全米にくまなく拡がるテレビの放映網と催眠効果を併用(悪用)し、無意識のうちに人身を一方向へ誘導しようとするメディア王の暗躍に巻き込まれた整形外科医の孤立無援の戦いを、SFチックな装いで描く小粒なサスペンス映画。
映像分野での陰謀話っていうと、本作と製作年度も近く、サブリミナル効果を取り入れたリー・メジャース主演の「THE エージェンシー」を思い浮かべてしまう私ですが、美人モデルが事件の渦中にいるって設定から、今ならどちらかと言うと、作風はまったく異なるもののアル・パチーノ主演の「シモーヌ」が類似作品として真っ先に挙げられそうな内容です。
それまでもロボット遊園地(ウエスト・ワールド)やら、本作以後も殺人機械と警察の戦い(未来警察)、化石から抜き出したDNA情報で絶滅生物を復活させたり(ジュラシック・パーク)、恐怖の対象を具現化する謎の球体の話(スフィア)など...いつの時代でも一歩先を行き、一般的にはまだまだ知られていない科学的に奇抜なアイデアを作品に盛り込み、面白い物語を生み出すマイケル・クライトンが脚本と監督を兼任し、本作では「記憶を飛ばす光線銃」を登場させ目新しさはありますが、本作に限って言えば先走りが過ぎていて、いたって真剣なんだろうけど、見た目がおふざけに近くて、現実と空想、その境界線が微妙な笑いを誘う「怪作」となってしまっています。
更に致命的だと感じるのが、野暮ったい演出が連続するため見ていても気勢が上がらず、いつまでたっても肝心のサスペンスも盛り上がりませんし、クライマックスたる無機質な「機械仕掛けの撮影所」での対決も舞台が独特なだけに「奇妙な味わい」は残せていますが、最終的に作品全体を好印象に転じさせるまでの「見せ場」とまでには至っていないとこでしょうか。
映像の解像度は「まずまず」くらいのレベルで、普通に鑑賞するぶんには支障は感じません。
それと開示データでは「16:9/ビスタ」と表記されていますが、実際は「16:9/スコープ」で収録されているディスクです。