筆者がどうやって罪を償うか、そのことに真剣に対峙していることは理解できる。
また本として、長期刑務所で務める犯罪者たちのルポータジュとして非常に面白い。
筆者ほどの観察眼と知性がなければ成しえなかった本だ。
私にはこの人のような知性も自己鍛錬への情熱も気概もないなぁと思う。
あっという間に読んだ。本好きとしてはこの本が出版されたことに諸手をあげて歓迎したい。
だが読後、こう言いたくもなった。
不自然に頬をひきつらせながら嘲笑いたくなる。
「いい年こいたオッサンでありながらファザコンの上にナルシストめ」
引用される文章もどうだといわんばかりの著名な古典文学ばかりだ。
学歴がないことにコンプレックスでもあるのだろう。
権威に裏づけされた文章を引用する、すなわち自分の知性にも裏づけがされてあると言いたいのだ(こけおどし感は拭えないが)。
本当に文章・言葉に感銘を受ける人間であれば、引用があんなに著名すぎるものばかりには絶対にならない。
おまけに、やけに自然と出る、筆者が犯罪者を一般社会でもうまくやれると褒める場面。
犯罪者はこう言います。
「美達さんに言われると本気にしちゃうよ」
これって、遠回りな自分への賛美じゃないですか。犯罪者にも自分のIQの高さ・社会への高い適応能力・人を見る目がわかるという謙遜じみた自己の誇示じゃないですか。
私はこれが意図的ではないとは思えない。
もしこの文章が意図的でないならば、筆者の述べる彼の知性の高さが疑わしい。
そして笑い終わった後、私自身の加虐性にも気づかされる。
結局私はこの人に、自分が何ら被害を受けたわけでもない彼に、いかなる理由があろうと殺人を犯してしまったというこの男に、
良心の呵責に苦しみながら成長も一切ない闇のような日々を送る煉獄を味わって欲しいのだ。
私にそんな資格はあるのだろうか。
総じて、自分自身の歪さに気づかされる、良き本だと思う。

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人を殺すとはどういうことか―長期LB級刑務所・殺人犯の告白 (新潮文庫) 文庫 – 2011/10/28
美達 大和
(著)
私は殺人には償う術(すべ)はないと思っていますが、
それではどのように生きればいいのかについて、懊悩してきました…。
「殺人」という大罪は償えるのか。
人を二人殺めた著者は今、罪が重く刑期が十年以上の者が収容される
「LB級刑務所」に無期懲役囚として服役している。
十数年にわたる服役期間に自分の行為を反芻し、
贖罪とは何か、人の命を奪った身でどのように残りの人生を「生きる」べきかを考え続けてきた。
自身の半生と罪の意識、反省の欠片もない周囲の服役囚について考察した驚愕の獄中記。
著者の言葉
殺人者の人生というのは、一部のピースを欠いたジグソーパズルのようなものだと思います。
ピースが欠けている以上、完成はありませんが、それでも投げ出すことなく作っていかねばなりません。
そして、不完全な完成品を眺める度に、空白となったピースに思いを馳せ、忘れることなく暮らすことこそ、
殺人者の人生に必要な営為ではないかと思います。
(「はじめに」)
目次より
はじめに
第一章 二つの殺人事件を起こすまで
在日韓国人の父、純和風の母/年収は億単位/最初の事件/二つ目の事件/逮捕、そして裁判/有意義だった弁護士との対話/鑑定された私の性格/被害者の母親の証言/検察の論告で衝撃を受ける/意見陳述/無期懲役で確定
第二章 長期刑務所の生活
受刑生活のスタート/「反省」が分からない受刑者たち/「殺人者の集団」を痛感する時/涙を流す受刑者のタイプ/「自分の論理」の誤りに気付く/父の死
第三章 殺人犯の肖像(上)――堅気の受刑者たち
堅気とヤクザの違い/気弱な目をした強盗殺人犯/更生不能のプロの泥棒/酒を呑まなきゃ正直な職人/全く反省しない凶悪殺人犯/家族の支えで罪を自覚した無期囚/気弱な幼女強姦殺人犯/「えっ、被害者? 俺だって被害者じゃん」/罪を悔いる元ヤクザ
第四章 殺人犯の肖像(下)――ヤクザ受刑者たち
その道のスジを通すヤクザ/被害者から強烈な印象を受けたヤクザ/「人のよいおじさん」に見える組長/もっとも侠を感じさせたヤクザ/共通するのは「倫理観の欠如」
第五章 一生を刑務所で暮らすと決めた
もう刑務所を出なくていい……/人生で初めて「幸福」を感じる
あとがき
解説 橘由歩
美達大和(みたつ・やまと)
1959(昭和34)年生れ。無期懲役囚。刑期十年以上かつ犯罪傾向が進んだ者のみが収容される「LB級刑務所」で服役中。罪状は二件の殺人。著書に『死刑絶対肯定論』(新潮新書)『ドキュメント長期刑務所』(河出書房新社)『夢の国』(朝日新聞出版)がある。
それではどのように生きればいいのかについて、懊悩してきました…。
「殺人」という大罪は償えるのか。
人を二人殺めた著者は今、罪が重く刑期が十年以上の者が収容される
「LB級刑務所」に無期懲役囚として服役している。
十数年にわたる服役期間に自分の行為を反芻し、
贖罪とは何か、人の命を奪った身でどのように残りの人生を「生きる」べきかを考え続けてきた。
自身の半生と罪の意識、反省の欠片もない周囲の服役囚について考察した驚愕の獄中記。
著者の言葉
殺人者の人生というのは、一部のピースを欠いたジグソーパズルのようなものだと思います。
ピースが欠けている以上、完成はありませんが、それでも投げ出すことなく作っていかねばなりません。
そして、不完全な完成品を眺める度に、空白となったピースに思いを馳せ、忘れることなく暮らすことこそ、
殺人者の人生に必要な営為ではないかと思います。
(「はじめに」)
目次より
はじめに
第一章 二つの殺人事件を起こすまで
在日韓国人の父、純和風の母/年収は億単位/最初の事件/二つ目の事件/逮捕、そして裁判/有意義だった弁護士との対話/鑑定された私の性格/被害者の母親の証言/検察の論告で衝撃を受ける/意見陳述/無期懲役で確定
第二章 長期刑務所の生活
受刑生活のスタート/「反省」が分からない受刑者たち/「殺人者の集団」を痛感する時/涙を流す受刑者のタイプ/「自分の論理」の誤りに気付く/父の死
第三章 殺人犯の肖像(上)――堅気の受刑者たち
堅気とヤクザの違い/気弱な目をした強盗殺人犯/更生不能のプロの泥棒/酒を呑まなきゃ正直な職人/全く反省しない凶悪殺人犯/家族の支えで罪を自覚した無期囚/気弱な幼女強姦殺人犯/「えっ、被害者? 俺だって被害者じゃん」/罪を悔いる元ヤクザ
第四章 殺人犯の肖像(下)――ヤクザ受刑者たち
その道のスジを通すヤクザ/被害者から強烈な印象を受けたヤクザ/「人のよいおじさん」に見える組長/もっとも侠を感じさせたヤクザ/共通するのは「倫理観の欠如」
第五章 一生を刑務所で暮らすと決めた
もう刑務所を出なくていい……/人生で初めて「幸福」を感じる
あとがき
解説 橘由歩
美達大和(みたつ・やまと)
1959(昭和34)年生れ。無期懲役囚。刑期十年以上かつ犯罪傾向が進んだ者のみが収容される「LB級刑務所」で服役中。罪状は二件の殺人。著書に『死刑絶対肯定論』(新潮新書)『ドキュメント長期刑務所』(河出書房新社)『夢の国』(朝日新聞出版)がある。
- 本の長さ334ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2011/10/28
- 寸法14.8 x 10.5 x 2 cm
- ISBN-104101358613
- ISBN-13978-4101358611
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登録情報
- 出版社 : 新潮社 (2011/10/28)
- 発売日 : 2011/10/28
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 334ページ
- ISBN-10 : 4101358613
- ISBN-13 : 978-4101358611
- 寸法 : 14.8 x 10.5 x 2 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 317,352位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 5,619位新潮文庫
- - 32,984位社会・政治 (本)
- - 50,099位ノンフィクション (本)
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2024年2月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
この著者は頭が良すぎて、一般的な犯人像とは異なる気がする
2019年2月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
殺人者が書いた本。この時点で評価に悩みますね。
期待せずに読むと良いのではないでしょうか。(笑)
内容は、(事実を書いてるのだろうが)ナルシズムが感じられ、罪への深い反省(作者は自分の罪を反省してるのだろうけど)を汲み取りにくい部分もある。
読みやすい文章だったので、すぐに読めます。
好き嫌いは分かれる本だと思う。
期待せずに読むと良いのではないでしょうか。(笑)
内容は、(事実を書いてるのだろうが)ナルシズムが感じられ、罪への深い反省(作者は自分の罪を反省してるのだろうけど)を汲み取りにくい部分もある。
読みやすい文章だったので、すぐに読めます。
好き嫌いは分かれる本だと思う。
2015年6月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「はじめに」からではなく「第一章」から始めるのをお勧めする。
囚人への取材に基づいたルポルタージュかと思いきや収監されている本人の手記。そういう意味ではこの著者は先ごろ話題作を上梓した「元少年A」に近い。
ただ、この両者に見られる大きな違いは、世間的な意味での「事件に対する反省」が本作の著者にはないことに尽きる。寧ろ、いまだに自分の行為には間違いがなかったと考えており、どこか誇らしげですらある(元少年Aの反省が見せかけだとしても著作の中では真摯な姿勢を見せている)
ここだけを見ると「暴力的、且つ反社会的な人」に過ぎないが、著者は何故そのような思考、性向になったのかを論じている。その中で著者が自ら、そして鑑定人の口を借りて言っているとおり、知的判断能力は高い。IQで示すと150以上なのだと思われる。その最高レベルの知性でもって語られた要因に得心しかねるのは、有り体に言えば「成育環境のせい」になってしまう陳腐さにあるし、同じような環境にいた誰もが同じように2人も殺められるのか?と言うこれまた陳腐な論を展開すれば「んなわきゃぁない」との結論に至ってしまう点にもある。
環境の特異性を以て何らかの酌量を与えうるかというと「否」であり、著者自身のアスペルガーな気のある特異的な個性に目を向けた方が、事件を覚めた目で理解するのには有用であろう。
ここで何故か頭に浮かんだのが、この5月に公開されたブロムカンプ監督の「CHAPPIE [・・・]
」
あの映画は、「心を持たせた人工知能入りロボットを活かすも殺すも、どのような精神性を持たせるかに尽きる、という話」だった。
著者は傍目には文武両道に秀でた非の打ち所が無い人物だったかも知れない。しかし、社会的な動物である人間は文武のみにて生きるに非ず、ということなんですなぁ。
ここで安冨歩の「生きるための技法 [・・・]」が想起された。「自立とは多くの人に依存することである」、そう「『助けて』と言えない人は自立できていない」のですな。
著者は小学5年で生活費を稼ぎ出していた自分を鑑定文書を引いて読者に示した。それを自分が優れていることの例証であるかのように考えているから自分の筆で記すのを「謙虚に」避けたのだろうが、そこにこそ彼が抱える特異性が現れているのだ。
文武を下支えするものについて著者が思索するときが来るのだろうか…
囚人への取材に基づいたルポルタージュかと思いきや収監されている本人の手記。そういう意味ではこの著者は先ごろ話題作を上梓した「元少年A」に近い。
ただ、この両者に見られる大きな違いは、世間的な意味での「事件に対する反省」が本作の著者にはないことに尽きる。寧ろ、いまだに自分の行為には間違いがなかったと考えており、どこか誇らしげですらある(元少年Aの反省が見せかけだとしても著作の中では真摯な姿勢を見せている)
ここだけを見ると「暴力的、且つ反社会的な人」に過ぎないが、著者は何故そのような思考、性向になったのかを論じている。その中で著者が自ら、そして鑑定人の口を借りて言っているとおり、知的判断能力は高い。IQで示すと150以上なのだと思われる。その最高レベルの知性でもって語られた要因に得心しかねるのは、有り体に言えば「成育環境のせい」になってしまう陳腐さにあるし、同じような環境にいた誰もが同じように2人も殺められるのか?と言うこれまた陳腐な論を展開すれば「んなわきゃぁない」との結論に至ってしまう点にもある。
環境の特異性を以て何らかの酌量を与えうるかというと「否」であり、著者自身のアスペルガーな気のある特異的な個性に目を向けた方が、事件を覚めた目で理解するのには有用であろう。
ここで何故か頭に浮かんだのが、この5月に公開されたブロムカンプ監督の「CHAPPIE [・・・]
」
あの映画は、「心を持たせた人工知能入りロボットを活かすも殺すも、どのような精神性を持たせるかに尽きる、という話」だった。
著者は傍目には文武両道に秀でた非の打ち所が無い人物だったかも知れない。しかし、社会的な動物である人間は文武のみにて生きるに非ず、ということなんですなぁ。
ここで安冨歩の「生きるための技法 [・・・]」が想起された。「自立とは多くの人に依存することである」、そう「『助けて』と言えない人は自立できていない」のですな。
著者は小学5年で生活費を稼ぎ出していた自分を鑑定文書を引いて読者に示した。それを自分が優れていることの例証であるかのように考えているから自分の筆で記すのを「謙虚に」避けたのだろうが、そこにこそ彼が抱える特異性が現れているのだ。
文武を下支えするものについて著者が思索するときが来るのだろうか…
2024年2月8日に日本でレビュー済み
まずバックボーンが宛ら神話であり、逸話を多く残す海外の超有名殺人犯を遥かに超える凄まじさがあるに関わらず話題にならない人物がいるだろうか
はじめから存在しない創作物の線も考えたが、虚言癖とも考えられるし(本物の虚言癖を患ったフリーターの青年に関わった事があるが、親、ヤクザ、年収数億、高IQなどかなり似たような設定の話をしていた。傾向があるのだろう)、衒学的な雑な引用の仕方が生々しい
半端に齧った用語や名言を何とかこじつけて用いようとする浅ましさが、恐らく元ネタを知らない人間にも伝わったのではないだろうか
元ネタを知ると何故そこでそれを持ってきた?詳しいなら他にもっと適切なものがあったのでは?というような突っ込みどころしかない
犯罪者の手稿なら大いに価値があると嬉々として購入した本だったが、今日日素人の書いたラノベを読んでいた方が遥かに有意義だったのではなかろうか
はじめから存在しない創作物の線も考えたが、虚言癖とも考えられるし(本物の虚言癖を患ったフリーターの青年に関わった事があるが、親、ヤクザ、年収数億、高IQなどかなり似たような設定の話をしていた。傾向があるのだろう)、衒学的な雑な引用の仕方が生々しい
半端に齧った用語や名言を何とかこじつけて用いようとする浅ましさが、恐らく元ネタを知らない人間にも伝わったのではないだろうか
元ネタを知ると何故そこでそれを持ってきた?詳しいなら他にもっと適切なものがあったのでは?というような突っ込みどころしかない
犯罪者の手稿なら大いに価値があると嬉々として購入した本だったが、今日日素人の書いたラノベを読んでいた方が遥かに有意義だったのではなかろうか
2017年7月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
考えさせられます。冷酷無情の殺人犯の心理や背景、刑務所の現実。他の人には書けないものです。司法に携わる人は読むべきです。心に残る一冊です。
2023年4月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
殺人罪の受刑者が仮名で書いたノンフィクション。
著者が逮捕されるとすぐに何人かの弁護士が面会に警察署に来たとのこと。
いずれも、弁護士から「自分を弁護人に選任しなさい」と言われた。
著者はそれを聞いて「金銭以外にも十分メリットがあると計算してきたのでしょう。」と分析して、弁護士の売名欲・名誉欲を皮肉に指摘している。
刑務所内の様子の記載は純粋に興味深い。
客観的な描写をしようとしつつも、強い自己顕示欲と自己実現への渇望が見え隠れする。
著者がLB刑務所に入るようなことをしなければ、本当の飢えを満たせたのかもしれないが・・・
著者が逮捕されるとすぐに何人かの弁護士が面会に警察署に来たとのこと。
いずれも、弁護士から「自分を弁護人に選任しなさい」と言われた。
著者はそれを聞いて「金銭以外にも十分メリットがあると計算してきたのでしょう。」と分析して、弁護士の売名欲・名誉欲を皮肉に指摘している。
刑務所内の様子の記載は純粋に興味深い。
客観的な描写をしようとしつつも、強い自己顕示欲と自己実現への渇望が見え隠れする。
著者がLB刑務所に入るようなことをしなければ、本当の飢えを満たせたのかもしれないが・・・
2016年12月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
たいへん良い商品です。梱包もしっかりとされており安心できました。ありがとうございました。