古森義久氏は、何によって記憶されるのか?その名前を多くの読者が覚えたのは、やはり、「ベトナム報道」によってであろう。サンケイの近藤紘一記者とともに、ベトコンの本質、ベトナム戦争と民衆の実態をレポートした。他の記者と違うのは、文章から、ベトナムの現実の中で明確な意志を持って行動していたことが分かることだ。「柔道家」であることはその後分かったが、日本人記者としては例外的だった。その後、再び、その名前がマスコミを揺るがしたのは「非核三原則の欺瞞を暴くライシャワー核持ち込み発言」そして本書で初めて全貌が公開された1981年の「元GHQ民政局次長ケーディスへの日本国憲法、とりわけ『第九条』の作成過程についてのインタビュー」だろうと思われる。
この中でケーディスは「マッカーサーノート」に言及しながら、「第九条」が幣原喜重郎のアイディアであった可能性も否定しない。しかし、常識的に考えれば、「第九条」の趣旨は、トルーマン大統領とバーンズ国務長官、その背後にいた対日強硬派、モーゲンソー財務長官とともに昭和16年8月に「日米経済戦争」を発動させたディーン・アチソンらのマッカーサーに対する指示がなかったとは思えない。彼らの名前は憲法作成に関しては出てこない。しかし「指紋を残さずやった」可能性は否定できない。なぜなら、「第一条・象徴天皇」とともに「第九条・非武装、戦争の放棄」は現地司令官の職責を超えた決定であるからである。「占領国による被占領国の非武装憲法の制定」。前代未聞のことが現地司令官の一存で決定できるだろうか?ケーディスは、機微に関する部分は巧みに逃げているが、大凡推測できた作成細部を当事者の証言として追認している。
日本国憲法は、アメリカが日本を永遠に「弱小国家」に留めおくために国際法違反を承知で押しつけたものであろう。だからこそ、現地司令官マッカーサーの命令か、幣原、天皇の意志かといった目くらましが必要だったのではないか。しかし、吉田茂以降の日本の指導者は「第九条」という「非常識」を逆手にとって経済大国化を目指した。そこには「とりあえず今は」という留保があったはずである。問題は、後の指導者がその留保を忘れてしまったことだ。
憲法改正を拒むものには、国内的要因と国外的要因があった。その国外的要因の最大のものが、アメリカの対日政策である。アメリカが日本を「潜在的敵性国家」と見なしている限り、日米関係は「日米安保」の看板を掲げながら実際には日本を国際的非常識国家のままにしておくことになる。1980年代に「ロンヤス関係」の背後に隠されたアメリカの意志、アメリカの本音である「日本を従属国家に留め置く」ことに小室直樹や清水幾太郎が怒りを燃やしても、国内外の広範な支持を得ることはできなかった。むしろ、過激で、奇矯な言動とされてしまったのである。
本書の価値は、「2011年10月」に、アメリカ民主党政権が、ビル・クリントン以来の「親中避日」から一転して「中国を軍拡と危険な覇権主義国家」と見なし、「日本の本格的防衛力強化の提言」を分析していることである。議論は「日本に於ける中国に対する中距離ミサイルの配備」「日本の核武装の現実化」まで進んでいる。このアメリカの劇的な変化が、マスコミの報道でははっきり分からない。現在のアジアにおける中国の膨張戦略を虚心に見れば、このようなアメリカの対日政策の変化は当然のことだ。問題はむしろ、日本がこのチャンスを生かして、外交防衛政策の基本になる「日本人による日本人のための憲法」を定めることができるかということにある。
憲法改正へ安倍政権は、「まず96条改正を」と主張しているが、手順として間違っていない。「衆参両院の三分の二の賛成をもって」という規定は「過半数」に改めるべきである。現実的な国家にならない限り、国民の生命や財産、自由や人権、そして国家としての矜恃を守ることはできない。
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憲法が日本を亡ぼす 単行本 – 2012/11/12
古森義久
(著)
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改憲を迫るアメリカ、うやむやにする日本。 日本の切り捨てへ、アメリカのカウントダウンはもう始まっている! アメリカが日本を見捨てるとき、中国は笑う。日本はもはやアメリカにとってアジアで一番重要な国ではない! 護憲か! 日米同盟か! あなたはどちらを選ぶ! ?
- 本の長さ256ページ
- 言語日本語
- 出版社海竜社
- 発売日2012/11/12
- 寸法2 x 13.5 x 19.5 cm
- ISBN-104759312773
- ISBN-13978-4759312775
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商品の説明
著者について
古森義久(こもり よしひさ) 産経新聞ワシントン駐在編集特別委員兼論説委員。国際教養大学客員教授。東京生まれ。昭和38(1963)年、慶應大学経済学部卒。米国ワシントン大学留学。毎日新聞社社会部記者、サイゴン・ワシントン両特派員、政治部、編集委員を歴任。87年に産経新聞社に移り、ロンドン・ワシントン支局長、初代中国総局長を経て、2000年12月より現職。81~82年、米国カーネギー国際平和財団上級研究員。 ベトナム報道でボーン国際記者賞、「ライシャワー核持ち込み発言」報道で日本新聞協会賞、東西冷戦終結報道で日本記者クラブ賞、著書「ベトナム報道1300日」で講談社ノンフィクション賞などを受賞。 著書に『「中国の正体」を暴く』(小学館)、『アメリカはなぜ日本を助けるのか』(産経新聞出版)、『アメリカが日本を捨てるとき』(PHP)、『アメリカでさえ恐れる中国の脅威!』(ワック)などがある。
登録情報
- 出版社 : 海竜社 (2012/11/12)
- 発売日 : 2012/11/12
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 256ページ
- ISBN-10 : 4759312773
- ISBN-13 : 978-4759312775
- 寸法 : 2 x 13.5 x 19.5 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 745,949位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 111位日米安全保障
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
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2013年1月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2014年1月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
中国の台頭やアメリカ経済の悪化で、日米同盟を取り巻く状況は冷戦時代とは大きく変わった。
憲法9条が日米の緊密な軍事的連携の妨げとなり、日米の溝と対日不信(安保ただ乗り論)は深まる一方。ネオコンや共和党議員だけでなく、既に上下院とも日本の改憲を望む声が多数だという。
その具体的な事例、そしてもはや日本にとって足枷でしかない9条の弊害を、本書は詳しくリポートする。
本書は肝腎のアメリカの戦略の変化や軍予算の削減の一因でもある経済の悪化に触れていないが、「今のアメリカは日本国憲法(改憲問題)をどのようにみているか」を知りたい方なら読んで損はない。
我が国が、多くの場合受動的で外圧頼みなのは情けないが・・・
第3部「憲法はどう作られたのか」では、筆者がGHQ憲法草案作成の実務責任者であった元民生局のケーディス大佐に対して1981年に行ったインタビューを70ページ以上に渡って収録。
ここでケーディス氏は、「憲法9条の発案者が(マッカーサー・幣原・昭和天皇の)誰であるかは分からない」と明言している。
たとえそれが誰の発案であっても、マッカーサーが「渡りに船」とばかりに喜んでそれを採用し民生局に草案作りを指示したわけだから、日本としては押し付けられたものであることに変わりはない。
戦後史初級者(調べ始めたのは割と最近)である私には、当時の裏事情のあれこれも面白かった。
憲法9条が日米の緊密な軍事的連携の妨げとなり、日米の溝と対日不信(安保ただ乗り論)は深まる一方。ネオコンや共和党議員だけでなく、既に上下院とも日本の改憲を望む声が多数だという。
その具体的な事例、そしてもはや日本にとって足枷でしかない9条の弊害を、本書は詳しくリポートする。
本書は肝腎のアメリカの戦略の変化や軍予算の削減の一因でもある経済の悪化に触れていないが、「今のアメリカは日本国憲法(改憲問題)をどのようにみているか」を知りたい方なら読んで損はない。
我が国が、多くの場合受動的で外圧頼みなのは情けないが・・・
第3部「憲法はどう作られたのか」では、筆者がGHQ憲法草案作成の実務責任者であった元民生局のケーディス大佐に対して1981年に行ったインタビューを70ページ以上に渡って収録。
ここでケーディス氏は、「憲法9条の発案者が(マッカーサー・幣原・昭和天皇の)誰であるかは分からない」と明言している。
たとえそれが誰の発案であっても、マッカーサーが「渡りに船」とばかりに喜んでそれを採用し民生局に草案作りを指示したわけだから、日本としては押し付けられたものであることに変わりはない。
戦後史初級者(調べ始めたのは割と最近)である私には、当時の裏事情のあれこれも面白かった。
2013年1月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
目新しいものは何もなかった。
ただただ「アメリカの期待に応えなければならない」と言っているだけである。
「アメリカの期待に応えないと何か困ることがあるのか?」と言いたくなる。
改憲せずとも日本は亡びないという思いを強くした。
[...]
ただ一点、日本国憲法の起草に直接たずさわった人物へのインタビューは興味深かった。
しかしこれはあくまで歴史上の事実であり、それ以上でもそれ以下でもない。
ただただ「アメリカの期待に応えなければならない」と言っているだけである。
「アメリカの期待に応えないと何か困ることがあるのか?」と言いたくなる。
改憲せずとも日本は亡びないという思いを強くした。
[...]
ただ一点、日本国憲法の起草に直接たずさわった人物へのインタビューは興味深かった。
しかしこれはあくまで歴史上の事実であり、それ以上でもそれ以下でもない。
2013年5月19日に日本でレビュー済み
3年4か月にわたった民主党政権が下野して、安倍自民党政権による「憲法改正」が7月に予定される参議院選挙の論点になりそうだ。本書の上梓は2012年11月、鳩山・菅に続く野田前首相のときであり、おもに安全保障の観点から憲法改正の緊急性を論じている。民主党政権は普天間基地移転問題の失敗から日米同盟の弱体化を招き、軍事大国化しつつある中国は、野田前首相の尖閣諸島国有化を契機に公船による我が国領海への侵入を繰り返し既成事実化を図っており、最近、中国共産党系新聞は「沖縄も自国領土である」ことまで示唆し始めている。目の前にある安全保障上の危機は、日米同盟の緊密化と現行憲法下でも可能という「集団的自衛権の解禁」、そして最終的には憲法9条を含む憲法の改定が必要であることを如実に示している。
現行憲法は、戦後GHQの占領下にGHQ民政局長ホイットニー准将の下にいた民政次長ケーディス大佐が責任者となり、わずか10日間で憲法草案を作成したことはよく知られている。本書の「第三部 憲法はどう作られたのか」は1981年、著者が75歳のケーディス氏と長時間インタビューした歴史的価値のある貴重な記録である。ケーディス氏は「交戦権」の意味もよく判らずに9条を作った。これだけ見ても如何に杜撰に憲法が作られたかが明らかである。江藤淳は1980年に「1946年憲法−その拘束」を上梓して「GHQが憲法を起草したことに対する批判」と「検閲制度への言及」を禁じたなかで1946年憲法が起草されたことを明らかにした。
以下、余談であるが、毎年、憲法記念日が近づくと地元図書館では占領下1947年に政府が中学生の副読本として配布された『あたらしい憲法のはなし』のリプリント版が配布される。それによると、「昭和21年4月10日に総選挙が行われ、あたらしい国民の代表がえらばれて、その人々がこの憲法をつくった」と記されている。この冊子を予算をかけて配布するのであれば当時は報道できなかった憲法作成の事情について追記するべきであろう。
現行憲法は、戦後GHQの占領下にGHQ民政局長ホイットニー准将の下にいた民政次長ケーディス大佐が責任者となり、わずか10日間で憲法草案を作成したことはよく知られている。本書の「第三部 憲法はどう作られたのか」は1981年、著者が75歳のケーディス氏と長時間インタビューした歴史的価値のある貴重な記録である。ケーディス氏は「交戦権」の意味もよく判らずに9条を作った。これだけ見ても如何に杜撰に憲法が作られたかが明らかである。江藤淳は1980年に「1946年憲法−その拘束」を上梓して「GHQが憲法を起草したことに対する批判」と「検閲制度への言及」を禁じたなかで1946年憲法が起草されたことを明らかにした。
以下、余談であるが、毎年、憲法記念日が近づくと地元図書館では占領下1947年に政府が中学生の副読本として配布された『あたらしい憲法のはなし』のリプリント版が配布される。それによると、「昭和21年4月10日に総選挙が行われ、あたらしい国民の代表がえらばれて、その人々がこの憲法をつくった」と記されている。この冊子を予算をかけて配布するのであれば当時は報道できなかった憲法作成の事情について追記するべきであろう。
2012年12月31日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
左巻きの多い日本のメディアの中で、古森氏は貴重な保守の人です。本書は、憲法改正の必要性を主にアメリカからの視点を軸に説くものです。これまで日本ではタブーであった憲法改正ですが、民主党政権の瓦解、不安定な東アジア、安倍政権の返り咲き...などで、やっと国民が憲法改正と向き合う時代が訪れたようです。