今巻は、思いがけない帰郷からはじまります。
しかし、それは重大な決意のもとの行動です。
前巻で、常磐さんに話すことが出来なかった「過去」
話さないでおこうとした「過去」
そのことが、二人の関係に微妙な違和感・しこりを生みます。
それに気付く春日は、自分の心に再び芽生えた
小さな悪の華にも気付くのです。
そして、不意に訪れた祖父の危篤がきっかけとなり、何かが春日の中で
大きく動き出した、という前巻の終わりでした。
帰郷してみて、あらためて自分の「過去」を突きつけられます。
親戚や、葬儀の参列者から向けられる冷ややかな視線。
心無い言葉。
けれど、そういったものの中でも、春日の決意は揺らぎません。
ただ、唯一手に入れてしまった仲村さんの手がかりによって
春日はさらに大きな決断を迫られます。
その決断が、常磐さんを春日が予想もしなかった行動へと
導いてしまいます。
そうして、訪れる仲村さんとの再会。
仲村さんのあまりの外見の変化に思わず、こぼれる
「憶えてる?」の言葉。
かつて、再会した佐伯さんや木下さんとは異なる表現です。
彼女の外見の変化は、あのできごとは彼女にとっても
向きあうことのできない、消し去ってしまいたい「過去」
だったのでしょうか。
今巻で印象的なのは、光と影、陰影ですね。
登場人物を照らす街の灯りや月の光。海岸沿いの街の
強い日差しとそれによって出来る極めて濃い影。
登場人物の瞳に現れる光と影を丁寧に描くことによって、
言葉を必要としない心理描写を行っているように思います。
そして、考え抜かれたシーンの数々。
たとえば、それは自らの「過去」に思い悩む木下さん。
キスシーンにおける春日の一瞬のためらいだとか、
仲村さんの母親の横顔から得た仲村さんの面影と確信。
こういった丁寧な描写と表現が、大きくうねる物語を
極めて静かに、淡々と語っているように見せてくれます。

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惡の華(10) (講談社コミックス) コミック – 2014/1/9
押見 修造
(著)
ボードレールを愛する少年、春日高男。ある日、彼は、放課後の教室に落ちていた、大好きな佐伯奈々子の体操着を、思わず盗ってしまう。それを、嫌われ者の少女・仲村佐和に見られていたことが発覚!! 盗んだことをバラされたくない春日に、彼女が求めた“契約”とは‥‥!?
危篤の祖父を見舞うため、3年半ぶりに故郷へ戻ってきた春日。しかし、夏祭りの事件以来、初めて姿を現した春日を親類たちは疎む。決して戻らない人間関係を感じつつ、祖父の葬儀に参加する春日の前に、かつての級友・木下が現れる。過去の自分に決着をつけるため、木下と話すことを決めた春日。そこで、未だ過去に囚われ続ける木下は、春日に問う。「仲村が今いるところ、聞きたい?」
危篤の祖父を見舞うため、3年半ぶりに故郷へ戻ってきた春日。しかし、夏祭りの事件以来、初めて姿を現した春日を親類たちは疎む。決して戻らない人間関係を感じつつ、祖父の葬儀に参加する春日の前に、かつての級友・木下が現れる。過去の自分に決着をつけるため、木下と話すことを決めた春日。そこで、未だ過去に囚われ続ける木下は、春日に問う。「仲村が今いるところ、聞きたい?」
- 本の長さ192ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2014/1/9
- 寸法11.7 x 1.3 x 17.3 cm
- ISBN-104063949931
- ISBN-13978-4063949933
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商品の説明
著者について
押見 修造
★漫画家。2002年、講談社ちばてつや賞ヤング部門の優秀新人賞を受賞。翌年、別冊ヤングマガジン掲載の『スーパーフライ』にてデビュー。同年より同誌に『アバンギャルド夢子』を連載した後、ヤンマガ本誌にて『デビルエクスタシー』などを連載。2008年より漫画アクションに連載した『漂流ネットカフェ』は、テレビドラマ化された。翌2009年より別冊少年マガジンにて『惡の華』を開始し、大好評連載中。
★漫画家。2002年、講談社ちばてつや賞ヤング部門の優秀新人賞を受賞。翌年、別冊ヤングマガジン掲載の『スーパーフライ』にてデビュー。同年より同誌に『アバンギャルド夢子』を連載した後、ヤンマガ本誌にて『デビルエクスタシー』などを連載。2008年より漫画アクションに連載した『漂流ネットカフェ』は、テレビドラマ化された。翌2009年より別冊少年マガジンにて『惡の華』を開始し、大好評連載中。
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上位レビュー、対象国: 日本
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2014年1月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2014年1月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
現実を否定して自分達の小さな世界を作り出した「過去」と向き合うことは、
現在の春日の存在を彼自身が認識するために必要なこと。
それを行って自分の罪を背負い、その上に立とうとする春日。
それはp21-22の「この町とは一体何だろう」という台詞から感じる。
だからこそ、「臭い者にはフタをする」群馬の描写は、
社会に対しての反応、現実との折合いとしては現実的でありながら、
社会の価値観に規定されすぎている妙な異質さ、弱さを備えている。
そして、実はそこに取り残された被害者が居たことを、この巻の序盤で思い出される。
昔の春日がそこにいる。
登場人物の瞳孔や視線、光の射し方から様々な憶測を行い、
その意味を探っている思考の最中に、斜め上の展開で衝撃を受けさせられる。
内容に関しては、怖いの一言。
9巻まではどちらかというと、読者の理想の展開であった。
そこで僕は「(なんかこの作品の展開としては釈然としないけど)常盤さん可愛いwグヒッww」
とつかの間の安堵感とか幸せな気分に浸っていた。むしろ「調子良いじゃん、春日」ぐらいの
ぬる〜い感覚でいた。
ところがどっこい、この巻ではそれが壊れてしまいそうな、
なんとも危うい綱渡りに叫びそうになりながら、ドキドキした高揚感を感じている。
誰もが感じているであろう破滅への予感、その恐怖で顔を覆った両手の隙間から、
その成り行きをじーと見ているいやらしさを自分に感じた。
春日にとって「小説」より「中村さん」の方が優先順位高かったのだろうか?
では下位概念となった小説で繋がる人間関係はどうなるのだろうか?
おまけページでは「イチ抜け」したある人だけ表情が違うところに注目。
現在の春日の存在を彼自身が認識するために必要なこと。
それを行って自分の罪を背負い、その上に立とうとする春日。
それはp21-22の「この町とは一体何だろう」という台詞から感じる。
だからこそ、「臭い者にはフタをする」群馬の描写は、
社会に対しての反応、現実との折合いとしては現実的でありながら、
社会の価値観に規定されすぎている妙な異質さ、弱さを備えている。
そして、実はそこに取り残された被害者が居たことを、この巻の序盤で思い出される。
昔の春日がそこにいる。
登場人物の瞳孔や視線、光の射し方から様々な憶測を行い、
その意味を探っている思考の最中に、斜め上の展開で衝撃を受けさせられる。
内容に関しては、怖いの一言。
9巻まではどちらかというと、読者の理想の展開であった。
そこで僕は「(なんかこの作品の展開としては釈然としないけど)常盤さん可愛いwグヒッww」
とつかの間の安堵感とか幸せな気分に浸っていた。むしろ「調子良いじゃん、春日」ぐらいの
ぬる〜い感覚でいた。
ところがどっこい、この巻ではそれが壊れてしまいそうな、
なんとも危うい綱渡りに叫びそうになりながら、ドキドキした高揚感を感じている。
誰もが感じているであろう破滅への予感、その恐怖で顔を覆った両手の隙間から、
その成り行きをじーと見ているいやらしさを自分に感じた。
春日にとって「小説」より「中村さん」の方が優先順位高かったのだろうか?
では下位概念となった小説で繋がる人間関係はどうなるのだろうか?
おまけページでは「イチ抜け」したある人だけ表情が違うところに注目。
2015年6月7日に日本でレビュー済み
仲村可愛いな。なんか普通の子になってしまった。
結局ヒロインは常盤なのか。ヒロイントリオで仲村のみが相手役のいないまま終わるのか。
ダブルヒロイン制にもかかわらず、後編になり、真のヒロインが登場し、実はトリプルヒロインだったというのは、
かなり斬新な設定。しかもその3人目とくっ付くという。
だが、物語のヒロインはといえばやはり仲村だったんだろうな。
なんだか、それを主張するための、したいだけの一巻という感じ。
(そういえば旧友は麻理そっくり。あの子もヒロイン顔。)
しかし表紙ほどダークさが無い。
というか、全く無い。
この程度では表紙は作者の劣化かブラフとさえ思ってしまう。
もっと黒い漫画であってほしかった。
結局ヒロインは常盤なのか。ヒロイントリオで仲村のみが相手役のいないまま終わるのか。
ダブルヒロイン制にもかかわらず、後編になり、真のヒロインが登場し、実はトリプルヒロインだったというのは、
かなり斬新な設定。しかもその3人目とくっ付くという。
だが、物語のヒロインはといえばやはり仲村だったんだろうな。
なんだか、それを主張するための、したいだけの一巻という感じ。
(そういえば旧友は麻理そっくり。あの子もヒロイン顔。)
しかし表紙ほどダークさが無い。
というか、全く無い。
この程度では表紙は作者の劣化かブラフとさえ思ってしまう。
もっと黒い漫画であってほしかった。
2014年1月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「もう、逃げたくなかった」3年半ぶりの空白を経て、遂にあの町での”惡”を常磐に告白する春日。
そんな春日の”惡”の告白を聞かされ、「急にこれが、くだらないものに思えてきた」と自身の小説を破り捨てる常磐。
そして仲村さんが居るという場所へ、木下のメモを頼りに赴く二人。
展開に大きな変化はなく、春日自身が過去に犯した惡に向き合い始める巻です。
そして最後のラストシーンには春日の惡の華を開花させた張本人、仲村さんが登場。
「何、その顔?」
その後に続く言葉が何なのか?仲村さんと再会する事によって、また惡の華を咲かせてしまうのか?
サラサラと読み進んでしまった割には、次巻で何が明かされ、暴かれ、変わっていくのか。ワクワクと期待が徐々に込み上がって来るというのが印象でした。
仲村さんを中心としたカバーイラストの背景も日の出なのか、日が落ちているのか。この巻を手に取った人達ごとに解釈があると思いますが、
仲村さんとの再会によって春日を取り巻く環境が良くも悪くも新しい方向へ転がっていく事は間違いありません。
最後の一つだけ気がかりなのは仲村さんとの再会で、常磐さんとの関係に綻びを生じさせてしまう匂いを感じさせます。
もちろん逆も叱りで過去にきちんとけじめを付け、本当の本当に”クソムシ”から脱却して常盤さんと真摯に向き合う方向へ進むかも知れません。
次巻が夏頃に発売なのが非常にもどかしいです。
そんな春日の”惡”の告白を聞かされ、「急にこれが、くだらないものに思えてきた」と自身の小説を破り捨てる常磐。
そして仲村さんが居るという場所へ、木下のメモを頼りに赴く二人。
展開に大きな変化はなく、春日自身が過去に犯した惡に向き合い始める巻です。
そして最後のラストシーンには春日の惡の華を開花させた張本人、仲村さんが登場。
「何、その顔?」
その後に続く言葉が何なのか?仲村さんと再会する事によって、また惡の華を咲かせてしまうのか?
サラサラと読み進んでしまった割には、次巻で何が明かされ、暴かれ、変わっていくのか。ワクワクと期待が徐々に込み上がって来るというのが印象でした。
仲村さんを中心としたカバーイラストの背景も日の出なのか、日が落ちているのか。この巻を手に取った人達ごとに解釈があると思いますが、
仲村さんとの再会によって春日を取り巻く環境が良くも悪くも新しい方向へ転がっていく事は間違いありません。
最後の一つだけ気がかりなのは仲村さんとの再会で、常磐さんとの関係に綻びを生じさせてしまう匂いを感じさせます。
もちろん逆も叱りで過去にきちんとけじめを付け、本当の本当に”クソムシ”から脱却して常盤さんと真摯に向き合う方向へ進むかも知れません。
次巻が夏頃に発売なのが非常にもどかしいです。
2014年3月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
先日まとめて購入し、次の日が仕事だというのに夜中の3時までかけて全部読んでしまった。
高校編に入ってからはそれまでの思春期の心の暴走は無くなり、
ある意味少女マンガチックとも言える様な展開が続いたが結構好きだった。常盤さん超かわいいしw
しかしこの10巻で仲村さんが登場するとそれまでの高校編全てが仲村さん登場の前座だったかのように感じてしまった。
それくらいのインパクト。
この作者さんは絵やコマ割りでの表現がとても上手く感じる。
あと個人的にはこの方のタイトルの言葉のセンスが好き。
とにかくこの先が楽しみすぎる。早く11巻を読みたい。
高校編に入ってからはそれまでの思春期の心の暴走は無くなり、
ある意味少女マンガチックとも言える様な展開が続いたが結構好きだった。常盤さん超かわいいしw
しかしこの10巻で仲村さんが登場するとそれまでの高校編全てが仲村さん登場の前座だったかのように感じてしまった。
それくらいのインパクト。
この作者さんは絵やコマ割りでの表現がとても上手く感じる。
あと個人的にはこの方のタイトルの言葉のセンスが好き。
とにかくこの先が楽しみすぎる。早く11巻を読みたい。
2014年1月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
希望が見えてきた前巻のラスト…
そして、彼は逃げることをやめて
過去に立ち向かう。
ひょんなことから故郷へ向い、
同時に仲村の居場所を知るが、
その先に見えるのは果たして…
本当に先が気になる作品ですね。
そして、彼は逃げることをやめて
過去に立ち向かう。
ひょんなことから故郷へ向い、
同時に仲村の居場所を知るが、
その先に見えるのは果たして…
本当に先が気になる作品ですね。
2014年3月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
主人公が過去と決別するために、
過去の人間関係に正面から向き合っていきます。
その最果てに中村と再開します。
この作品は繊細かつ丁寧に描かれているので
物語の進展が遅いように感じられますが、
良い作品だと思います。
毎回、次が楽しみです。
過去の人間関係に正面から向き合っていきます。
その最果てに中村と再開します。
この作品は繊細かつ丁寧に描かれているので
物語の進展が遅いように感じられますが、
良い作品だと思います。
毎回、次が楽しみです。
2014年1月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
こんなにも漫画にワクワクしたことは久しくなかった。
仲村さんの再登場によってどんな波乱が待ち構えているのか。私はワクワクが止まらないです。
次巻が心底待ち遠しいです。
仲村さんの再登場によってどんな波乱が待ち構えているのか。私はワクワクが止まらないです。
次巻が心底待ち遠しいです。