貧乏や身分制度、戦争の傷跡がまだ色濃く影を落とす時代、
でも悩みや葛藤、いさかいや軋轢さえも“人間の姿”をしていた時代に材を取ることの多い昼帯ドラマに、いちばんふさわしい音を紡ぎ出すことのできる稀有な作曲家のひとりが寺嶋民哉さんだと思います。
酒井美紀さんが演じたヒロイン・純子(すみこ)のキャラを考慮してか、これまでの同枠での担当作(『真珠夫人』『愛のソレア』『新・風のロンド』)に比べてデモーニッシュな情念感は控えめですが、善良に、健気に生きる人々の、生の息吹をうつすような素朴で清冽な音、とりわけいくつかの曲で散りばめられるケーナとリコーダーの音色が心地よい。
2006年10月期のこの作品以降、昼帯では寺嶋さんの音楽とご無沙汰になっていますが、またぜひ担当していただきたいものです。
…と言うより、“寺嶋節(ぶし)”の似合う昼帯ドラマが制作されてほしいと思います。