自分の過去を語るにはそれなりの覚悟が必要だと思う。過去の有名な自伝は虚構とはいかないまでもそれなりの照れ隠しとしての文芸的操作がなされることが多い。しかしこの本の著者はどこまでも友達と喫茶店で語るような雰囲気で壮絶な過去を語ってしまう。しかもかなり独特な視点で世の中を見ていることを隠さずに明かしてしまう。正直すぎる。読者に媚びて書いていない。しかし確かに読んでいて面白い。時代を反映する言葉もある。たとえば「特別な存在,ヴェルタース・オリジナル」というオチはこのドイツ製のキャラメルのCMを知らないとなんだかわからない。(勿論注をつけるような野暮なことはしたくない。)長生きしている人がちょっと微笑むことができる瞬間だ。それからこの内容から窺えるのは不登校やいじめなど心に不満を抱えている子ども時代の著者を暖かく見つめ続けていてくれていた親や家族の存在がいかに著者の精神安定剤になっていたかである。家族との断絶がなかったからこそ今アーバンギャルドの歌を歌える本人がいるのではないかと感じた。この人には逃げ場があった。
自分自身を魅力的に語る小説と言えばゲーテの『詩と真実』がある。自分の過去のさまざまな修羅場をストップモーションのように一コマ一コマ丁寧に語ってくれるゲーテの勇気ある文章にはびっくりするが,本書もちょっと似ている。浜崎容子の人生の場面場面に自分が傍観しているかのような気分になる。しかもそれが過去への自己弁明ではなく過去を(たとえ辛いことでも)愛おしく描写しているような態度が魅力的である。これこそゲーテの『詩と真実』に重ねられる部分だ。そして音楽を生業にする手前で(現在の自分になる手前)終わっているところも似ている。読んでいてそう思った。
最後の数十頁に記載されている「浜崎容子の告白」はアーバンギャルドの歌姫になり,現在に至る記録だが,これはファンの人には貴重な文章なのかも知れない。しかしながら,文芸的な観点からすれば私はこれを『夜想』から転記する必要はなかったと思う。「悶々期突入其の参」の章で終わりにする方が文芸作品としてはお洒落だと思う。

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バラ色の人生 (ロフトブックス) 単行本(ソフトカバー) – 2016/2/23
浜崎容子
(著)
2015年12月9日に発表された通算7作目となるオリジナル・アルバム『昭和九十年』(KADOKAWA)がオリコンのデイリーCDアルバムランキングで初登場12位を記録、最新鋭のサブカルチャーに敏感な若い世代から絶大な支持を得るトラウマテクノポップバンド、アーバンギャルド。
そのアイコン的存在であり、ボーカルにして紅一点、浜崎容子が自身の幼少期からアーバンギャルド加入前夜までのトラウマ体験をポップに書き綴った初の著作集。
クラシックバレエに打ち込み、サンタクロースは実在すると信じていた少女から見た、ちょっと変わった同級生の話。クリスマスや正月、バレンタインデーのほろ苦い思い出。浜崎家の玄関に置かれた謎のボール、座敷童やこっくりさん、パラレルな異世界の扉といった不思議現象体験。どんぐりにまつわる憧れの先輩や風変わりな家庭教師のこと、「1」という数字にとにかくこだわる中学時代の担任教師のこと。高校の卒業式の仰天話と切ない思い出。そして高校を卒業後、あてどもなくアメ村に入り浸った人生の悶々期──。人格形成に多大な影響を及ぼした幼少期から思春期にわたる40篇のエピソードを収録。
また、2007年の加入から2015年の最新作『昭和九十年』制作に至るアーバンギャルドの軌跡と心の内を独自の視点で書き上げた「浜崎容子の告白」を特別収録(2014年7月にステュディオ・パラボリカから刊行された『yaso 夜想/特集「アーバンギャルド」』収録の原稿を大幅に加筆・修正したもの)。
さらに本書でしか見ることのできない撮り下ろしグラビアを巻頭に掲載するなど、まさにファン必携の書。
そのアイコン的存在であり、ボーカルにして紅一点、浜崎容子が自身の幼少期からアーバンギャルド加入前夜までのトラウマ体験をポップに書き綴った初の著作集。
クラシックバレエに打ち込み、サンタクロースは実在すると信じていた少女から見た、ちょっと変わった同級生の話。クリスマスや正月、バレンタインデーのほろ苦い思い出。浜崎家の玄関に置かれた謎のボール、座敷童やこっくりさん、パラレルな異世界の扉といった不思議現象体験。どんぐりにまつわる憧れの先輩や風変わりな家庭教師のこと、「1」という数字にとにかくこだわる中学時代の担任教師のこと。高校の卒業式の仰天話と切ない思い出。そして高校を卒業後、あてどもなくアメ村に入り浸った人生の悶々期──。人格形成に多大な影響を及ぼした幼少期から思春期にわたる40篇のエピソードを収録。
また、2007年の加入から2015年の最新作『昭和九十年』制作に至るアーバンギャルドの軌跡と心の内を独自の視点で書き上げた「浜崎容子の告白」を特別収録(2014年7月にステュディオ・パラボリカから刊行された『yaso 夜想/特集「アーバンギャルド」』収録の原稿を大幅に加筆・修正したもの)。
さらに本書でしか見ることのできない撮り下ろしグラビアを巻頭に掲載するなど、まさにファン必携の書。
- 本の長さ232ページ
- 言語日本語
- 出版社ロフトブックス
- 発売日2016/2/23
- ISBN-104907929102
- ISBN-13978-4907929107
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商品の説明
著者について
若者にカリスマ的人気を誇り。2014年7月フランス・パリで開催されたJapan Expoに招待され、日本を代表するバンドの一つとして紹介されてもいるトラウマテクノポップバンド「アーバンギャルド」。そのボーカルにして紅一点。
登録情報
- 出版社 : ロフトブックス (2016/2/23)
- 発売日 : 2016/2/23
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 232ページ
- ISBN-10 : 4907929102
- ISBN-13 : 978-4907929107
- Amazon 売れ筋ランキング: - 853,530位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 2,222位J-POP楽譜・スコア・音楽書
- カスタマーレビュー:
カスタマーレビュー
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2016年3月6日に日本でレビュー済み
アーバンギャルドの歌姫、浜崎容子さんのエッセイ本です。2012年から連載していたものが本として出版されました。
独特の雰囲気を醸し出す彼女のエッセイ、内容もすごいです。小学校時代、中高時代、そして悶々期を経てアーバンギャルドのボーカルに・・・と、時系列そのままではないのですが、彼女がアーバンギャルドの浜崎容子、「よこたん」になるまでの軌跡が書いてあります。
第一回のタイトルが「多くのトラウマを抱え、今必死に生きています」なのですが、まさにその通り。文章を読んだだけの私が「なんとまぁ」と思うようなことがたくさん書かれています。リアルにこれを体験したらそりゃトラウマになるよなぁ…と。
本文中に自己愛が強い、友達は少なくていい、人をあまり信用出来ない(しない)etcといった旨のことが書いてありますが、それがとてもかっこいい!
それは何より彼女が今メジャーで活躍するミュージシャンであり、その軸が付け焼き刃ではなくぶれていないことに起因していると思います。
私自身、本書を読んでから更に浜崎容子さんへの憧れが強くなりました。
以前発行された「夜想」に掲載された「浜崎容子の告白」も加筆して収録してありとても分厚いですが、彼女の文章力の力か内容の面白さか、とにかくすらすら読めます。冒頭のカラーグラビアも美しい!
アーバンギャルドが好きな人や浜崎容子さんが好きな人はもちろん、モラトリアムにいる人、多感な青少年、その他様々な人にオススメできる作品だと思います。
おそらくまだ語られていないことが沢山あり、続きも気になる本書。
続編の刊行も楽しみにしております。
独特の雰囲気を醸し出す彼女のエッセイ、内容もすごいです。小学校時代、中高時代、そして悶々期を経てアーバンギャルドのボーカルに・・・と、時系列そのままではないのですが、彼女がアーバンギャルドの浜崎容子、「よこたん」になるまでの軌跡が書いてあります。
第一回のタイトルが「多くのトラウマを抱え、今必死に生きています」なのですが、まさにその通り。文章を読んだだけの私が「なんとまぁ」と思うようなことがたくさん書かれています。リアルにこれを体験したらそりゃトラウマになるよなぁ…と。
本文中に自己愛が強い、友達は少なくていい、人をあまり信用出来ない(しない)etcといった旨のことが書いてありますが、それがとてもかっこいい!
それは何より彼女が今メジャーで活躍するミュージシャンであり、その軸が付け焼き刃ではなくぶれていないことに起因していると思います。
私自身、本書を読んでから更に浜崎容子さんへの憧れが強くなりました。
以前発行された「夜想」に掲載された「浜崎容子の告白」も加筆して収録してありとても分厚いですが、彼女の文章力の力か内容の面白さか、とにかくすらすら読めます。冒頭のカラーグラビアも美しい!
アーバンギャルドが好きな人や浜崎容子さんが好きな人はもちろん、モラトリアムにいる人、多感な青少年、その他様々な人にオススメできる作品だと思います。
おそらくまだ語られていないことが沢山あり、続きも気になる本書。
続編の刊行も楽しみにしております。
2016年3月12日に日本でレビュー済み
読みやすく面白いです。
1話1話短くちょっとした時間に読むなど出来ます。まあ私は面白すぎて10話ずつなど一気に読んでしまいますけどw
この本にはアーバンギャルドに入る前のよこたん、幼少期のことなどが綴られていてファンにはたまらない1冊ですね。
本の材質??もサラサラしていてマット加工されているので持ちやすく読みやすかったです。
1話1話短くちょっとした時間に読むなど出来ます。まあ私は面白すぎて10話ずつなど一気に読んでしまいますけどw
この本にはアーバンギャルドに入る前のよこたん、幼少期のことなどが綴られていてファンにはたまらない1冊ですね。
本の材質??もサラサラしていてマット加工されているので持ちやすく読みやすかったです。