『団地の女学生』で「昭和の終焉」を毒々しくポップに描いた筆者の新作。
今度のは、「昭和の終焉」ものでもありますが、ポップさよりも、人としての醜さや汚さがにじみ出てくるような加齢臭漂うお話です!
何故なら、今回は主人公がゲイだから!!しかも3世代のゲイ!!!わお!!
女性の物語をゲイが書くと、マイケル・カニンガムとか、クライブ・バーカーとか、硬軟の別なく辛口すぎてどことなく滑稽だったりするが(読み手の私がゲイだからかしら)、ゲイがゲイのことを書いた途端、生々しく重たくなるのです!!わざとそうしているのかってくらい。それも私がゲイだから?多分そうね。
40代男性(彼氏あり・くたびれ・屈折)と、20代男性(彼氏なし・フレッシュ・真っ直ぐ)が恋に落ちてしまう。
その接点は・・・ずばり「見た目がお互いタイプ」ってこと!!!
ゲイとして考えると、「彼氏あり」だけど、お互い「見た目イケたから」「恋に落ちる」という物語は、「よくある話」とも言えないのだが「無い」とも言えない。まずそこが何とも居心地悪い。本もねえ、冒頭から別れ話なのよ・・・ねえ、あんた・・・
とにかく「イタタタタタ・・・」と腰痛持ちみたいに心のどこかが軽く痛む。年齢や経験に応じて違うのでしょう・・・
家庭や家族のような外的な縛りの中でもがく人が外の世界に出る(不倫する)のとは話が違う。とにかく「軽く見える」のだ。
でも、一見「薄っぺら」くて「始まりの瞬間から終りが設定されている」ように見える「軽い」関係に、主人公達は本気汁でのめりこんでいく。そうそう、そうなるよねって思う。
外からの「しがらみ」が適度に縛ってくれないから、とても頼りない「関係」に2人がすがっているように見えてくる。
そしてそう思っている自分の人生を思い知らされる。
40代男性の言い分が面白い。この恋には「負けるわけにはいかない」。恋愛が勝ち負けってアンタ・・・と思うかもしれない。
もうこれが最後かもしれないゴゴゴゴ・・・・と思う気持ち。
これが、今33歳の私には何かむずがゆい。
「最後ってことは無いんじゃないの?」と思うが、「若さ」をむさぼれるのが最後って考えたら、何だか突然色々と空しくなってくる。
その上、お話の中には、昭和と共に生きた「ゲイ」の方の一人語りが怨霊のお告げのように挟まれている。
実は極めて貴重な歴史的証言なのだが、その価値を誰にも見出されることもなく、語っている本人もこれっぽっちも自分のお話が貴重だなんて思っていない。ただ、生きて老いただけ。
これもまた「昭和の終焉」なのかもしれません。「昭和」が終って次は何の時代が来るんでしょうか。
もはや「普通」の「人並み」の「昭和」な人生観が実感しづらい状況になった今、人生や日常に対して無難さを好む日本人は、不安交じりの不満や苛立ちを隠さなくなってきています。「無難でいたい」のにそうできない、なれない自分にがっかりしてやる気を無くしてしまったり、やる気の無い自分を肯定しなきゃいけないがために、精神状態と行動様式をあらわす多種多様な言葉を作り出してみたり。
そういう中で、ゲイというヘンテコな人たちの生態は、一見自由で節操が無いようなのですが、ゲイだって普通の人たちとほとんど変わらず、もがいているだけなのでしょう。
・・・とは言っても、20世紀後半〜21世紀初頭までの間に、日本社会がどれだけめまぐるしく変わったか、などと思いたくても、私の記憶はせいぜい80年代中盤以降なので、何とも言えない。もしかしたらそういう物語を信じたいのかもしれません。
救いの無いドロドロものかっていうと、そうでもないです。
ちょっと覚悟をして読んだのですが、案外軽く読めました。「ナツイチ」に入れてあげてください。
でもヒリヒリする。歯石取ってもらうときみたいな痛みでしょうか。
読み終わると案外スッキリ・・・きれいな体に戻るの・・・んなわけねーだろ!!
自分の醜さを飲み下しているだけ!!!
こういうのを読める自分になれてよかったなと思います。
苦い食べ物も美味しく食べられるようになったということですね。食べ過ぎて歯石が溜まってますけど・・・
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百年の憂鬱 単行本 – 2012/7/31
伏見 憲明
(著)
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- 本の長さ157ページ
- 言語日本語
- 出版社ポット出版
- 発売日2012/7/31
- 寸法14 x 17 x 19 cm
- ISBN-104780801842
- ISBN-13978-4780801842
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商品の説明
著者について
伏見 憲明
作家。2003年、初の本格小説『魔女の息子』(河出書房新社)で第40回文藝賞を受賞。著書に『団地の女学生』(集英社)、『欲望問題』(ポット出版)、『男子のための恋愛検定』(理論社/現在はイースト・プレスより発行)、『さびしさの授業』(理論社/現在はイースト・プレスより発行)ほか多数。
伏見憲明サイト◎http://www.pot.co.jp/fushimi/
作家。2003年、初の本格小説『魔女の息子』(河出書房新社)で第40回文藝賞を受賞。著書に『団地の女学生』(集英社)、『欲望問題』(ポット出版)、『男子のための恋愛検定』(理論社/現在はイースト・プレスより発行)、『さびしさの授業』(理論社/現在はイースト・プレスより発行)ほか多数。
伏見憲明サイト◎http://www.pot.co.jp/fushimi/
登録情報
- 出版社 : ポット出版 (2012/7/31)
- 発売日 : 2012/7/31
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 157ページ
- ISBN-10 : 4780801842
- ISBN-13 : 978-4780801842
- 寸法 : 14 x 17 x 19 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 955,316位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
カスタマーレビュー
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2012年8月31日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2012年9月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
伏見さんは以前、某ゲイ誌上で発言されてました。たしか。
もはやゲイ小説を書いても意味がない云々と。他に素晴らしい作品が沢山ありますからね。 需要も少ないでしょうし。
ご自分だけで思ってらっしゃるなら胸のうちに納めておけばいいだけのこと。 誌上で発言すると言うことは、すなわち伏見さん以外の他者にも向けられていることになります。でも他者には一切関係のないことですよ。
しかし、ご自分ではお書きになるのですね(笑) 仕方ありませんね。人心も世の中も無常ですもんね。
百年というのは、松川老人の百年の人生の悲喜交々のことですよね。
私は百年て言葉にはとらわれず、ゲイに生まれたなら、20代30代40代50代であっても、その人その世代が感じる、それぞれの百年に匹敵する憂鬱があると思いながらよみました。 恋愛小説として読み応えがありました。
もはやゲイ小説を書いても意味がない云々と。他に素晴らしい作品が沢山ありますからね。 需要も少ないでしょうし。
ご自分だけで思ってらっしゃるなら胸のうちに納めておけばいいだけのこと。 誌上で発言すると言うことは、すなわち伏見さん以外の他者にも向けられていることになります。でも他者には一切関係のないことですよ。
しかし、ご自分ではお書きになるのですね(笑) 仕方ありませんね。人心も世の中も無常ですもんね。
百年というのは、松川老人の百年の人生の悲喜交々のことですよね。
私は百年て言葉にはとらわれず、ゲイに生まれたなら、20代30代40代50代であっても、その人その世代が感じる、それぞれの百年に匹敵する憂鬱があると思いながらよみました。 恋愛小説として読み応えがありました。
2015年10月8日に日本でレビュー済み
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伏見さんの小説としては自分を洗いざらい書いた私小説といった感じで、とても好感がもてました。意味深なラストでしたが、長年一緒の彼とは今も続いてるんでしょうか?
2012年9月5日に日本でレビュー済み
この作品では主人公である冴えない中年のゲイと
知性と美貌を備えた若きゲイとの激しい恋の模様が描かれています。
この作品において数あるテーマの内の一つとして描かれている対等であることを強く求める若者と
対等であることがいかに得難いものであるかを知っている中年の応酬の様子は、
読み進めていくほどに彼らの心情のすれ違いや葛藤、苦悶、焦りが
他者に恋をし、愛する人であれば誰しもが持つ普遍的な感情であり、
恋愛の苦味そのものであるということを骨の髄まで思い知らされます。
それでも彼らは互いを蝕んでゆくことを止めようとしません。
彼らの狡さやエゴは醜くもあり、時に狂おしく、時に可愛らしくもある。
故に一度発生した愛情を簡単に終わらせることなんてできないんです。
こうした日常では形容し難い人が恋をするときの感情というものは背筋に冷や汗が浮かぶほどに美しい。
そう感じられる作品だったと思います。
また読後にこのように複雑でありながら爽やかな感情を抱かせる著者の力量に驚くばかりです。
知性と美貌を備えた若きゲイとの激しい恋の模様が描かれています。
この作品において数あるテーマの内の一つとして描かれている対等であることを強く求める若者と
対等であることがいかに得難いものであるかを知っている中年の応酬の様子は、
読み進めていくほどに彼らの心情のすれ違いや葛藤、苦悶、焦りが
他者に恋をし、愛する人であれば誰しもが持つ普遍的な感情であり、
恋愛の苦味そのものであるということを骨の髄まで思い知らされます。
それでも彼らは互いを蝕んでゆくことを止めようとしません。
彼らの狡さやエゴは醜くもあり、時に狂おしく、時に可愛らしくもある。
故に一度発生した愛情を簡単に終わらせることなんてできないんです。
こうした日常では形容し難い人が恋をするときの感情というものは背筋に冷や汗が浮かぶほどに美しい。
そう感じられる作品だったと思います。
また読後にこのように複雑でありながら爽やかな感情を抱かせる著者の力量に驚くばかりです。
2012年8月31日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
さして容姿に恵まれているわけではない、ぱっとしない文筆業の中年のゲイ男性と、モデルにもなれそうなハーフの20代の美青年の恋愛関係を主軸に、物語は展開する。
サガンを思わせる思慮深い語り口、文体、また視点人物である中年男性の自己の心理を見つめる眼差しに、恋愛小説としての醍醐味を求める事が可能だ。
美しい若者との恋愛に臨む中年男性の心理は、決して美しいものではない、そこには大人の狡猾な打算もあるし、自己保身もある。
しかし決して美しくはない己の心理を赤裸々に描くことが、文章を書く上での著者の誠実さのあらわれ、とも思われるし、また打算と自己保身に躍起になる中年男性に、自分自身を重ねる読み手も少なくないだろう。
恋愛は、きれいばかりのものではない、という事実を読み手に突きつけながら、けれども、それでもひとは恋愛に夢中になる、という矛盾。この矛盾を認識して消化したとき、読み手の世界を視る眼は、少し変化をしているかもしれない。
だそくながら記せば、今作は単純な恋愛小説ではなく、物語に深みを与える人物として、百歳になろうかというゲイの老人が登場する。
社会の状況が変わり、ゲイの置かれている立場も変わり、中年男性と20代の美青年は自分の性的指向を特には大きな問題として受け止めてはいない。
が、時代の状況がそう変化するまでには、差別や偏見に踏みつけられ続けた先人たちの犠牲があったのだ。
百歳になろうかというゲイの老人の憂鬱、屈託に、ぼくは深く心をゆさぶられた。
星四つ
サガンを思わせる思慮深い語り口、文体、また視点人物である中年男性の自己の心理を見つめる眼差しに、恋愛小説としての醍醐味を求める事が可能だ。
美しい若者との恋愛に臨む中年男性の心理は、決して美しいものではない、そこには大人の狡猾な打算もあるし、自己保身もある。
しかし決して美しくはない己の心理を赤裸々に描くことが、文章を書く上での著者の誠実さのあらわれ、とも思われるし、また打算と自己保身に躍起になる中年男性に、自分自身を重ねる読み手も少なくないだろう。
恋愛は、きれいばかりのものではない、という事実を読み手に突きつけながら、けれども、それでもひとは恋愛に夢中になる、という矛盾。この矛盾を認識して消化したとき、読み手の世界を視る眼は、少し変化をしているかもしれない。
だそくながら記せば、今作は単純な恋愛小説ではなく、物語に深みを与える人物として、百歳になろうかというゲイの老人が登場する。
社会の状況が変わり、ゲイの置かれている立場も変わり、中年男性と20代の美青年は自分の性的指向を特には大きな問題として受け止めてはいない。
が、時代の状況がそう変化するまでには、差別や偏見に踏みつけられ続けた先人たちの犠牲があったのだ。
百歳になろうかというゲイの老人の憂鬱、屈託に、ぼくは深く心をゆさぶられた。
星四つ
2012年8月31日に日本でレビュー済み
切なく、救いが無く、けれども美しい、愛おしい物語でした。
恋愛についてあれこれ考えたことや悩んだことがある人なら、きっと心をえぐられることでしょう。
物語の主要人物はゲイなのですが、ゲイ小説という枠には収めがたい内容でした。
人間という生き物がなんてみすぼらしくもかわいい生き物なのか、恋という力の前でどれだけ無力になってしまうのかを見事に描いています。
恋愛についてあれこれ考えたことや悩んだことがある人なら、きっと心をえぐられることでしょう。
物語の主要人物はゲイなのですが、ゲイ小説という枠には収めがたい内容でした。
人間という生き物がなんてみすぼらしくもかわいい生き物なのか、恋という力の前でどれだけ無力になってしまうのかを見事に描いています。
2012年9月2日に日本でレビュー済み
主人公の中年ゲイ義明とその年若い恋人ユアンのままならない恋愛に二丁目初のゲイバーのマスター松川の口から語られる人生が絡んで・・・というお話。
登場人物の心情描写が容赦なく、読んでいるうちに自分の感情の答えを掴む事が出来るかもしれません。
人生のいろいろ(特に恋愛)に悩んでいる人は(ゲイであってもそうじゃなくても)是非読んでみてください。相手の感情、自分の感情の答えがこの本の中で文章化されていると思います。
登場人物の心情描写が容赦なく、読んでいるうちに自分の感情の答えを掴む事が出来るかもしれません。
人生のいろいろ(特に恋愛)に悩んでいる人は(ゲイであってもそうじゃなくても)是非読んでみてください。相手の感情、自分の感情の答えがこの本の中で文章化されていると思います。
2012年9月9日に日本でレビュー済み
人生への愛の分量と扱いを描いた、いい作品だと思います。人生の時間を重ねることに真摯に向き合った所が好きです。