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全編、実に美しく、しかしそれだけではない、個性を感じる曲と演奏に溢れているアルバムだ。
全てリーダーのピアニスト、ティム・ラプソーンの曲で、アレンジも彼がやっている。
単なるピアノトリオではなく、随所にストリングスやコーラスを加えた、少し野心的な志向も感じさせる。
1曲目「サイレントリー」。美しいピアノの旋律とバックに入るストリングスの絡みが心地良い。
2曲目「フォー・レイ」は、レイ・チャールズに捧げた1曲。バックコーラスがゴスペルタッチを醸し出す。
もう、この時点ですでに、「ビル・エバンス系」だけでは語れない、強い個性が感じられてくる。
「ワンダリング」や「リープ」（ジャイアント。ステップスと同じコード進行の曲だそうだ）は、
きっちり、ストレートなジャズピアニストとしての実力も聴かせる。
そして、幻想的な旋律に唸らされる「ザ・ドリーマー」と「モーメント」・・・。
ほんとに曲が良い。そして、ソロで紡ぎ出すフレーズも、限りなく美しくメロディアス。
確かに、彼のピアノ演奏自体は、割とストレートにビル・エバンスの影響下にある。
だが、サウンド全体へのアプローチには、独自性が強く感じ取れる。エバンスの枠からはみ出す個性が、ここにはある。
とにかく、聴きほれるような美しいメロディに溢れ、そのアレンジに「おっ」と思わず耳をそばだたせる作品。
ジャズピアノ好きには、ぜひオススメです。ほんとは、夜、静かにグラスを傾けながら聴くのが最高です。
