普通のビジネスマンにもお勧めします。凡百な交渉術の本を読むことよりも、こうした達人同士の真剣勝負のやりとりを読むことで、その準備、気合い、緩急の付け方などを学べると思うから。とにかく驚いたのは2点。
ひとつは加藤陽子さんが「キッシンジャーが馬鹿に見える対談録を読んだのは初めてです。周恩来は本当に怖いです」と『戦争と日本人』の168頁で語っているほどの、周恩来の交渉術。原則は全く変えずに、あのキッシンジャー相手にメッテルニヒ論を戦わせながら議論を収斂させていく知力。正直、驚きました。毛沢東が最後まで周恩来と'ケ小平を切らなかったのが、本当によく分かりましたね。おそらく、どちらも、ずば抜けた知力と、大混乱を収集できる政治的な胆力を持っていたからなんじゃないのかな、と。こんな部下を使えたら、絶対に壊したくはないですもんね。
それと、台湾よりも主題は日本じゃないかと思うほどの、日本に関する意見交換の密度と、突っ込んだ内容。キッシジャーの《日本人は、ほかの人々の態度に対する感受性が鋭敏ではありません。日本人の文化的な求心性のためです。私がこのことをお話するのは、この日本人の特性は、彼らを相手にしなければならないすべての者に特別の責任を強いるからなのです。あなた方も我々もです。日本を増強し続けることは可能であり、やがて日本は我々が好むような政策を全精力をあげて追求するだろうと考えるアメリカ人を、私はいつもきわめてナイーブだと信じてきましたし、今でもそう信じています》《私は日本に対して幻想は抱いていません》に続く日本が再膨張したら他国と膨張を阻止するという発言には心底驚きました。

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周恩来・キッシンジャー機密会談録 単行本 – 2004/2/26
世界史を大きく変えた1971年のキッシンジャー秘密訪中.2002年,米国で彼と周恩来との会談記録が機密解除された.その内容は国際情勢全般,中ソ関係,インドシナ情勢,台湾,日本,ニクソン訪中時の共同声明草案をめぐる議論など多岐にわたる.本書により読者は歴史の目撃者たることが実感されるであろう.毛里和子氏の詳細な解説を付す.
- 本の長さ390ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2004/2/26
- ISBN-104000233890
- ISBN-13978-4000233897
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
2001年米国で機密解除された、1971年のキッシンジャー秘密訪中時の会談記録を邦訳。インドシナ情勢、台湾、日本、ニクソン訪中時の共同コミュニケ草案等多岐にわたる率直な意見交換の全容がわかる。詳細な解説を収録。
登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2004/2/26)
- 発売日 : 2004/2/26
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 390ページ
- ISBN-10 : 4000233890
- ISBN-13 : 978-4000233897
- Amazon 売れ筋ランキング: - 910,720位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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2010年12月15日に日本でレビュー済み
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冷戦の真っ只中である1972年において、ニクソン大統領が中国を電撃的に訪問した。このことは世界を驚かすとともに、冷戦構造を大きく変える時代の転換点ともなった出来事である。本書はその前年に、その前段階として両国間の交渉をまとめるために、キッシンジャーが極秘に中国に渡り周恩来と会談した貴重な機密会談録である。それが2001年にアメリカでほぼ公開されまとめられたことにより、そこに立ち会える運びとなった。
第一級の政治家である両者が繰り出す高い知性と交渉術はさることながら、泥沼のベトナム戦争をメンツを保ちながら少しでも有利に終結させ、政権維持をしたいキッシンジャー側と、東アジアに駐留するアメリカ軍の全面撤退ならびに、中国を台湾を含めた唯一の統一政府として認めさせたい周恩来側の生のやりとりは、実に生々しい緊迫感をもたらす。日本に対しては、経済大国化による軍事化に警戒する中国側と、必要以上に軍事化すると再び暴走する危険性があり、それはアメリカも望まない、よってそれを抑止するための日米安保条約であるとするアメリカ側の主張などが見受けられる。ちなみにこの会談は日本政府に事前通告はなかった。まさにニクソンショック以前の「キッシンジャーショック」である。
この会談は、東南アジアや東アジアを中心として本書をみれば地政学やリアルポリティクスを学べ、日本を中心としてれば日米安保条約とは何なのかといった手がかりがつかめる。手に汗も握れる非常に稀有な一冊である。
第一級の政治家である両者が繰り出す高い知性と交渉術はさることながら、泥沼のベトナム戦争をメンツを保ちながら少しでも有利に終結させ、政権維持をしたいキッシンジャー側と、東アジアに駐留するアメリカ軍の全面撤退ならびに、中国を台湾を含めた唯一の統一政府として認めさせたい周恩来側の生のやりとりは、実に生々しい緊迫感をもたらす。日本に対しては、経済大国化による軍事化に警戒する中国側と、必要以上に軍事化すると再び暴走する危険性があり、それはアメリカも望まない、よってそれを抑止するための日米安保条約であるとするアメリカ側の主張などが見受けられる。ちなみにこの会談は日本政府に事前通告はなかった。まさにニクソンショック以前の「キッシンジャーショック」である。
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