「三日戻らなかったら探してほしい」
主人公の探偵式部にそう残して姿を消した女性記者を探すミステリー。
個人的には近年稀にみる良作と評価。
不要に書きすぎない、しかし情景描写には言葉を尽くすことを惜しまない小野女史の文章には脱帽である。
本作は「孤島」「異端の風習」「探偵」などベタベタな設定で成り立っているが、
きちんとツボを押さえつつ、ドライな文章で見事に描き上げている。
残穢でも女性作家目線の淡々とした語り口が象徴的であったが、
それよりは読みやすい感触で、しかし必要以上に書きすぎない姿勢を崩していないのは見事。
特に主人公式部の描き方においては、気障でもなく必要以上に斜に構えてもなく、しかし(おそらく)中年男性的な感情的になりすぎないスタンスや、どこか達観したような目線で事件をとらえていく姿が好印象。
また、読者に対する情報提供が非常にフェアだ。
最近のミステリーにありがちな「実は〇〇でした」的な「作者しか知りえない情報」をどんでん返しに使用するようなアンフェアなことはせず、常に必要な情報が読者に供給されていた。
それゆえ、ミステリーを読み慣れているものにとっては中盤あたりでラストが予見できてしまうが、しかしそれでいて常に文章を先へ先へと読ませる魅力が損なわれていないのは流石である。
総括すると、ミステリー好き、ホラー好きどちらにもおすすめできる良作。
ホラーよりはミステリー寄りな内容に個人的には感じたが、全編を通して漂う仄暗さはどちらの読者にもおすすめできるものなので、気になったのならぜひとも手に取ってほしい。

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黒祠の島 (ノン・ノベル 708) 新書 – 2001/2/1
小野 不由美
(著)
- 本の長さ346ページ
- 言語日本語
- 出版社祥伝社
- 発売日2001/2/1
- ISBN-104396207085
- ISBN-13978-4396207083
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商品の説明
出版社からのコメント
『屍鬼』から2年…待望の最新長編は初の本格推理! その島は風車と風鈴に溢れ、余所者には誰も本当のことを話さなかった──失踪した作家・葛木志保を捜す仕事上のパートナー・式部剛は、過去を切り捨てたような彼女の履歴を辿り、明治以来の国家神道から外れた「黒祠の島」に辿り着いた…。因習に満ちた孤島に起きた連続殺人の真相とは? 実力派が満を持して放つ初の本格推理! ぜひお読みください。
内容(「MARC」データベースより)
作家葛木志保が失踪。パートナーの式部剛は、彼女の履歴を辿り「夜叉島」に行き着くが、島は国家神道から外れた「黒祠の島」だった。嵐の夜、逆さ磔にされた全裸女性死体が発見される。因習に満ちた孤島連続殺人の真相とは?
著者について
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大分県中津生れ。大谷大学在学中に京都大学推理小説研究会に在籍。「東亰異聞」が1993(平成5)年、日本ファンタジーノベル大賞の最終候補作となり、話題を呼ぶ(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 黒祠の島 (ISBN-13: 978-4396331641)』が刊行された当時に掲載されていたものです)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2023年3月28日に日本でレビュー済み
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残穢やゴーストハントシリーズが好きで手に取りましたがこちらはオカルト要素は無いかな。閉鎖的な島の信仰を絡めたミステリーです。信仰についてかなりロジカルに根拠づけてくれるので、こういう田舎ギリありそう、となるのがさすが。自分の想像力が乏しいせいか、島や情景の地理的描写が難しく、その点だけ読み進めるのに苦労しましたが、話の本筋は結末が気になりどんどん読めました。
2021年8月20日に日本でレビュー済み
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小野先生の本は何冊も読みました。期待通りのドキドキする内容で最後はどうなるんだろう?とラストのページが早く読みたくなる作品でした!
2023年12月28日に日本でレビュー済み
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怖い。これに尽きる。
日本人なら誰もが恐怖というか不気味さを想像できるシチュエーションなのでは。
ストーリーは大家の有名な作品と近似しているので斬新さはないが、なぜか惹き付けられる。
ところどころに「それは都合が良すぎないか?」と感じる点もあるし、中盤以降はくどすぎる場面もあるけれど、まあ怖かった。
一人暮らしの人が夜中に読むと怖すぎて眠れないのでは(笑)?
日本人なら誰もが恐怖というか不気味さを想像できるシチュエーションなのでは。
ストーリーは大家の有名な作品と近似しているので斬新さはないが、なぜか惹き付けられる。
ところどころに「それは都合が良すぎないか?」と感じる点もあるし、中盤以降はくどすぎる場面もあるけれど、まあ怖かった。
一人暮らしの人が夜中に読むと怖すぎて眠れないのでは(笑)?
2020年9月27日に日本でレビュー済み
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おどろおどろしさがクセになって
結末がわかっているのに何度も読み返しています。
ドSお嬢様の浅緋ちゃんがとても良いキャラです。
結末がわかっているのに何度も読み返しています。
ドSお嬢様の浅緋ちゃんがとても良いキャラです。
2022年5月15日に日本でレビュー済み
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裁きとは何だろう?もちろん警察が逮捕することが裁きでは無くその先に司法がある。それは国家と云う組織の元に行われることで民衆が行えばリンチと化す…地方の島の閑散とした漁村に消えた知人を追って訪れた男は、その痕跡までもが拭い去るように消されたことを知り、やがて無惨な有り様の死体と成り果て既に葬り去られたと知る!?神の裁き?有り得ない解釈だがそれは島民の共通した認識と知らされる。真の犯人とその動機を追い求める彼がたどり着いた結末は…真の神の裁きと、喪ったはずの知人の行方だった。
2020年4月8日に日本でレビュー済み
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あまりのおどろおどろしさに前回読んだ直後、友達にあげてしまいまして、また読みたくなり購入しました。
こういったホラー物は一度読むとまた読みたくなることはないのですが、再読したくなるって不思議。
閉塞的な場所の陰鬱な物語がお好きな方はどうぞ。
こういったホラー物は一度読むとまた読みたくなることはないのですが、再読したくなるって不思議。
閉塞的な場所の陰鬱な物語がお好きな方はどうぞ。
2015年8月30日に日本でレビュー済み
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「残穢」が面白くて小野作品にはまりました。これもホラーか?と思って購入したのですが、しっかりした骨組みを持つミステリーでした。どうなるの?どうなるの?え、そうなの?!の波が繰り返しきてリズム良く読み終えました。ブラックな部分もしっかりと描写されていてリアリティがありました。最初にあるとどうかと思うので、中盤くらいに人物相関表があるとより分かりやすかった。無くても筋が通っていて面白かったです。残虐シーンは映像化不可かなー・・・。