりのなさに凄みすら感じる。町田康氏は読み手を本気で爆笑させることができる稀有な才能を持つ作家だと思うが、人並外れた才覚・美貌を持つ人物の孤独を書くのが本当にうまいとつくづく思わされた。
2021年7月13日に日本でレビュー済み
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一言、面白い。でも、現代風に書きすぎかな?