本書はもちろんのこと一般向けの本であるが、にもかからわらず、いつもながらの下手な研究書よりもよっぽど上等の歴史資料に基づいた実証がなされている。
特に、植民地支配の歴史の部分で、朝鮮人の多数の将校の存在、学校教育に使った予算、就学数等の実証的事実を明らかにし、さらに、欧米諸国のそれとの比較を怠らない。
そして在日問題については、この本が1989年の出版であることを考えてると、相当先駆的にその不条理さを徹底的に批判したといえよう。
ただ、本来本書が左翼批判や一部の在日批判が基調であるにもかかわらず、目次やタイトルにおいては彼らと同様の主張をしているかのような錯覚を覚えてしまう。これはあくまでも出版するということを考慮した際の、まだ80年代であったことからす!る戦略だったのだろうか。1997年の『売文業者の戦後責任』はタイトルからして痛烈であるのだが……
この後の『ニッポン難民列島』という小説とで、左翼批判の3部作を形成しているような気がする。
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