明治に生まれた女性たちの強さを感じさせられました。
とにかく強い。
深い深い雪の中で…一人の少女が、インテリで厭世的な学生に道連れにされてしまった感のある第一章。学生は彼女を愛していたかどうかは定かじゃない。手紙を破り捨ててるし。でも、彼女はそれを知っていた気もする。
寒月がかかれば…ここに出てくる雪枝が本作の女性たちの中で、一番好きです。
生き生きと元気でさばさばしています。彼女の頁はいい空気が漂っており、思わず笑ってしまうエピソードがいっぱい。このように生きたいと思った程です。このお寺の娘は他の井上作品に登場するのか探してみたくなりました。
漲ろう水の面より…若く美しい未亡人と学友たちとのエピソード。まさに檜になろうとする翌檜たちの物語。学友は皆 純情で、痛々しさを伴ないます。
春の狐火…またしても強い女性が出てきます。男性よりもいざとなると思い切りが良く、後悔などしません。幻想的な中に驚きの結果がありました。
勝敗…何が勝ち負けか分からない物語。主人公の鮎太はライバルにはない節度があるように見えました。
星の植民地…たくさんのタイプの違う翌檜がでてきます。野性的な女性も出てきます。捨て身の強さと言うか、今の女性には無いたくましさをここでも感じました。
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あすなろ物語 (新潮文庫) 文庫 – 1958/12/2
井上 靖
(著)
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青春固有の魂の彷徨、「生きる」ことの悲哀。
人生の六つの場面を、あざやかな印象を残す女性を絡めて描く。
天城山麓の小さな村で、血のつながりのない祖母と二人、土蔵で暮らした少年・鮎太。北国の高校で青春時代を過ごした彼が、長い大学生活を経て新聞記者となり、やがて終戦を迎えるまでの道程を、六人の女性との交流を軸に描く。明日は檜になろうと願いながら、永遠になりえない「あすなろ」の木の説話に託し、何者かになろうと夢を見、もがく人間の運命を活写した作者の自伝的小説。
目次
深い深い雪の中で
寒月がかかれば
漲ろう水の面より
春の狐火
勝敗
星の植民地
井上靖 人と作品 福田宏年
『あすなろ物語』について 亀井勝一郎
本文冒頭より
鮎太と祖母りょうの二人だけの土蔵の中の生活に、冴子という十九歳の少女が突然やって来て、同居するようになったのは、鮎太が十三になった春であった。
冴子という名前は、それまでに祖母の口から度々聞いていたが、鮎太が彼女の姿を見たのは、その時が初めてであった。
鮎太はなんとなく不可(いけ)ないものが、静穏な祖母と自分の二人だけの生活を攪乱しにやって来たような気がした。
(「深い深い雪の中で」)
本書「解説」より
「あすなろ」とは云わば井上氏の人間愛の象徴のようなものだ。「あすなろ」であるところの人間によって、自分という人間もまた育てられて、人間を知ってきたということだ。ここには告白調はすこしもない。しかし今まで述べてきたような意味で、この作品は作者の感受性の劇の告白だと云っても差支えあるまい。幼年、少年、青年、壮年の各時期にわたって、心にうけた様々の人生の屈折を語っているのだ。「思い出す人々」を通じて、心に感受したものを、改めて反芻しているような作品である。
明日は何ものかになろうと努めている多くの「あすなろ」群像を通じて、人間の運命といったものをもこの作品は考えさせてくれる。
――亀井勝一郎(文芸評論家)
井上靖(1907-1991)
旭川市生れ。京都大学文学部哲学科卒業後、毎日新聞社に入社。戦後になって多くの小説を手掛け、1949(昭和24)年「闘牛」で芥川賞を受賞。1951年に退社して以降は、次々と名作を産み出す。「天平の甍」での芸術選奨(1957年)、「おろしや国酔夢譚」での日本文学大賞(1969年)、「孔子」での野間文芸賞(1989年)など受賞作多数。1976年文化勲章を受章した。
人生の六つの場面を、あざやかな印象を残す女性を絡めて描く。
天城山麓の小さな村で、血のつながりのない祖母と二人、土蔵で暮らした少年・鮎太。北国の高校で青春時代を過ごした彼が、長い大学生活を経て新聞記者となり、やがて終戦を迎えるまでの道程を、六人の女性との交流を軸に描く。明日は檜になろうと願いながら、永遠になりえない「あすなろ」の木の説話に託し、何者かになろうと夢を見、もがく人間の運命を活写した作者の自伝的小説。
目次
深い深い雪の中で
寒月がかかれば
漲ろう水の面より
春の狐火
勝敗
星の植民地
井上靖 人と作品 福田宏年
『あすなろ物語』について 亀井勝一郎
本文冒頭より
鮎太と祖母りょうの二人だけの土蔵の中の生活に、冴子という十九歳の少女が突然やって来て、同居するようになったのは、鮎太が十三になった春であった。
冴子という名前は、それまでに祖母の口から度々聞いていたが、鮎太が彼女の姿を見たのは、その時が初めてであった。
鮎太はなんとなく不可(いけ)ないものが、静穏な祖母と自分の二人だけの生活を攪乱しにやって来たような気がした。
(「深い深い雪の中で」)
本書「解説」より
「あすなろ」とは云わば井上氏の人間愛の象徴のようなものだ。「あすなろ」であるところの人間によって、自分という人間もまた育てられて、人間を知ってきたということだ。ここには告白調はすこしもない。しかし今まで述べてきたような意味で、この作品は作者の感受性の劇の告白だと云っても差支えあるまい。幼年、少年、青年、壮年の各時期にわたって、心にうけた様々の人生の屈折を語っているのだ。「思い出す人々」を通じて、心に感受したものを、改めて反芻しているような作品である。
明日は何ものかになろうと努めている多くの「あすなろ」群像を通じて、人間の運命といったものをもこの作品は考えさせてくれる。
――亀井勝一郎(文芸評論家)
井上靖(1907-1991)
旭川市生れ。京都大学文学部哲学科卒業後、毎日新聞社に入社。戦後になって多くの小説を手掛け、1949(昭和24)年「闘牛」で芥川賞を受賞。1951年に退社して以降は、次々と名作を産み出す。「天平の甍」での芸術選奨(1957年)、「おろしや国酔夢譚」での日本文学大賞(1969年)、「孔子」での野間文芸賞(1989年)など受賞作多数。1976年文化勲章を受章した。
- 本の長さ272ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日1958/12/2
- 寸法14.8 x 10.5 x 2 cm
- ISBN-104101063052
- ISBN-13978-4101063058
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猟銃・闘牛 | 敦煌 | あすなろ物語 | 風林火山 | 氷壁 | 天平の甍 | |
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【新潮文庫】井上靖 作品 | ひとりの男の十三年間にわたる不倫の恋を、妻・愛人・愛人の娘の三通の手紙によって浮彫りにした「猟銃」、芥川賞の「闘牛」等、3編。〈芥川賞受賞〉 | 無数の宝典をその砂中に秘した辺境の要衝の町敦煌──西域に惹かれた一人の若者のあとを追いながら、中国の秘史を綴る歴史大作。〈毎日芸術賞受賞〉 | あすは檜になろうと念願しながら、永遠に檜にはなれない”あすなろ”の木に託し、幼年期から壮年までの感受性の劇を謳った長編。 | 知略縦横の軍師として信玄に仕える山本勘助が、秘かに慕う信玄の側室由布姫。風林火山の旗のもと、川中島の合戦は目前に迫る……。 | 前穂高に挑んだ小坂乙彦は、切れるはずのないザイルが切れて墜死した──恋愛と男同士の友情がドラマチックにくり広げられる長編。 | 天平の昔、荒れ狂う大海を越えて唐に留学した五人の若い僧──鑒真来朝を中心に歴史の大きなうねりに巻きこまれる人間を描く名作。〈芸術選奨受賞〉 |
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蒼き狼 | 楼蘭 | 風濤 | 額田女王 | 後白河院 | 幼き日のこと・青春放浪 | |
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全蒙古を統一し、ヨーロッパへの大遠征をも企てたアジアの英雄チンギスカン。闘争に明け暮れた彼のあくなき征服欲の秘密を探る。 | 朔風吹き荒れ流砂舞う中国の辺境西域──その湖のほとりに忽然と消え去った一小国の運命を探る「楼蘭」等12編を収めた歴史小説。 | 朝鮮半島を蹂躙してはるかに日本をうかがう強大国元の帝フビライ。その強力な膝下に隠忍する高麗の苦難の歴史を重厚な筆に描く。〈読売文学賞受賞〉 | 天智、天武両帝の愛をうけ、”紫草(むらさき)のにほへる妹(いも)”とうたわれた万葉随一の才媛、額田女王の劇的な生涯を綴り、古代人の心を探る。 | 武門・公卿の覇権争いが激化した平安末期に、権謀術数を駆使し政治を巧みに操り続けた後白河院。側近が語るその謎多き肖像とは。 | 血のつながらない祖母と過した幼年時代──なつかしい昔を愛惜の念をこめて描く「幼き日のこと」他、「青春放浪」「私の自己形成史」。 |
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戦乱の春秋末期に生きた孔子の人間像を描く。現代にも通ずる「乱世を生きる知恵」を提示した著者最後の歴史長編。〈野間文芸賞受賞〉 | 野草の匂いと陽光のみなぎる、伊豆湯ヶ島の自然のなかで幼い魂はいかに成長していったか。著者自身の少年時代を描いた自伝小説。 | 両親と離れて暮す洪作が友達や上級生との友情の中で明るく成長する青春の姿を体験をもとに描く、『しろばんば』につづく自伝的長編。 | 高校受験に失敗しながら勉強もせず、柔道の稽古に明け暮れた青春の日々──若き日の自由奔放な生活を鎮魂の思いをこめて描く長編。 |
登録情報
- 出版社 : 新潮社; 改版 (1958/12/2)
- 発売日 : 1958/12/2
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 272ページ
- ISBN-10 : 4101063052
- ISBN-13 : 978-4101063058
- 寸法 : 14.8 x 10.5 x 2 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 60,801位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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(1907-1991)旭川市生れ。
京都大学文学部哲学科卒業後、毎日新聞社に入社。戦後になって多くの小説を手掛け、1949(昭和24)年「闘牛」で芥川賞を受賞。1951年に退社して以降は、次々と名作を産み出す。
「天平の甍」での芸術選奨(1957年)、「おろしや国酔夢譚」での日本文学大賞(1969年)、「孔子」での野間文芸賞(1989年)など受賞作多数。1976年文化勲章を受章した。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2018年9月21日に日本でレビュー済み
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2020年11月1日に日本でレビュー済み
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井上靖の自伝的小説は何冊かあるが、このあすなろ物語は、子供のときより社会人になり新聞記者なるまでの長い期間の物語である。
戦争をあいだにはさみ、戦後新聞記者になるまでを描いているがこの長い期間のなかで、女性に対しての憧れや尊敬、友人たちとの交流を通しての心 の成長を描いている。それを幾つかの短編を通して表現し、その他の自伝的小説をまとめたようになっている。この一冊を読むと しろばんばや北の
海 夏草冬波、その他の作品の
作者の精神の傾向と作風がある程度理解できる。
戦争をあいだにはさみ、戦後新聞記者になるまでを描いているがこの長い期間のなかで、女性に対しての憧れや尊敬、友人たちとの交流を通しての心 の成長を描いている。それを幾つかの短編を通して表現し、その他の自伝的小説をまとめたようになっている。この一冊を読むと しろばんばや北の
海 夏草冬波、その他の作品の
作者の精神の傾向と作風がある程度理解できる。
2018年8月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
こういうときは、本棚を漁ってもなかなか見当たらず、kindle版で購入し一気に読みました。
かつては読み切れなかったところ、新しい発見、さまざまな記憶とともに読み進められてよかった。
新たな感想としては、戦争後の展開がどうして必要であったのか、「あすなろ」というキーワードとなんとなくそぐわないような気がしてしかたがない。
これも次回読み返した折に、解決することなのかもしれない。次回までの宿題だな。
かつては読み切れなかったところ、新しい発見、さまざまな記憶とともに読み進められてよかった。
新たな感想としては、戦争後の展開がどうして必要であったのか、「あすなろ」というキーワードとなんとなくそぐわないような気がしてしかたがない。
これも次回読み返した折に、解決することなのかもしれない。次回までの宿題だな。
2016年3月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
井上靖自身の実体験が小説に活きているようで、生々しい描写もあるが、井上靖らしい軽やかな表現で綴られている。読み易く一気に最後まで読了した。
思春期の前後の件や、大学生の件は、自身を投影して読んでしまった。あの頃は楽しく。儚い時代だったなぁ
思春期の前後の件や、大学生の件は、自身を投影して読んでしまった。あの頃は楽しく。儚い時代だったなぁ
2015年6月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本書は梶鮎太を主人公に幼小期から壮年期までの成長してゆく過程を年代順に6部の構成にした物語です。主人公鮎太の名前は井上氏が幼少時代を過ごした湯ヶ島に流れる清流狩野川に住む鮎の名前からとった事が用意に想像出来ます。あすなろとは、明日は檜(ヒノキ)になろう、檜になろうと思いながら檜になれない翌檜(あすなろ)の木の逸話からつけられたものです。
「深い深い雪の中で」
井上氏が幼少期を過ごした湯ヶ島を舞台にしたものでしょう。小学生の鮎太は中学の冴子から旅館に来ている大学生に手紙を渡して欲しいと頼まれます。それが縁で鮎太は加島という大学生と知り合いになり、勉強の大切さを教えられるのです。当時の大学生といえば将来日本社会の中枢を担うエリートの存在でした。少女が大学生に憧れる姿を見て鮎太も朝6時に起きて猛勉強する様になります。
「寒月がかかれば」
鮎太の中学時代。静岡県N市に場所を変え渓林寺に下宿し中学に通うようになります。お寺の雪江には家事をたくさん任され辟易するけど、雪江は鮎太の一番の理解者でした。中学の学芸会で鮎太はリーダーの暗誦をしますが、それが生意気だと上級生から反発されます。その生徒たちを雪江が一喝したのでした。お寺の雪ちゃんは、有名で愛知、静岡の幾つかの競技の記録保持者で誰もが雪江には一目おいていたのです。雪ちゃんの男勝りな性格と鮎太の掛け合いが秀逸です。
「漲ろう水の水面より」
鮎太は九州の大学に入る。それは高校の頃に取り巻いていた佐分利信子の郷里が九州の博多だったからでした。だがその信子が東京へ移ったと手紙で知らされ、居ても立っても居られず鮎太は東京に向かうことにします。そこで中学時代の友人、金子、大沢、木原達に再開します。しっくりいかなく気まずいやり取りがあります。それは友人達が、すでに別々の目標を定めて歩き始めていたからでした。すでに彼らは“あすなろ”だったのです。鮎太は“あすなろ”の木にもなれていない事に気付かされ衝撃を受けることになります。
「春の狐火」
鮎太は兵隊生活をはさみ大手のR新聞社に入社します。軍隊生活を送った鮎太は今までとは違った活動的な人間になっていました。先輩記者、杉村春三郎に憧憬し春さんの郷里に狐火が出ると聞き「記事になる」と上司に相談し取材の許可をとります。中国山脈の小間の地に春さんを訪れ狐火の撮影に取り掛かる。撮影が終わり家へ帰り酒を飲み、気休めで外の風に当たりにゆくと女の声を聞き何やら怪しい雰囲気になるのです。それが電車の音とともに消え去ってしまう。それは春さんの娘、清香だったのだろうか?実にミステリアスな話です。春さんは3か月後に他界しました、清香を鮎太の嫁にやる、と言うことが出来なかった。
「勝敗」
鮎太はR新聞の社会部で遊軍記者(決まった任務に就かず必要に応じて活動できるよう待機している記者)として働いた。そこでL新聞社社会部の遊軍記者、左山町介と出会います。彼は1か月ほど前に東京から転勤してきたが、彼の来る前には無かった生彩が最近のL社社会面には溢れて紙面が刷新されてゆくのです。当然、鮎太も対抗意識を持つようになるが、思わぬ事で左山の違った一面を知ることになります。どんなに順風満帆に見える人にも必ず何かしらの苦悩が有ることを鮎太は知るのです。
「星の植民地」
B29の爆撃で日本の都市という都市は全く姿を消していた。誰も明日を信じる者はいない。しかし10か月ほどの間にかつての焼け跡の中には、バラックを建て、客を呼び、商売をして、のし上がろうと必死にもがく人々でいっぱいでした。終戦後の混沌とした時代ですが、すでに檜になろうという“あすなろ達”が溢れていたのでした。感動のラストです。
井上靖氏は、本書は自伝的な小説ではないと述べているが、井上氏の生涯と重ね合わせて読まないわけにはいかない。檜にはなれないって分かっていても必死に頑張ることが大切なんだと言うことを教えて頂きました。名作です!
「深い深い雪の中で」
井上氏が幼少期を過ごした湯ヶ島を舞台にしたものでしょう。小学生の鮎太は中学の冴子から旅館に来ている大学生に手紙を渡して欲しいと頼まれます。それが縁で鮎太は加島という大学生と知り合いになり、勉強の大切さを教えられるのです。当時の大学生といえば将来日本社会の中枢を担うエリートの存在でした。少女が大学生に憧れる姿を見て鮎太も朝6時に起きて猛勉強する様になります。
「寒月がかかれば」
鮎太の中学時代。静岡県N市に場所を変え渓林寺に下宿し中学に通うようになります。お寺の雪江には家事をたくさん任され辟易するけど、雪江は鮎太の一番の理解者でした。中学の学芸会で鮎太はリーダーの暗誦をしますが、それが生意気だと上級生から反発されます。その生徒たちを雪江が一喝したのでした。お寺の雪ちゃんは、有名で愛知、静岡の幾つかの競技の記録保持者で誰もが雪江には一目おいていたのです。雪ちゃんの男勝りな性格と鮎太の掛け合いが秀逸です。
「漲ろう水の水面より」
鮎太は九州の大学に入る。それは高校の頃に取り巻いていた佐分利信子の郷里が九州の博多だったからでした。だがその信子が東京へ移ったと手紙で知らされ、居ても立っても居られず鮎太は東京に向かうことにします。そこで中学時代の友人、金子、大沢、木原達に再開します。しっくりいかなく気まずいやり取りがあります。それは友人達が、すでに別々の目標を定めて歩き始めていたからでした。すでに彼らは“あすなろ”だったのです。鮎太は“あすなろ”の木にもなれていない事に気付かされ衝撃を受けることになります。
「春の狐火」
鮎太は兵隊生活をはさみ大手のR新聞社に入社します。軍隊生活を送った鮎太は今までとは違った活動的な人間になっていました。先輩記者、杉村春三郎に憧憬し春さんの郷里に狐火が出ると聞き「記事になる」と上司に相談し取材の許可をとります。中国山脈の小間の地に春さんを訪れ狐火の撮影に取り掛かる。撮影が終わり家へ帰り酒を飲み、気休めで外の風に当たりにゆくと女の声を聞き何やら怪しい雰囲気になるのです。それが電車の音とともに消え去ってしまう。それは春さんの娘、清香だったのだろうか?実にミステリアスな話です。春さんは3か月後に他界しました、清香を鮎太の嫁にやる、と言うことが出来なかった。
「勝敗」
鮎太はR新聞の社会部で遊軍記者(決まった任務に就かず必要に応じて活動できるよう待機している記者)として働いた。そこでL新聞社社会部の遊軍記者、左山町介と出会います。彼は1か月ほど前に東京から転勤してきたが、彼の来る前には無かった生彩が最近のL社社会面には溢れて紙面が刷新されてゆくのです。当然、鮎太も対抗意識を持つようになるが、思わぬ事で左山の違った一面を知ることになります。どんなに順風満帆に見える人にも必ず何かしらの苦悩が有ることを鮎太は知るのです。
「星の植民地」
B29の爆撃で日本の都市という都市は全く姿を消していた。誰も明日を信じる者はいない。しかし10か月ほどの間にかつての焼け跡の中には、バラックを建て、客を呼び、商売をして、のし上がろうと必死にもがく人々でいっぱいでした。終戦後の混沌とした時代ですが、すでに檜になろうという“あすなろ達”が溢れていたのでした。感動のラストです。
井上靖氏は、本書は自伝的な小説ではないと述べているが、井上氏の生涯と重ね合わせて読まないわけにはいかない。檜にはなれないって分かっていても必死に頑張ることが大切なんだと言うことを教えて頂きました。名作です!
2018年5月21日に日本でレビュー済み
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ここ2年ほど井上靖さんの小説にはまっています。情景の描写がとても美しいです。
井上靖さんの生い立ちが偲ばれる1冊です。
井上靖さんの生い立ちが偲ばれる1冊です。
2015年10月23日に日本でレビュー済み
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言うならば作者の回想録的小説なのですが、それぞれの思い出の時代に登場する女性がそれぞれ魅力的です。
なおかつ、第1章での雪の中で失われた若き男女の生命の姿に代表される、絵画的な象徴的詩情が随所に
くっきりと表れていて、非常に美しく感じられます。。そこが、作為に過ぎるという専門的意見もあるようですが、
いち読者としましては、素直にその井上文学の美を堪能したいと思います。
なおかつ、第1章での雪の中で失われた若き男女の生命の姿に代表される、絵画的な象徴的詩情が随所に
くっきりと表れていて、非常に美しく感じられます。。そこが、作為に過ぎるという専門的意見もあるようですが、
いち読者としましては、素直にその井上文学の美を堪能したいと思います。
2015年3月16日に日本でレビュー済み
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「あすなろ」という言葉に込められた、刹那的かつ官能的美しさを秘めた少年の成長譚。
古典とも言えるぐらいの本作だけれど、現代の誰でも通じるヒリヒリするような青春時代の痛みを彷彿させてくれると思う。
古典とも言えるぐらいの本作だけれど、現代の誰でも通じるヒリヒリするような青春時代の痛みを彷彿させてくれると思う。