アメリカには、システムとして、FBI、CIAをはじめとして情報を集めたり、それに依って工作をしたりしている。膨大な予算を使って、情報を集め、戦略を立てる。
日本には、そういったものが無い。他所の国のことや相手の国のことを殆んど知らないで、外交をやっている。日本は、戦略を立てる情報を持たないので、アメリカの言うなりになるしかない。

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情報と外交 単行本 – 2009/10/22
孫崎 享
(著)
情報をどう収集し、どう分析するか。そして、どう伝えるか──
組織が情報に対して真摯に向き合うとき、担当者が工夫しなければならない課題は多い。
著者は日本の外交官のなかで数少ない情報職域のプロとして、
ウズベキスタン、イランの全権大使などを歴任しつつ、
国際情報局長として日本外交の情報能力をブラッシュ・アップした人物。
外務省はなぜニクソン・ショックを予測できなかったのか。石油ショックは。
イラン・イラク戦争の終結は。ベルリンの壁崩壊は。調査の結果、
たどりついた結論は明白だった。ヒントはあったのに、ことごとく見逃していた。
この反省から出発して、著者は情報体制の刷新に取り組む。
上層部の支持と有力者の無理解、現場からの反発……。
本書は、著者の実体験を交えて、情報とは何か、情報体制はどうあるべきか、
情報マンの心得とはを刺激的に提言するとともに、著者自身が拠り所とした
「情報分析の鉄則10」を披露する野心作。
組織が情報に対して真摯に向き合うとき、担当者が工夫しなければならない課題は多い。
著者は日本の外交官のなかで数少ない情報職域のプロとして、
ウズベキスタン、イランの全権大使などを歴任しつつ、
国際情報局長として日本外交の情報能力をブラッシュ・アップした人物。
外務省はなぜニクソン・ショックを予測できなかったのか。石油ショックは。
イラン・イラク戦争の終結は。ベルリンの壁崩壊は。調査の結果、
たどりついた結論は明白だった。ヒントはあったのに、ことごとく見逃していた。
この反省から出発して、著者は情報体制の刷新に取り組む。
上層部の支持と有力者の無理解、現場からの反発……。
本書は、著者の実体験を交えて、情報とは何か、情報体制はどうあるべきか、
情報マンの心得とはを刺激的に提言するとともに、著者自身が拠り所とした
「情報分析の鉄則10」を披露する野心作。
- 本の長さ237ページ
- 言語日本語
- 出版社PHP研究所
- 発売日2009/10/22
- ISBN-104569774253
- ISBN-13978-4569774251
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登録情報
- 出版社 : PHP研究所 (2009/10/22)
- 発売日 : 2009/10/22
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 237ページ
- ISBN-10 : 4569774253
- ISBN-13 : 978-4569774251
- Amazon 売れ筋ランキング: - 325,696位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2011年12月27日に日本でレビュー済み
著者の既発刊本との一部重複はあるが、相変わらず刺激的なところが多く、ハードカバーだが量的には新書程度かそれ以下なのですぐ読めて面白い。推薦ウェブサイトも参考になった。
特に印象的だったのは、
-現場に行け現場に聞け・・ロシア留学時代は「勉強はしない。徹底してロシア人学生とつきあおう」ことを目的にした。現場の人が何を考えているかを知ることが肝要。
-フォーリン・アフェアーズの論文は、米国政府の新たな動き・米国政府のエスタブリッシュメントが示す方向性を知るために読むもの(たとえ内容が粗くとも)。なぜなら、米国には世間一般の世論と指導者層の世論があり、後者の支持を得る手段が同誌だから。
-ホワイトハウスのサイトでbriefing room/ press briefingsを毎日30分費やしてみれば、報道官と記者のやり取りがビデオで見られて、ホワイトハウスと記者のやり取りを追っかけられ、報道官の表情も含めて見れば、米国政策のニュアンスすら伝わる。
-モニカ・ルインスキー事件も米国人が米国大統領にしかけたハニートラップ
-世界の安全保障関係の方向性を示すのが、年一回開かれるミュンヘン安全保障会議:欧州と米国の安全保障マフィアの会合
-ブリーフィングは15秒で話せ。最も言いたいことは15秒に入り、聞き手も集中できるのは15秒、この繰り返し。説明が長いのは×!
-SWOOPはCIAの元分析官等が運営するサイトで価値大(確認したらサイトに日本語訳もあり!)
-外務省公電の400字「要旨電報」制度は著者が導入の端緒を作った。
-情報収集は時に命がけ:駐在武官やその夫人が、交通事故を装った妨害に遭ったこと
など。最後に、「米国の優位性の後退と中国の力の上昇に、(中略)(日本は)否応なしに、独自の情報能力が問われる時期が来る。ほんとうはその日に備え、日本は情報機能を強化すべき時期に入っている。」と結んでいるが、著者が途中で述べているように、「『安全確保はアメリカの手で』」という考え方の中で、情報分野が育つはずがない。」同感である。
特に印象的だったのは、
-現場に行け現場に聞け・・ロシア留学時代は「勉強はしない。徹底してロシア人学生とつきあおう」ことを目的にした。現場の人が何を考えているかを知ることが肝要。
-フォーリン・アフェアーズの論文は、米国政府の新たな動き・米国政府のエスタブリッシュメントが示す方向性を知るために読むもの(たとえ内容が粗くとも)。なぜなら、米国には世間一般の世論と指導者層の世論があり、後者の支持を得る手段が同誌だから。
-ホワイトハウスのサイトでbriefing room/ press briefingsを毎日30分費やしてみれば、報道官と記者のやり取りがビデオで見られて、ホワイトハウスと記者のやり取りを追っかけられ、報道官の表情も含めて見れば、米国政策のニュアンスすら伝わる。
-モニカ・ルインスキー事件も米国人が米国大統領にしかけたハニートラップ
-世界の安全保障関係の方向性を示すのが、年一回開かれるミュンヘン安全保障会議:欧州と米国の安全保障マフィアの会合
-ブリーフィングは15秒で話せ。最も言いたいことは15秒に入り、聞き手も集中できるのは15秒、この繰り返し。説明が長いのは×!
-SWOOPはCIAの元分析官等が運営するサイトで価値大(確認したらサイトに日本語訳もあり!)
-外務省公電の400字「要旨電報」制度は著者が導入の端緒を作った。
-情報収集は時に命がけ:駐在武官やその夫人が、交通事故を装った妨害に遭ったこと
など。最後に、「米国の優位性の後退と中国の力の上昇に、(中略)(日本は)否応なしに、独自の情報能力が問われる時期が来る。ほんとうはその日に備え、日本は情報機能を強化すべき時期に入っている。」と結んでいるが、著者が途中で述べているように、「『安全確保はアメリカの手で』」という考え方の中で、情報分野が育つはずがない。」同感である。
2010年9月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
スパイとか、情報分析自体は何か別の世界の話のように聞こえるが、会社などの組織に属している人なら自分の仕事に応用できるトピックが多いのでは。
トップにいかにさまざまなところでおきるトラブルやその対応、顧客・市況の情報分析や投資の判断をどのように報告して、どのような分析を伝えるべきか。自分ではひとつ残らず伝えたいことも、相手にはたくさんあがってくる情報のうずのひとつ。「15秒で話し、一枚で報告する」のは本当に難しい。
「知るべき人へ」の情報から「共有」の情報への章では、筆者も試行錯誤を繰り返し、挫折も経験している。硬直化している組織にはよくあるパターンであると思う。身につまされる。
トップにいかにさまざまなところでおきるトラブルやその対応、顧客・市況の情報分析や投資の判断をどのように報告して、どのような分析を伝えるべきか。自分ではひとつ残らず伝えたいことも、相手にはたくさんあがってくる情報のうずのひとつ。「15秒で話し、一枚で報告する」のは本当に難しい。
「知るべき人へ」の情報から「共有」の情報への章では、筆者も試行錯誤を繰り返し、挫折も経験している。硬直化している組織にはよくあるパターンであると思う。身につまされる。
2011年1月7日に日本でレビュー済み
元外務省国際情報局長であり、日本では数少ない情報のスペシャリスト執筆の著書だろう。我々が知らされる情報に関する疑問が益々膨らんでくる。孫崎氏は外交的な見地から、一般的に言うところの情報と行動のための情報、即ちインテリジェンスを日本がどのようにハンドリングしているかを述べている。
平たく言えば、日本の情報活動は極めてご粗末である事に尽きるだろう。国益をかけた外交的な意思決定は全て、如何に広く深く情報を収集集約し、深い知見に基づく適切な判断がなされるか否かに懸ってくる事は言うまでも無い。特に究極の外交問題である安全保障や戦争については、インテリジェンス無しの意思決定は考えられない。歴史的に見れば、先の大戦前夜からの帝国海軍の暗号漏れなどはその典型らしい。
現代においても、日本政府の情報に関する意識の低さは相変わらずで、予算規模とか人員以前の大問題。しかしこれは戦勝国のアメリカが極めて意図的にそうさせているからに他ならない。大韓航空機撃墜の際明らかになった、自衛隊の情報収集能力なんかについても、日本がそれなりの部分的能力を独自に持つ事をある程度認めても、その運用は米国軍と一体にならないと発揮できないよう、要所要所に米軍の鍵が隠されているようだ。
一例を上げれば、北朝鮮がテポドンの発射をする準備に入っているので3日後には発射される、は日本でも関係者は皆知っているのだそうだ。アメリカ軍が衛星偵察の情報を基に事前に知らせてくれているので、自衛隊関係者や内閣のトップは発射されたと言っても本当はびっくりしていないらしい。知っている情報を国民に知らせる事が出来ない理由は、軍事利用を目的とした情報なので目的外利用は認められていないだけの事らしい。
何とも情けない話だが、現実なのだろう。最後に面白い事も書いてある。政府の中に存在する情報部門と政策部門の対立についてだ。欧米でもこの対立は常にあって、どうしても政策部門が強く、政策遂行に不都合な情報は潰される傾向が強いようだ。日本外務省が海外から受信する公電は、平時でも1日に500本くらいはあるらしい。玉石混交であろうと、ここからどのように大事な情報をキャッチするかが、国家の命運を分ける事に繋がる筈。
著者は外務省時代、省内で情報を共有するシステムを構築することで、一官僚の狭い了見で大事な問題が握りつぶされたりするのを防ぐように努力したようだ。しかし残念な事ではあるが、これも政策優先主義の前で上手く機能していないようである。宗主国アメリカと属国日本の関係理解しない限り、現政権の沖縄問題なんかも表面に現れた一連の報道だけでは、何も分からないのだろう。恐らく政権についた途端、権力者は「こんな事までアメリカが知っているのか!」とびっくりして恐怖に慄いているのではなかろうか。
平たく言えば、日本の情報活動は極めてご粗末である事に尽きるだろう。国益をかけた外交的な意思決定は全て、如何に広く深く情報を収集集約し、深い知見に基づく適切な判断がなされるか否かに懸ってくる事は言うまでも無い。特に究極の外交問題である安全保障や戦争については、インテリジェンス無しの意思決定は考えられない。歴史的に見れば、先の大戦前夜からの帝国海軍の暗号漏れなどはその典型らしい。
現代においても、日本政府の情報に関する意識の低さは相変わらずで、予算規模とか人員以前の大問題。しかしこれは戦勝国のアメリカが極めて意図的にそうさせているからに他ならない。大韓航空機撃墜の際明らかになった、自衛隊の情報収集能力なんかについても、日本がそれなりの部分的能力を独自に持つ事をある程度認めても、その運用は米国軍と一体にならないと発揮できないよう、要所要所に米軍の鍵が隠されているようだ。
一例を上げれば、北朝鮮がテポドンの発射をする準備に入っているので3日後には発射される、は日本でも関係者は皆知っているのだそうだ。アメリカ軍が衛星偵察の情報を基に事前に知らせてくれているので、自衛隊関係者や内閣のトップは発射されたと言っても本当はびっくりしていないらしい。知っている情報を国民に知らせる事が出来ない理由は、軍事利用を目的とした情報なので目的外利用は認められていないだけの事らしい。
何とも情けない話だが、現実なのだろう。最後に面白い事も書いてある。政府の中に存在する情報部門と政策部門の対立についてだ。欧米でもこの対立は常にあって、どうしても政策部門が強く、政策遂行に不都合な情報は潰される傾向が強いようだ。日本外務省が海外から受信する公電は、平時でも1日に500本くらいはあるらしい。玉石混交であろうと、ここからどのように大事な情報をキャッチするかが、国家の命運を分ける事に繋がる筈。
著者は外務省時代、省内で情報を共有するシステムを構築することで、一官僚の狭い了見で大事な問題が握りつぶされたりするのを防ぐように努力したようだ。しかし残念な事ではあるが、これも政策優先主義の前で上手く機能していないようである。宗主国アメリカと属国日本の関係理解しない限り、現政権の沖縄問題なんかも表面に現れた一連の報道だけでは、何も分からないのだろう。恐らく政権についた途端、権力者は「こんな事までアメリカが知っているのか!」とびっくりして恐怖に慄いているのではなかろうか。
2018年7月24日に日本でレビュー済み
外務省入省後、結果的に情報畑を一貫して歩んだ著者の経験的情報収集・分析論的なものだが、
真っ先に揚げている「今日の分析は今日の物。明日は豹変する」を、85年頃のSDI構想当時の知識でMDを「技術的に実現不可能」として批判している著者に聞かせてやりたいところ。「まず大国の優先順位をしれ、地域がこれにどう当てはまる?」以外は特に目新しい物はなかった。
本文中に満ちあふれていた著者の自慢チックな文体が「情報分析の専門家」であったはずの著者の評価を更に下げている。
真っ先に揚げている「今日の分析は今日の物。明日は豹変する」を、85年頃のSDI構想当時の知識でMDを「技術的に実現不可能」として批判している著者に聞かせてやりたいところ。「まず大国の優先順位をしれ、地域がこれにどう当てはまる?」以外は特に目新しい物はなかった。
本文中に満ちあふれていた著者の自慢チックな文体が「情報分析の専門家」であったはずの著者の評価を更に下げている。
2009年12月15日に日本でレビュー済み
外交官として各国の要人や大使、MI:6やCIA、KGBなどの情報機関と接触してきた情報職域の第一人者である著者による
ノウハウが自身の経験談とともに詰まった内容である。
中東やロシアなどいろいろと問題のある国へ駐在する中で国家戦略の転換などに直面した経験から習得した情報収集
のノウハウが遺憾なく紹介されている。
【情報収集のノウハウ】
・現場での情報を大切にすること
・インターネットでポイントとなる機関やメディアを押さえておけば各国(特にアメリカ)の温度感はとらえられること
【情報活用のノウハウ】
・外交においては米国への影響を考えること
・ポイントをまとめること
・情報は共有し、様々な視点からとらえること
上記のような情報収集・活用方法は当たり前のようなことに感じられるが、著者の圧倒的にリアリティのある経験談を読めば、
十分に納得させられる。
また、これほど重要な情報なのだが、日本では前著である「日米同盟の正体」でも著者が主張しているとおり、情報活用収集力
の脆弱であり、外務省の体制に起因する部分もあるようである。
日本を今後どのような国にしていくのかという根幹的な戦略を描くとともにそのために必要な情報を収集し、活用できる体制を
整えていくことが急務であると感じさせられる。
ノウハウが自身の経験談とともに詰まった内容である。
中東やロシアなどいろいろと問題のある国へ駐在する中で国家戦略の転換などに直面した経験から習得した情報収集
のノウハウが遺憾なく紹介されている。
【情報収集のノウハウ】
・現場での情報を大切にすること
・インターネットでポイントとなる機関やメディアを押さえておけば各国(特にアメリカ)の温度感はとらえられること
【情報活用のノウハウ】
・外交においては米国への影響を考えること
・ポイントをまとめること
・情報は共有し、様々な視点からとらえること
上記のような情報収集・活用方法は当たり前のようなことに感じられるが、著者の圧倒的にリアリティのある経験談を読めば、
十分に納得させられる。
また、これほど重要な情報なのだが、日本では前著である「日米同盟の正体」でも著者が主張しているとおり、情報活用収集力
の脆弱であり、外務省の体制に起因する部分もあるようである。
日本を今後どのような国にしていくのかという根幹的な戦略を描くとともにそのために必要な情報を収集し、活用できる体制を
整えていくことが急務であると感じさせられる。
2009年10月28日に日本でレビュー済み
不思議な面白さのある本。ノウハウ本の体裁を持った回顧録である。
構成は、副題にある通り10の鉄則を章立てにしたかたち。情報に携わる人、組織はかくあるべしということを、主に著者の経験をもとに例証している。数時間で読める頁数で、同じことの繰り返しがあったり、前著「日米同盟の正体」との重複もあるが、それでも、興味深い話が沢山詰まっている。
ノウハウ本としては、個人レベルでは「情報収集→分析→報告」をいかに鍛えるべきか、組織レベルでは「情報共有と政策に反映させる仕組み」をいかに作り運用していくべきかを述べた本と結論づけることができる。
回顧録としては、自分の業績を並べ立てるようなものとは対極にある本だ。教訓を引き出すためか、失敗についていくつも触れている点が興味深い。自身が石油危機のサインを見逃したこと、政府がニクソン訪中やベルリンの壁崩壊を読み切れなかったことについて、反省点を書き出している。また、イラン革命、日本の湾岸戦争への貢献に対する評価などについて、定説と異なる見方を披露している。
そして、この本は「提言の書」でもあると思う。恐らく、著者は情報分野での仕事、特に組織構築にやり残し感が強いのだろう。安全保障の舵取りが難しくなる中で、情報機能を如何にするべきなのか。著者の考えは、第10章(最終章)に冷静な筆致でまとめられている。
構成は、副題にある通り10の鉄則を章立てにしたかたち。情報に携わる人、組織はかくあるべしということを、主に著者の経験をもとに例証している。数時間で読める頁数で、同じことの繰り返しがあったり、前著「日米同盟の正体」との重複もあるが、それでも、興味深い話が沢山詰まっている。
ノウハウ本としては、個人レベルでは「情報収集→分析→報告」をいかに鍛えるべきか、組織レベルでは「情報共有と政策に反映させる仕組み」をいかに作り運用していくべきかを述べた本と結論づけることができる。
回顧録としては、自分の業績を並べ立てるようなものとは対極にある本だ。教訓を引き出すためか、失敗についていくつも触れている点が興味深い。自身が石油危機のサインを見逃したこと、政府がニクソン訪中やベルリンの壁崩壊を読み切れなかったことについて、反省点を書き出している。また、イラン革命、日本の湾岸戦争への貢献に対する評価などについて、定説と異なる見方を披露している。
そして、この本は「提言の書」でもあると思う。恐らく、著者は情報分野での仕事、特に組織構築にやり残し感が強いのだろう。安全保障の舵取りが難しくなる中で、情報機能を如何にするべきなのか。著者の考えは、第10章(最終章)に冷静な筆致でまとめられている。