表題作『どれくらいの愛情』は、「強い意志と信念を持っていれば運命を変えられる」、行動の価値基準を自身の内面に持ち続けるための、「堅忍不抜のずっとずっと強い信念体系が必要だ」ということが主題となり、ほとばしるかのごとき思考の動きと、心の奥底からの衝動となった思念が、次々と伝わってくる。
そして、それができるか否かは、前作『もしも、私があなただったら』でも描いていることに、一にかかっている。
あとがきに、それが解となって明かされている。あとがきを読んだ後、また本編を、著作時期の順に読みたくなる。
目次を手にしたときに、長編小説でないことに落胆した読者は多いと思うが、あとがきを読んだ後は、著作時期順に読み、筆者のかの思考の動きに触れる楽しみを味わえることを知る。

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どれくらいの愛情 (文春文庫 し 48-1) 文庫 – 2009/8/4
白石 一文
(著)
熱狂的なファンを持つ白石一文氏による恋愛小説集。著者の生まれ故郷である福岡を舞台にして、究極の愛をつづります。全4篇を収録
- 本の長さ494ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日2009/8/4
- 寸法10.5 x 1.9 x 15 cm
- ISBN-104167772019
- ISBN-13978-4167772017
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登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (2009/8/4)
- 発売日 : 2009/8/4
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 494ページ
- ISBN-10 : 4167772019
- ISBN-13 : 978-4167772017
- 寸法 : 10.5 x 1.9 x 15 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 226,115位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 3,048位文春文庫
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2016年6月28日に日本でレビュー済み
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いつもながら愛憎の描写がとても腑に落ちる物語ばかりでした。短編なので飽きずに読み進められてあっという間に読み終わります
2010年2月5日に日本でレビュー済み
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直木賞をとった白石だが、まだこの小説を書いていたあたりは、くどいような文体が目立つ恋愛小説。とくに「ほかならぬ人」から白石を知った人がこの作品を読むと、がっかりか。しかしながら、九州の方言使いがリアル感を出しており、行ったことはないが風景描写など想像がかき立てられるのはやはりすごい!
2010年2月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
すらすらと読みやすい恋愛小説、というのが第一印象です。
軽めの恋愛小説なので、その行間から特別な意味を読み上げることも必要ないのでしょうが、
筆者が多くの人に話したいことや考えを「自分への手紙」や予言者に丸まる言わせているのが、
何となく芸がなくて…残念、そういう印象を受けました。言った物勝ちでしょうか。
登場人物の容貌がよく仕事が割とできること、両親の多くが早くに亡くなっていること(笑)、は
小説的な美しい恋愛を筆者的に成就させるのに必要な要素のようですね。
ロマンチストさん、恋に恋するタイプの方にはオススメの本です。
軽めの恋愛小説なので、その行間から特別な意味を読み上げることも必要ないのでしょうが、
筆者が多くの人に話したいことや考えを「自分への手紙」や予言者に丸まる言わせているのが、
何となく芸がなくて…残念、そういう印象を受けました。言った物勝ちでしょうか。
登場人物の容貌がよく仕事が割とできること、両親の多くが早くに亡くなっていること(笑)、は
小説的な美しい恋愛を筆者的に成就させるのに必要な要素のようですね。
ロマンチストさん、恋に恋するタイプの方にはオススメの本です。
2009年11月9日に日本でレビュー済み
かつて作者の白石一文は、ある雑誌のインタビューに答えて次のようなことを言っていた。
「僕はみなさんにこの腐りきった世の中によって植え付けられた価値観を変えてもらいたいと思って小説を書いています。美人かどうかや、子供を産む産まないに価値基準を置くのは間違いだし、自分が今幸福か不幸かの価値基準だって間違いです。」(2002年ダヴィンチ誌上)
そんなふうに力強く語っていた彼に期待をしながら作品を読んできた。
しかしこれまでの作品を読む限り、少なくとも私にとって価値観が変わるほどの強いインパクトを持った作品には出合っていない。
先ごろ山本周五郎賞を受賞した『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』でさえ、なるほどストーリー構成の巧みさや洗練された文体と読者に思考を促す文章はさすがと思いはしたが、それでも先の作者の言葉を具現化したものとは言い難い。
それはおそらく――この作者の作品についてしばしば言われることと重なるが――登場人物が優秀で美男美女揃い、不要とも思えるほどの濃厚な性描写、そして一流の企業に勤務するエリートの物語であったからだろう。
あれほど強い言葉を吐いたにしてはどこか保守的とも言える作品たちには、むしろ作者が自身に裏切られているような、そんな歯がゆさを感じずにはいられなかった。
そんな思いを抱きながら、一方で「この人はいつか凄い小説を書くのではないか」と期待もしていた。
個人的には白石一文のなかでナンバーワン。
中でも『ダーウィンの法則』『どれくらいの愛情』は秀逸である。
作品構成としてはやや強引さを感じない点がないではないが、それを補ってなお余りある作者の強烈なメッセージに心を打たれた。
「僕はみなさんにこの腐りきった世の中によって植え付けられた価値観を変えてもらいたいと思って小説を書いています。美人かどうかや、子供を産む産まないに価値基準を置くのは間違いだし、自分が今幸福か不幸かの価値基準だって間違いです。」(2002年ダヴィンチ誌上)
そんなふうに力強く語っていた彼に期待をしながら作品を読んできた。
しかしこれまでの作品を読む限り、少なくとも私にとって価値観が変わるほどの強いインパクトを持った作品には出合っていない。
先ごろ山本周五郎賞を受賞した『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』でさえ、なるほどストーリー構成の巧みさや洗練された文体と読者に思考を促す文章はさすがと思いはしたが、それでも先の作者の言葉を具現化したものとは言い難い。
それはおそらく――この作者の作品についてしばしば言われることと重なるが――登場人物が優秀で美男美女揃い、不要とも思えるほどの濃厚な性描写、そして一流の企業に勤務するエリートの物語であったからだろう。
あれほど強い言葉を吐いたにしてはどこか保守的とも言える作品たちには、むしろ作者が自身に裏切られているような、そんな歯がゆさを感じずにはいられなかった。
そんな思いを抱きながら、一方で「この人はいつか凄い小説を書くのではないか」と期待もしていた。
個人的には白石一文のなかでナンバーワン。
中でも『ダーウィンの法則』『どれくらいの愛情』は秀逸である。
作品構成としてはやや強引さを感じない点がないではないが、それを補ってなお余りある作者の強烈なメッセージに心を打たれた。
2007年1月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
小説というものを、作者がモチーフを得、プロットを練り、キャラクターを造形して、全て舞台演劇のごとく作り上げるものだとするならば、間違いなくこの小説は「小説」である。作者の「人は人の持つ意志で、いかなる時からも生き直すことができる」というメッセージは、力強く明快であり、登場人物の輪郭は決してぶれることなく作り上げられている。作者の非凡さと意志の強固さを思い知らされる。漱石・鴎外以降の小説の王道に位置する作品でしょう。
しかし、作中人物の迷いのない生き方、それこそ「迷う」ことすらも迷い無く造形されている作品世界には、若干の『機械臭』というかシステマティックなぎこちなさを感じた。そこが残念な点であり、今後の作者が克服すべき、「作者の存在が目立たない作品」「造形された人間が、自らの意志で動くことを許容するような作者」を示していると思った。
しかし、作中人物の迷いのない生き方、それこそ「迷う」ことすらも迷い無く造形されている作品世界には、若干の『機械臭』というかシステマティックなぎこちなさを感じた。そこが残念な点であり、今後の作者が克服すべき、「作者の存在が目立たない作品」「造形された人間が、自らの意志で動くことを許容するような作者」を示していると思った。
2006年12月19日に日本でレビュー済み
白石氏の作品の中では「私という運命について」の筆力、構成力に圧倒されましたが、今回の作品、私自身が「福岡出身」ということもあり、それぞれの舞台設定や言葉の息遣いまで伝わってくるようで、小説を読む楽しさを久々に満喫することができました。特に『20年後の私へ』『ダーウィンの法則』本書のために書き下ろされた表題作『どれくらいの愛情』は、作者の眼差しに心を揺さぶられる力強い作品でした。この一冊は、平成18年下半期の直木賞候補作品としてエントリーされましたが、ぜひ、受賞して欲しいと心より願っております。
2018年3月7日に日本でレビュー済み
短編集。
久々に小説をじっくりと読んだ。白石氏は福岡の出身らしく、登場人物は博多弁だ。この地域の出身者なら地理も詳しいだろうし、楽しむことができるに違いない。
やや強引だし、出てくる登場人物はどれも平凡な感じがしなくはない。
この男はスゲーな、とかこの女はスゲーなと強烈に印象に残った者は、そんなにいない。
強いて挙げれば表題作の「晶」という女。やくざな兄貴のために、婚約者二人との結婚をダメにされてしまう。そしてやくざな兄は、晶の婚約者正平の新規オープン店に火をつけてしまう。そんな兄貴の存在のせいで、彼女は自らを結婚詐欺師に仕立て、正平のもとから去るのである。
ちょっと無茶苦茶な展開なのだが、自然に読ませる力量を白石氏は持っている。
「自分とは何か」
というテーマを核心に抱いて書き続けてきたという白石氏。
それが成功しているかどうかは読者が判断することだが、上手いけど、まだなにかあるんじゃないのという感じがする。
自分が小説を書くとしたら、(というより書いているが)そのテーマは、人間をいかに観察している者だけが良い作品をかけるのではないかということ。
そして、人生は自力ではなく他力であることをテーマに描く。
久々に小説をじっくりと読んだ。白石氏は福岡の出身らしく、登場人物は博多弁だ。この地域の出身者なら地理も詳しいだろうし、楽しむことができるに違いない。
やや強引だし、出てくる登場人物はどれも平凡な感じがしなくはない。
この男はスゲーな、とかこの女はスゲーなと強烈に印象に残った者は、そんなにいない。
強いて挙げれば表題作の「晶」という女。やくざな兄貴のために、婚約者二人との結婚をダメにされてしまう。そしてやくざな兄は、晶の婚約者正平の新規オープン店に火をつけてしまう。そんな兄貴の存在のせいで、彼女は自らを結婚詐欺師に仕立て、正平のもとから去るのである。
ちょっと無茶苦茶な展開なのだが、自然に読ませる力量を白石氏は持っている。
「自分とは何か」
というテーマを核心に抱いて書き続けてきたという白石氏。
それが成功しているかどうかは読者が判断することだが、上手いけど、まだなにかあるんじゃないのという感じがする。
自分が小説を書くとしたら、(というより書いているが)そのテーマは、人間をいかに観察している者だけが良い作品をかけるのではないかということ。
そして、人生は自力ではなく他力であることをテーマに描く。