ソクラテスの哲学の意義を時代的背景と変遷から捉えた好著。
プラトンが「ソクラテスの弁明」・「クリトン」でソクラテスの政治哲学や死生観をその芸術的筆致により活写してみせたのとは対称的に、本書は、ギリシア哲学におけるソクラテスの思想革命の本質と意義を、時代背景を踏まえつつ、彼以前・ソクラテス本人・彼の高名な弟子二人による思想的継承と断絶の変遷を俯瞰することによって明らかにしようと試みた古典学者コンフォード博士による野心的かつ渾身の一冊。
凡庸な私には敷居の高いソクラテスではあるが、本書は彼の思想革命を卑属化することなく簡明に描き出している。
さらに本書は1932年における博士の講演をまとめたものであるが、同年ドイツでヒトラー率いるナチス党が第一党となり翌年独裁政権をとるなど、欧州全体が世界大戦へ傾斜していった当時の社会背景を考えると小著ながらその歴史的意義も大きい。
また、訳者に山田道夫氏を得て極めて平易に読み進めることができるのはありがたい。
ソクラテスを理解する上で一度は手にしておきたい一冊だ。

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ソクラテス以前以後 (岩波文庫 青 683-1) 文庫 – 1995/12/18
F.M.コンフォード
(著),
山田 道夫
(翻訳)
ソクラテスという天才がいかなる背景から真に新しく普遍的な思想の地平を開いたのか,そしてその精神はいかに継承されたのか――イギリスの代表的な古典学者F.M.コーンフォード(一八七四―一九四三)が,明快で面白く,見事な統一性をそなえた思想史の物語を語って聞かせる.西洋古典学,ギリシア思想史の格好の入門書.
- 本の長さ160ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日1995/12/18
- ISBN-104003368312
- ISBN-13978-4003368312
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登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (1995/12/18)
- 発売日 : 1995/12/18
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 160ページ
- ISBN-10 : 4003368312
- ISBN-13 : 978-4003368312
- Amazon 売れ筋ランキング: - 441,959位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 249位古代・中世・ルネサンスの思想
- - 2,788位岩波文庫
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2018年10月11日に日本でレビュー済み
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エーゲ海沿岸(現・トルコ)に起こった自然学と、知への恋愛として自身の思索(ディアレクティケー=問答法)を「恋愛の情+知」という意味で造語(プロソピア)したソクラテスの営みは、インドのブッダ(生年はソクラテスの数年後でネパールに生まれた)の思想と重なり、二人の死後紀元前3世紀には、活発な交流が起き、多くのギリシャ王たちは仏教に帰依し、深い対話の記録も残されています。エーゲ海沿岸のギリシャ人とインド人は、ともにアーリア人と現地人の混血であることも親近性の理由と思われます。ついでに言えば、紀元前5世紀にう生まれたソクラテス(アテネ)とブッダ(ネパール・インド)と老子(中国)は、超越神を置かず、人間の一人ひとりの意識につく【根源的な実存論】です。
にもかかわらず、この本では、実存論的な書き出しはとても優れていますが、次第にキリスト教との同一性へと論はメタバシスを起こし、遂には、ソクラテスを含めてプラトン、アリストテレスもキリスト誕生後に生まれていたならば、キリスト教の教父になっただろう、と言われます。水と油を一緒にする!
確かにアリストテレスの「形而上学」第1巻の「自然学」では、すべての自然の変化には、四種類の原因があり、その重要な一つが「目的因」とされています(雨が降るのは穀物を成長させる目的があるからだ)ので、後のキリスト教が、唯一神(超越神)への信仰=神はそれぞれの目的をもって世界を創造したとする「物語」、を理論化するにあたり、アリストテレスの学問を換骨奪胎して用いたのは事実です。目的因という思想は、神の世界創造という物語にはうまく嵌ります。
しかし、著者がいうプラトンにも目的因があったというのは、後期、プラトンがピタゴラスに影響されて神秘思想になり、ソクラテス出自のイデア論(現代的に言えば「唯名論」で言語学の常識)を否定してから以後を推論しての著者独自の判断で、それには普遍性がありません。何の根拠も示さずにプラトンの目的因!?なる説を入れ込むのには呆れます。
兎にも角にも、超越神という思想とは無縁(「饗宴」や「パイドロス「」で明白)で、人間性の捉え方も性愛を含む恋愛の神である「エロース」をアカデメイアの学園の主祭神としたプラトン思想=善美のイデアを求める動力源がエロースである、と キリスト教思想(神学)を一つにしようとする凄まじいばかりの我田引水をする欧米人(英国のケンブリッジ大学の碩学)の我の強さには驚きを禁じえません。
それを全面的によしとする日本の学者は、欧米思想に毒されています。古代エーゲ海文明を西ヨーロッパに直結させたのは欧州人の詐術=ウソとしか言えませんが、わが国は、明治維新後に福沢諭吉の欧化路線により、欧州から学問のすべてを輸入したのですから、どうしてもキリスト教のイデオロギーに不感症になるのでしょう。それは今後の学問の重大な課題であることは確かです。
にもかかわらず、この本では、実存論的な書き出しはとても優れていますが、次第にキリスト教との同一性へと論はメタバシスを起こし、遂には、ソクラテスを含めてプラトン、アリストテレスもキリスト誕生後に生まれていたならば、キリスト教の教父になっただろう、と言われます。水と油を一緒にする!
確かにアリストテレスの「形而上学」第1巻の「自然学」では、すべての自然の変化には、四種類の原因があり、その重要な一つが「目的因」とされています(雨が降るのは穀物を成長させる目的があるからだ)ので、後のキリスト教が、唯一神(超越神)への信仰=神はそれぞれの目的をもって世界を創造したとする「物語」、を理論化するにあたり、アリストテレスの学問を換骨奪胎して用いたのは事実です。目的因という思想は、神の世界創造という物語にはうまく嵌ります。
しかし、著者がいうプラトンにも目的因があったというのは、後期、プラトンがピタゴラスに影響されて神秘思想になり、ソクラテス出自のイデア論(現代的に言えば「唯名論」で言語学の常識)を否定してから以後を推論しての著者独自の判断で、それには普遍性がありません。何の根拠も示さずにプラトンの目的因!?なる説を入れ込むのには呆れます。
兎にも角にも、超越神という思想とは無縁(「饗宴」や「パイドロス「」で明白)で、人間性の捉え方も性愛を含む恋愛の神である「エロース」をアカデメイアの学園の主祭神としたプラトン思想=善美のイデアを求める動力源がエロースである、と キリスト教思想(神学)を一つにしようとする凄まじいばかりの我田引水をする欧米人(英国のケンブリッジ大学の碩学)の我の強さには驚きを禁じえません。
それを全面的によしとする日本の学者は、欧米思想に毒されています。古代エーゲ海文明を西ヨーロッパに直結させたのは欧州人の詐術=ウソとしか言えませんが、わが国は、明治維新後に福沢諭吉の欧化路線により、欧州から学問のすべてを輸入したのですから、どうしてもキリスト教のイデオロギーに不感症になるのでしょう。それは今後の学問の重大な課題であることは確かです。
2004年2月1日に日本でレビュー済み
ソクラテス、プラトン、アリストテレス。この、名前だけはよく聞く3人の哲学者たちのこと―知りたいけどどこから入ればいいのかわからない。この本は、そのとっかかりになってくれます。とにかくわかりやすくて、まるで短篇小説を読むみたいにスラスラ読めてしまう・・で、この本の後でもっと小難しそうな本を見てみると・・・・おおっ?!おおおっ!となる。こういう入門書がわたしたちは欲しかったのよ。もっともっと読まれていい名著。
2009年8月13日に日本でレビュー済み
毎日忙しく仕事をしていると、人生の目的が、商売人なら富の集積、医者なら患者の治療、軍人なら敵国への攻撃、科学者なら自然摂理の解明がすべてになる。しかし、人間の本当の生きる目的を考えようと主張したのが、ソクラテスであり、哲学の始まりである。それ以前は、教養や修辞学や弁論のための哲学だった。
ソクラテスの弟子は高名な人が多く、プラトンは内向性の人で、頭の中で想像することが得意であった。反対にアリストテレスは経験主義であり、片っ端から調べ上げ、実際に存在しない物(イデア)については、信じることが無く、最終的にプラトンからは離れていった。
ソクラテス以前以後との題名ですが、説明されているのはその3人です。
ソクラテスの弟子は高名な人が多く、プラトンは内向性の人で、頭の中で想像することが得意であった。反対にアリストテレスは経験主義であり、片っ端から調べ上げ、実際に存在しない物(イデア)については、信じることが無く、最終的にプラトンからは離れていった。
ソクラテス以前以後との題名ですが、説明されているのはその3人です。
2007年11月23日に日本でレビュー済み
薄い本だが中身は濃い。
ソクラテス以前のギリシア世界でどのような知的活動の蓄積があったのかがコンパクトに分かる。
ソクラテス,プラトン,アリストテレスの3人の思考が周囲の環境とどのようにかかわっていたかが簡潔に説明されている。
・ソクラテスの活動が若者の悩み,疑問と強く関わっていたこと。
・プラトンにとって,若いときに体験した政治的衝撃(ソクラテスの死刑と政治闘争)の影響が大きかったこと
・アリストテレスがアカデミアの後継者になれなかったこととプラトンのイデアの克服
ソクラテス以前のギリシア世界でどのような知的活動の蓄積があったのかがコンパクトに分かる。
ソクラテス,プラトン,アリストテレスの3人の思考が周囲の環境とどのようにかかわっていたかが簡潔に説明されている。
・ソクラテスの活動が若者の悩み,疑問と強く関わっていたこと。
・プラトンにとって,若いときに体験した政治的衝撃(ソクラテスの死刑と政治闘争)の影響が大きかったこと
・アリストテレスがアカデミアの後継者になれなかったこととプラトンのイデアの克服