聞き書きだが、吉本さんの現在の問題に対しての姿勢がよく出ている本だ。
自身がからだが効かなくなったことに対しても、これまで「吉本思想」を尊敬している人に対しても(ホスピスの問題で)だめなものはダメとハッキリ主張していることが痛快だ。
その中で本質的なことをさらりと言っているところが吉本さんらしい。例えば、
〈ボランティアと呼ぶか無賃労働と呼ぶかどうかは別として、でも原則としては賃労働、働くことはからだの何かを消費することで何かの価値を生むということですから、その消耗に対しては対価を支払うのが当然だと思うし、これだけははずしてはいけないと思うんです。〉
最近、大学病院にいくと、何人もの年配のボランティアに出会う。それが非日常ではなく、日常的になるとごくふつうの労働ということになる。生き生きとやっているというより、業務をこなしているという顔つきの人が多い。どこか割り切れないものがあるのだろう。
その答えは、正当な対価が支払われてないということになる。感謝の言葉が対価の代わりとなっていたが、病院に来る人はそれほど好意的な人ばかりではないだろう。社会の役に立っているからという自負心だけではきつくなる。
ぼくらはこういう小さな矛盾によく出会うが、本質的に考えることまではしない。でも、現在は特にそういうことから考えていく必要があるということをあらためて教えられた。

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生涯現役 (新書y 163) 新書 – 2006/11/1
吉本 隆明
(著)
- 本の長さ203ページ
- 言語日本語
- 出版社洋泉社
- 発売日2006/11/1
- ISBN-104862480861
- ISBN-13978-4862480866
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登録情報
- 出版社 : 洋泉社 (2006/11/1)
- 発売日 : 2006/11/1
- 言語 : 日本語
- 新書 : 203ページ
- ISBN-10 : 4862480861
- ISBN-13 : 978-4862480866
- Amazon 売れ筋ランキング: - 535,588位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 55位新書y
- - 708位東洋哲学入門
- - 711位日本の思想(一般)関連書籍
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2007年3月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2010年5月13日に日本でレビュー済み
本書は、吉本さんの著書の中でもハズレの部類だが、
老いの入り口での見込み違いや、
自分の課題と宿題をヤリ続ける必要性などが語られている。
__________________________________________________________
技術力やテクニックへの過信。
「技術的に微分した答を積み上げていって、
精神性とか全体性にからむ何かに出会えると思ったら、
それは錯覚に過ぎないということになります。」
流行廃りも加速度的になったネット時代の今、
うっかり油断しないように、理念を持ち続けたい。
老いの入り口での見込み違いや、
自分の課題と宿題をヤリ続ける必要性などが語られている。
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技術力やテクニックへの過信。
「技術的に微分した答を積み上げていって、
精神性とか全体性にからむ何かに出会えると思ったら、
それは錯覚に過ぎないということになります。」
流行廃りも加速度的になったネット時代の今、
うっかり油断しないように、理念を持ち続けたい。
2006年11月9日に日本でレビュー済み
聞き書きなので、往年の著者の思想の晦渋な文章を知る者にとっては随分と読みやすくなったなぁという印象。
話は飛び飛びだし、今までの著書で語られている内容も多いが、逆にダイジェストとしても読めるのであり。
吉本ばななのパパというイメージも薄れているようだし、初心者はこのあたりから読み進めるべし。
話は飛び飛びだし、今までの著書で語られている内容も多いが、逆にダイジェストとしても読めるのであり。
吉本ばななのパパというイメージも薄れているようだし、初心者はこのあたりから読み進めるべし。
2014年7月20日に日本でレビュー済み
自分自身の老いを語ったインタビューを中心に新書にしたものです。
大変面白いです。特に小学生の時から英語を学ばせる事を批判しています。
大変面白いです。特に小学生の時から英語を学ばせる事を批判しています。
2007年1月31日に日本でレビュー済み
歳をとると、小さな大事件(?)が頻繁に起きる。たとえば腰が立たない。立たないから足が弱る。その勢いで手の動きまで鈍くなる…。老眼で新聞が遠のき、遠くなった耳のせいでテレビの音量をあげる。すると、途端に周りの顰蹙をかう…。誰にもいわないが、内臓は悲鳴の大合唱だ。胃や腸が重く、肝臓は不機嫌で、心臓も弱音ばかりはいている…。さらに糖尿なんかが重なると、もうお手上げ。筋肉と感覚器官と内臓とが、ホンキートンク・ピアノのようにはずれた音をたて出すのだから……。「老い」は、若いころの傲慢をあざ笑うかのようにとつぜん鴇の声を挙げる。意気込んで買い揃えた家電製品に、まるで仇打ちでもするような一斉の寿命がくるように。
そんなことはわかり切っているという人も多いだろう。しかし、こんな話を、公の場で、内側から出てくる声で聞くことは、残念ながらあまりない。本書から聞えてくる、老いた吉本さんの肉声は、単純で、素直で、あくまでも柔軟だ。そのことにまず驚くし、感動もする。この直球には、かつての球威こそないが、誰にでも開かれた、「人」としての可能性が込められているではないかと思う。思想の巨人・吉本隆明の、「大衆の原像」を地でいくような、「老い」への透徹したこだわり、「生涯現役」への衒いのない意欲。そこに、思想を営んできた彼の「肉体」そのものへの愛惜を感じる人も多いのではないか。介護しなければいけない人を抱える我が身にとっては、この肉声がどんなに貴重か、この連続した生がどんなに勇気を与えてくれるか、言っても言っても言い足りないような気がした。
そんなことはわかり切っているという人も多いだろう。しかし、こんな話を、公の場で、内側から出てくる声で聞くことは、残念ながらあまりない。本書から聞えてくる、老いた吉本さんの肉声は、単純で、素直で、あくまでも柔軟だ。そのことにまず驚くし、感動もする。この直球には、かつての球威こそないが、誰にでも開かれた、「人」としての可能性が込められているではないかと思う。思想の巨人・吉本隆明の、「大衆の原像」を地でいくような、「老い」への透徹したこだわり、「生涯現役」への衒いのない意欲。そこに、思想を営んできた彼の「肉体」そのものへの愛惜を感じる人も多いのではないか。介護しなければいけない人を抱える我が身にとっては、この肉声がどんなに貴重か、この連続した生がどんなに勇気を与えてくれるか、言っても言っても言い足りないような気がした。