1970年公開でアカデミー賞9部門ノミネート、うち作品、監督、主演男優、脚本、編集など主要部門7賞を独占した名作。巨費を投入した大作でも大味で低評価が相場の戦争映画では珍しく、幅広く評価されたのには理由がある。
本作の主役は“大戦車軍団”ではなく、“将軍パットン”だからだ。邦題と異なり原名は「PATTON」なので、テイストは「ヒトラー~最期の12日間」を陽気にした映画と言う表現が近い。
ローマ戦記をはじめ過去の戦史をつぶさに学んだ軍略家であり、ローマ帝国のユリウス・カエサルやスキピオ・アフリカヌス、カルタゴのハンニバルら栄光の帝国将軍達に連なって名を遺したいロマンチストな詩人であり、激烈な気性と忖度ない粗野な発言癖に自ら苦しむ煩悩の人であり、電光石火の攻撃的作戦に圧倒的な力を発揮し、敵弾に臆せず前線に立って部下に慕われる男。
第二次世界大戦の申し子らしい、生粋の武人だったパットンの勇猛果敢と傲慢さは予想通りだったが、米国南部の名家出身らしい気品とナイーブさが同居した矛盾した性格はなかなか見応えがある。
連合軍の顔として常に目立つ戦場を与えられ、華を持たせて貰える英国陸軍元帥モントゴメリーへの対抗心から無理して進撃するパットンは子供の様でもあり、闘う機会を得る為には元部下のブラッドレー大将の指示にも従順に従う姿はサラリーマンの中間管理職の様だ。
三時間弱の長尺なのに尻上がりに引き込まれるのは、パットンと言う複雑怪奇な人格を伝記を元に見事に洞察したフランシス・F・コッポラ(ゴッドファーザー・シリーズ監督)の脚本と、主演したジョージ・C・スコットの憎たらしくも憎めない見事な演技、そして「猿の惑星」で注目されたフランク・J・シャフナー監督の斬新で鮮やかな演出やカメラワークの相乗効果に拠るものだ。
冒頭の星条旗を背にした大胆な訓辞シーンに始まり、前線指揮や指令部での作戦会議だけでなく、古戦場や墓地を歩きながら呟く何気ないシーンや、アイゼンハワー連合軍総司令からの命令書に落ち込んだり、仏国や英国市民への演説で羽目を外したり、パットンの人間臭さがとても面白い。まるで信長に付き従う秀吉の如くだ。
映画前半は北アフリカ戦線での第2軍とシチリア上陸作戦での第7軍司令官、後半は第3軍司令官としてドイツ侵攻を果たし、バルジ作戦でバストーニュに包囲された101空挺師団救出の強硬進撃までを描く。
戦車軍団同士の戦闘シーンはCG後の今から観ればカメラの寄りも甘くて劇的とは言いがたいが、それでも当時スペイン軍の現役戦車や装甲車を数十両投入した撮影は十分に圧巻で、近年の戦争映画では恐らく観たことがない程の規模感だ。その後のベトナム戦争作品やスピルバーグの「プライベート・ライアン」以前の作品と割りきるしかない。
超攻撃的な軍神だが政治には到底向かないパットンを上手くいなして使ったアイゼンハワーは、本作では一度も画面には現れないが、流石に第34代大統領になる器だと感心する。
平和時ならば埋もれていた筈の男が、戦時下に英雄として讃えられ、そして終戦と共に消えていく。ラストシーンの後ろ姿は「男の美学」として今も焼き付いている。マスコミすら利用してドイツを欺く為のアイゼンハワーの深謀と、軍人として応えるパットンの心理変化が本作の醍醐味だと判れば、単なる戦争映画ではない人間ドラマであり、人材配置論の優れた傑作だと合点するだろう。
リマスターされたBlu-ray画質は素晴らしく文句無し。方や日本語吹替はパットンの声がマイルドで聴こえにくく今一つ。字幕でスコットのしゃがれ声を聴くのが正解。リーダーシップ論もちゃっかり学べるお薦めの傑作です。
パットン大戦車軍団 [DVD]
フォーマット | 色, ドルビー, ワイドスクリーン, 吹き替え, 字幕付き |
コントリビュータ | カール・ミカエル・フォーグラー, カール・マルデン, マイケル・ストロング, フランクリン・J・シャフナー, ジョージ・C・スコット |
言語 | 英語 |
稼働時間 | 2 時間 52 分 |
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商品の説明
猛将パットン将軍の壮烈な生涯が、迫真の戦争ドラマと交錯する!
アカデミー賞7冠を制した傑作戦争巨編!
映画の言葉 “臆病を恥じることは誇りを取り戻すチャンスとなる"
<キャスト&スタッフ>
ジョージ・S・パットン大将…ジョージ・C・スコット(大木民夫)
オマー・N・ブラッドリー大将…カール・マルデン(島宇志夫)
ホバート・カーパー准将…マイケル・ストロング(村松康雄)
ロンメル元帥…カール・ミカエル・フォーグラー(伊藤惣一)
監督:フランクリン・J・シャフナー
製作:フランク・マッカーシー
脚色:フランシス・F・コッポラ/エドマンド・H・ノース
軍事顧問:陸軍大将オマー・N・ブラッドリー
●字幕翻訳:飯嶋永昭 ●吹替翻訳:大野隆一
<ストーリー>
類い希なる戦略家として敵に恐れられながら、余りに激しい気性と名誉欲、そして奇行によって失脚を繰り返したパットン将軍。有名なロンメル将軍との戦車同士の決戦、パレルモ奪還での強引な戦法など史実そのままの迫真の戦争ドラマが展開する。
<ポイント>
◎1970年度アカデミー賞7部門受賞(作品賞、監督賞、主演男優賞、オリジナル脚本賞、編集賞、音響賞、美術監督賞)
●日本語吹替音声収録。なつかしい声優陣のあの声で本作が堪能できる!
※日本語吹替音声計約169分収録。現存するテレビ放送当時のものを収録しております。一部吹替の音源がない部分は字幕スーパーとなっております。
<特典>
●オーディオ・エッセイ:歴史上のパットン将軍について
●オリジナル劇場予告編集
・パットン大戦車軍団
・トラトラトラ!
・史上最大の作戦
登録情報
- アスペクト比 : 2.35:1
- メーカーにより製造中止になりました : いいえ
- 言語 : 英語
- 製品サイズ : 30 x 10 x 20 cm; 81.65 g
- EAN : 4988142900029
- 監督 : フランクリン・J・シャフナー
- メディア形式 : 色, ドルビー, ワイドスクリーン, 吹き替え, 字幕付き
- 時間 : 2 時間 52 分
- 発売日 : 2012/9/5
- 出演 : ジョージ・C・スコット, カール・マルデン, マイケル・ストロング, カール・ミカエル・フォーグラー
- 字幕: : 日本語, 英語
- 販売元 : 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
- ASIN : B008CDB218
- ディスク枚数 : 1
- Amazon 売れ筋ランキング: - 243,945位DVD (DVDの売れ筋ランキングを見る)
- - 1,918位外国の戦争映画
- - 18,518位外国のアクション映画
- - 24,523位外国のドラマ映画
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2021年3月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2019年4月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
子供の頃、NTVで”パットン大戦車軍団”を見ましたが、大戦車軍団はどこ??と言うことになってしまいました。
英題名はただの”PATTON"でしたね。
PATTON将軍を描いた映画で、当時は”こんなエゴイストが将軍をやっているなんて”と思いました。
Blu-rayの画面は自然で綺麗です。(シネラマ作品はフィルムも最高級品だったのでしょう。)
Blu-rayの評価は★5つ、作品は★3つです。
日本語でのナレーションはNTVの小林完吾さんで懐かしくなりました。
そういえば、”小さな恋のメロディ”でこの映画のポスターが何回か写っていた記憶が有ります。
英題名はただの”PATTON"でしたね。
PATTON将軍を描いた映画で、当時は”こんなエゴイストが将軍をやっているなんて”と思いました。
Blu-rayの画面は自然で綺麗です。(シネラマ作品はフィルムも最高級品だったのでしょう。)
Blu-rayの評価は★5つ、作品は★3つです。
日本語でのナレーションはNTVの小林完吾さんで懐かしくなりました。
そういえば、”小さな恋のメロディ”でこの映画のポスターが何回か写っていた記憶が有ります。
2020年11月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
パットン将軍の生き様がよくわかる映画。
2021年3月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
残念ながらレジューム機能がなかったです
2023年9月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
このソフトは再生できません。
交換したものも同じく再生できない。
こんな現象初めてです。
不良品を市場に出さないでほしい。
交換したものも同じく再生できない。
こんな現象初めてです。
不良品を市場に出さないでほしい。
2019年10月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
戦争映画の名作で非常に満足しています。
2018年4月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
BSで放送された時に録画した物を持っていたが安価なので購入このソフトは元になっているネガの状態が良いので
画質はいいですね、劇場公開時にも見ていますがジョージCスコットも若いです。
画質はいいですね、劇場公開時にも見ていますがジョージCスコットも若いです。
2016年1月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
視聴後、重厚な感覚が残る映画でした。
一人のヒーローが大活躍するわけではなく、いくつもの人間模様が描かれている厚みのある良い映画だと思います。
一人のヒーローが大活躍するわけではなく、いくつもの人間模様が描かれている厚みのある良い映画だと思います。