前作と同様に、バラエティに富んだ、しかしそれぞれにクオリティが高い
楽曲が収録されています。
古くからのファンがどうしても期待してしまいがちな、アルバムとしての
圧倒的な統一感はまたもやありませんし、相変わらず、ヒップ・ホップと
呼んで良いのかも少し考えてしまうような内容ではあります。
前作や本作については、私は、DJ SHADOWというヒップ・ホップを基底として
抱え込んでいるアーティストが、そのフィルターを通して現在自身が興味が
ある音を気負うことなく創作し、それらを集めてポンと発表した最新報告
として捉えています。
ここには、1stに漲っていた新しい物を創り出そうというような野心は伺え
ません。
現在の彼はイノベーターではなく、たくさんいる優秀なトラック・メーカーの
一人に過ぎないと思いますが、その分、リラックスしているように思えます。
私は古くからのファンですので、「What Does Your Soul Look Like」の頃に
迸っていた圧倒的な才気にまた打ちのめされたいという思いは今でもあります。
楽曲ごとに込められている情報量としては、当時の作品の濃密で膨大なそれに、
本作は遠く及ばないと思います。
正直、全く知らないアーティストの作品として偶然に聴いただけであるならば、
購入しなかったかもしれないなとは思います。
しかし、坊主好きだと袈裟まで好き、本作のあちこちに散見する懐の深い
SHADOW節にはやはりぐっと来てしまいますし、次作もまた購入するだろうなと
思います。
国内盤を買おうか、ひどく迷いました。
国内盤の特典は、17曲目にボーナス・トラックとして収録されている
「Def Surrounds Us」と、日本独自のカバー・アートです。
Def Surrounds Usについては、昨年、4曲目の「I've Been Trying」と共に
配信でリリースされており、またこれら2曲は、今年の6月にシングルCD
として先行発売された「I Gotta Rokk」にもそのリミックス・バージョン
と併せて収録されているようですので、それ程のお得感はありません。
Def Surrounds Usは、私が割と苦手なチャカポコ系のドラムン・ベースです
ので、それ程の魅力は感じなかったということもあります。
しかし、日本独自のカバー・アートに惹かれて、国内盤の購入を決めました。
このページの画像を見れば分かる通り、単に本国盤ではアルファベットで
描かれているアルバム・タイトルをカタカナにしてあるだけなのですが、
何故欧米人がカタカナを好きなのかが何となく分かるような気がする程に
キュートに思え、気に入ってしまいました。
国内盤には解説等は付いていませんし、価格差を考えると見合う出費だった
のかどうか、あまり自信が持てないのですが・・・。