むかしむかし 世界はすばらしい庭のようだった。
木々は果実をみのらせ、花には蜜があふれ
大地の豊かな恵みは、心を幸福に満たし 見るものはすべて美しかった。
そして今、私たちは何処にいるのか。何処へゆこうとしているのか。
イタリアの世界的巨匠エルマンノ・オルミ監督がある街の聖堂を舞台に描いた
危機の時代に送る、現代の黙示録。
神々しく、美しく── 混迷の時代を旅する人々へ慈しみをこめて贈る荘厳なる物語。
イタリアのある街で、教会堂が取り壊されようとしている。長い年月、老司祭は神の愛を唱えてきたが、人々の望みは別のものに代わろうとしていた。
夜、ひとりの男が傷ついた家族をつれて司祭館にやってくる。男は技師で、家族は不法入国者だった。そして教会堂には、さまよう人が次々とやってきた。多くがアフリカから長い旅を経てきた人だった。そして即席の小さな村が作られてゆく。
この村にはいくつかのグループがあった。あるグループは、身重の女性以外は、みな旅の途上で亡くなっていた。ほかのグループにも多くの犠牲がでていた。あるグループはイスラム原理主義者だった。そのリーダーはこの世界をよくするためには暴力しかないという。それに対し、技師は言葉の力を信じていた。両者は互いによく知っていた。
ひとりの少年は難破船でノートを拾っていた。ノートには世界が始まる頃の美しい大地の様子がえがかれ「すべての子はひとつの母から生まれた」という言葉で結ばれていた。 身重の女性が出産する。人々は赤子の世話をし、老司祭はキリストの誕生を思い、祈りを捧げた。若者たちには恋も生まれようとしていた。そこへ地区の保安委員が不法移民を取締りにやってくる。人々のなかに密告者がいたのだ。老司祭は「教会はすべての人に開かれている」と抵抗し、いったんは保安委員らを退けることができた。
そして翌朝、人々は次の地へと旅立とうとしていた。イブラヒムという名の男は「この世の秘宝は心ある人だ。私たちの道はまだ遥かに遠い」と語り‥‥。
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