本は読まれるためにある。
読まれなければただの物だ。
本屋や図書館、そして本棚の本は読まれるか、たとえ積読でも読まれることが前提にある。
資料としてであれ、心の糧としてであれ、精読であれ、ななめ読みであれ、手に取られる。
作家は読まれるための本を書くのが生業だ。
その本棚には持ち主の心が表れる。
興味をひかれた本棚が二つある。
正しくはその持ち主にだろうが、ここでは本棚がテーマだ。
一つは山本幸久、もう一つは中島らものものだ。
山本幸久の本棚のに並ぶ背表紙はほとんどが無地だ。
本屋のカバーがかかったままなのだ。そのこと自体は珍しくない。
汚れたり日に焼けたりするのが嫌だからそうしている。
しかしそうする人はたいてい背表紙の書名を書くが、それが無い。
見ればどの本かわかるからという。
変なたとえだが羊飼いは自分の羊を一頭一頭見分けられるという。
彼にとっては知の牧場のようなものなのか。
中島らもは故人だ。
本棚からは他とは違ったものが伝わってくる。
読むため、整理するため、とにかく本棚の本には持ち主の手が触れる。
それが無い。棚にはうっすらと誇りがたまっている。
わずかなスペースに置かれたガラスの酒杯は透明感を失っている。
遺族が掃除をしているとしても、どの本も主を失ってからその場所を変えていない。
どの本も読まれなくなって久しく、本からただの物に帰っている。
他の作家の本棚とは本質が違うのだ。本ではなく、持ち主の時間が止まった瞬間なのだ。
願わくば、この本たちを再び読まれるようにしてやってほしい。
作家は読まれる本を書く生業だ。本を自らに殉じさせることは望むまい。

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作家の本棚 (アスペクト文庫) 文庫 – 2012/5/31
ヒヨコ舎
(編集)
あの作家の本棚をはおもしろい! 純文学、短歌、エッセイ、ミステリ、SF、ファンタジーなど、様々なジャンルで人気を博す総勢14人の作家の方々の本棚を拝見。本や本棚への想い、こだわりをじっくり語っていただきました。
(登場する作家) 角田光代、桜庭一樹、穂村弘、川上未映子、中島らも、有栖川有栖、菊地秀行、神林長平、山本幸久、山崎ナオコーラ、西加奈子、みうらじゅん、石田衣良、夢枕獏
(登場する作家) 角田光代、桜庭一樹、穂村弘、川上未映子、中島らも、有栖川有栖、菊地秀行、神林長平、山本幸久、山崎ナオコーラ、西加奈子、みうらじゅん、石田衣良、夢枕獏
- 本の長さ160ページ
- 言語日本語
- 出版社アスペクト
- 発売日2012/5/31
- 寸法10.6 x 1.1 x 15.1 cm
- ISBN-104757220707
- ISBN-13978-4757220706
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商品の説明
出版社からのコメント
弊社から2008年に刊行した、ヒヨコ舎さんによる二冊の単行本『本棚』『本棚2』。この二冊から小説家やエッセイスト、歌人として活躍されている表現者の記事を中心に再編集した、文庫オリジナルの一冊が完成しました。本好きな方はもちろん、既に単行本『本棚』『本棚2』を読まれた方にも新鮮な読書体験になること間違いなし。オススメです!
著者について
ヒヨコ舎
単行本・雑誌編集制作団。単行本『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』(川上未映子著)、『麦撃機の飛ぶ空』(神林長平著)、『課長』(穂村弘・寺田克也共著)など制作販売する。
単行本・雑誌編集制作団。単行本『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』(川上未映子著)、『麦撃機の飛ぶ空』(神林長平著)、『課長』(穂村弘・寺田克也共著)など制作販売する。
登録情報
- 出版社 : アスペクト (2012/5/31)
- 発売日 : 2012/5/31
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 160ページ
- ISBN-10 : 4757220707
- ISBN-13 : 978-4757220706
- 寸法 : 10.6 x 1.1 x 15.1 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 128,240位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 3位アスペクト文庫
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2018年4月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
思っていた内容とは違っていました。
あともう少し写真があればと思います。
あともう少し写真があればと思います。
2012年7月8日に日本でレビュー済み
作家に限らず他人の本棚を覘くのは、持ち主の思想や嗜好が一番表れていて興味深いものです。
本書では14名の作家の方の本棚が紹介されています。
個人的には読書前の予想通り、みうらじゅん氏の箇所が一番面白く、興味や情念の趣くままに
集められた書籍によるカオスような本棚は壮観です。特にエロ系の本を誰にはばかる事なく、
堂々と並べているあたりは、ある意味うらやましいなと思いました。
また有栖川有栖氏のミステリー関係の書籍では、古典ミステリーの文庫本類が懐かしく、
背表紙がオレンジ色のクイーンの悲劇シリーズ(新潮社)、同じくクイーンの角川文庫版の
国名シリーズ(題名が扇情的に改題されている)、そして角川文庫版の鮎川哲也などが
並べられているのを見ると、同好の士として嬉しくなりました。
本に対する姿勢は各人それぞれで、幼少のころから本好きな人やそうでない人、入手した本を
手放さず所有し続ける人や捨ててしまえる人など、そうした箇所も興味深く読めました。
あと多くの方が漫画好きなのも意外でした。
個人的には、好きな本に関する記述(各作家によるセレクションとコメント)があれば、
もっと面白いのではないかと思いました。
本書では14名の作家の方の本棚が紹介されています。
個人的には読書前の予想通り、みうらじゅん氏の箇所が一番面白く、興味や情念の趣くままに
集められた書籍によるカオスような本棚は壮観です。特にエロ系の本を誰にはばかる事なく、
堂々と並べているあたりは、ある意味うらやましいなと思いました。
また有栖川有栖氏のミステリー関係の書籍では、古典ミステリーの文庫本類が懐かしく、
背表紙がオレンジ色のクイーンの悲劇シリーズ(新潮社)、同じくクイーンの角川文庫版の
国名シリーズ(題名が扇情的に改題されている)、そして角川文庫版の鮎川哲也などが
並べられているのを見ると、同好の士として嬉しくなりました。
本に対する姿勢は各人それぞれで、幼少のころから本好きな人やそうでない人、入手した本を
手放さず所有し続ける人や捨ててしまえる人など、そうした箇所も興味深く読めました。
あと多くの方が漫画好きなのも意外でした。
個人的には、好きな本に関する記述(各作家によるセレクションとコメント)があれば、
もっと面白いのではないかと思いました。
2012年7月17日に日本でレビュー済み
角田光代さん、桜庭一樹さん、石田衣良さん、穂村弘さん、有栖川有栖さん、神林長平さん、菊地秀行さん、川上未映子さん、みうらじゅんさん、山崎ナオコーラさん、山本幸久さん、西加奈子さん、夢枕獏さん、中島らもさん。
という錚々たる作家陣の本棚、が紹介されています。
引きの画だけでなく寄りの画もあり。
個性豊かな面々の頭の中を探るようで、とても楽しいです。
たとえば川上未映子さんのシンプルな白の棚には、
「太宰治作品集」「太宰治文学批判集」「太宰治と井伏鱒二」
さらに「尾崎翠全集」「富士日記」「封印された星」
床から天井まで達する有栖川有栖さんの本棚には、
鮎川哲也が網羅され、エラリー・クイーン、さらにはミステリ論……
もちろん、撮影される本棚はほんのほんの一部。
それでも好きな作家の本棚を探検できるなんて、本当に贅沢です。
という錚々たる作家陣の本棚、が紹介されています。
引きの画だけでなく寄りの画もあり。
個性豊かな面々の頭の中を探るようで、とても楽しいです。
たとえば川上未映子さんのシンプルな白の棚には、
「太宰治作品集」「太宰治文学批判集」「太宰治と井伏鱒二」
さらに「尾崎翠全集」「富士日記」「封印された星」
床から天井まで達する有栖川有栖さんの本棚には、
鮎川哲也が網羅され、エラリー・クイーン、さらにはミステリ論……
もちろん、撮影される本棚はほんのほんの一部。
それでも好きな作家の本棚を探検できるなんて、本当に贅沢です。
2012年6月1日に日本でレビュー済み
本書は以前出ていた本棚、本棚2の2冊をまとめ、再編集して文庫化したものです。私は、本、書斎、本棚、といった類の本には目がありませんから、本棚、本棚2も購入しています。
本書には、角田光代さん、桜庭一樹さん、石田衣良さん他、合計14名の作家、歌人の本棚を収録しています。
角田さん、白を基調とした綺麗な書斎ですね。角田さんが大事にしている本は、開高健のベトナム戦記、尾崎翠全集、R・ブローディガンの東京モンタナ急行、マンガ道の全4巻だそうです。桜庭さんは、本も大好きだそうですが、DVD、特に特にゴシック的なものが好きだそうです。例えばアザーズ・・これは映画の色調自体にも仕掛けがありましたね!有栖川さんは、本棚の一番いい場所に、鮎川哲也コーナーがあるそうです。そして、一番高価な本は、貼雑年譜だそうです。確か東京創元新社だったと思います。私も購入しようかなと思いましたが、高価すぎて諦めました。菊池さんさん、本も大好きだそうですが、多分8ミリテープだと思いますが、凄い数ですね!私もVHS,βよりも小さいので、一時は8ミリでエアー・チェックをして、1500本以上録画したと思います。夢枕さん、読んでいるマンガ雑誌は40冊以上、凄いですね!
個人的な見解ですが、本関係の本の中でも、私は、本書のように、本棚、特に書名まではっきり写っている写真が多数掲載されているものが大好きです。本は、1冊、2冊では個性を発揮しませんが、多数集まるとはっきり個性を主張し始めます。ここに掲載されている本棚も、例に違わず、総て持ち主以上に、その個性をはっきりと主張しています。
本書には、角田光代さん、桜庭一樹さん、石田衣良さん他、合計14名の作家、歌人の本棚を収録しています。
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個人的な見解ですが、本関係の本の中でも、私は、本書のように、本棚、特に書名まではっきり写っている写真が多数掲載されているものが大好きです。本は、1冊、2冊では個性を発揮しませんが、多数集まるとはっきり個性を主張し始めます。ここに掲載されている本棚も、例に違わず、総て持ち主以上に、その個性をはっきりと主張しています。