惜しくも先日亡くなられた丸谷さんは、ミステリ好きで、その方面のエッセイ、書評、評論がかなりあり、また、著作、深夜の散歩(福永武彦、中村真一郎、との共著)も著されています。本書は、それらのものをまとめ、巻頭に向井敏さん、瀬戸川猛資さんとの鼎談を持ってきた、文庫オリジナルです。
全体は、'T:ハヤカワ・ポケット・ミステリは遊びの文化(先ほど挙げた三者鼎談です) 'U:深夜の散歩 先ほど挙げた著書の中から、丸谷さんの部分を取り出したもので、元々は、EQMMに連載刺されたものです。 'V:女のミステリー 雑誌、クラッシィに書かれたエッセイ 'W:ミステリーの愉しみ 種々の雑誌に掲載されたエッセイ 'X:ミステリー書評29選 週刊朝日、毎日新聞に掲載された書評欄からミステリに関するものを集めたもの 'Y:文学、そしてミステリー ミステリーに関する評論で、比較的長文のもの に分かれています。
'T:既に三者とも故人になられました。三者三様ですが、凄い本読みである事は共通しています。ポケミスがミステリ界に果たした功績は、確かに大きいですが、それにしても少し褒めすぎ、直ぐに品切れになるし、作品が偏重しすぎるし・・・ 'U:1962年当時、このようなミステリ・エッセイが書かれていたこと自体が凄いです!F・デュレンマットが取上げられていますし、カミュの異邦人はJ・M・ケインの郵便配達は2度ベルを鳴らす から大きな影響を受けている 等の鋭い指摘が目につきます。 'W:例のマーロウの有名な台詞、「しっかりしていなかったら、生きていられない。優しくなれなかったら、生きている資格がない。」は、一番最初、丸谷さんが名台詞と指摘されたんですね!知らなかった。そして、ホームズ学の諸問題でのモリアーティとニーチェの関係、小説作法でのミステリと食べ物の関係、面白く読ませてもらいました。 そして、最終章のG・グリーンにおけるノベルとエンターテインメントの問題・・・
しかし、凄い博識ですね!惜しい人を亡くしました!!!

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快楽としてのミステリ- (ちくま文庫 ま 12-4) 文庫 – 2012/11/7
丸谷 才一
(著)
- 本の長さ475ページ
- 言語日本語
- 出版社筑摩書房
- 発売日2012/11/7
- 寸法10.8 x 1.8 x 15.2 cm
- ISBN-104480429999
- ISBN-13978-4480429995
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登録情報
- 出版社 : 筑摩書房 (2012/11/7)
- 発売日 : 2012/11/7
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 475ページ
- ISBN-10 : 4480429999
- ISBN-13 : 978-4480429995
- 寸法 : 10.8 x 1.8 x 15.2 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 216,538位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 875位ちくま文庫
- カスタマーレビュー:
著者について
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1925(大正14)年、山形県鶴岡市生れ。東京大学英文科卒。1957年『笹まくら』で河出文化賞、1968年「年の残り」で芥川賞受賞。その後、小説、評論、エッセイ、翻訳と幅広い文筆活動を展開。『たった一人の反乱』(谷崎潤一郎賞)『裏声で歌へ君が代』『後鳥羽院』(読売文学賞評論・伝記部門) 『忠臣藏とは何か』(野間文芸賞)「樹影譚」(川端康成賞)『輝く日の宮』(泉鏡花文学賞、朝日賞)等、多くの著作がある。(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 人間的なアルファベット (ISBN-13: 978-4062160995)』が刊行された当時に掲載されていたものです)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2012年11月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2020年4月10日に日本でレビュー済み
『快楽としての読書』の「日本篇」と「海外篇」につづくシリーズ第3弾。
1953-2011年に書かれた評論・エッセイ・書評から、ミステリー/探偵小説にかかわる75篇を集めて一冊にしたもの。
ハヤカワ・ポケット・ミステリに関する向井敏、瀬戸川猛資との鼎談が冒頭に置かれているのだが、これが実におもしろい。ポケミスの歴史や思想、日本におけるミステリーの受容などがよくわかる。
クレイグ・ライス『素晴らしき犯罪』、パトリシア・ハイスミス『太陽がいっぱい』、フレデリック・フォーサイス『戦争の犬たち』といった作品への書評にも非常に鋭いものがある。
ただ、エーコや松本清張を扱った独自の評論には、あまり感心しなかった。
1953-2011年に書かれた評論・エッセイ・書評から、ミステリー/探偵小説にかかわる75篇を集めて一冊にしたもの。
ハヤカワ・ポケット・ミステリに関する向井敏、瀬戸川猛資との鼎談が冒頭に置かれているのだが、これが実におもしろい。ポケミスの歴史や思想、日本におけるミステリーの受容などがよくわかる。
クレイグ・ライス『素晴らしき犯罪』、パトリシア・ハイスミス『太陽がいっぱい』、フレデリック・フォーサイス『戦争の犬たち』といった作品への書評にも非常に鋭いものがある。
ただ、エーコや松本清張を扱った独自の評論には、あまり感心しなかった。
2013年12月11日に日本でレビュー済み
まずご注意。気をつけないと、本書読書中(か読後)に、紹介されている
数多の名作を読みたくなって、時間がいくらあっても足りなくなります。
はるか昔、丸谷さんの書評で、P.D.ジェイムスを知った。
お蔭で、彼女の『女には向かない職業』に夢中になり、『罪なき血』に慄然とした。
もちろん本書の魅力は、そんな懐かしい記憶を蘇らせくれるだけではありません。
何よりも、半世紀に及ぶ文業のエッセンスを掌中にできるということ。
他書でほとんど読んだはずの、1960年代から晩年までの丸谷さんの「名文」が、
この小さな一冊にぎっしり、つまっているということ。
個々の美点を見出し、それをわかりやすく、気持ちよく、
ただしホメ殺しにならないように、ほどほどのユーモアと、ときには、
微かなトゲとからかいもこめて、しかも千篇一律にならない修辞で紹介し続ける…
というのは、並大抵のことではない。それが、ここでは実現されています。
こうした、ほぼ年代順で並ぶ“丸谷節”による名作紹介とならんでグッと来るのが、
巻頭に置かれた鼎談。向井敏、瀬戸川猛資。この名前を見ただけで、瞼が熱くなる。
「東京人」1989年新春号(当時は季刊)初出のこの鼎談、かつて読んだはずだけど
(初の単行本化の青土社『丸谷才一と16人の世紀末のジャーナリズム大批判』か)、
お三方とも故人となったいま、読めば読むほど、引きつけられてしまいます。
当時63歳の丸谷、58歳の向井に対して41歳の瀬戸川。若い。しかしすでに熟成。
テーマは「ハヤカワ(・ポケット)・ミステリ」だが、その背後に広がるのは、
決してオタクなミステリ好きではない、深く広い読書体験と人間観察。
蘊蓄を開陳して頂いたうれしさ以上に、読書の深度、観察の角度にシビれます。
それにしても、丸谷さんは87歳、向井さんは71歳、瀬戸川さん50歳で逝去。
丸谷さんは已むを得ないかとしても(もちろん、もっと読ませて欲しかったが)、
瀬戸川さんはまさに早世。健在ならまだ60代だ。惜しまれる。
数多の名作を読みたくなって、時間がいくらあっても足りなくなります。
はるか昔、丸谷さんの書評で、P.D.ジェイムスを知った。
お蔭で、彼女の『女には向かない職業』に夢中になり、『罪なき血』に慄然とした。
もちろん本書の魅力は、そんな懐かしい記憶を蘇らせくれるだけではありません。
何よりも、半世紀に及ぶ文業のエッセンスを掌中にできるということ。
他書でほとんど読んだはずの、1960年代から晩年までの丸谷さんの「名文」が、
この小さな一冊にぎっしり、つまっているということ。
個々の美点を見出し、それをわかりやすく、気持ちよく、
ただしホメ殺しにならないように、ほどほどのユーモアと、ときには、
微かなトゲとからかいもこめて、しかも千篇一律にならない修辞で紹介し続ける…
というのは、並大抵のことではない。それが、ここでは実現されています。
こうした、ほぼ年代順で並ぶ“丸谷節”による名作紹介とならんでグッと来るのが、
巻頭に置かれた鼎談。向井敏、瀬戸川猛資。この名前を見ただけで、瞼が熱くなる。
「東京人」1989年新春号(当時は季刊)初出のこの鼎談、かつて読んだはずだけど
(初の単行本化の青土社『丸谷才一と16人の世紀末のジャーナリズム大批判』か)、
お三方とも故人となったいま、読めば読むほど、引きつけられてしまいます。
当時63歳の丸谷、58歳の向井に対して41歳の瀬戸川。若い。しかしすでに熟成。
テーマは「ハヤカワ(・ポケット)・ミステリ」だが、その背後に広がるのは、
決してオタクなミステリ好きではない、深く広い読書体験と人間観察。
蘊蓄を開陳して頂いたうれしさ以上に、読書の深度、観察の角度にシビれます。
それにしても、丸谷さんは87歳、向井さんは71歳、瀬戸川さん50歳で逝去。
丸谷さんは已むを得ないかとしても(もちろん、もっと読ませて欲しかったが)、
瀬戸川さんはまさに早世。健在ならまだ60代だ。惜しまれる。
2013年1月1日に日本でレビュー済み
ミステリに関する著者の守備範囲の広さは尊敬に値する。
本格啓からスパイものまで、実に多種多様な作品について本書では取り上げられており、またその魅力と特徴が、実に容量よくまとめられている。
これをよけと、著者がその作品たちをいかに楽しく読んだのか、というのが良く分かる。
それが実に微笑ましい。
しかし、どうやら著者のスタンスは本格よりではないようだ。
特に晩年では、サスペンスやスパイスリラーなどでも、かなり普通小説に近い、つまりミステリ色の薄い作品に対する評価が高いように見受けられる。
いや、グレアム・グリーンに関する文章など、実に楽しげに、しかし格調高く描写されているではないか。
本書は確かに著者によるミステリ案内といった雰囲気のエッセイの集成であるが、それはまた、文学者としての著者の懐の深さをよく表すものでもあった。
「深夜の散歩」を読んだことのあるひとには必須であるし、読んだことのないミステリ好きには、さらにミステリを深く好きになるための格好の書である。
本格啓からスパイものまで、実に多種多様な作品について本書では取り上げられており、またその魅力と特徴が、実に容量よくまとめられている。
これをよけと、著者がその作品たちをいかに楽しく読んだのか、というのが良く分かる。
それが実に微笑ましい。
しかし、どうやら著者のスタンスは本格よりではないようだ。
特に晩年では、サスペンスやスパイスリラーなどでも、かなり普通小説に近い、つまりミステリ色の薄い作品に対する評価が高いように見受けられる。
いや、グレアム・グリーンに関する文章など、実に楽しげに、しかし格調高く描写されているではないか。
本書は確かに著者によるミステリ案内といった雰囲気のエッセイの集成であるが、それはまた、文学者としての著者の懐の深さをよく表すものでもあった。
「深夜の散歩」を読んだことのあるひとには必須であるし、読んだことのないミステリ好きには、さらにミステリを深く好きになるための格好の書である。