久しぶりに現代文学(といってもいいでしょうか?)の大長編を読破しました。読後感は半端ないです。
最初の数ページで挫折しかけましたが、リズム感あふれる文章なので、慣れれば比較的読みやすいです。
途中我慢を強いられることも多々でしたが、知識欲の強い人であれば読んでいてダレることはありません。
航空工学、材料力学、流体力学、数学(解析学)、統計学、論理学、量子力学、制御工学、有機合成化学、神経生理学、薬理学、認知心理学、精神分析、精神医学、社会学、経済学、宗教学、現代史、戦争論、陰謀史観、神秘主義、降霊術、…、あらゆる事物を無関連に(パラノイア的に)結合し、多重なイメージの響きあいを奏で、女装、男色、ドラッグ、ボンデージ、SM、フェティッシュ、ロリータ、近親相姦…、などの変態性欲も控え目ながら彩りを添えます。
それでいて文学的センスは抜群の極めて優れた文章(訳者の佐藤良明氏がこんなにセンスのある人だったとは)。文自体のセンスはナボコフに匹敵すると個人的には思います。
各小話も、ホワイトヴィジテーションのSF的マッドサイエンティスト、チチェーリンの中央アジアの回想シーン(キルギスの光)、ロケット技術者ペクターの話はリアリズム文学的で、バルト海でのスロースロップはハリウッドアクション映画そのもの、カッチェの暗躍は陰謀小説のようで楽しめました。
とにかくあらゆるものがてんこ盛りの小説。
現代文学恐るべし。現在アメリカ文学の金字塔という言葉がまさにふさわしい世紀の大傑作といえるでしょう。
たいてい、この手の物語というのは、さまざまな要素をちりばめ、後半で伏線を見事に回収していくというパターンになると思われます。
それだけなら「あー面白かった」で終わってしまいますが、名作というのは、ストーリの裏に見え隠れするテーマ性が読者に伝わる作品だと個人的には思っています。
しかし、この作品は、後半100ページはパラノイアを通り越し、「解体」してしまいます。さっぱり意味がつかめず、なんとなく「きまった」感じで物語は終了します。しかし、こんなに楽しませてくれた作品は最近はあまり出会っていませんでした。わたしの中では歴代ベスト5に入る小説でした。消化不良のため再読希望です。
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トマス・ピンチョン 全小説 重力の虹[上] (Thomas Pynchon Complete Collection) 単行本 – 2014/9/30
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世界文学史上に空前の伝説を刻んだ33万語、100万字超の巨篇――新訳成る! 耳をつんざく叫びとともに、V2ロケット爆弾が空を切り裂き飛んでくる。ロンドン、一九四四年。情報局から調査の命を受けたスロースロップ中尉は――。 ピューリッツァー賞が「卑猥」「通読不能」と審査を拒否した超危険作にして、今なお現代文学の最先端に屹立する金字塔がついに新訳。詳細な註と膝を打つ解説、索引を付す。
- 本の長さ752ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2014/9/30
- 寸法13.9 x 4.2 x 19.7 cm
- ISBN-104105372122
- ISBN-13978-4105372125
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登録情報
- 出版社 : 新潮社 (2014/9/30)
- 発売日 : 2014/9/30
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 752ページ
- ISBN-10 : 4105372122
- ISBN-13 : 978-4105372125
- 寸法 : 13.9 x 4.2 x 19.7 cm
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- - 16,209位文芸作品
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2019年4月13日に日本でレビュー済み
訳注があるのは便利ですが、これは意見が分かれるんじゃないでしょうか。われわれは現時点で、その個人にとって未知・未開の情報のなかで生きて行動を選択して/させられているので、状況や環境に対し未知あるいは不十分な理解のなかで行動しているでしょう。そういった状況を「重力の虹」では提示していると思います。航空力学や統計学や微積分学の利用あるいは学問的意義の理解を有している/いないに関わらず、V2はロンドンに打ち下ろされました。いわば、学問では分科されてますが、実生活では絡み合ったままで与えられています。これは、現在のグローバリズムにあって、安全保障体制や自由貿易体制や世界貨幣・世界金融体制に通暁していなくても、世界経済と関わっていることと通じているように思います。
例えば、ラーテナウと汎ヨーロッパ送電網だとか、石炭や鉄鋼の資源管理とEU統合だとか、ユダヤと匕首伝説だとか、ノーベルとシェルとその後のセブンシスターズとか、ナチスに於けるPAシステム開発や遊説時の航空機利用だとか戦車戦術だとか、(或る人々には不可視となっている)そういったことの現代への影響・歴史的過程との関連で「重力の虹」を捉えると、おもしろいと思いますが、やっぱり、訳注を読んだだけではわからないですよねー。
(器械)集合体 アグレガートであるロケットと、全面戦争である第二次大戦。両者とも、複合的かつ有機的に関連することで効果を発揮する。国家が積極的に関与する技術開発と、様々なレベルの組織的及び個人的・扇動的動員。そして、戦後これらが恒常的になる。18世紀フランスのアンシャン・レジームでは、国王、教会、領主は各々独自に管理する民衆から徴税した。アメリカ独立戦争とフランス革命の後に、国家による徴税権と交戦権の一元化が進む。そこで、国家への動員を根拠づける必要から、ナショナリズムと選挙制度が利用される。
例えば、ラーテナウと汎ヨーロッパ送電網だとか、石炭や鉄鋼の資源管理とEU統合だとか、ユダヤと匕首伝説だとか、ノーベルとシェルとその後のセブンシスターズとか、ナチスに於けるPAシステム開発や遊説時の航空機利用だとか戦車戦術だとか、(或る人々には不可視となっている)そういったことの現代への影響・歴史的過程との関連で「重力の虹」を捉えると、おもしろいと思いますが、やっぱり、訳注を読んだだけではわからないですよねー。
(器械)集合体 アグレガートであるロケットと、全面戦争である第二次大戦。両者とも、複合的かつ有機的に関連することで効果を発揮する。国家が積極的に関与する技術開発と、様々なレベルの組織的及び個人的・扇動的動員。そして、戦後これらが恒常的になる。18世紀フランスのアンシャン・レジームでは、国王、教会、領主は各々独自に管理する民衆から徴税した。アメリカ独立戦争とフランス革命の後に、国家による徴税権と交戦権の一元化が進む。そこで、国家への動員を根拠づける必要から、ナショナリズムと選挙制度が利用される。
2015年9月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
難解との前評判があったのだが、3年かけて翻訳した佐藤先生の訳ならば、とおそるおそる読んでみた。上下に分かれているが、書き難いので上巻の方にまとめて評を書いてしまうので、お許しを。
確かに分からない部分もあるが、たいていの難所には親切な脚注があり多いに助けになる。どうしてもよくわからない文章もあったし、アメリカ大衆文化の知識不足が理解をさまたげる、が、散文詩と思ってどんどん先へ進むと良い。主人公の遍歴と冒険らしきメインのプロットもちゃんとあるし(ものすごく脱線するが)、最後まで読むと有名でスリリングな大団円も用意されている。ただし、”変身”を2回した後、最後の方で主人公は”溶解”していなくなってしまう。泣けるサブプロット(家族愛、純愛)、爆発的なイメージ喚起力あるシーンの連続、アクションありで小説の好きな読者なら、大いに楽しめると思う。例えば、ジャンバルジャンは、パリの下水道をさまよったが、本書の主人公スロースロップ君は、ジャズクラブのトイレにハモニカを落としたせいで、なんと下水管を旅してしまうのである。また、白熱電球のバイロン君が自己の来歴を語るのだが、これにも驚愕し楽しめた。以上の例が、読者の方にとって、本書が自分向きかどうかの判断の一助となれば幸いである。やはり人には好みという物があるわけだし、上下巻そろえると1万円近くなので。
多くの方が指摘されているように、この小説には、たいていのことはそろっている。有機化学、ポルノ映画、コスプレ、植民地主義と対抗するゲリラ、北の異民族、スカトロジー、精神分析、SM、海や空の冒険、オカルト、音楽、そしてSF、他にもたくさんある。読んで行くうちに、いつの間にか視点が変わり、違う話が始まって、魔術的な感覚に襲われることがしばしばだった。アメコミや映画の要素もあり、実際agggrerというようなアメコミの背景によくあるような擬音語?もでてくるし、映画監督もでてくる。
個人的には、現代政治に対する陰謀論とドラッグの話には、少々引いてしまったが、読んでいる間、読書の快楽のような物を味わうことができ、希有な体験だった。
最後に、すばらしい装丁についてひと言。表紙の英語題名は金文字なのだが、読んでいるうちにせっかくの金粉が摩擦、手の汗で一部剥落してしまった。気になる方は、読書前に各自、対策をとられたし。
確かに分からない部分もあるが、たいていの難所には親切な脚注があり多いに助けになる。どうしてもよくわからない文章もあったし、アメリカ大衆文化の知識不足が理解をさまたげる、が、散文詩と思ってどんどん先へ進むと良い。主人公の遍歴と冒険らしきメインのプロットもちゃんとあるし(ものすごく脱線するが)、最後まで読むと有名でスリリングな大団円も用意されている。ただし、”変身”を2回した後、最後の方で主人公は”溶解”していなくなってしまう。泣けるサブプロット(家族愛、純愛)、爆発的なイメージ喚起力あるシーンの連続、アクションありで小説の好きな読者なら、大いに楽しめると思う。例えば、ジャンバルジャンは、パリの下水道をさまよったが、本書の主人公スロースロップ君は、ジャズクラブのトイレにハモニカを落としたせいで、なんと下水管を旅してしまうのである。また、白熱電球のバイロン君が自己の来歴を語るのだが、これにも驚愕し楽しめた。以上の例が、読者の方にとって、本書が自分向きかどうかの判断の一助となれば幸いである。やはり人には好みという物があるわけだし、上下巻そろえると1万円近くなので。
多くの方が指摘されているように、この小説には、たいていのことはそろっている。有機化学、ポルノ映画、コスプレ、植民地主義と対抗するゲリラ、北の異民族、スカトロジー、精神分析、SM、海や空の冒険、オカルト、音楽、そしてSF、他にもたくさんある。読んで行くうちに、いつの間にか視点が変わり、違う話が始まって、魔術的な感覚に襲われることがしばしばだった。アメコミや映画の要素もあり、実際agggrerというようなアメコミの背景によくあるような擬音語?もでてくるし、映画監督もでてくる。
個人的には、現代政治に対する陰謀論とドラッグの話には、少々引いてしまったが、読んでいる間、読書の快楽のような物を味わうことができ、希有な体験だった。
最後に、すばらしい装丁についてひと言。表紙の英語題名は金文字なのだが、読んでいるうちにせっかくの金粉が摩擦、手の汗で一部剥落してしまった。気になる方は、読書前に各自、対策をとられたし。
2016年7月11日に日本でレビュー済み
主人公のスロースロップ以上に気になったのはロジャーメキシコ。対ドイツ戦争のためのトンデモ科学者集団に放り込まれ、統計学を使って対抗するものの、頭がおかしくなりそうになる。恋人ともしっくり行かない哀れなイギリス人。アメリカ人のピンチョンがイギリスを描いた小説に出てくるのがメキシコというのも何やら意味ありげ。
2014年10月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
第二次大戦中、主人公(と思われる)スロースロップ中尉が戦争そっちのけでファックに明け暮れ、その場所にドイツのV2ロケットが撃ち込まれる謎を軍部が探るが・・・というのが主筋と思われる小説。
この小説は個人的な感想では二つの筋が錯綜しているように思いました。その筋は、
1・人類最大の難関、重力越え(地球からの離脱)とそれを阻止しようとする重力(地球)からの抵抗を描いたサイバー・フィクション。
2・人類の人並み外れた叡智と営為、人類の馬鹿さと愚行を描いた歴史小説。
1に関しては読んでわかる通り作中の厖大な数式や科学理論を小説にちりばめることで文系の私なんかからは殆ど理解できないような難解さでもってこの小説自体を地球からも離脱した宇宙規模の壮大さを醸し出していると思いました。何でも欧米のサイバー・パンク系のSF作家から聖書のように拝読されているのもこのあたりが要因ではないかと思います。
2はこれも読んでわかる通り、厖大な登場人物が繰り広げる馬鹿騒ぎやら愚行、失笑を禁じえない阿保な行動、言動、エピソードに現れていると思いました。戦争そっちのけで女遊びにふけるキャラ、人類最大の愚行ナチズム、各エピソードで断片的に描かれる馬鹿っぽい登場人物の行動や思考。
これら様々な要素を統合して、この時点に於ける人類の崇高さと馬鹿さを包括的に総括した超大作に思えましたが、どうでしょうか。
もっとも、上下あわせて1400ページにもおよび、ほんの少ししか登場しないキャラを含めて厖大な登場人物がでてくるスーパー・ヘヴィ級の小説なので、各エピソード、各挿話を全て記憶しながら、文脈をたどることなど殆ど無理なので、理系の知識をちりばめた黙示録的狂騒と馬鹿騒ぎを描いた変な小説として楽しむのが正解かもとも思いますが・・・。
これだけの情報量と情緒量の小説を集中力をとぎらせずに最後まで読むのにはかなりの集中力を必要にしましたし、値段も超弩級ですが、読む価値はあるとは思います。因みに私は旧訳と合わせて四回くらい読みました。まぁそれくらいヒマであったということですが。
蛇足ですが、ノーベル文学賞によくノミネートされながらなかなか受賞できないのは授賞式に本人が現れない可能性が高い為、と聞きますが、本人の写真等が全く公表されていないので、本人が出席してもそれが本人かどうか誰も特定できないのではないかと思いますが・・・。
20世紀最大と評される小説。長くて高いのであまり奨める気にはなりませんが、機会があったらご一読を。
この小説は個人的な感想では二つの筋が錯綜しているように思いました。その筋は、
1・人類最大の難関、重力越え(地球からの離脱)とそれを阻止しようとする重力(地球)からの抵抗を描いたサイバー・フィクション。
2・人類の人並み外れた叡智と営為、人類の馬鹿さと愚行を描いた歴史小説。
1に関しては読んでわかる通り作中の厖大な数式や科学理論を小説にちりばめることで文系の私なんかからは殆ど理解できないような難解さでもってこの小説自体を地球からも離脱した宇宙規模の壮大さを醸し出していると思いました。何でも欧米のサイバー・パンク系のSF作家から聖書のように拝読されているのもこのあたりが要因ではないかと思います。
2はこれも読んでわかる通り、厖大な登場人物が繰り広げる馬鹿騒ぎやら愚行、失笑を禁じえない阿保な行動、言動、エピソードに現れていると思いました。戦争そっちのけで女遊びにふけるキャラ、人類最大の愚行ナチズム、各エピソードで断片的に描かれる馬鹿っぽい登場人物の行動や思考。
これら様々な要素を統合して、この時点に於ける人類の崇高さと馬鹿さを包括的に総括した超大作に思えましたが、どうでしょうか。
もっとも、上下あわせて1400ページにもおよび、ほんの少ししか登場しないキャラを含めて厖大な登場人物がでてくるスーパー・ヘヴィ級の小説なので、各エピソード、各挿話を全て記憶しながら、文脈をたどることなど殆ど無理なので、理系の知識をちりばめた黙示録的狂騒と馬鹿騒ぎを描いた変な小説として楽しむのが正解かもとも思いますが・・・。
これだけの情報量と情緒量の小説を集中力をとぎらせずに最後まで読むのにはかなりの集中力を必要にしましたし、値段も超弩級ですが、読む価値はあるとは思います。因みに私は旧訳と合わせて四回くらい読みました。まぁそれくらいヒマであったということですが。
蛇足ですが、ノーベル文学賞によくノミネートされながらなかなか受賞できないのは授賞式に本人が現れない可能性が高い為、と聞きますが、本人の写真等が全く公表されていないので、本人が出席してもそれが本人かどうか誰も特定できないのではないかと思いますが・・・。
20世紀最大と評される小説。長くて高いのであまり奨める気にはなりませんが、機会があったらご一読を。
2014年10月2日に日本でレビュー済み
まだ読んでいません
本はあまり読みません
本はめちゃくちゃ棚に置いてはありますがそれは僕の本ではありません
かっこいいジーパンが早く欲しいです
本はあまり読みません
本はめちゃくちゃ棚に置いてはありますがそれは僕の本ではありません
かっこいいジーパンが早く欲しいです
2014年10月26日に日本でレビュー済み
できれば英語で書かれた小説は原文で読んでおきたいと思うが、ことピンチョンに関してはそれが容易ではない。GRなどは1ページ目からすでにしんどく、何度挑戦しても書かれていることが頭の中で像を結ばない。英語母語話者でも読むのに相当苦労するのだとか。1つの原因は、ピンチョン独特の文体や語彙なのだろう。どう独特なのかは、しばらく前に出た『現代作家ガイド トマス・ピンチョン』(彩流社)所収の木原善彦「ピンチョン節とは何か?」を参照されたし。私のような貧弱な英語読みには到底到達し得ないレベルの話に唸らされる。ピンチョン挫折経験者にとっては必読の論考だと思う。
結局、GRに関しては原書で読むのはとうにあきらめてしまったが、一方で国書刊行会の旧訳はいつしか絶版になっていた。虹の橋の上で途方に暮れていたところ、新潮社からピンチョン全集刊行の案内が出たのが5年前。他の作品の新訳・初訳が予定通り刊行されていく中、GRだけが延び延びになっていた。だから募る期待感は他の作品の比ではなかった。本当に待ち焦がれました。装丁も文句なくかっこいい。帯にあるてんこもりの惹句もピンチョンには似つかわしい。ということで、とりあえず上巻を読んでの感想を書いておく。
上巻には、全四部のうち、第一部から第三部の途中までが収められている。最初から我慢の読書を強いられる。登場人物の多さは覚悟していたが、予想以上に人物たちの関係が錯綜している。帯の両見返し部分にある50人ほどの「主要登場人物」一覧はひとまず助かっている。その他、現実に起こっている事柄と登場人物の頭の中(夢や幻覚など)だけで起こっているらしい事柄の境界線が見えにくかったり、主語が示されないのでそれを語っているのが誰なのかが判然としないことがあり、そういうとき私にできるのはわかったふりして読み進めること。大切なのは、訳者の佐藤氏が云うとおり、「ピンチョンの誘う世界に入っていきたいかどうか」(『波』10月号、新潮社)なのだ。
第二部や第三部でもそういう状況はあまり変わらないが、飄然たるスロースロップが次から次へと見えざる手に翻弄されていき、あげくの果てにとんがりヘルメットかぶってロケットマンに変身するというチープな展開に、いつしか夢中で物語を追っている。上巻が終わる頃になっても、まったく物語の底が見えない。むしろ、掘り進むにつれてその濃度が増していく感じだ。どこまで深いのか! 下巻への期待は高まるばかりだ。
結局、GRに関しては原書で読むのはとうにあきらめてしまったが、一方で国書刊行会の旧訳はいつしか絶版になっていた。虹の橋の上で途方に暮れていたところ、新潮社からピンチョン全集刊行の案内が出たのが5年前。他の作品の新訳・初訳が予定通り刊行されていく中、GRだけが延び延びになっていた。だから募る期待感は他の作品の比ではなかった。本当に待ち焦がれました。装丁も文句なくかっこいい。帯にあるてんこもりの惹句もピンチョンには似つかわしい。ということで、とりあえず上巻を読んでの感想を書いておく。
上巻には、全四部のうち、第一部から第三部の途中までが収められている。最初から我慢の読書を強いられる。登場人物の多さは覚悟していたが、予想以上に人物たちの関係が錯綜している。帯の両見返し部分にある50人ほどの「主要登場人物」一覧はひとまず助かっている。その他、現実に起こっている事柄と登場人物の頭の中(夢や幻覚など)だけで起こっているらしい事柄の境界線が見えにくかったり、主語が示されないのでそれを語っているのが誰なのかが判然としないことがあり、そういうとき私にできるのはわかったふりして読み進めること。大切なのは、訳者の佐藤氏が云うとおり、「ピンチョンの誘う世界に入っていきたいかどうか」(『波』10月号、新潮社)なのだ。
第二部や第三部でもそういう状況はあまり変わらないが、飄然たるスロースロップが次から次へと見えざる手に翻弄されていき、あげくの果てにとんがりヘルメットかぶってロケットマンに変身するというチープな展開に、いつしか夢中で物語を追っている。上巻が終わる頃になっても、まったく物語の底が見えない。むしろ、掘り進むにつれてその濃度が増していく感じだ。どこまで深いのか! 下巻への期待は高まるばかりだ。