本書は、主に北条氏綱の武蔵進出から上杉謙信が病死するまでの、関東地方の情勢
を丁寧に解説しています。
この本では、上杉氏・北条氏が争った関東戦国時代の真の主役は、小さな国衆達で
あり、上杉氏・北条氏は百戦錬磨の国衆相手に手玉にとられ四苦八苦しながら自分
達の勢力拡大を試みる姿が記されています。
戦国もののドラマ・ゲーム・アニメ・漫画では、戦国大名と有名武将が絶対的な力
をもっていたかのように表現されていますが、それは真っ向から否定されます。
関東地方の小さな国衆がたくさん出てきます。
例えば長尾氏だけでも、足利長尾・白井長尾・惣社長尾、3氏も出てきますので
読んでいるうちに、位置関係・敵対関係などが複雑になってきます。
昨日の敵は今日の友。敵の敵は味方。こんな単語が飛び交うがごとく、
とにかく勢力地図がころころと変わります。後半になると、第三勢力として佐竹氏
が台頭してきます。
今のウクライナ・中東情勢も複雑怪奇ですが、そんなレベルじゃありません。
たまに、地図をもちいての解説もあるのですが、足らないです。もっとこまめに
地図を使って解説してくれると分かり易くて、読みやすくなるのにと思いました。
ただ、読み手に詳しく関東の戦国時代の様子を伝えたいという著者様の思いが伝
わってくる丁寧な解説は素晴らしいと思います。
北条と上杉が外交交渉を行う場合でも、敵国との仲介役を国衆が務める必要があり
少しづつ段取りを進めていかなければならない様子が記されていたのには、戦国時
代も現代もあまり違いはないのだなと驚きました。
また、本書を読みながら、上杉謙信も北条親子も胃に穴があくほどのストレスを
抱えて国衆に対応していたんだなと想像でき、少しおもしろおかしくも思えました。
戦国時代が好きな方であれば、とても楽しく読むことのできるおすすめの1冊です。
最後に参考までに目次を記しておきます。本書購入の際の参考に頂ければ幸いです。
プロローグ 「日本の副将軍」対「関東の副将軍」
第一章 北条氏綱と両上杉氏の抗争
第二章 北条氏康と両上杉氏の滅亡・没落
第三章 上杉謙信はなぜ関東に襲来したのか
第四章 「国衆」が左右する関東戦国史
第五章 国衆を困惑させた「越相同盟」
第六章 信玄の猛攻と北条氏の危機
第七章 北関東の攻防戦と謙信の死
エピローグ 消滅した「関東の副将軍」
全239Pです。
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戦国関東の覇権戦争 (歴史新書y) 新書 – 2011/6/4
黒田 基樹
(著)
- 本の長さ239ページ
- 言語日本語
- 出版社洋泉社
- 発売日2011/6/4
- ISBN-104862487645
- ISBN-13978-4862487643
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登録情報
- 出版社 : 洋泉社 (2011/6/4)
- 発売日 : 2011/6/4
- 言語 : 日本語
- 新書 : 239ページ
- ISBN-10 : 4862487645
- ISBN-13 : 978-4862487643
- Amazon 売れ筋ランキング: - 487,151位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
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2014年8月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2011年7月3日に日本でレビュー済み
関東地方における北条氏と山内・扇谷上杉氏の対立から、
越後上杉・武田・北条など同盟関係が目まぐるしく入れ替わる
戦国大名どうしの対立に至るまでが、克明に解説されている。
そのたびに関東の中小の「国衆」は周辺の動向を見ながら
優勢な側に付き、右顧左眄を余儀なくされる。
謙信の関東遠征は義のためだけでなく、
自国の飢饉対策と他国での略奪による食糧確保、さらには口減らしまでの
意図があったのではないかとする洞察は現実的である。
著者が言うように、
鎌倉公方や関東管領といった室町時代の旧い権威が残存する下で、
戦国大名がそれに頼りながらも徐々にそれを払拭していき、
次第に独自の社会・政治体制を領国に構築していく一例として
関東地方の争乱は非常に典型的であると言える。
越後上杉・武田・北条など同盟関係が目まぐるしく入れ替わる
戦国大名どうしの対立に至るまでが、克明に解説されている。
そのたびに関東の中小の「国衆」は周辺の動向を見ながら
優勢な側に付き、右顧左眄を余儀なくされる。
謙信の関東遠征は義のためだけでなく、
自国の飢饉対策と他国での略奪による食糧確保、さらには口減らしまでの
意図があったのではないかとする洞察は現実的である。
著者が言うように、
鎌倉公方や関東管領といった室町時代の旧い権威が残存する下で、
戦国大名がそれに頼りながらも徐々にそれを払拭していき、
次第に独自の社会・政治体制を領国に構築していく一例として
関東地方の争乱は非常に典型的であると言える。
2013年7月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
に興味がある私は、それを専攻にしている著者の本はかなり持っていますが、この本はその中でも一番有名な北条対上杉の長きにわたる戦いの歴史を中心に論じられているので、非常に面白かったです。北条氏綱、氏康、あるいは上杉謙信に興味をお持ちの方にはお奨めします。逆に上杉との戦いに突入したのが晩年であるため、北条氏の始祖である早雲については最初の頃に少し出てくるだけなので、早雲ファンにはその点ご注意が必要でしょう。
2012年3月4日に日本でレビュー済み
関東の戦国時代は応仁の乱よりさらに10年早く関東公方家と関東管領家の対立による享徳の乱によって始まっていた。さらに今川氏親の舅にして後見人である伊勢盛時(早雲)の伊豆進入を経て本格化する、北条3代氏康は河越夜戦により、鎌倉公方家、関東管領家の権威、武力を大きくそぎ、版図を大きく広げた。関東における対北条の大勢力は常北南奥の佐竹、南総の里見くらいになってしまったのだ、
しかし、そこに関東管領家山内上杉の名跡を継いだ長尾景虎があらわれる。毎年のように越後から下野を経て「異国の兇徒」北条を撃つため関東における正統を唱え南下してくるのだ、そのたびに関東の国衆(大規模領主)は上杉についたり北条についたりと右往左往する。
謙信といえば戦国最強、義の武将というイメージで有名だが、北条側、関東の小領主、農民からみると毎年来る天災のようなものだったのだろう。
関東の戦国史は入り組んでいてわかりにくいのと最大の大名北条氏がほとんどドラマ化されていない(しかもでるときは篭城した挙句秀吉に一撃でやられるときだけ)ので一般になじみがない。しかし現在世界最大の都市圏(東京圏)の戦国史がこの一冊で大づかみできるので歴史好き、特に戦国史好きは必読の一冊ではないだろうか。
しかし、そこに関東管領家山内上杉の名跡を継いだ長尾景虎があらわれる。毎年のように越後から下野を経て「異国の兇徒」北条を撃つため関東における正統を唱え南下してくるのだ、そのたびに関東の国衆(大規模領主)は上杉についたり北条についたりと右往左往する。
謙信といえば戦国最強、義の武将というイメージで有名だが、北条側、関東の小領主、農民からみると毎年来る天災のようなものだったのだろう。
関東の戦国史は入り組んでいてわかりにくいのと最大の大名北条氏がほとんどドラマ化されていない(しかもでるときは篭城した挙句秀吉に一撃でやられるときだけ)ので一般になじみがない。しかし現在世界最大の都市圏(東京圏)の戦国史がこの一冊で大づかみできるので歴史好き、特に戦国史好きは必読の一冊ではないだろうか。
2012年1月17日に日本でレビュー済み
「そうだったのかーっ!」の連続だった感じ。
非常に面白かった。
関東の戦国時代というとなんとなく、武田と上杉の戦いがメインで、
その狭間に真田家みたいな弱小の家が立ち回っていて・・・・・・
という認識だった。
北条氏については、ついつい滅亡話がメインになってしまって、
その前のことは今川や武田と絡んだときだけ思い出すくらいだった。
なので、戦国関東の覇権戦争について
「北条VS上杉」としているタイトルに驚きながら読んだのだが、
まず思ったことは
関東管領などの室町幕府の公的権力について
ちゃんとわかっていないと戦国時代はきちんと理解できない、ということ。
とくに関東管領については、いろいろ驚いた。
非常に面白かった。
関東の戦国時代というとなんとなく、武田と上杉の戦いがメインで、
その狭間に真田家みたいな弱小の家が立ち回っていて・・・・・・
という認識だった。
北条氏については、ついつい滅亡話がメインになってしまって、
その前のことは今川や武田と絡んだときだけ思い出すくらいだった。
なので、戦国関東の覇権戦争について
「北条VS上杉」としているタイトルに驚きながら読んだのだが、
まず思ったことは
関東管領などの室町幕府の公的権力について
ちゃんとわかっていないと戦国時代はきちんと理解できない、ということ。
とくに関東管領については、いろいろ驚いた。
2011年7月9日に日本でレビュー済み
華やかな戦国スターが多い近畿や中部、伊達家や毛利家に比べ
いまいち地味でわかりづらかった関東の戦国史が良くわかる本です。
後北条氏が流浪の油売りなどではなくキチンとした武家とか
よく知られているはずなのにいまいち普及していない事実なども
解説に加え、戦国時代の関東の、産業革命期の欧州を彷彿とさせるような
駆け引きの世界に思いを寄せる事が出来るようになります。
いまいち地味でわかりづらかった関東の戦国史が良くわかる本です。
後北条氏が流浪の油売りなどではなくキチンとした武家とか
よく知られているはずなのにいまいち普及していない事実なども
解説に加え、戦国時代の関東の、産業革命期の欧州を彷彿とさせるような
駆け引きの世界に思いを寄せる事が出来るようになります。
2012年4月4日に日本でレビュー済み
07年の大河ドラマ風林火山で、信玄と謙信だけでなく、北条氏と今川氏の動向、そして謙信の関東侵攻に結構時間を割いていたが、甲相駿越のパワー・ゲームに関心を持った人なら本書は必読。本書は諸大名の戦争・和睦が繰り返される様を、特に北条氏対上杉氏(前半は関東管領山内上杉氏及び扇谷上杉氏、後半は山内の家督を継いだ越後・上杉謙信)の関東支配をめぐる抗争を軸に述べ、戦国大名の外交方針の転換によって国衆が右往左往するように見えて、実は戦国大名の行動が国衆の意向によって規定された戦国時代の実相を教えてくれる。
著者は戦国時代の関東政治史に関する多量の書状等史料に目を通しているようで、大名・国衆の本音とタテマエがよくわかる。数多の関東諸勢力の興亡を新書1冊でかなり詳しく把握できるだけでも優れものだ。
北条氏対上杉氏の55年の戦いは正当な関東支配者・関東管領はどちらかという政治イデオロギーの衣を装う。その両者が一時は同盟し、また争うようになるのだから、国衆は振りまわされる。しかし、国衆は対抗勢力との抗争に有利となるように北条または上杉を都合よく選んでおり、上杉も北条も国衆をまめに支援しなければならない。それを怠ったらたちまち離反される。時に国衆は大名間の外交を仲立ちする。なるほど、戦国大名の行動は国衆の意向に規定されている。
国衆と戦国大名との違い、現代に至る地域の中心が作られたこと、さらには「御国」のために百姓を徴兵する論理が作られたことは、戦国時代の理解を深いものにする。また、1560年以降謙信は毎年のように、それも冬に関東に在陣していたとは、政治的理由だけでなく経済的理由もあったのだろう。
一点望むとすれば、似た名前の同族の人物が多く、それら人物があるときは北条方、別のときは上杉方として登場し、少々混乱するので、系図は巻末にまとめる、年表をつける、江戸太田氏と岩附太田氏の関係はもっと早めに説明する等の工夫が欲しかった。
著者は戦国時代の関東政治史に関する多量の書状等史料に目を通しているようで、大名・国衆の本音とタテマエがよくわかる。数多の関東諸勢力の興亡を新書1冊でかなり詳しく把握できるだけでも優れものだ。
北条氏対上杉氏の55年の戦いは正当な関東支配者・関東管領はどちらかという政治イデオロギーの衣を装う。その両者が一時は同盟し、また争うようになるのだから、国衆は振りまわされる。しかし、国衆は対抗勢力との抗争に有利となるように北条または上杉を都合よく選んでおり、上杉も北条も国衆をまめに支援しなければならない。それを怠ったらたちまち離反される。時に国衆は大名間の外交を仲立ちする。なるほど、戦国大名の行動は国衆の意向に規定されている。
国衆と戦国大名との違い、現代に至る地域の中心が作られたこと、さらには「御国」のために百姓を徴兵する論理が作られたことは、戦国時代の理解を深いものにする。また、1560年以降謙信は毎年のように、それも冬に関東に在陣していたとは、政治的理由だけでなく経済的理由もあったのだろう。
一点望むとすれば、似た名前の同族の人物が多く、それら人物があるときは北条方、別のときは上杉方として登場し、少々混乱するので、系図は巻末にまとめる、年表をつける、江戸太田氏と岩附太田氏の関係はもっと早めに説明する等の工夫が欲しかった。
2011年6月16日に日本でレビュー済み
関東の戦国時代の政治史は難しい。
そんな人に手軽に学べる関東の戦国時代政治史のバイブルみたいなものです。
上杉・北条氏が好きな人はぜひおススメの一冊です。
特に国衆の動きを中心に書かれてるいるところは、面白いです。
成田氏や由良氏などの国衆が上杉・北条の両勢力にはさまれて必死に自立的に生きていこうとする姿は涙ものです。さらに上杉・北条両氏がこの国衆の動向に最新の注意を払って対応していたことがわかります。
これからの戦国時代研究は国衆が重要なキーワードですね。
こうした本が手軽に新書で読めるのはいいです。
そんな人に手軽に学べる関東の戦国時代政治史のバイブルみたいなものです。
上杉・北条氏が好きな人はぜひおススメの一冊です。
特に国衆の動きを中心に書かれてるいるところは、面白いです。
成田氏や由良氏などの国衆が上杉・北条の両勢力にはさまれて必死に自立的に生きていこうとする姿は涙ものです。さらに上杉・北条両氏がこの国衆の動向に最新の注意を払って対応していたことがわかります。
これからの戦国時代研究は国衆が重要なキーワードですね。
こうした本が手軽に新書で読めるのはいいです。