落合前監督が言っていた。「投手のことはわからないから全部森コーチに任せた。最初の年の開幕投手は川崎憲次郎でいくこと以外は」
そうまで言われると「じゃあ、森コーチっていったいどんな仕事をしていたの?」と自然に興味がわく。すると間髪入れずまるで図ったように本書が出版された。
心憎いばかりに時宜を得た本書を読む。興味津々である。
まず日本シリーズでの山井・岩瀬の完全リレー。リアルタイムでは監督が独断で交代を決めていたように感じたが、実は違っていた。
あの空前の状況で、山井の「岩瀬さんでお願いします」の発言を聞いた森コーチから落合監督に情報が伝わっていった。
もちろん、投手・コーチ・監督さらに野手全員に「勝つために最善を尽くす」ことが見事に浸透しているから異論はなく、岩瀬登板がスンナリ決まる。
そして岩瀬はきちんと三人のバッターを抑えて見事に53年ぶりの日本一を勝ち取った。
「完全試合を日本シリーズで2人でやったことは1人でやるよりもっとすごいこと。山井もすごいが岩瀬もすごい」
この「勝つために」がチーム全体に深く浸透していたのはどうしてだろうか。森コーチの話はここからはじまる。
落合監督が森さんをコーチに呼んだ理由のひとつは鉄拳抜きで選手に怖がられる役ができるから。落合監督とはタイプがちがう。さすがは見事な配役だ。
しかしその縁が以前の故根本陸夫さんの推薦だったとは驚いた。
以下、数々の創意工夫が紹介される。3回を3点に抑えられる投手を増やす。投手全員に一軍マウンドを経験さす。
コーチ同士で毎晩飲んで過去の名監督を語りあう。10人同時に投げられるブルペンを実現するために裏方を増やす。
陸上出身のトレーナーに細かなレポートを頼む。シーズン中もきちんと練習する。バッター心理から見て相手の嫌がる投手交代をする。
外野手だがもともとは捕手の西武・和田を獲得したのは控え捕手を減らしたための「保険」も兼ねていたとは。
ローテーションは投手の都合から組むのが常識だが、谷繁と自軍投手の相性を第一義に考え、これをもとに谷繁優先の先発ローテーションを組んだりした。
しかし本書の楽しさは、数々の常識破りで革新的な戦略だけでなく、臨場感あふれるたくさんのコメントの中にもある。それはまるでベンチやキャンプに帯同しているかの錯覚をもよおすほどゾクゾクする。
「とにかくシゲに全部任せる。ただし開幕投手だけは川崎で行ってくれないか」「え〜!」温泉につかって少し油断しているときに、いきなり監督にこう言われた。
「広岡監督推奨の玄米食づくしにされた。まったくおいしくなかった。しかも、首脳陣は白飯を別室で食べているようだ。もちろん選手も白米と焼き肉を隠れてたらふく食べていた」
浅尾の入団当初。「なんか、大学生の3位で入ってきたヤツがですね・・・」「どうした? もう何かやらかしたのか」「まだ何もしていないんですが、ピアスはしているし、眉毛はそっているし・・・」
コネのない中「マルちゃん」を頼ってドミニカに行き、そこで偶然出くわしたのがなんと西武草創期の貧打の外国人ミューサーだったり。
「なんで若いヤツはこれほどいろいろ問題を起こすのか!といつも思う。具体的にはいっさい書くわけにはいかないが(!?) たくさんのトラブルの種を、表沙汰になる前になんとか収めてきたことだけは確かだ」
そしてあれだけの成績を残していたものの落合監督が昨年までで球団を追われてしまった事実。世間ではいろいろなことが言われてはいるが、私は納得できる理由が見つけられずにいた。
そのヒントが本書にあったと感じた。チームが勝つためには落合監督は情報漏洩を断固許さない。すると親会社の中日新聞は記事が書けなくて困ったあげく、中日OBのコーチにすがりつく。
しがらみがあってOBコーチも断りづらいからいつの間にか情報が漏れる。対策としてチームはOBコーチを排除せざるを得なくなる。新聞社は、生活のかかっている彼らOBを巻き込んで落合監督の続投を阻止した。
つまり、彼らにとっては8年が我慢の限界だったのかもしれない。そう考えると実に貴重な8年間だったとも思った。
話が長くなってしまった。まとめよう。
本の最後に森コーチはこう言っている。「8年間のチーム運営は、いろいろな業界で負けない組織を作るためのよいモデルになるのではないか」
そして落合監督は著書「采配」の中で言っていた。「超一流には協力者が必要だ」
森コーチは落合監督にとっておそらく最大の協力者だったろう。しかしこの本に登場する森さん以外のあらゆる協力者の存在も絶対に見逃せない。
落合ドラゴンズの強さの源泉は、多くの優秀な協力者たちの機能的な調和にこそあったのだと初めて気がついた次第である。
プライム無料体験をお試しいただけます
プライム無料体験で、この注文から無料配送特典をご利用いただけます。
非会員 | プライム会員 | |
---|---|---|
通常配送 | ¥410 - ¥450* | 無料 |
お急ぎ便 | ¥510 - ¥550 | |
お届け日時指定便 | ¥510 - ¥650 |
*Amazon.co.jp発送商品の注文額 ¥2,000以上は非会員も無料
無料体験はいつでもキャンセルできます。30日のプライム無料体験をぜひお試しください。
新品:
¥1,370¥1,370 税込
ポイント: 14pt
(1%)
無料お届け日:
3月31日 日曜日
発送元: Amazon 販売者: quickshop 横浜店
新品:
¥1,370¥1,370 税込
ポイント: 14pt
(1%)
無料お届け日:
3月31日 日曜日
発送元: Amazon
販売者: quickshop 横浜店
中古品: ¥1
中古品:
¥1

無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
参謀―落合監督を支えた右腕の「見守る力」 単行本(ソフトカバー) – 2012/4/6
森 繁和
(著)
{"desktop_buybox_group_1":[{"displayPrice":"¥1,370","priceAmount":1370.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"1,370","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"iGzEodqy0MwsLtpZRDye3KhLlwYuqNbCOQA0dc9ytI8sMTYiF%2BvUow1wtZ3%2FiWScyDcC5nBfy0kqkPocE93BC2phKhfLGkRghfe%2F%2FANDkV2nxOfRoiHVVAnt4PHUMBM5qNC7a5lVeVst4ug4pvNxz5mEieVUxTkaIPVxdHNbAZxYU1AAftJmBlhA%2FkRUcnEm","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"NEW","aapiBuyingOptionIndex":0}, {"displayPrice":"¥1","priceAmount":1.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"1","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"iGzEodqy0MwsLtpZRDye3KhLlwYuqNbC3VExtsCIUE2o5LKe5LGWughiI%2BpiwV7GAR98XF4IEXkGdX8DmVWlw%2BqmeNgsC7V9UeJEXpVGYDBKHuEdeZnXHyDG9YYiYjHJQf0CGEUOR9VQ3jplVinwMN1EhElJyogehfWOA%2BmgO2FxaqWTArFAtg%3D%3D","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"USED","aapiBuyingOptionIndex":1}]}
購入オプションとあわせ買い
後日記入します
名将・落合監督の右腕、懐刀として8年間、ドラゴンズのコーチを務めた、人望ある参謀が、落合監督の素顔から、若手の育て方、強い組織の作り方を、8年間のドラゴンズでのエピソードを例に、余すところなく書いた。
なぜドラゴンズは強かったのか? ジャイアンツを苦しめた選手起用の妙。
徹底した情報管理の秘策。落合采配はどこがすごいのか?
落合監督も、「またユニフォームを着られるなら、必ずシゲを呼ぶ」と、断言、本書の内容に太鼓判
名将・落合監督の右腕、懐刀として8年間、ドラゴンズのコーチを務めた、人望ある参謀が、落合監督の素顔から、若手の育て方、強い組織の作り方を、8年間のドラゴンズでのエピソードを例に、余すところなく書いた。
なぜドラゴンズは強かったのか? ジャイアンツを苦しめた選手起用の妙。
徹底した情報管理の秘策。落合采配はどこがすごいのか?
落合監督も、「またユニフォームを着られるなら、必ずシゲを呼ぶ」と、断言、本書の内容に太鼓判
- 本の長さ226ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2012/4/6
- 寸法13.4 x 1.7 x 19.1 cm
- ISBN-104062175983
- ISBN-13978-4062175982
よく一緒に購入されている商品

対象商品: 参謀―落合監督を支えた右腕の「見守る力」
¥1,370¥1,370
最短で3月31日 日曜日のお届け予定です
残り1点 ご注文はお早めに
¥1,304¥1,304
最短で3月31日 日曜日のお届け予定です
残り1点 ご注文はお早めに
¥1,556¥1,556
最短で3月31日 日曜日のお届け予定です
残り2点 ご注文はお早めに
総額:
当社の価格を見るには、これら商品をカートに追加してください。
ポイントの合計:
pt
もう一度お試しください
追加されました
一緒に購入する商品を選択してください。
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
商品の説明
著者について
森 繁和
名将・落合博満監督に請われ2003年より8年間、中日ドラゴンズの黄金期を支えた名投手コーチ。1954年千葉県生まれ。駒大高、駒沢大学、住友金属を経て1978年、西武ライオンズにドラフト1位指名。西武ライオンズの黄金期を主に抑え投手、投手コーチとして支える。その後、大島監督の日本ハム、森監督の横浜で投手コーチを務め、中日の投手コーチ、のちヘッドコーチに。2011年シーズン終了時、落合監督とともに退任。2012年は野球解説者、プロ入り以来初めてユニフォームを脱いだ。確たる野球理論、面倒味のいい親分肌の人間力で、ベテランから若手まで選手達に慕われ続けた。落合監督とは社会人時代に日本代表として世界で戦った仲間。名将のカゲで、チーム作り、組織作りをサポート。森繁和の存在がなければ、投手王国・中日、名将・落合監督は誕生しなかったかもしれない。どの球団もどんな監督も欲しがる名指導者である
名将・落合博満監督に請われ2003年より8年間、中日ドラゴンズの黄金期を支えた名投手コーチ。1954年千葉県生まれ。駒大高、駒沢大学、住友金属を経て1978年、西武ライオンズにドラフト1位指名。西武ライオンズの黄金期を主に抑え投手、投手コーチとして支える。その後、大島監督の日本ハム、森監督の横浜で投手コーチを務め、中日の投手コーチ、のちヘッドコーチに。2011年シーズン終了時、落合監督とともに退任。2012年は野球解説者、プロ入り以来初めてユニフォームを脱いだ。確たる野球理論、面倒味のいい親分肌の人間力で、ベテランから若手まで選手達に慕われ続けた。落合監督とは社会人時代に日本代表として世界で戦った仲間。名将のカゲで、チーム作り、組織作りをサポート。森繁和の存在がなければ、投手王国・中日、名将・落合監督は誕生しなかったかもしれない。どの球団もどんな監督も欲しがる名指導者である
登録情報
- 出版社 : 講談社 (2012/4/6)
- 発売日 : 2012/4/6
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 226ページ
- ISBN-10 : 4062175983
- ISBN-13 : 978-4062175982
- 寸法 : 13.4 x 1.7 x 19.1 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 550,058位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 15,090位スポーツ (本)
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2021年6月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
この人凄い人みたいだけど、本を読んでふうんだった。今はユーチューブで石毛選手が説明してますので、そちらを参考されたほうがわかりやすいし、この人の良さが伝わりますよ。
2018年1月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
正直、もっと深い話も読みたかった。
でも、確かにタイトル、サブタイトル通りの内容だ。
でも、確かにタイトル、サブタイトル通りの内容だ。
2012年5月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
80年代の森西武はとにかく強かった。
9年間で8回リーグ優勝したといえばどれだけ穴のないチームだったか、
当時を知らない方でも想像できるのではないか。
その森西武で投手として活躍し、コーチとしてチーム作りに貢献された森元ヘッドコーチは、
オレ竜に常勝球団の強さの秘密を伝授してくださったのだと著書を読んで納得した。
森氏も落合氏も、社会人野球を経験されてやや遅めのプロ入りのためか、
20代は土台を作れたら十分と考えていらっしゃったようだ。獲得した選手に焦らせないこと、
そして国籍で分け隔てせず、皆チームメートとして平等に扱うこと、
きっとこういうところが選手から信頼されていたのだろう。
評論家としてテレビで拝見する機会が増えた森氏だが、本著ではローテーションの組み方なども披露されているし、
会心の起用だったという2007年クライマックスシリーズの小笠原投手登板については、
小笠原投手は家族にすら登板をもらさなかった、
また某投手のピアスにビックリ、という「昭和の選手」らしい一面など
舞台裏を知りたい人には嬉しいエピソードも多い。
買って損はない本だと思う。
9年間で8回リーグ優勝したといえばどれだけ穴のないチームだったか、
当時を知らない方でも想像できるのではないか。
その森西武で投手として活躍し、コーチとしてチーム作りに貢献された森元ヘッドコーチは、
オレ竜に常勝球団の強さの秘密を伝授してくださったのだと著書を読んで納得した。
森氏も落合氏も、社会人野球を経験されてやや遅めのプロ入りのためか、
20代は土台を作れたら十分と考えていらっしゃったようだ。獲得した選手に焦らせないこと、
そして国籍で分け隔てせず、皆チームメートとして平等に扱うこと、
きっとこういうところが選手から信頼されていたのだろう。
評論家としてテレビで拝見する機会が増えた森氏だが、本著ではローテーションの組み方なども披露されているし、
会心の起用だったという2007年クライマックスシリーズの小笠原投手登板については、
小笠原投手は家族にすら登板をもらさなかった、
また某投手のピアスにビックリ、という「昭和の選手」らしい一面など
舞台裏を知りたい人には嬉しいエピソードも多い。
買って損はない本だと思う。
2013年8月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
落合氏の「采配」のサイドストーリーといった感じ。
思想的というより、エピソード満載。
思想的というより、エピソード満載。
2014年2月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
森さんがこういう人だとはまったく知らなかった。
というより、落合監督の影に隠れていたというべきか。
だとしたら、まさしく参謀にふさわしい。
落合監督の著書「采配」と合わせて読むと非常に楽しいです。
というより、落合監督の影に隠れていたというべきか。
だとしたら、まさしく参謀にふさわしい。
落合監督の著書「采配」と合わせて読むと非常に楽しいです。