ここ数年、テレビなどでブータンについて見る機会が何度かあった。場所によっては標高がとても高く、冬の寒さなどは厳しい（反対に標高が低いところもあって、その標高差は数千mになるという）。しかし森や緑がとても豊かで、人々はチベット仏教の信仰をとても大切にしていて、それは生活習慣にも根付いている。何とも心惹かれる国だと思っている。
この本は1984年、まだブータンが外国人の立ち入りを厳しく制限している時期にやっと許可が下りて入国した著者によって書かれたものだ。白黒だが写真がたくさん掲載されていて、今では見られなくなったかもしれない当時の風景や人々の姿がよくわかる。
書かれている内容については、著者があとがきで「ほめすぎたかもしれないと感じている」と書いておられるとおり、所々、理想化しすぎているのではないかという記述が目につく。しかし、1984年当時、まだブータンという国のことは外にはほとんど知られていなかった時期のこと。人々の暮らし、寺院について、国王についてなど、詳細に書かれていて、とても貴重な記録になっていると思う。
その後、新国王誕生の2008年にも著者はブータンを訪れ、新国王のお披露目に参列している。その時のことも詳しく書かれている。
この文庫本には「ブータンのその後」という章があり、約30年後の現在、ブータンがどんな状況にあるのか、人々の暮らしや考えが30年前とどんな風に変わっていっているのかについて、著者による考察が書かれている。
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