私は、本書が、「求天記」というタイトルを改めたものだ、ということを知りませんでした。
本書を読み終わった後で「求天記」のカスタマーレビューを拝見しましたが、作品全編に一貫性がない、という指摘は鋭いと思います。
加藤廣が「求天記」というタイトルを単なる「宮本武蔵」に変更したのには、重要な意味が感じられます。本書の中では、武蔵は、天などまったく求めていないからです。最初、天を求め精神性を高めて行く武蔵を描こうとして書き始めたのに、途中でいつの間にか、武蔵がごく平凡な、管理職になりたいのに希望が叶わない専門職のサラリーマンのような人物になってしまい、当初のタイトルが維持できなくなってしまったのではないでしょうか。
作者の全編一貫した構成力に疑問を持たざるを得ません。
上巻のレビューでは、真剣と木刀を振る速度を物理的に計測したら木刀の方が速く振れる、という「発見」から飛びついてしまったのではないか、という推理を書きましたが、その一方で、加藤廣が宮本武蔵を書きたかった、というよりも、編集者か誰かに勧められて何となく仕事として書いた、という印象をぬぐえません。加藤の宮本武蔵に対する愛情など全く感じられないので。広告文にある「著者渾身の歴史大作」というのは、かえって加藤廣に失礼ではないかと（笑）。
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