塩川治子氏の「旭のぼる」に続いてこの本を読んだ。史実に基づいた作品であろうがなかろうが、小説である以上私は文章自体の巧拙が気になる。この作家、「あとがき」では大いなる筆力を感じるのであるが、残念ながら本編ではそれが現れていないように思う。古典の現代語訳の合間を自身の創作で補填しているように見える部分がいくつかあったのも、その原因の一つだろう。筆勢は塩川氏の方がはっきりと上であった。
ただし、登場人物の姻戚関係が解説書よろしくきちんと説明されているので、非常に読みやすい本である。義仲に疎い私のような人間は明らかにこちらを先に読むべきであった。また、戦の描写もなかなかに詳細で力強く、読み応えがある。もっとも、今井兼平の壮絶なる最期や樋口兼光の忠節は平家物語で知れるのであるから、四天王の他の二人、根井行親(幸親)や楯親忠の討死をもう少し丁寧に書いてほしかったとは思う。
ちなみに、「旭のぼる」では嫡男義高は山吹の子であるが、こちらでは巴の子になっている。この辺りも、八百余年の昔を描いた歴史小説を読むおもしろさと言えるかもしれない。

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木曽義仲: 「朝日将軍」と称えられた源氏の豪将 (PHP文庫 お 46-2) 文庫 – 2004/11/1
小川 由秋
(著)
平家の大軍を倶利伽羅峠に破り、都に一番乗りを果たした勇将・木曽義仲。“朝日将軍”と称えられたその颯爽たる生涯を描ききった力作。
源氏の貴種に生まれながら、わずか2歳で父を討たれ、母に抱えられて木曽の地に逃れてきた駒王丸。土地の実力者・中原兼遠の屋敷にかくまわれ、その子どもたちと兄弟同然に育った駒王丸だったが、自らの五体を流れる源氏の血を知り、平家全盛の世に何をなすべきかに目覚めていく。
やがて義仲と名乗り、凛々しい青年武将となった彼のもとに、平家追討の令旨が下る。二十七歳の旗挙げである。その勇と武略で、横田河原の戦い、倶利伽羅峠の戦いを経て、わずか三年で平家を京から追い落とした義仲。だが上洛からわずか半年後、悲劇の運命が彼を待ち受けていた――。
時代に風穴を開け、颯爽たる勇姿を歴史に刻んで散った稀代の英傑を活写する力作小説。樋口兼光、今井兼平、巴御前といった脇役たちの活躍も印象的な、魅力ある物語に仕上がっている。
文庫書き下ろし。
- 本の長さ389ページ
- 言語日本語
- 出版社PHP研究所
- 発売日2004/11/1
- ISBN-104569662897
- ISBN-13978-4569662893
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登録情報
- 出版社 : PHP研究所 (2004/11/1)
- 発売日 : 2004/11/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 389ページ
- ISBN-10 : 4569662897
- ISBN-13 : 978-4569662893
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,175,942位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2008年7月24日に日本でレビュー済み
源平争乱期に信濃から彗星のように現れて平家から京を奪還し、朝日将軍と称えられた源義仲の生涯を題材とした作品です。
倶利伽藍峠で寡兵をもって平家の大軍を打ち破るなど戦略に秀でた武将ながらも、政略に疎く後白河法皇や源頼朝に翻弄されていく末路が物悲しく描かれています。
義仲と言えば京を陥れながらも田舎武者ゆえの粗暴な振る舞いで人心を失い、坂道を転がり落ちるように転落していった武将との評価が一般的です。
しかしこの作品での義仲は義父にあたる中原兼遠に学問を学んだ文武両道の武将として、公家に搾取される地方武士を救うために立ち上がったとしています。
義兄弟である樋口兼光や今井兼平、そして巴御前らとの心の繋がりや、理想と現実との狭間に苦しんでいく姿が、その純粋すぎる思いとともに読む者の心を締め付けていきます。
現実の義仲がどういった武将だったかはわかりませんが、敗者が悪く伝聞されるのは世の常であり、この作品通りの武将であったらと思えるような心に残る作品です。
倶利伽藍峠で寡兵をもって平家の大軍を打ち破るなど戦略に秀でた武将ながらも、政略に疎く後白河法皇や源頼朝に翻弄されていく末路が物悲しく描かれています。
義仲と言えば京を陥れながらも田舎武者ゆえの粗暴な振る舞いで人心を失い、坂道を転がり落ちるように転落していった武将との評価が一般的です。
しかしこの作品での義仲は義父にあたる中原兼遠に学問を学んだ文武両道の武将として、公家に搾取される地方武士を救うために立ち上がったとしています。
義兄弟である樋口兼光や今井兼平、そして巴御前らとの心の繋がりや、理想と現実との狭間に苦しんでいく姿が、その純粋すぎる思いとともに読む者の心を締め付けていきます。
現実の義仲がどういった武将だったかはわかりませんが、敗者が悪く伝聞されるのは世の常であり、この作品通りの武将であったらと思えるような心に残る作品です。