タイトルに書いたとおり、プラセボだって効果あるし、プラセボしか効果がないに近いような病気もあるのだからプラセボを有効利用しましょう、お金もかかりませんし、というお話。
プラセボ効果を得るための方法が幾つか紹介されている。代替医療でも超高額なものもあり、嘘を嘘で塗り固めたようなものもあるので、代替医療を使う側にもリテラシーが求められる。ただ、代替医療で偽薬に払うお金が多ければ多いほどプラセボの効果も高いそうで、複雑な気持ちにさせられる。その判断基準についてもう少し強く書かれていたらなぁと思う。

無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
「病は気から」を科学する 単行本(ソフトカバー) – 2016/4/13
ジョー・マーチャント
(著),
服部 由美
(翻訳)
科学も心も「万能」ではない。現代医学に疑いを持つ人も、スピリチュアルが怪しいと思う人も必読のノンフィクション!ホメオパシーには科学的根拠は一切なく、「おしゃれなボトルに入った水や砂糖」だ。だが、最先端科学の現場では「信じる心」を、医療に取り入れる研究が進んでいる。過敏性腸症候群、がん、自己免疫疾患、分娩まで、臨床現場における「心の役割」を、科学ジャーナリストが緻密な取材をもとに検証。
イギリス気鋭の科学ジャーナリストによる知的興奮のノンフィクション!
スピリチュアルブーム、自然志向で「現代医学VS.自然療法」という対立が生まれた。
「代替療法はまったく根拠のないエセ科学だ」と断じ、切り捨てる科学者。
「心の力ですべての病は直る」と極論を述べるヒーラーや、スピリチュアルをお金に変える商売人。
真実は、両者のはざまに存在した。
「心の力」を治療に取り入れている最先端科学の研究者と医療現場、患者に、綿密な取材を敢行。
がん、自己免疫系疾患、過敏性腸症候群、うつ、パーキンソン病、自閉症、慢性疲労症候群などの病気に、心がどのような役割を果たしているかを解き明かす。
*プラセボ効果を利用して鎮痛剤の使用量を抑える
*催眠術を利用して過敏性腸症候群の腸収縮を抑える
*味覚と臭覚を訓練し、免疫系疾患の治療に役立てる
*心の状態と生涯にわたる病気リスクの関係
*遺伝子の活性化など、心の状態が体の物理的構造に与える影響
エビデンスをもとに導き出された、「西洋医学=絶対」でもなく、「自然療法=インチキ」でもない「第三の真実」とは?
「病は気から」を科学すれば、思いや思考によって最先端医療の効果を最大化できる。
ページを繰る手が止まらない!知的興奮のノンフィクション。
イギリス気鋭の科学ジャーナリストによる知的興奮のノンフィクション!
スピリチュアルブーム、自然志向で「現代医学VS.自然療法」という対立が生まれた。
「代替療法はまったく根拠のないエセ科学だ」と断じ、切り捨てる科学者。
「心の力ですべての病は直る」と極論を述べるヒーラーや、スピリチュアルをお金に変える商売人。
真実は、両者のはざまに存在した。
「心の力」を治療に取り入れている最先端科学の研究者と医療現場、患者に、綿密な取材を敢行。
がん、自己免疫系疾患、過敏性腸症候群、うつ、パーキンソン病、自閉症、慢性疲労症候群などの病気に、心がどのような役割を果たしているかを解き明かす。
*プラセボ効果を利用して鎮痛剤の使用量を抑える
*催眠術を利用して過敏性腸症候群の腸収縮を抑える
*味覚と臭覚を訓練し、免疫系疾患の治療に役立てる
*心の状態と生涯にわたる病気リスクの関係
*遺伝子の活性化など、心の状態が体の物理的構造に与える影響
エビデンスをもとに導き出された、「西洋医学=絶対」でもなく、「自然療法=インチキ」でもない「第三の真実」とは?
「病は気から」を科学すれば、思いや思考によって最先端医療の効果を最大化できる。
ページを繰る手が止まらない!知的興奮のノンフィクション。
- 本の長さ392ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2016/4/13
- ISBN-104062179377
- ISBN-13978-4062179379
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
商品の説明
著者について
ジョー・マーチャント
科学ジャーナリスト。生物学を学び、医療微生物学で博士号を取得。『ネイチャー』、『ニュー・サイエンティスト』などの一流科学誌で記者、編集者をつとめたのち、独立。『ガーディアン』や『エコノミスト』に寄稿。海洋考古学から遺伝子工学の未来まで、先端科学の専門家として執筆活動をおこなう。著書に『アンティキテラ 古代ギリシアのコンピュータ』『ツタンカーメン 死後の奇妙な物語』(いずれも文藝春秋)がある。ロンドン在住。
服部 由美
翻訳家。訳書に、ジェイソン・パジェット『31歳で天才になった男』マシュー・ロゲリン『僕がパパに育つまで』(いずれも講談社)、キャロライン・メイス『思いやりのチャクラ』(サンマーク出版)、タンマヤ・ホナヴォグト『プロフェッショナルレイキ』、マリリン・グレンビル『検証 骨粗鬆症にならない体質』(ともにガイアブックス)などがある。
科学ジャーナリスト。生物学を学び、医療微生物学で博士号を取得。『ネイチャー』、『ニュー・サイエンティスト』などの一流科学誌で記者、編集者をつとめたのち、独立。『ガーディアン』や『エコノミスト』に寄稿。海洋考古学から遺伝子工学の未来まで、先端科学の専門家として執筆活動をおこなう。著書に『アンティキテラ 古代ギリシアのコンピュータ』『ツタンカーメン 死後の奇妙な物語』(いずれも文藝春秋)がある。ロンドン在住。
服部 由美
翻訳家。訳書に、ジェイソン・パジェット『31歳で天才になった男』マシュー・ロゲリン『僕がパパに育つまで』(いずれも講談社)、キャロライン・メイス『思いやりのチャクラ』(サンマーク出版)、タンマヤ・ホナヴォグト『プロフェッショナルレイキ』、マリリン・グレンビル『検証 骨粗鬆症にならない体質』(ともにガイアブックス)などがある。
登録情報
- 出版社 : 講談社 (2016/4/13)
- 発売日 : 2016/4/13
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 392ページ
- ISBN-10 : 4062179377
- ISBN-13 : 978-4062179379
- Amazon 売れ筋ランキング: - 34,242位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2018年2月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
(14ページより)
「心の治癒力を利用するために、根拠や理性的な思考を捨て去る必要はもうない。
そこには科学が存在するからだ。」
・体を物理的に捉える "西洋医学"
・症状より人間に根差した "東洋医学" (を含むその他の医療)
非物質的要因が体に与える影響を、最新の研究を交えて科学的に考察する本です。
個人的に興味深かった内容を簡単にまとめます(先頭の数字は参照ページです)
第1章 偽薬
26 自閉症治療の為の "セクレチン" の効果の正体とは?
31 偽の外科手術 の効果とは?
40 パーキンソン病患者への "プラセボ注射" の力とは?
45 プラセボ効果の背後に "生化学的なプロセス" が示された最初の証拠とは?
48 プラセボ効果の "2つの限界" とは?
第2章 型破りな考え
57 プラセボ効果が頻繁に "姿を変える" 原因とは?
62 正直に伝えるプラセボ の効果とは?
65 実薬とプラセボの "併用" のメリットとは?
70 実薬の副作用の正体 "ノセボ効果" とは?
76 薬の効力を高める可能性が高い "飲み方" とは?
77 プラセボの効果を "最大限に引き出す" ための重要な要素とは?
第3章 パブロフの力
86 95~100%の確率でプラセボを起こす "条件づけたプラセボ" とは?
92 プラセボが "免疫系" にも作用する理由とは?
104 "条件反射" を利用したプラセボの2つのメリットとは?
第4章 疲労との闘い
109 高地で感じる "苦しさ" は幻想?
112 "マラソンランナー" が倒れる本当の理由とは?
115 疲労感の正体 "セントラルガバナー" とは?
117 "緊急事態" になると人が離れ業をやってのける理由とは?
122 「患者が不治の病だと信じ込めば、不治の病になってしまう」とは?
128 「慢性疲労症候群(CFS)は、体の病気でも、心の病気でもない。その両方なのだ」とは?
第5章 催眠術
135 "磁気" による治療の正体とは?
142 催眠術の効果を示す "信じれば見えてくる実験" とは?
144 催眠術で "血流" をコントロールする?
153 実験で成果が出ているのに "催眠療法" に証拠がないと言われる理由とは?
第6章 痛み
160 米国史上最大の "薬物汚染" の正体とは?
162 "注意力" と痛みの関係とは?
172 従来の "催眠術" の欠点とは?
174 物理的な効果を引き起こす "ラバーハンドイリュージョン" とは?
177 催眠術や他の心理療法が抱える "問題" とは?
第7章 患者への話し方
184 "帝王切開" による出産を避ける為の最良の方法とは?
187 "自宅出産" の方が実は安全?
196 痛みと不安を軽減する "コンフォートトーク" とは?
198 これから起こる "苦痛を伝える" ことの弊害とは?
206 「要するに、私たちは人間であり、機械ではない」とは?
第8章 ストレス
208 災害発生時に "心臓死" が急増する理由とは?
215 "慢性的なストレス" による健康被害のメカニズムとは?
218 ストレスは健康被害に加え "老化" を加速する理由とは?
225 養子の "40代での死亡率" に最も相関の高い要因とは?
230 ストレスによる悪影響を避け "能力を発揮する" ための方法とは?
232 慢性的なストレスにさらされている人の "脳" は変化する?
234 幼児期のストレスが "側坐核" に与える影響とは?
第9章 マインドフルネス瞑想法
250 瞑想には時間がかかると思われますが、実は逆なんです」とは?
258 熟練した僧が瞑想している時に "脳で起きていること" とは?
261 瞑想が "脳の構造" を変化させ、ストレスに強くなる理由とは?
第10章 健康長寿
268 コスタリカ北西部の "ニコヤ半島" の住人が健康である最大の理由とは?
274 社会からの孤立がもたらす "健康被害" の大きさとは?
277 誰かと一緒にいても "孤独" を感じる条件とは?
285 "忍耐強い子供" に最も相関の大きい要因とは?
289 "高齢者" の健康状態を高める最良の方法とは?
第11章 電気の刺激
306 心拍コントロールシステムの一つ "圧反射" とは?
307 心拍数を変化させるシステム "呼吸性洞性不整脈(RSA)" とは?
307 "心拍変動(HRV)" と心疾患死亡率に相関がある理由とは?
310 「HRVが重要なのは心臓の状態が分かるからより、脳の状態が分かるから」とは?
315 免疫系という凶器から人を守る "炎症反射" とは?
317 "迷走神経" を良好な状態に保つために重要なこととは?
325 神経を電気的に "刺激" する治療のメリットとは?
第12章 神を探して
334 "信心深さ・霊性" が健康に与える影響とは?
339 健康に良い効果を与える信仰心の "条件" とは?
344 宗教で行われる "儀式" の究極の目的とは?
348 "高い目標" を持つと、感じるストレスが小さくなる理由とは?
355 "宗教" が健康に与えるメリットの正体とは?
362 カトリックの聖地 "ルルド" が最優先していることとは?
おわりに
371 "代替医療" に頼り過ぎることの危険とは?
378 健康における "心の役割" が重要視されない2つの理由とは?
最後に心に残った筆者の言葉を紹介します。(383ページより)
「私の望みは "物理的な介入" と "薬への依存度" を強めていくよりも、
健康対策に "心" を取り入れた方が、実はより科学的で、根拠に基づく治療法だと気づいてもらうことだ」
「心の治癒力を利用するために、根拠や理性的な思考を捨て去る必要はもうない。
そこには科学が存在するからだ。」
・体を物理的に捉える "西洋医学"
・症状より人間に根差した "東洋医学" (を含むその他の医療)
非物質的要因が体に与える影響を、最新の研究を交えて科学的に考察する本です。
個人的に興味深かった内容を簡単にまとめます(先頭の数字は参照ページです)
第1章 偽薬
26 自閉症治療の為の "セクレチン" の効果の正体とは?
31 偽の外科手術 の効果とは?
40 パーキンソン病患者への "プラセボ注射" の力とは?
45 プラセボ効果の背後に "生化学的なプロセス" が示された最初の証拠とは?
48 プラセボ効果の "2つの限界" とは?
第2章 型破りな考え
57 プラセボ効果が頻繁に "姿を変える" 原因とは?
62 正直に伝えるプラセボ の効果とは?
65 実薬とプラセボの "併用" のメリットとは?
70 実薬の副作用の正体 "ノセボ効果" とは?
76 薬の効力を高める可能性が高い "飲み方" とは?
77 プラセボの効果を "最大限に引き出す" ための重要な要素とは?
第3章 パブロフの力
86 95~100%の確率でプラセボを起こす "条件づけたプラセボ" とは?
92 プラセボが "免疫系" にも作用する理由とは?
104 "条件反射" を利用したプラセボの2つのメリットとは?
第4章 疲労との闘い
109 高地で感じる "苦しさ" は幻想?
112 "マラソンランナー" が倒れる本当の理由とは?
115 疲労感の正体 "セントラルガバナー" とは?
117 "緊急事態" になると人が離れ業をやってのける理由とは?
122 「患者が不治の病だと信じ込めば、不治の病になってしまう」とは?
128 「慢性疲労症候群(CFS)は、体の病気でも、心の病気でもない。その両方なのだ」とは?
第5章 催眠術
135 "磁気" による治療の正体とは?
142 催眠術の効果を示す "信じれば見えてくる実験" とは?
144 催眠術で "血流" をコントロールする?
153 実験で成果が出ているのに "催眠療法" に証拠がないと言われる理由とは?
第6章 痛み
160 米国史上最大の "薬物汚染" の正体とは?
162 "注意力" と痛みの関係とは?
172 従来の "催眠術" の欠点とは?
174 物理的な効果を引き起こす "ラバーハンドイリュージョン" とは?
177 催眠術や他の心理療法が抱える "問題" とは?
第7章 患者への話し方
184 "帝王切開" による出産を避ける為の最良の方法とは?
187 "自宅出産" の方が実は安全?
196 痛みと不安を軽減する "コンフォートトーク" とは?
198 これから起こる "苦痛を伝える" ことの弊害とは?
206 「要するに、私たちは人間であり、機械ではない」とは?
第8章 ストレス
208 災害発生時に "心臓死" が急増する理由とは?
215 "慢性的なストレス" による健康被害のメカニズムとは?
218 ストレスは健康被害に加え "老化" を加速する理由とは?
225 養子の "40代での死亡率" に最も相関の高い要因とは?
230 ストレスによる悪影響を避け "能力を発揮する" ための方法とは?
232 慢性的なストレスにさらされている人の "脳" は変化する?
234 幼児期のストレスが "側坐核" に与える影響とは?
第9章 マインドフルネス瞑想法
250 瞑想には時間がかかると思われますが、実は逆なんです」とは?
258 熟練した僧が瞑想している時に "脳で起きていること" とは?
261 瞑想が "脳の構造" を変化させ、ストレスに強くなる理由とは?
第10章 健康長寿
268 コスタリカ北西部の "ニコヤ半島" の住人が健康である最大の理由とは?
274 社会からの孤立がもたらす "健康被害" の大きさとは?
277 誰かと一緒にいても "孤独" を感じる条件とは?
285 "忍耐強い子供" に最も相関の大きい要因とは?
289 "高齢者" の健康状態を高める最良の方法とは?
第11章 電気の刺激
306 心拍コントロールシステムの一つ "圧反射" とは?
307 心拍数を変化させるシステム "呼吸性洞性不整脈(RSA)" とは?
307 "心拍変動(HRV)" と心疾患死亡率に相関がある理由とは?
310 「HRVが重要なのは心臓の状態が分かるからより、脳の状態が分かるから」とは?
315 免疫系という凶器から人を守る "炎症反射" とは?
317 "迷走神経" を良好な状態に保つために重要なこととは?
325 神経を電気的に "刺激" する治療のメリットとは?
第12章 神を探して
334 "信心深さ・霊性" が健康に与える影響とは?
339 健康に良い効果を与える信仰心の "条件" とは?
344 宗教で行われる "儀式" の究極の目的とは?
348 "高い目標" を持つと、感じるストレスが小さくなる理由とは?
355 "宗教" が健康に与えるメリットの正体とは?
362 カトリックの聖地 "ルルド" が最優先していることとは?
おわりに
371 "代替医療" に頼り過ぎることの危険とは?
378 健康における "心の役割" が重要視されない2つの理由とは?
最後に心に残った筆者の言葉を紹介します。(383ページより)
「私の望みは "物理的な介入" と "薬への依存度" を強めていくよりも、
健康対策に "心" を取り入れた方が、実はより科学的で、根拠に基づく治療法だと気づいてもらうことだ」
2016年9月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「病(=身体)」は「気(=心)」から、という心身医学的スタンスから最新の知見を網羅した、抜群にエキサイティングで優れた書である。翻訳もこなれていてとても良い。著者のJo marchantは以前Natureのeditorだったというから、このような領域の話題を誰にでもわかるように書くにはうってつけの人材だ。プラセボ効果から始まり、マインドフルネス、長寿の秘密、痛みの治療、と幅広い領域をカバーしている。どれも厳密な研究結果を元にした記載ばかりであり、一方からの意見だけでなく反対意見も公平に載せているのが素晴らしい。現代医学はまだまだ発展途上であり、現時点で万能ではない。「現代医学では治せない・わからない」疾患は多い。このような疾患で苦しんでいる方にとって、本書は非常に大きなヒントになり得るだろう。
あまりにも素晴らしいので★は減らさないが、ダメ出しを2点。本書の翻訳・出版に目をつけた講談社の炯眼には敬服するが、詰めが甘かった。
1.タイトルが良くない。
原題は"A journey into the Science of Mind Over Body"である。ここでは"Over"に込められた意味に想像を馳せたい。「病は気から」というフレーズは確かに万人にわかりやすいが、「気のせい」というネガティブなニュアンスも含んでおり単なる精神論に堕する危険性がある。本書はあくまでも"Science"への道しるべなのであり、精神論を述べたくだらない書物などではない。もう少し気の利いたタイトルを付けて欲しかった。
2.引用文献の詳細が本書には記載されていない(オンライン参照のみ)。
これは絶望的にセンスが無い。Onlineでは参照出来るようになっているが誰もがすぐにアクセス出来るわけではないし、気軽に文献に当たることが出来ない。これでは本書の有用性が半減である。本当に不親切な仕様であり、残念で仕方がない。編集者はまともに論文の1本も精読したことがないのだろうか?猛省して次回からは是非とも改善させて欲しい。おそらく、みすず書房だったらこんな暴挙には出なかっただろうと思ったりもするが、講談社が売った方がたくさん売れていいだろうな、という気もする。
あまりにも素晴らしいので★は減らさないが、ダメ出しを2点。本書の翻訳・出版に目をつけた講談社の炯眼には敬服するが、詰めが甘かった。
1.タイトルが良くない。
原題は"A journey into the Science of Mind Over Body"である。ここでは"Over"に込められた意味に想像を馳せたい。「病は気から」というフレーズは確かに万人にわかりやすいが、「気のせい」というネガティブなニュアンスも含んでおり単なる精神論に堕する危険性がある。本書はあくまでも"Science"への道しるべなのであり、精神論を述べたくだらない書物などではない。もう少し気の利いたタイトルを付けて欲しかった。
2.引用文献の詳細が本書には記載されていない(オンライン参照のみ)。
これは絶望的にセンスが無い。Onlineでは参照出来るようになっているが誰もがすぐにアクセス出来るわけではないし、気軽に文献に当たることが出来ない。これでは本書の有用性が半減である。本当に不親切な仕様であり、残念で仕方がない。編集者はまともに論文の1本も精読したことがないのだろうか?猛省して次回からは是非とも改善させて欲しい。おそらく、みすず書房だったらこんな暴挙には出なかっただろうと思ったりもするが、講談社が売った方がたくさん売れていいだろうな、という気もする。
2016年8月31日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
リオ五輪はロシアの陸上チームが出場禁止になるなど、ドーピング問題の根深さが広く世間に認知された大会となったが、薬物を摂取するのではなく、自分の体内で調達できるとしたらそれはドーピングとなるのか。これは仮定の疑問ではない。脳内物質の量や組み合わせを自分でコントロールできれば、身体能力の限界を超えた危険な運動に対する防御装置のストッパーを外すことができる。たとえば本書でとりあげているイギリスの長距離選手、モー・ファラー。彼はメダル候補でさえなかった前回のロンドンオリンピックで5000メートル、10000メートルの2つの金メダルをとった直後に腹筋運動をしてみせた。リオ五輪でも2冠を達成したファラーの脳は、「感情・感覚としての疲労」というストッパーの外しかたを知っているのだろう。「脳を再教育する」という表現を本書では使っている。それが簡単なことではないゆえに薬物にはしる選手も少なくないのだろう。
本書はスポーツに限らず、人は脳内の意識と無意識をコントロールすることによって身体の機能や状態に影響を与えられることを実証するさまざまな実験や事例を紹介している。医療におけるプラセボは、偽薬やインチキ療法と結びつけられることも多かった。たとえば、「プラセボ以上の効果がない」というのは代替医療に対する典型的な批判である。しかし「プラセボ」、つまり「心を騙して病気と闘わせる、という驚くような方法」に効果があるとしたら、そしてそこに科学的根拠があるとしたらどうだろう。
『がんが自然に治る生き方』という本で、著者のケリー・ターナーは末期がんが寛解した事例が奇跡と言われるほどには少なくないことを知り、そうした逸脱事例を「たまたま幸運だった」ということですませてしまうことには倫理的な問題があるのではないかという問題意識で、劇的寛解をとげた人たちが共通で実践していたことは何であったかを調査している。ターナーの調査から、末期がんが自然寛解した患者が共通して実践していたことが9つ挙げられているが、そのうち7つが「こころ」に関連することだった。本書『「病は気から」を科学する』の著者、ジョー・マーチャントもプラセボに懐疑的な態度をとることが「身体の健康にかかわるある重要な要素」の見逃しにつながっているのではないか、という問題意識からこの本を書いたという。いまや西洋医学の伝統であったところの身体二元論への根本的な見直しがあらゆる方面から行われている。
本書はプラセボは病気の背後にある生理学的な状態を変えることはできないが、痛みの緩和と生活の質向上には大きな役割を果たすという。そうした「効力」こそが「プラセボの有効成分」である、と著者は指摘する。プラセボは、間違いなく「効く」のだ。患者にそれが本来の薬ではなく「プラセボである」ということを正直に伝えても、それを飲んだ患者はなんの治療も受けなかった患者より著しい回復を見せたという。面白いのは、プラセボの効き方は種類によって異なり、効き目は患者、病気、文化によって変化するという点だ。治療が大げさであるればあるほど、高価であればあるほど、プラセボ効果は高くなることもわかっている。プラセボが心の薬であるからこそこうした揺らぎが生じるのだろう。今後研究が進めば、患者の性格や生育環境などによって、より効きやすいプラセボを特定することも可能になってくるのではないか。
また、人に手渡してもらったプラセボは、自分で飲むプラセボよりも効くらしい。自分のために処方してもらったという安心感からそうなるというのだ。代替医療においては医師と患者のやりとりが標準治療の場合よりもより濃密になる傾向がある。プラセボはノセボ効果(ある種の恐怖心、不安から実際に体に現われる症状)を取り除くことによって機能する場合があるらしいが、代替医療が標準的な西洋医療と比べてその効果を科学的に裏打ちされていないにもかかわらず一定の効果を出し、人をひきつけているとしたら、それは医師との信頼関係がより強いからではないだろうか。代替医療を選ぶ患者はときに家族や主治医の反対を押し切り、自分の意志でその治療者にたどり着いていることが多いから。標準治療の現場においても、乳房生検や腎臓および血管の措置を受けた患者のうちコンフォートトークを受けた患者が必要とした鎮痛剤は非常に少なくて、合併症もずっと少ないという。緩和ケアを受けたがん患者のQOLはそうでない患者よりずっと高く、平均生存率も高くなったという。こういう研究結果が明らかになると、緩和ケアというのは生存の望みのない患者だけのものではないような気がしてくる。腰痛でも風邪でも体調が崩れると気弱になったり気分がふさいだりするものだ。その状態をとりのぞくだけで極力薬の頼らず回復がみこめるとしたらこれほどいいことはないだろう。末期がんの患者の場合はなおさらだ、生活の質を最大限に高めることに焦点を絞り、最後まで抗がん剤にしがみつくことなくそれ以外の支援を受けながら生きるほうが、「治療と希望を同一視して」して抗がん剤を繰り返し受けるよりも結果として長く生きる可能性が高い、ということはもう、ほとんど疑いの余地がないことなのではないだろうか。一回目の抗がん剤が強力なプラセボとして効くかもしれない、ということは否定できないにしても、おそらく二回、三回と繰り返していくと、プラセボによる+よりも副作用によるマイナスのほうが大きくなってくるのだろう。
最近読んだ『野戦病院でヒトラーに何があったのか』(ベルンハルト・ホルストマン著)という本で、ヒトラーを催眠療法でヒステリー性の失明から救ったという医師の話が出てくる。当時、催眠術はジークムント・フロイトやミルトン・エリクソンをはじめとする精神分析医が実践していた。最近では、その催眠療法を過敏性腸症候群(IBS)の治療に使っているケースがあるそうだ。IBSの原因のひとつが開腹手術であるという。であれば、非侵襲的な催眠療法はまったく理にかなっている。催眠療法はまた、ヴァーチャルリアリティの技術を使って熱傷患者の痛みを和らげる際に、その効果を持続させるための暗示にも使われている。著者は「VRは医学界の態度に変化を起こすほど強力なものになるかもしれない」しているが、それだけで毎年15,000人(ヘロインとコカインを合わせた死亡数より多い)も犠牲になっている処方箋の過剰摂取に歯止めがかかることになろう。もっとも、製薬会社は薬がいらなくなる技術の臨床実験にはビタ一文払わないだろうが。
ストレスは免疫反応を抑えたり、老化を早めたり、人体にときに致死的な影響を与えるということが最近わかってきているが「子ども時代の環境はその後の人生におけるストレスへの感受性に影響を及ぼす」という本書の指摘はあまり知られていないのではないか。しかも「どんなふうに年老いていくのかは人生の初期に決まる」というのだから聞き捨てならない。ストレスは脳の配線を物理的に変えてしまうので、慢性的にストレスにさらされていると脳の報酬回路にも悪影響を与え、否定的な思考パターンが定着してしまうという。慢性的にストレスにさらされている人たちは、そうでない人にとっては何でもないことでも大きなストレスになる。子ども時代に逆境にさらされると脳がストレスに敏感になるだけでなく、エピジェネテイクスによって幼少期のトラウマが生理機能に組み込まれてのちに慢性疾患を引き起こす可能性を高くするという。社会的格差によってストレス耐性の格差もあるとすれば、ただでさえよりストレスフルな状態で生きている人たちには経済的支援以上のものが必要となってくるだろう。本書によれば外因的な問題(からくるストレス)は、通常人の体に直接的には害を及ぼさないという。本書によれば、人に害を及ぼすのはストレスフルな境遇への心理的反応であり、幸いにしてそれは人が制御できるものだ。受け止め方を変えるだけで、ストレスの多きな出来事から健康を守り、追い詰められた状況でもより能力を発揮できるという。その指摘から、ナチス収容所から帰還した心理学者、フランクルが書いた『夜と霧』を思い出した。フランクルはマインドフルネスのはしりかもしれない。
孤独(感)が健康に与える影響についての章で、何年か前に読んだ『孤独の科学』(ジョン・カシオポ著)も引用されていた。「誰かと一緒にいても、相手から気遣われていないと思えば、孤独を感じる。それは独りでいるのとおなじくらい危険」という話を読み、ここでもSNSなどのテクノロジーの出番があるのではないかと思った。義理の「いいね!」にもプラセボ効果くらいはあるのか。孤独が与える影響は、触れ合う人の数ではなく、孤立感の大きさによって決まるということもわかっている。「親しい友人がひとりかふたりだけでも、支えがあると感じれば、健康への影響を心配する必要はない」ということなので、むしろSNSなどやらずに。生身の友だちと丁寧に付き合った方がいいのか。そんなことを考えた。
心理状態を変えれば生理学的な変化がおこる、ということをさまざまな側面から書いてきた本書の最終章は「ルルドの奇跡」を扱っている。信仰心には生理学的影響があるようだが、心には奇跡的な治癒を起こす力はない、というのがここでの結論だけれども、「奇跡とは解釈なんです」「(ルルド)とは別の社会のモデルなのです」という、ルルド医療局局長のアレッサンドロ・デ・フランシスシスの言葉がこれからの科学との付き合い方、医療のありかたについて深い示唆を与えている。心は身体を変容させる力があることは、本書で紹介されたさまざまな研究によってすでに科学的に証明されているといってもいいが、これから必要なのはそれをふまえたうえで、身体を要素還元することによって発達してきたこれまでの医療の成果と、心からの治癒へのアプローチをどう融合していくか、ということだと思う。まず教育から、ではないだろうか。心に治癒力があるというということをその基本的なメカニズムとともにすべての人が学ぶべきだ。それが、信頼性の低い代替医療の蔓延をふせぐことにもなり、一方で人にとって有益なプラセボ効果ですら医療として認めないという狭量でドグマチックな医師や、人をとにかく薬漬けにすることに熱心な製薬会社の手から私たちの身体に対する主導権を取り戻すことにもなる。そして、ベンチャーの可能性。心の治癒力を高めるための偽薬やVRなどの分野は、シリコンバレーで流行のマインドフルネス瞑想よりもさらに市場として大きく、従来の医療とも馴染がよいのではないだろうか。「(科学的)根拠にもとづいた方法」で心と身体を調和させて生きていくためのさまざまな「入口」を見せてくれる、希望の書である。
本書はスポーツに限らず、人は脳内の意識と無意識をコントロールすることによって身体の機能や状態に影響を与えられることを実証するさまざまな実験や事例を紹介している。医療におけるプラセボは、偽薬やインチキ療法と結びつけられることも多かった。たとえば、「プラセボ以上の効果がない」というのは代替医療に対する典型的な批判である。しかし「プラセボ」、つまり「心を騙して病気と闘わせる、という驚くような方法」に効果があるとしたら、そしてそこに科学的根拠があるとしたらどうだろう。
『がんが自然に治る生き方』という本で、著者のケリー・ターナーは末期がんが寛解した事例が奇跡と言われるほどには少なくないことを知り、そうした逸脱事例を「たまたま幸運だった」ということですませてしまうことには倫理的な問題があるのではないかという問題意識で、劇的寛解をとげた人たちが共通で実践していたことは何であったかを調査している。ターナーの調査から、末期がんが自然寛解した患者が共通して実践していたことが9つ挙げられているが、そのうち7つが「こころ」に関連することだった。本書『「病は気から」を科学する』の著者、ジョー・マーチャントもプラセボに懐疑的な態度をとることが「身体の健康にかかわるある重要な要素」の見逃しにつながっているのではないか、という問題意識からこの本を書いたという。いまや西洋医学の伝統であったところの身体二元論への根本的な見直しがあらゆる方面から行われている。
本書はプラセボは病気の背後にある生理学的な状態を変えることはできないが、痛みの緩和と生活の質向上には大きな役割を果たすという。そうした「効力」こそが「プラセボの有効成分」である、と著者は指摘する。プラセボは、間違いなく「効く」のだ。患者にそれが本来の薬ではなく「プラセボである」ということを正直に伝えても、それを飲んだ患者はなんの治療も受けなかった患者より著しい回復を見せたという。面白いのは、プラセボの効き方は種類によって異なり、効き目は患者、病気、文化によって変化するという点だ。治療が大げさであるればあるほど、高価であればあるほど、プラセボ効果は高くなることもわかっている。プラセボが心の薬であるからこそこうした揺らぎが生じるのだろう。今後研究が進めば、患者の性格や生育環境などによって、より効きやすいプラセボを特定することも可能になってくるのではないか。
また、人に手渡してもらったプラセボは、自分で飲むプラセボよりも効くらしい。自分のために処方してもらったという安心感からそうなるというのだ。代替医療においては医師と患者のやりとりが標準治療の場合よりもより濃密になる傾向がある。プラセボはノセボ効果(ある種の恐怖心、不安から実際に体に現われる症状)を取り除くことによって機能する場合があるらしいが、代替医療が標準的な西洋医療と比べてその効果を科学的に裏打ちされていないにもかかわらず一定の効果を出し、人をひきつけているとしたら、それは医師との信頼関係がより強いからではないだろうか。代替医療を選ぶ患者はときに家族や主治医の反対を押し切り、自分の意志でその治療者にたどり着いていることが多いから。標準治療の現場においても、乳房生検や腎臓および血管の措置を受けた患者のうちコンフォートトークを受けた患者が必要とした鎮痛剤は非常に少なくて、合併症もずっと少ないという。緩和ケアを受けたがん患者のQOLはそうでない患者よりずっと高く、平均生存率も高くなったという。こういう研究結果が明らかになると、緩和ケアというのは生存の望みのない患者だけのものではないような気がしてくる。腰痛でも風邪でも体調が崩れると気弱になったり気分がふさいだりするものだ。その状態をとりのぞくだけで極力薬の頼らず回復がみこめるとしたらこれほどいいことはないだろう。末期がんの患者の場合はなおさらだ、生活の質を最大限に高めることに焦点を絞り、最後まで抗がん剤にしがみつくことなくそれ以外の支援を受けながら生きるほうが、「治療と希望を同一視して」して抗がん剤を繰り返し受けるよりも結果として長く生きる可能性が高い、ということはもう、ほとんど疑いの余地がないことなのではないだろうか。一回目の抗がん剤が強力なプラセボとして効くかもしれない、ということは否定できないにしても、おそらく二回、三回と繰り返していくと、プラセボによる+よりも副作用によるマイナスのほうが大きくなってくるのだろう。
最近読んだ『野戦病院でヒトラーに何があったのか』(ベルンハルト・ホルストマン著)という本で、ヒトラーを催眠療法でヒステリー性の失明から救ったという医師の話が出てくる。当時、催眠術はジークムント・フロイトやミルトン・エリクソンをはじめとする精神分析医が実践していた。最近では、その催眠療法を過敏性腸症候群(IBS)の治療に使っているケースがあるそうだ。IBSの原因のひとつが開腹手術であるという。であれば、非侵襲的な催眠療法はまったく理にかなっている。催眠療法はまた、ヴァーチャルリアリティの技術を使って熱傷患者の痛みを和らげる際に、その効果を持続させるための暗示にも使われている。著者は「VRは医学界の態度に変化を起こすほど強力なものになるかもしれない」しているが、それだけで毎年15,000人(ヘロインとコカインを合わせた死亡数より多い)も犠牲になっている処方箋の過剰摂取に歯止めがかかることになろう。もっとも、製薬会社は薬がいらなくなる技術の臨床実験にはビタ一文払わないだろうが。
ストレスは免疫反応を抑えたり、老化を早めたり、人体にときに致死的な影響を与えるということが最近わかってきているが「子ども時代の環境はその後の人生におけるストレスへの感受性に影響を及ぼす」という本書の指摘はあまり知られていないのではないか。しかも「どんなふうに年老いていくのかは人生の初期に決まる」というのだから聞き捨てならない。ストレスは脳の配線を物理的に変えてしまうので、慢性的にストレスにさらされていると脳の報酬回路にも悪影響を与え、否定的な思考パターンが定着してしまうという。慢性的にストレスにさらされている人たちは、そうでない人にとっては何でもないことでも大きなストレスになる。子ども時代に逆境にさらされると脳がストレスに敏感になるだけでなく、エピジェネテイクスによって幼少期のトラウマが生理機能に組み込まれてのちに慢性疾患を引き起こす可能性を高くするという。社会的格差によってストレス耐性の格差もあるとすれば、ただでさえよりストレスフルな状態で生きている人たちには経済的支援以上のものが必要となってくるだろう。本書によれば外因的な問題(からくるストレス)は、通常人の体に直接的には害を及ぼさないという。本書によれば、人に害を及ぼすのはストレスフルな境遇への心理的反応であり、幸いにしてそれは人が制御できるものだ。受け止め方を変えるだけで、ストレスの多きな出来事から健康を守り、追い詰められた状況でもより能力を発揮できるという。その指摘から、ナチス収容所から帰還した心理学者、フランクルが書いた『夜と霧』を思い出した。フランクルはマインドフルネスのはしりかもしれない。
孤独(感)が健康に与える影響についての章で、何年か前に読んだ『孤独の科学』(ジョン・カシオポ著)も引用されていた。「誰かと一緒にいても、相手から気遣われていないと思えば、孤独を感じる。それは独りでいるのとおなじくらい危険」という話を読み、ここでもSNSなどのテクノロジーの出番があるのではないかと思った。義理の「いいね!」にもプラセボ効果くらいはあるのか。孤独が与える影響は、触れ合う人の数ではなく、孤立感の大きさによって決まるということもわかっている。「親しい友人がひとりかふたりだけでも、支えがあると感じれば、健康への影響を心配する必要はない」ということなので、むしろSNSなどやらずに。生身の友だちと丁寧に付き合った方がいいのか。そんなことを考えた。
心理状態を変えれば生理学的な変化がおこる、ということをさまざまな側面から書いてきた本書の最終章は「ルルドの奇跡」を扱っている。信仰心には生理学的影響があるようだが、心には奇跡的な治癒を起こす力はない、というのがここでの結論だけれども、「奇跡とは解釈なんです」「(ルルド)とは別の社会のモデルなのです」という、ルルド医療局局長のアレッサンドロ・デ・フランシスシスの言葉がこれからの科学との付き合い方、医療のありかたについて深い示唆を与えている。心は身体を変容させる力があることは、本書で紹介されたさまざまな研究によってすでに科学的に証明されているといってもいいが、これから必要なのはそれをふまえたうえで、身体を要素還元することによって発達してきたこれまでの医療の成果と、心からの治癒へのアプローチをどう融合していくか、ということだと思う。まず教育から、ではないだろうか。心に治癒力があるというということをその基本的なメカニズムとともにすべての人が学ぶべきだ。それが、信頼性の低い代替医療の蔓延をふせぐことにもなり、一方で人にとって有益なプラセボ効果ですら医療として認めないという狭量でドグマチックな医師や、人をとにかく薬漬けにすることに熱心な製薬会社の手から私たちの身体に対する主導権を取り戻すことにもなる。そして、ベンチャーの可能性。心の治癒力を高めるための偽薬やVRなどの分野は、シリコンバレーで流行のマインドフルネス瞑想よりもさらに市場として大きく、従来の医療とも馴染がよいのではないだろうか。「(科学的)根拠にもとづいた方法」で心と身体を調和させて生きていくためのさまざまな「入口」を見せてくれる、希望の書である。
2022年8月21日に日本でレビュー済み
宗教儀式はつながる体験、奇跡とは解釈、痛みを起こしているのは、問題のある関節そのものではなく、脳による関節の認識の仕方。なるほどと思うものばかり。