「・・・ジャズオルガンならジミー・スミスだろうということになりオファーしたという。パリにギターのクェンティン・ウォーレンとドラムのビリー・ハートと共にやってきて、映像を見ながらのアドリブ演奏というマイルスの"死刑台のエレベーター"方式で、わずか一晩でレコーディングされている・・・」←以上、国内盤CDライナーから無断転載。※尚「帰ってきたギャング」の原題" La Metamorphose des Cloportes "を直訳すると"変態ダンゴ虫"
という訳で、一連のレギュラー作品とは違って綿密なリハーサルもなく「ハイ、一丁上がり」てな具合にラフでシンプルで切れ味抜群の演奏が次から次へと飛び出す仕掛けだ。冒頭#1の大ブルースが終わると、(映画スコアという事もあって)シリアスな心理描写をハモンドに置き換えた音が随所にはめ込まれていて、これがスミスさんにしては大胆過激でスペーシーでアヴァンギャルドなのよ。その合間に愛のテーマを甘~く挿入する演出もニクイ。リアルで美しいハモンドを再現するステジオ録音も秀逸。ちなみにその録音された時期が1965年という事でラリー・ヤングを引き合いに出したくなるのが人情だが、御大もニュージャズを演ろうと思えば楽々速効対応する事実に嬉しくなるのだった。勿論、全てがフリーな方向に走っている訳ではないが、レギュラー作品では味わえない異様な緊張感がレアなのも確か。じゃあどうしてお前は★4つなんだ!と突っ込まれそうですが、映画スコアという性格上、テーマのヴァリエーション的ナンバーが目立つのも事実で、その辺りがジャズ作品としての完成度を期待する向きには不満だと思ったからです。トータルの演奏時間も約37分とやや短いし。※尚、スミスさんによる映画音楽カヴァー(ヴァーヴ原盤)がボーナストラックとして5曲追加されている。
■ Jimmy Smith (org) Quentin Jackson (g) William Hart (d)
Recorded in Paris on 1 & 2 June 1965