昭和33年、「ゴジラ」「ゴジラの逆襲」「空の大怪獣ラドン」「地球防衛軍」と緻密な特殊技術と本編のベストマッチが功を奏して大ヒットを連発していた東宝が、新たな特撮映画分野の開拓を思索して生まれた、和製空想科学ホラー「美女と液体人間」を契機に始まった「電送人間」「ガス人間第1号」と続いた「変身人間」シリーズ。 そして再び空想科学SF路線と怪獣路線に立ち返る時期を経て、満を持して製作に取りかかったのが「変身人間」の最高傑作「マタンゴ」。
海洋冒険奇譚を得意としていた作家ウィリアム・ホープ・ホジスンの超短編小説「闇の声」に着想を得て、当時の日本SF黎明期を支えていた作家でSFマガジン編集長の福島昌実氏とショートショートSFという新たな分野を開拓した星新一氏が共同でストーリーを書き起こしたのが「マタンゴ」。
公開当時はPTAが「子供たちにあんな気持ちの悪い映画は観せるな!」と大騒ぎをした、という逸話があるほど強烈な印象を日本人の中に残した。
だが、「マタンゴ」はただのホラーでもないし、ましてや「子供に観せられない気持ちの悪い映画」でもなかった。
隠れたテーマに、当時(今も)大流行していた麻薬汚染への警鐘がある。 美しく見えて人を虜にする毒キノコを麻薬の象徴とし、食べた人間を怪物に変えてしまうことで、麻薬中毒の恐怖を観る人々に訴えていたのだ。 つまり、「マタンゴ」はホラーではなく、麻薬中毒者の大幅増という社会の闇を鋭くえぐった社会派映画だったのだ。
それから時は流れて、唐突に発表されたのが、正統的な続編である本小説である。
出版当時は、てっきり映画用のノベライズで、近々映画化されるのだろうと思い込んで、期待に胸を膨らませていたが、期待は見事に裏切られた。
しかし、小説として立派に成立していて、読むたびに恐怖に襲われる。 現代、そして未来になっても人間は麻薬から逃れることはできない、という作者の予言めいた警鐘が、文体からひしひしと感じられるからである。
これは至高の小説である。
だが、いつの日か映画化され、社会を騒がせてほしいと願う。
(要注意)この小説を読む前に、レンタルでもいいから映画「マタンゴ」を必ず一見することをお薦めします。 そうしなければ、この小説の本当の怖さを理解することはできませんから。 映画を観ずに読むと「こんな気持ちの悪い小説を読んではいけない」となってしまうので。

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マタンゴ: 最後の逆襲 (角川ホラー文庫 12-23) 文庫 – 2008/1/25
吉村 達也
(著)
- 本の長さ590ページ
- 言語日本語
- 出版社角川書店
- 発売日2008/1/25
- ISBN-104041789877
- ISBN-13978-4041789872
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登録情報
- 出版社 : 角川書店 (2008/1/25)
- 発売日 : 2008/1/25
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 590ページ
- ISBN-10 : 4041789877
- ISBN-13 : 978-4041789872
- Amazon 売れ筋ランキング: - 145,488位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2019年12月31日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2022年7月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
面白い本では有りますが、映画の「マタンゴ」と比べてしまうと少し残念な部分も有ります。
映画の面白さと比べたりしなければ、概ね満足です。
でもこれは、あくまでも私としてはです。
映画「マタンゴが好きな人は、この本を読んで世界観を比べてみても良いかもしれません。
面白い本ではあると思います。
映画の面白さと比べたりしなければ、概ね満足です。
でもこれは、あくまでも私としてはです。
映画「マタンゴが好きな人は、この本を読んで世界観を比べてみても良いかもしれません。
面白い本ではあると思います。
2017年3月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
同名映画の後日談かな。
映画を見ているほうが楽しめるかもしれないけど、あらすじを知っているだけでも十分面白い。
映画を見ているほうが楽しめるかもしれないけど、あらすじを知っているだけでも十分面白い。
2008年5月10日に日本でレビュー済み
小学生の頃に映画「マタンゴ」を見て、怖いというよりも何か別の感想を抱いていました。
大人になってそれが哀愁とかやるせなさというものであったかと思うようになりました。
何せ、小学校時代に二度も「マタンゴ」の紙芝居を50枚で作ったりしたものです。その後
マタンゴとフランケンシュタイン、ドラキュラを戦わせるマンガも書いたりしました。
原作「闇の声」が読みたくなり、W・H・ホジスンの作品を今も収集しています。
そんな「マタンゴ」の続編は映画化が無理なら、いつか誰かに書いて欲しいと願ってきま
した。
本書については「水の溜まった石畳〜」とあのやるせないムードの挿入歌「思い出のせて」
が出てくる冒頭で、これは行けると断じました。あのヨットがあんな場所に現われるだけ
でも先を読みたくなる。しかも、内部に残された道具類のデテールは映画の通りです。
「バヤリース」と「バャリース」の違いの薀蓄も実に見事。あの映画を含めて当時の東宝
特撮映画(「モスラ」「キングコング対ゴジラ」など)にはバャリースがスポンサーになっ
ていました。テレビのバャリースのCMにも「マタンゴ」篇があったようですが、それこそ
お宝映像になるでしょう。映画はビデオ、DVDで何度も見ていたのですが、見落としてい
ることもあったかと、作者の思い入れにも共感、脱帽。
本書が「マタンゴ」再評価、ついには再映画化の機運になって欲しいと思うと同時に、
ひょっとして本書がリアルタイムで見た世代とそうでない若い世代の対話のきっかけにも
なってくれたらと思うのは余計なことでしょうか。
キノコと化したかつての東京タワーを夢見ながら・・・
大人になってそれが哀愁とかやるせなさというものであったかと思うようになりました。
何せ、小学校時代に二度も「マタンゴ」の紙芝居を50枚で作ったりしたものです。その後
マタンゴとフランケンシュタイン、ドラキュラを戦わせるマンガも書いたりしました。
原作「闇の声」が読みたくなり、W・H・ホジスンの作品を今も収集しています。
そんな「マタンゴ」の続編は映画化が無理なら、いつか誰かに書いて欲しいと願ってきま
した。
本書については「水の溜まった石畳〜」とあのやるせないムードの挿入歌「思い出のせて」
が出てくる冒頭で、これは行けると断じました。あのヨットがあんな場所に現われるだけ
でも先を読みたくなる。しかも、内部に残された道具類のデテールは映画の通りです。
「バヤリース」と「バャリース」の違いの薀蓄も実に見事。あの映画を含めて当時の東宝
特撮映画(「モスラ」「キングコング対ゴジラ」など)にはバャリースがスポンサーになっ
ていました。テレビのバャリースのCMにも「マタンゴ」篇があったようですが、それこそ
お宝映像になるでしょう。映画はビデオ、DVDで何度も見ていたのですが、見落としてい
ることもあったかと、作者の思い入れにも共感、脱帽。
本書が「マタンゴ」再評価、ついには再映画化の機運になって欲しいと思うと同時に、
ひょっとして本書がリアルタイムで見た世代とそうでない若い世代の対話のきっかけにも
なってくれたらと思うのは余計なことでしょうか。
キノコと化したかつての東京タワーを夢見ながら・・・
2020年7月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
映画マタンゴの閉ざされた空間、限られた登場人物による抜け出せない絶望感はなく、映画では謎は謎のまま終わっていったのに、50年後の科学の進歩でそれなりに(むりやり?)いろいろが解明されていて、未知の物体に抱く恐怖感もありません。映画の中の唯一の(?)生存者も登場しますが、彼の心境はウルトラQの最終話゛あけてくれ!”のようで、映画のラストシーンがよみがえって、彼の最後の願いに共感してしまいました。現代の登場人物たちの身体にも次つぎと変化が起きるなか、自分がその状況に置かれたら、といろいろ想像してしまいました。原作の゛闇の声”のように登場人物が少なければ個人の心境を掘り下げられるのだけれど、仲間がいると、みんなでキノコになるのなら怖くない的に安心感もでてしまい、そこらへんも映画の恐怖感の薄まっている理由の一つだと思います。というわけで映画とは別物ですが、読みやすくてボリュームを感じさせないので是非一読して、もしキノコになったら、自分ならどういう行動をとるのか考えてみるのも楽しいと思います。
2008年3月19日に日本でレビュー済み
「マタンゴ」にトラウマを植え付けられた映画ファンの一人である作者が
その世界観を見事に継承する形で描いた傑作と言えます。
「マタンゴ」が凡百のホラー作品と一線を画するのは
醜悪な怪物に襲われる人間の恐怖などという単純な内容ではなく
人間の内に潜むエゴイズムと、その怪物のどちらが真に醜悪なのか?
というテーマを現実として我々に突きつけてくるからに他ならない。
そして映画では絶海の孤島というミクロレベルで描かいたエゴを
本書では国家規模のエゴで描く事で単なる二番煎じに留まらない内容になっています。
(これはマタンゴ=某国の核実験の産物といった設定に着目した作者の着眼点の勝利。
反面マタンゴの怪奇性は若干、弱まってしまったようですが…。)
強大なエゴの流れに様々な形で関わる事になる7人の男女。
明かされてくる真実。そして最後の後味の悪さ…。
これこそが「マタンゴ」の真骨頂。
その世界観を見事に継承する形で描いた傑作と言えます。
「マタンゴ」が凡百のホラー作品と一線を画するのは
醜悪な怪物に襲われる人間の恐怖などという単純な内容ではなく
人間の内に潜むエゴイズムと、その怪物のどちらが真に醜悪なのか?
というテーマを現実として我々に突きつけてくるからに他ならない。
そして映画では絶海の孤島というミクロレベルで描かいたエゴを
本書では国家規模のエゴで描く事で単なる二番煎じに留まらない内容になっています。
(これはマタンゴ=某国の核実験の産物といった設定に着目した作者の着眼点の勝利。
反面マタンゴの怪奇性は若干、弱まってしまったようですが…。)
強大なエゴの流れに様々な形で関わる事になる7人の男女。
明かされてくる真実。そして最後の後味の悪さ…。
これこそが「マタンゴ」の真骨頂。
2017年5月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
読み始めた当初はワクワクしましたが、読んでる途中からアホらしくなってきました。いくら小説とはいえ、荒唐無稽すぎる。これじゃあ「東宝映画マタンゴ」を冒涜してるようなものだ。一応、映画のシーンを忠実に描写してる部分もあるので、☆一個は評価します。
2008年3月17日に日本でレビュー済み
願わくば続編を手にとり悪夢を追体験するがよい
それはリアルタイムで映画を観た者の特権である
本書はそうした者達に特に捧げられた物語だから
その者達が青年期にロックの洗礼をうけたならば
怪奇譚とは異質なカタルシスに遭遇するであろう
上記二条件を満足する限られた者が至上の読者だ
それはリアルタイムで映画を観た者の特権である
本書はそうした者達に特に捧げられた物語だから
その者達が青年期にロックの洗礼をうけたならば
怪奇譚とは異質なカタルシスに遭遇するであろう
上記二条件を満足する限られた者が至上の読者だ