広河隆一氏との出逢いは、集英社の「BART」という雑誌の記事だったと思う。当時の「BART」には、広河隆一氏や広瀬隆氏の硬派なルポルタージュが掲載されていた。薬害エイズの源流となる「国立予防衛生研究所の移転と七三一部隊の関係」を追及する記事だった。その後、徳間書店から発売された「エイズからの告発」も読んだ。医療・医学の世界の学閥のネットワークを解析し、研究者・医師の戦争責任・薬害責任を追及する内容だったのを覚えている。そして、「昭和天皇が七三一部隊の存在を知っていたか、知らなかったか」という近代史の重要論点にも言及があった。
二十年以上の歳月を経て、戦争責任・薬害責任から原発事故にテーマを変えて本書が出版された。本書は絶対に出版されるべき宿命の本だ。しかし、気の遠くなるような根気と体力の必要性から、(当方も含めて)誰もが挑戦することに二の足を踏むと思う。読むにはかなりのヴォリュームだ。当方は、よーやく3・13まで読み終えたところだ。3・13まで読み終えた段階でのレビューになってしまうことをご容赦願いたい(読み終えたら追記・修正する予定)。
本書の装丁は、これ以外考えられない。ツイッター・ブログで一列を占めるのは、バランスが取れていていいと思う。掲載されているツイッター・ブログで取り上げられている私生活ネタは、当時の状況を知る貴重な記録だった。ただし、もう一列占めて欲しかったのは、アメリカ連邦政府からの働きかけだ。「プロメテウスの罠」196ページから197ページに、3・14におけるアメリカ連邦政府とのやり取りが記載されている。当方にとって最も強く印象に残った箇所だ。
「午後11時ごろ、米大使のジョン・ルース(56)と官房長官の枝野幸男との電話会議があった。ルースが言った。『米国の原子力専門家を官邸に常駐させてほしい』日本の危機管理能力を米国は疑っている。国家主権に触れかねない要請だ。枝野は『なかなか難しい。検討したいが・・・・』と丁重に断り、菅直人に報告した。」
「原発事故の被害を最小限に食い止めるには、主権を放棄し属国になるのもやむを得ないと思うか?」という怖い論点と向き合うために、アメリカ連邦政府と日本政府とのやり取りを出来るだけ克明に記述する一列が欲しかった。
報道資料の中で一列を設ける必要は無いと思うが、経済指標についての言及も欲しかった。3・11よりも前の広瀬隆氏の予測で、一点だけ???なものがある。「原子炉時限爆弾」98ページに、原発震災でなにが起こるかの予測について言及されている。
「海外の円相場は、全取引所ですでに大暴落を示し、ほとんど歯止めのない投げ売り状態になっていた。深刻な暴落と恐慌に突入していった。」
チェルノブイリ原発事故直後に発売された「危険な話」でも同様の趣旨の記述があった。当方も、広瀬隆氏の予測に賛成だった。ところが驚くべきことに、円の投売りがすすむどころか、正反対に円買いが進んだ。3・11当時1ドル80円台前半だったのが、2011年の暮れには70円台後半まで円高が進んだ。「原発事故の影響が深刻である」ということと「円買いが進む」ということは、矛盾している。放射能に汚染された国の通貨を買いあさるバカはいないからだ。なお、日経平均も3・11当時9000円台だったのが、2011年の暮れには8000円台前半まで下がった程度だ。パニック売りがあったとはいえない程度の下げ幅だ。
非常に大雑把な為替と株の推移を見る限りでは、「原発事故の影響が深刻である」という結論を実証できるデータではない。本書は、後世の歴史家・ジャーナリストから引用の対象とされる本だと思う。(一列を設けないまでも)経済指標の推移についても、震災後一年ぐらいの期間について分析記事を掲載してもよかったと思う。
純粋な経済指標とはいえないけれど生活必需品のネットオークションでの価格相場の推移の記事も欲しかった。ミネラルウォーター、カセットコンロ、懐中電灯、乾電池などだ。
原発関連本についても同様だ。3・11直後に、アマゾンでの広瀬隆氏の本の値段が目の玉が飛び出るほどの高値になったのを覚えている。サイバースペース上の情報は、過去にさかのぼって追跡するのが難しい。そうであってもなんとか実現してほしかった。ツイッター・ブログとあわせて読むと、当時の生活状況が肌で感じられて大変参考になるからだ。
繰り返しになるが、当方、よーやく3・13まで読み終えたところだ。3・13まで読み終えた段階でのレビューだったことをご容赦願いたい。読み終えたら追記・修正する予定です。
気の遠くなるほど根気の必要な作業を成し遂げた浅野ゼミの方々に星五つ。薬害・戦争責任・原発事故と向き合う広河隆一氏のジャーナリスト魂に星五つです。人類の歴史上、絶対に出版されるべき宿命の本だと思いました。

無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
DAYS JAPAN (デイズ ジャパン) 増刊 検証原発事故報道~あの時伝えられたこと~ 2012年 04月号 [雑誌] 雑誌 – 2012/3/9
運命の一週間 監修/広河隆一
2011年3月11日~17日
TV・新聞・ツイッター そして検証報告
浅野健一(同志社大学教授)
伊田浩之(週刊金曜日)
上杉隆(自由報道協会代表)
太田尚志(たね蒔きジャーナル・毎日放送)
おしどりマコ(芸人)
亀松太郎(ニコニコニュース編集長)
沢田昭二(名古屋大学名誉教授)
白石草(アワ-プラネットTV)
新免貢(宮城学院女子大学教授)
矢内真理子(同志社大学大学院)
綿井健陽(アジアプレスインターナショナル)他
2011年3月11日~17日
TV・新聞・ツイッター そして検証報告
浅野健一(同志社大学教授)
伊田浩之(週刊金曜日)
上杉隆(自由報道協会代表)
太田尚志(たね蒔きジャーナル・毎日放送)
おしどりマコ(芸人)
亀松太郎(ニコニコニュース編集長)
沢田昭二(名古屋大学名誉教授)
白石草(アワ-プラネットTV)
新免貢(宮城学院女子大学教授)
矢内真理子(同志社大学大学院)
綿井健陽(アジアプレスインターナショナル)他
登録情報
- ASIN : B007FSZHDU
- 出版社 : デイズジャパン; 不定版 (2012/3/9)
- 発売日 : 2012/3/9
- Amazon 売れ筋ランキング: - 394位人文・社会・政治の雑誌
- カスタマーレビュー:
カスタマーレビュー
星5つ中5つ
5つのうち5つ
6グローバルレーティング
評価はどのように計算されますか?
全体的な星の評価と星ごとの割合の内訳を計算するために、単純な平均は使用されません。その代わり、レビューの日時がどれだけ新しいかや、レビューアーがAmazonで商品を購入したかどうかなどが考慮されます。また、レビューを分析して信頼性が検証されます。
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2013年12月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2013年11月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
原発は本当に終わりにしなければ、世界が滅ぶ。これは決して大げさではない。日本はすでに世界を一瞬のうちに破滅に追い込むだけのプルトニュウムを所有してしまった。核被爆国でありながら、非核三原則の国でありながら、この矛盾。
2012年4月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
福島第一原発事故の報道過程記録を検証するのに最適な本でしょう。買っておいてよかったとおもいます。
時系列的に事実がされているだけですが、他の福島第一原発事故本と合わせて見ると大変面白いです。
DAYSJAPANじゃなければできない仕事でしょう。
再販を望みます。
時系列的に事実がされているだけですが、他の福島第一原発事故本と合わせて見ると大変面白いです。
DAYSJAPANじゃなければできない仕事でしょう。
再販を望みます。
2013年5月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
こういう本がいまの日本には必要です。一般には知られていない情報が満載です。
2013年5月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
真実の行方、これからの若い世代に未来を約束するための最低条件、今の景気より安全が将来の安全な好景気社会を約束する。
2012年3月9日に日本でレビュー済み
フリーのジャーナリストが早くから可能性を報じていたメルト・ダウンの可能性を数か月否定し続け、SPEEDIのシミュレーション結果が一番必要とされた時期に公開しなかった政府とマスメディア。
3月11日から17日までの間、テレビ、新聞そしてツイッターではどのような報道がなされていたのか。どのような口コミが流れていたのか。東電や保安院は会見で何を言っていたのか。
自身や家族の当時の行動記録と併せて、裁判を起こす時の参考資料にしましょう。
国民を見捨て、被爆させた人間は決して許されない。
3月11日から17日までの間、テレビ、新聞そしてツイッターではどのような報道がなされていたのか。どのような口コミが流れていたのか。東電や保安院は会見で何を言っていたのか。
自身や家族の当時の行動記録と併せて、裁判を起こす時の参考資料にしましょう。
国民を見捨て、被爆させた人間は決して許されない。