大学生の頃に読んで好きだった作品ですが、この度20数年振りに良い返しました。
こんな作品だったかな?という思いと年をとって宮本輝さんの世界が染み入ってくるなという気持ちがあい混ざり幸せな読者でした。
遠く離れた2人の女性の運命の日を通して作者は何を語りたかったのでしょう?感じ方は人それぞれである所、またその人の置かれたシチュエーションで異なってくることが輝さんの作品の素晴らしさだなと思います。
どちらの女性に感情移入するにせよ、やはりこの作品は名作であると思います。

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葡萄と郷愁 (文春文庫 み 3-10) 文庫 – 1995/1/10
宮本 輝
(著)
東京とブダペスト。人生の岐路に立つ二人の若い女性、純子とアーギ。同時代を生きる二人はどんな選択をするのか。幸福への願いに揺れる生と性を描く、宮本文学の名篇。(大河内昭爾)
- 本の長さ231ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日1995/1/10
- ISBN-104167348101
- ISBN-13978-4167348106
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登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (1995/1/10)
- 発売日 : 1995/1/10
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 231ページ
- ISBN-10 : 4167348101
- ISBN-13 : 978-4167348106
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,379,784位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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1947(昭和22)年、兵庫県神戸市生れ。追手門学院大学文学部卒業。
広告代理店勤務等を経て、1977年「泥の河」で太宰治賞を、翌年「螢川」で芥川賞を受賞。その後、結核のため二年ほどの療養生活を送るが、回復後、旺盛な執筆活動をすすめる。『道頓堀川』『錦繍』『青が散る』『流転の海』『優駿』(吉川英治文学賞)『約束の冬』『にぎやかな天地』『骸骨ビルの庭』等著書多数。
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5 星
つけもの大好き
宮本輝氏の「葡萄と郷愁」を読み終えました。 今の自分はなるほど...と言った感覚でしょうか... 若い時に読んでいたらどんな感覚だったろうかと思わされる作品でした。 特に若い女性におすすめしたい作品です。 「葡萄と郷愁」は1985年10月17日という一日に、東京の沢木純子に起こったこと、ハンガリー・ブダペストのホルヴァート・アーギに起こったことが、交互に語られていきます。この交互に書かれた若き女性の人生への決断は考えさせられます。
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上位レビュー、対象国: 日本
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2017年4月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
宮本輝氏の「葡萄と郷愁」を読み終えました。
今の自分はなるほど...と言った感覚でしょうか...
若い時に読んでいたらどんな感覚だったろうかと思わされる作品でした。
特に若い女性におすすめしたい作品です。
「葡萄と郷愁」は1985年10月17日という一日に、東京の沢木純子に起こったこと、ハンガリー・ブダペストのホルヴァート・アーギに起こったことが、交互に語られていきます。
この交互に書かれた若き女性の人生への決断は考えさせられます。
今の自分はなるほど...と言った感覚でしょうか...
若い時に読んでいたらどんな感覚だったろうかと思わされる作品でした。
特に若い女性におすすめしたい作品です。
「葡萄と郷愁」は1985年10月17日という一日に、東京の沢木純子に起こったこと、ハンガリー・ブダペストのホルヴァート・アーギに起こったことが、交互に語られていきます。
この交互に書かれた若き女性の人生への決断は考えさせられます。

宮本輝氏の「葡萄と郷愁」を読み終えました。
今の自分はなるほど...と言った感覚でしょうか...
若い時に読んでいたらどんな感覚だったろうかと思わされる作品でした。
特に若い女性におすすめしたい作品です。
「葡萄と郷愁」は1985年10月17日という一日に、東京の沢木純子に起こったこと、ハンガリー・ブダペストのホルヴァート・アーギに起こったことが、交互に語られていきます。
この交互に書かれた若き女性の人生への決断は考えさせられます。
今の自分はなるほど...と言った感覚でしょうか...
若い時に読んでいたらどんな感覚だったろうかと思わされる作品でした。
特に若い女性におすすめしたい作品です。
「葡萄と郷愁」は1985年10月17日という一日に、東京の沢木純子に起こったこと、ハンガリー・ブダペストのホルヴァート・アーギに起こったことが、交互に語られていきます。
この交互に書かれた若き女性の人生への決断は考えさせられます。
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2006年2月19日に日本でレビュー済み
同年同日、人生の岐路に立たされる、純子とアーギ。東京とブダペストで同時進行する、決断の一日。 あなたが純子なら、アーギなら、どんな決断をするだろう。
2005年9月7日に日本でレビュー済み
「幸福とは何か」という宮本輝さんのテーマが日本とハンガリーの二人の大学生の話を通し描かれた作品です。人生における大きな岐路にて選択を迫られた二人の主人公が悩みながら答えを出すまでの過程が過去や周りの人物を交え生々しく綴られています。
人はみな大切な思い出を持つものですが、思い出とともに成長できるか、執着してしまうか、未来に新しいもっと多くの思い出を見出すことができるか、を問う興味深い作品でもありました。一時の感傷に流されない二人の女性主人公の強さも魅力的でした。
人はみな大切な思い出を持つものですが、思い出とともに成長できるか、執着してしまうか、未来に新しいもっと多くの思い出を見出すことができるか、を問う興味深い作品でもありました。一時の感傷に流されない二人の女性主人公の強さも魅力的でした。
2015年8月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
1995年に連載された本書ですが、本編は東京とハンガリーに住む二人の美しい女性が将来の幸せを願い、人生の大きな選択をせまられる話です。読後は、あぁなる程なぁ~と思った程度でした。が、恥ずかしながら暫くして、本中にある宮本氏が考える、読者に与えるべき意図に気が付きました。
この話の梗概は止めておきますが「人間は何をもって“幸福”とするのだろうか?」と言うテーマで書かれていると思います。宮本氏が若い女性をはじめ、全ての人々に考えて欲しかったテーマだったのだと思います。そして、本作中の二人の女性達の下した大きな決断には、読者各自が良否を考えさせられる様になっています。読後には、各人各様の二人の女性の判断に対する思いが生まれる事になると思います。
本作中にハンガリーの英会話教師のカムストリック婦人が、決断を悩む女性に、とても良い話をしますが、テーマが深淵すぎるため、その教師も答えを出せません。答えは誰にも探す事は出来無いと思います。
私などは、糊口を凌ぐため日々の暮らしに忙しく、茫洋とした感しか有りませんでしたが、本書を読んで改めて考える機会を頂きました。私なりに分かった事は、その“何か”は、あまり欲張らず、身の丈に合ったもので有る方が、自分にとっては窮屈で無いような気がします。
いつも大阪弁を丸出しで、一癖も二癖もある人々を描き、その奥深くに有る心の底を巧みに追求する宮本氏の作としては、随分と毛色が違うなぁと思って読んでいましたが、ラストのページを見て、その意味が分かりました。人気な女性雑誌「J・J」での連載だったのでした。見事に読者層を考慮した一冊にある二つの名話でした!当時の事を考えますと宮本氏は東京の場面に少し馴染まなかったのでは無いかと変な想像をしてしまいます(笑)
本書発行から20年も経った今。現在、誰もが平和と幸福を求めるなかで、その幸福感は個々個人の感性のなかで養っていかなければ、潰れてしまう事なのだと改めて教えて頂きました。宮本輝氏、有難う御座いました!
この話の梗概は止めておきますが「人間は何をもって“幸福”とするのだろうか?」と言うテーマで書かれていると思います。宮本氏が若い女性をはじめ、全ての人々に考えて欲しかったテーマだったのだと思います。そして、本作中の二人の女性達の下した大きな決断には、読者各自が良否を考えさせられる様になっています。読後には、各人各様の二人の女性の判断に対する思いが生まれる事になると思います。
本作中にハンガリーの英会話教師のカムストリック婦人が、決断を悩む女性に、とても良い話をしますが、テーマが深淵すぎるため、その教師も答えを出せません。答えは誰にも探す事は出来無いと思います。
私などは、糊口を凌ぐため日々の暮らしに忙しく、茫洋とした感しか有りませんでしたが、本書を読んで改めて考える機会を頂きました。私なりに分かった事は、その“何か”は、あまり欲張らず、身の丈に合ったもので有る方が、自分にとっては窮屈で無いような気がします。
いつも大阪弁を丸出しで、一癖も二癖もある人々を描き、その奥深くに有る心の底を巧みに追求する宮本氏の作としては、随分と毛色が違うなぁと思って読んでいましたが、ラストのページを見て、その意味が分かりました。人気な女性雑誌「J・J」での連載だったのでした。見事に読者層を考慮した一冊にある二つの名話でした!当時の事を考えますと宮本氏は東京の場面に少し馴染まなかったのでは無いかと変な想像をしてしまいます(笑)
本書発行から20年も経った今。現在、誰もが平和と幸福を求めるなかで、その幸福感は個々個人の感性のなかで養っていかなければ、潰れてしまう事なのだと改めて教えて頂きました。宮本輝氏、有難う御座いました!
2003年7月18日に日本でレビュー済み
二人の女性の人生が交互に描かれている物語で、この二人の人生の交わりが一体いつなのかと考えながら読んでいきました。
人はいろいろな人と関わり、支えあい、時にぶつかり合って生きていきます。直接に二人が関わらなくとも、その関わりが(自ら知り得ないところで)できているのだと思います。
女性の生き方、とともに、人がどうやって人とともに生きるかということを考えさせられました。
人はいろいろな人と関わり、支えあい、時にぶつかり合って生きていきます。直接に二人が関わらなくとも、その関わりが(自ら知り得ないところで)できているのだと思います。
女性の生き方、とともに、人がどうやって人とともに生きるかということを考えさせられました。
2021年9月28日に日本でレビュー済み
私は、N県N市の市立図書館が主催する
市民読書会の常連です。
しかしこのところ
(少なくとも私にとっては)
クソ面白くもない作品ばかりで
フラストレーションが溜まりまくっていました。
「平場の月」「アルジャーノンに花束を」
「そして、バトンは渡された」「かがみの孤城」…
世間では評価の高い作品のようですが、
どれも私の嗜好に合わない。
思い屈した心を解放したくて、
高校時代、つまり平成初期から
ファンである宮本輝氏の作品を
久しぶりに読み始めたのですが、
その心理描写の上手さ、
感性の鋭さ、構成の巧みさ、
ストーリーの面白さ、
一人一人のキャラの魅力など、
全ての点に魅了されました。
宮本さんは、現代の日本において、
ミステリーの東野圭吾氏と並んで、
膨大な量の作品を書きまくって
いるのに作品の質が全くと言って
いいほど落ちる事の無い
存在自体が奇跡のような作家
なのではないでしょうか。
文体が本当に素晴らしいですよね。
私が小説家で、詩人としての資質も
多分に持っている人というと
すぐに連想するのが北杜夫と宮本輝です。
数十冊は宮本作品を読んでいますが、
これを機に未読の作品も読んでみたいと
思っています。
市民読書会の常連です。
しかしこのところ
(少なくとも私にとっては)
クソ面白くもない作品ばかりで
フラストレーションが溜まりまくっていました。
「平場の月」「アルジャーノンに花束を」
「そして、バトンは渡された」「かがみの孤城」…
世間では評価の高い作品のようですが、
どれも私の嗜好に合わない。
思い屈した心を解放したくて、
高校時代、つまり平成初期から
ファンである宮本輝氏の作品を
久しぶりに読み始めたのですが、
その心理描写の上手さ、
感性の鋭さ、構成の巧みさ、
ストーリーの面白さ、
一人一人のキャラの魅力など、
全ての点に魅了されました。
宮本さんは、現代の日本において、
ミステリーの東野圭吾氏と並んで、
膨大な量の作品を書きまくって
いるのに作品の質が全くと言って
いいほど落ちる事の無い
存在自体が奇跡のような作家
なのではないでしょうか。
文体が本当に素晴らしいですよね。
私が小説家で、詩人としての資質も
多分に持っている人というと
すぐに連想するのが北杜夫と宮本輝です。
数十冊は宮本作品を読んでいますが、
これを機に未読の作品も読んでみたいと
思っています。
2017年1月27日に日本でレビュー済み
『葡萄と郷愁』(宮本輝著、角川文庫)は、久しぶりに宮本輝の世界を堪能することができました。
1985年10月17日という一日に、東京の沢木純子に起こったこと、ハンガリー・ブダペストのホルヴァート・アーギに起こったことが、交互に語られていきます。
生まれた国も育った環境も現在の状況も全く異なり、互いに知り合うことのないこの二人の女子学生には、一つだけ共通点があります。
それぞれが抱いている夢を実現する道を進むべきか否か、人生の重要な分岐点に立っていることです。
純子は、好きな恋人と別れ、若き外交官夫人の座が約束されている結婚に踏み切るか、一方のアーギは、夢の国・アメリカの富豪の未亡人からのアメリカに移住して養女になってほしいという懇望を受け容れるかで、心が激しく揺れています。
二人とも、夢を実現したい、幸せになりたいという気持ちはもちろん強いのですが、それぞれ、祖国、家族、恋人、友人とのさまざまな関係に囲まれているのです。
「純子は、(英国で外交官の研修中の)村井紀之に対して、愛情はおろか、ひとかけらの男性も感じてはいなかったのである」。
「(恋人の池内幸介に向かって)ほとんど叫ぶみたいに、『私、村井さんを好きになったんじゃないわ。打算よ。いろんなこじつけを自分の中でやってるけど、本心は、外交官夫人に憧れてるだけなの』と純子は言った。・・・純子は、着ているものを脱いでいった。全裸になり、腰から下に薄い蒲団をかぶせてうつぶせ、FMのスウィッチを入れた。・・・蒲団をはがれ、純子はあおむけにされた。無言の、そしてお互いのいつもよりぎごちない、けれども不思議なひたむきさに満ちた動きは、快楽よりも愛情の確認に重きがおかれているかでありながら、常よりも烈しい快楽を一瞬のうちに走らせて、たちどころに消えた」。
「今夜だけにかぎらない。結婚を承諾する意味の手紙を出したあとも、幸介と肉体の関係を持ちつづけていたことを知ったら、村井はどうするだろう」。
「純子は、自分に決断を促した最大のものは、時間だと思った。そして、憧れへの実現に対する打算も」。
「(極貧の)生活の中で、アーギが競争率の烈しいブダペスト大学へ入学しようと心を決め、勉強に没頭する活力となったのが、じつは天性の美貌であったことを、彼女自身、最近になって気づいた。アーギの武器は、機知と負けん気と忍耐心だったが、それらを支えつづけてきた根や幹は、己の美しさとその質を熟知したところから生じる誇りだったのである」。
「『アーギは行きたいだろうな。どんなに寂しくても、苦しいことが起こっても、アーギなら負けないだろうからね』。そうつぶやく(恋人の)ジョルトの横顔はひどく頽廃的で、交わりのあとアーギの髪を撫でながら、しばしば彼のひきしまった知的な風貌に生じるものと同じ翳を持っていた」。
「アーギは、(友人の)ラースローの言葉を思い出していた。――俺は祖国を捨てることに感傷的だよ。いろんな難問をかかえてるにしても、俺が生まれて育った国なんだぜ。自由の国アメリカの豪邸に住む寂しいハンガリー人になるより、一生汚ないアパートで暮らしても、友だちのいる祖国のほうがいいよ。でもアーギは勇気と才能があるから、このハンガリーは窮屈で小さすぎるかもしれないね――」。
「一呼吸置いて、ラースローは訊いた。『アメリカに行くのかい?』。『行かないわ。自分の国で頑張るの』」。
時代が違おうと、置かれた環境が違おうと、自分の夢、幸福、愛、友情について深く考えさせられる、読み応えのある作品です。
1985年10月17日という一日に、東京の沢木純子に起こったこと、ハンガリー・ブダペストのホルヴァート・アーギに起こったことが、交互に語られていきます。
生まれた国も育った環境も現在の状況も全く異なり、互いに知り合うことのないこの二人の女子学生には、一つだけ共通点があります。
それぞれが抱いている夢を実現する道を進むべきか否か、人生の重要な分岐点に立っていることです。
純子は、好きな恋人と別れ、若き外交官夫人の座が約束されている結婚に踏み切るか、一方のアーギは、夢の国・アメリカの富豪の未亡人からのアメリカに移住して養女になってほしいという懇望を受け容れるかで、心が激しく揺れています。
二人とも、夢を実現したい、幸せになりたいという気持ちはもちろん強いのですが、それぞれ、祖国、家族、恋人、友人とのさまざまな関係に囲まれているのです。
「純子は、(英国で外交官の研修中の)村井紀之に対して、愛情はおろか、ひとかけらの男性も感じてはいなかったのである」。
「(恋人の池内幸介に向かって)ほとんど叫ぶみたいに、『私、村井さんを好きになったんじゃないわ。打算よ。いろんなこじつけを自分の中でやってるけど、本心は、外交官夫人に憧れてるだけなの』と純子は言った。・・・純子は、着ているものを脱いでいった。全裸になり、腰から下に薄い蒲団をかぶせてうつぶせ、FMのスウィッチを入れた。・・・蒲団をはがれ、純子はあおむけにされた。無言の、そしてお互いのいつもよりぎごちない、けれども不思議なひたむきさに満ちた動きは、快楽よりも愛情の確認に重きがおかれているかでありながら、常よりも烈しい快楽を一瞬のうちに走らせて、たちどころに消えた」。
「今夜だけにかぎらない。結婚を承諾する意味の手紙を出したあとも、幸介と肉体の関係を持ちつづけていたことを知ったら、村井はどうするだろう」。
「純子は、自分に決断を促した最大のものは、時間だと思った。そして、憧れへの実現に対する打算も」。
「(極貧の)生活の中で、アーギが競争率の烈しいブダペスト大学へ入学しようと心を決め、勉強に没頭する活力となったのが、じつは天性の美貌であったことを、彼女自身、最近になって気づいた。アーギの武器は、機知と負けん気と忍耐心だったが、それらを支えつづけてきた根や幹は、己の美しさとその質を熟知したところから生じる誇りだったのである」。
「『アーギは行きたいだろうな。どんなに寂しくても、苦しいことが起こっても、アーギなら負けないだろうからね』。そうつぶやく(恋人の)ジョルトの横顔はひどく頽廃的で、交わりのあとアーギの髪を撫でながら、しばしば彼のひきしまった知的な風貌に生じるものと同じ翳を持っていた」。
「アーギは、(友人の)ラースローの言葉を思い出していた。――俺は祖国を捨てることに感傷的だよ。いろんな難問をかかえてるにしても、俺が生まれて育った国なんだぜ。自由の国アメリカの豪邸に住む寂しいハンガリー人になるより、一生汚ないアパートで暮らしても、友だちのいる祖国のほうがいいよ。でもアーギは勇気と才能があるから、このハンガリーは窮屈で小さすぎるかもしれないね――」。
「一呼吸置いて、ラースローは訊いた。『アメリカに行くのかい?』。『行かないわ。自分の国で頑張るの』」。
時代が違おうと、置かれた環境が違おうと、自分の夢、幸福、愛、友情について深く考えさせられる、読み応えのある作品です。