この本の元になったものは、4人の精神分析医がドイツの敗戦間近、ヒトラーが死ぬ二年前の1943年にそれまでに集められた様々な資料(ヒトラー・ソース・オブ・ブックと呼ばれている)を評価・分類・解釈し、
“A PSYCHOLOGICAL ANALYSIS OF ADOLPH HITLER: HIS LIFE AND LEGEND by Walter C. Langer”
として纏めたレポート。
CIAの前身であるOSS(Office of Strategic Services)のウイリアム・ジョセフ・ドノヴァン(OSSの創設者・初代長官。「アメリカ情報機関の父」とも呼ばれている)の依頼によるもの。なお1943年にはすでにナチスによるユダヤ人虐殺の情報は米国にも入っていた。1968年に国家のマル秘扱いが解かれ、
“Walter C. Langer(1972).The Mind of Adolf Hitler−the secret wartime report. Basic Books Inc.”
として発表された。
内容をごく簡単にまとめると、『ヒトラーは精神病質の二重人格者であり、ジキルとハイド、総統とヒトラー(オリジナル人格で同情心に満ち決断力に欠け涙もろい)を内面に持ち、母親と父親に対する無意識をそれぞれドイツとオーストリア・ユダヤ人に転移していた』ということになろうか。
我々がヒトラーに興味を惹かれるのは通常、彼の並外れた独裁性と残虐性なのであるが、それと同時に実は、彼の持つ悲劇性によるのかも知れない。
内容は、
『序』
『第一章ヒトラーの信ずる自我像』
『第二章ドイツ国民の知るヒトラー』
『第三章部下の知るヒトラー』
『第四章ヒトラー自身の知るヒトラー』
『第五章ヒトラー−心理的分析とその再構成−』
『第六章ヒトラーの行動を予想する』
『あとがき』
『訳者あとがき』
『序』の中でランガー自身がこのレポートの限界について述べている。また『あとがき』の中でロバート・G・L・ウエイト(歴史学者で「ナチズムの前衛」の著者)が、ヒトラーを知るためには「わが闘争」は必読書であるが、ランガー以上に深く読み解いた人間はいなかったことと、レポート作成時点での解釈の誤りを指摘している。
概ねご存じの方は『序』、『第五章』、『第六章』、『あとがき』、『訳者あとがき』を読むだけでも宜しいのではないかと思います。
ヒトラーがドイツで一掃した精神分析によってヒトラー自身が分析されてしまったこともミソ。そして『第六章』では43年以降のヒトラーの行動をある程度正確に予想している。
決して学術的で難解なものではなく、ヒトラーを理解するための良書だと思います。

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ヒトラーの心: 米国戦時秘密報告 ペーパーバック – 1974/1/1
ウォルター ランガー
(著),
ガース暢子
(翻訳)
- 本の長さ302ページ
- 言語日本語
- 出版社平凡社
- 発売日1974/1/1
- ISBN-104582720013
- ISBN-13978-4582720013
登録情報
- 出版社 : 平凡社 (1974/1/1)
- 発売日 : 1974/1/1
- 言語 : 日本語
- ペーパーバック : 302ページ
- ISBN-10 : 4582720013
- ISBN-13 : 978-4582720013
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