昭和２７年、１９５２年これまで公表を許されなかった、原爆記録映画、原爆記録写真が公開された。アメリカ占領時代が沖縄を除き終わったのだ。原爆写真を特集した、アサヒグラフは大きな衝撃を与え、増刷された。
原爆漫画が出たのは、昭和３０年代よりあとがほとんどだった。それより前に原水爆の漫画を書いて居たのは手塚治虫で、関心が広い作家だったのである。原爆漫画といっても、発表の舞台は貸本漫画、少女漫画雑誌、雑誌の付録などまちまちであり、それをまとめて読もうとすれば国会図書館や数少ない専門マンガ図書館に出かける以外には無かった。貸本漫画は一冊数万円の市価というものも珍しくなく、復刻本も何がいつ出るのか分からず、運が頼りだった。
一冊３０００円位もするのは、小中学生が小遣いで気軽に買うには高価であるが、ベストセラーの小説に比べれば、それだけの値打ちがあると思う。収録作家のうち渡二十四という作家のものは、雑誌ガロに掲載されたものであるが、消息の分からない作家だとある。動物の出る場面、大構図の多用、荒々しいタッチからすれば、赤目プロに近い作家のようにも思える。絵はうまく見えないがデッサンはしっかりしている。渡という姓も、白土三平の漫画作品ワタリを連想する。初期のガロの柱がカムイ伝だったことからも、そう考える。謎の作家を一名加えるなど、好奇心をそそられる。但し、原水爆表象の云々と帯にある割には、原爆漫画の年表位付けてほしかった。だが、それはあまり見たことがなく、無理なことだったかもしれない。
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