著者のエッセイばかり読んでいた私が初めて手にした文学作品だ。
もう50年も昔のこと。
テレビニュースで見た事件から、ふと本書を思い出した。
読んでいるときのゾクゾク感は50年前と何も変わらない。
名著の凄さを改めて思い知らされた。
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夜と霧の隅で (新潮文庫) 文庫 – 1963/7/30
北 杜夫
(著)
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もう一つのアウシュヴィッツ――「安死術」。
ナチスの指令に抵抗する精神科医たちの苦悩と苦闘。芥川賞受賞作を含む、初期傑作5編。
第二次大戦末期、ナチスは不治の精神病者に安死術を施すことを決定した。その指令に抵抗して、不治の宣告から患者を救おうと、あらゆる治療を試み、ついに絶望的な脳手術まで行う精神科医たちの苦悩苦闘を描き、極限状況における人間の不安、矛盾を追究した芥川賞受賞の表題作。他に「岩尾根にて」「羽蟻のいる丘」等、透明な論理と香気を帯びた抒情が美しく融合した初期作品、全5編。
目次
岩尾根にて
羽蟻のいる丘
霊媒のいる町
谿間にて
夜と霧の隅で
解説 埴谷雄高
本書「解説」より
人生においてあまりに多くのことを考察しなければならぬことを否応なく知っている北杜夫の文学は、当然、たとえそれが困難であるにせよ、考察する文学とならざるを得ないのである。そして、或る不思議な目標に執着する人間の精神の明暗の奥部を考察しようとするこの作品集は、いってみれば、現代という不気味な現実の前に提出されたところのさまざまな違った角度から書きあげることを試みられた精神解剖学序説といった趣きを呈している。
――埴谷雄高(作家)
北杜夫(1927-2011)
東京青山生れ。旧制松本高校を経て、東北大学医学部を卒業。1960(昭和35)年、半年間の船医としての体験をもとに『どくとるマンボウ航海記』を刊行。同年、『夜と霧の隅で』で芥川賞を受賞。その後、『楡家の人びと』(毎日出版文化賞)、『輝ける碧き空の下で』(日本文学大賞)などの小説を発表する一方、ユーモアあふれるエッセイでも活躍した。父親斎藤茂吉の生涯をつづった「茂吉四部作」により大佛次郎賞受賞。
ナチスの指令に抵抗する精神科医たちの苦悩と苦闘。芥川賞受賞作を含む、初期傑作5編。
第二次大戦末期、ナチスは不治の精神病者に安死術を施すことを決定した。その指令に抵抗して、不治の宣告から患者を救おうと、あらゆる治療を試み、ついに絶望的な脳手術まで行う精神科医たちの苦悩苦闘を描き、極限状況における人間の不安、矛盾を追究した芥川賞受賞の表題作。他に「岩尾根にて」「羽蟻のいる丘」等、透明な論理と香気を帯びた抒情が美しく融合した初期作品、全5編。
目次
岩尾根にて
羽蟻のいる丘
霊媒のいる町
谿間にて
夜と霧の隅で
解説 埴谷雄高
本書「解説」より
人生においてあまりに多くのことを考察しなければならぬことを否応なく知っている北杜夫の文学は、当然、たとえそれが困難であるにせよ、考察する文学とならざるを得ないのである。そして、或る不思議な目標に執着する人間の精神の明暗の奥部を考察しようとするこの作品集は、いってみれば、現代という不気味な現実の前に提出されたところのさまざまな違った角度から書きあげることを試みられた精神解剖学序説といった趣きを呈している。
――埴谷雄高(作家)
北杜夫(1927-2011)
東京青山生れ。旧制松本高校を経て、東北大学医学部を卒業。1960(昭和35)年、半年間の船医としての体験をもとに『どくとるマンボウ航海記』を刊行。同年、『夜と霧の隅で』で芥川賞を受賞。その後、『楡家の人びと』(毎日出版文化賞)、『輝ける碧き空の下で』(日本文学大賞)などの小説を発表する一方、ユーモアあふれるエッセイでも活躍した。父親斎藤茂吉の生涯をつづった「茂吉四部作」により大佛次郎賞受賞。
- 本の長さ304ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日1963/7/30
- 寸法14.8 x 10.5 x 2 cm
- ISBN-104101131015
- ISBN-13978-4101131016
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夜と霧の隅で | 幽霊―或る幼年と青春の物語― | 木精―或る青年期と追想の物語― | 母の影 | パパは楽しい躁うつ病 | 船乗りクプクプの冒険 | |
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【新潮文庫】北杜夫 作品 | ナチスの指令に抵抗して、患者を救うために苦悩する精神科医たちを描き、極限状況下の人間の不安を捉えた表題作など初期作品5編。〈芥川賞受賞〉 | 大自然との交感の中に、激しくよみがえる幼時の記憶、母への慕情、少女への思慕──青年期のみずみずしい心情を綴った処女長編。 | ヨーロッパを彷徨う精神科医の胸に去来する不倫の恋の追憶、芸術家としての目ざめと怯え。自らの魂の遍歴を回想する『幽霊』の続編。 | 破天荒で気丈で、魅力的な母。奇人だが、文学の先達となった父。この両親にして作家・北杜夫あり。父母への追慕溢れる自伝的小説。 | 株の売買で破産宣告、挙句の果てに日本から独立し紙幣を発行。どくとるマンボウ北杜夫と天然娘斎藤由香の面白話満載の爆笑対談。 | 執筆途中で姿をくらましたキタ・モリオ氏を追いかけて大海原へ乗り出す少年クプクプの前に、次々と現われるメチャクチャの世界! |
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どくとるマンボウ昆虫記 | どくとるマンボウ航海記 | どくとるマンボウ青春記 | マンボウ 遺言状 | マンボウ 恐妻記 | マンボウ 最後の大バクチ | |
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虫に関する思い出や伝説や空想を自然の観察を織りまぜて語り、美醜さまざまの虫と人間が同居する地球の豊かさを味わえるエッセイ。 | のどかな笑いをふりまきながら、青い空の下を小さな船に乗って海外旅行に出かけたどくとるマンボウ。独自の観察眼でつづる旅行記。 | 爆笑を呼ぶユーモア、心にしみる抒情。マンボウ氏のバンカラとカンゲキの旧制高校生活が甦る、永遠の輝きを放つ若き日の記録。 | ハチャメチャ大王・マンボウ氏も、ついに気弱な老人に……なるわけがありません!御年 77 歳の本音炸裂。爆笑やけっぱちエッセイ。 | 淑やかだった妻を猛々しくしたのは私のせいなのだろう(反省)。修羅場続きだった結婚生活を振り返る、マンボウ流愛情エッセイ。 | 人生最後の大「躁病」発症老いてなお盛んな躁病に、競馬、競艇、カジノと、ギャンブル三昧、狂乱バブルの珍道中が始まった。 |
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楡家の人びと 第一部 | 楡家の人びと 第二部 | 楡家の人びと 第三部 | 巴里茫々 | 見知らぬ国へ | 【単行本】憂行日記 | |
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楡脳病院の七つの塔の下に群がる三代の大家族と、彼らを取り巻く近代日本五十年の歴史の流れ……日本人の夢と郷愁を刻んだ大作。〈毎日出版文化賞受賞〉 | 『どくとるマンボウ航海記』のパリ、『白きたおやかな峰』のカラコルム。著者の人生が走馬灯のように甦る詩情ᷓれる珠玉の短編集。 | 偉大な父・斎藤茂吉、もう会えぬ友、憧れの文豪トーマス・マン……。永遠の文学青年・北杜夫の輝きの記憶。珠玉のエッセイ 45 編。 | ファーブルに憧れて自然豊かな松本高校に入学早々、日本は敗戦。社会の価値観は混乱し、家業の医者になることを期待される中、少年に文学への熱い思いが芽生えていく。登山、昆虫採集、卓球部、猛勉強、友との語らい――北杜夫18歳の息遣いを伝える稀有な日記。父・斎藤茂吉の作品に触発された多数の詩歌、自筆スケッチも収録。 |
登録情報
- 出版社 : 新潮社; 改版 (1963/7/30)
- 発売日 : 1963/7/30
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 304ページ
- ISBN-10 : 4101131015
- ISBN-13 : 978-4101131016
- 寸法 : 14.8 x 10.5 x 2 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 45,932位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2021年3月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2022年5月11日に日本でレビュー済み
5作品からなる短編集。ユーモアエッセイの印象が強い著者だが、精神科医の一面をうかがわせる。
タイトル作は、大戦時のドイツで、ナチスの優生思想に飜弄される精神科の医師らの姿を描いている。国に命を奪われそうな精神を病んだ人々を、無茶な脳手術等で治そうと苦闘する医師。全くの善意からではない故に鬼気迫るのだ。フランクル「夜と霧」を想起させるだろう。
他、登山路で見つけた滑落死体とそこで出会った男とのひと時「岩尾根にて」、台湾で蝶の採集人が見た希少種にまつわる昔語り「谿間にて」など。【芥川賞】
タイトル作は、大戦時のドイツで、ナチスの優生思想に飜弄される精神科の医師らの姿を描いている。国に命を奪われそうな精神を病んだ人々を、無茶な脳手術等で治そうと苦闘する医師。全くの善意からではない故に鬼気迫るのだ。フランクル「夜と霧」を想起させるだろう。
他、登山路で見つけた滑落死体とそこで出会った男とのひと時「岩尾根にて」、台湾で蝶の採集人が見た希少種にまつわる昔語り「谿間にて」など。【芥川賞】
2021年5月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
到着予定日を過ぎて問い合わせしてから届いたので、不安になりました。
問い合わせへの回答が遅かったのも不安の一因でした。
商品は普通に古本感(使用感)のあるものでした。
問い合わせへの回答が遅かったのも不安の一因でした。
商品は普通に古本感(使用感)のあるものでした。
2014年2月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
この本には、表題作のほか短編が4作品納められています。
その短編を読んで、いよいよ本編が始まるのですが、この組み合わせが絶妙だと感じました。
『夜と霧の隅で』は、ベルリン陥落直前のドイツの精神病院が舞台になっています。
人間とは何かを痛烈に感じさせられますし、国家が精神病患者の様に妄想を見ている時代の不気味さが伝わってきます。
そういう精神性のようなものを感じ取るのに、4つの短編がガイダンス的な働きをしているのではないかと思ったのです。
短編の一つ一つも実に奇妙で感覚的な作品です。
ぼんやりと人間って何だろうという思いが膨らんできます。
そして、本編ともいうべき作品の扉が開かれます。
この作品が芥川賞(新人賞)受賞作ということに今更ながら驚いています。
その短編を読んで、いよいよ本編が始まるのですが、この組み合わせが絶妙だと感じました。
『夜と霧の隅で』は、ベルリン陥落直前のドイツの精神病院が舞台になっています。
人間とは何かを痛烈に感じさせられますし、国家が精神病患者の様に妄想を見ている時代の不気味さが伝わってきます。
そういう精神性のようなものを感じ取るのに、4つの短編がガイダンス的な働きをしているのではないかと思ったのです。
短編の一つ一つも実に奇妙で感覚的な作品です。
ぼんやりと人間って何だろうという思いが膨らんできます。
そして、本編ともいうべき作品の扉が開かれます。
この作品が芥川賞(新人賞)受賞作ということに今更ながら驚いています。
2016年2月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
医学生に読んでもらいたい作品ですね。
そして自己の内面に問うてみてください。
どのようなドクターになりたいかを。
全ての学問の中で、医学ほど面白く残酷なものは無いと思える作品でした。
そして自己の内面に問うてみてください。
どのようなドクターになりたいかを。
全ての学問の中で、医学ほど面白く残酷なものは無いと思える作品でした。
2012年10月19日に日本でレビュー済み
大変面白かった。個人読書履歴。
一般文学通算4作品目の読書完。通算4冊目の作品。1972/05/20
一般文学通算4作品目の読書完。通算4冊目の作品。1972/05/20
2010年5月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
芥川賞受賞の表題作ほか4編を収録。北杜夫の非主観的な論理が発揮された作品ばかり。特に真価を発揮しているのが表題作だろう。
極限状況における客観性とはどうしようもなく絶望的でありながら、全否定できない甘美さがあるのも事実。そもそも客観性とは
何なのか?その本質に斬り込む。形は同じ人間。ただ罪悪の味は千差万別。一方死は死でしかない。同じ味。ただ形はバラバラに
砕け散る。。答えのないテーマ。
さて、他の作品も面白い。生と死がダイレクトに交錯する断崖の岩場において展開する催眠的な物語「岩尾根にて」。
ある男女の背徳と、幼子の無限大の純真を、羽のない蟻と羽のある蟻に見立て現実の諦念を鋭く説いた「羽蟻のいる丘」。
どうしても形式化される学問の性質と、証明不能な霊魂の存在を対照的に描き、人間生活の不可避なペテンと小さな生甲斐を
垣間見せる「霊媒のいる町」。
執念も突き詰めすぎると餓鬼のごとく。蝶採集に貪欲にこだわったある男の悲喜劇「谷間にて」。
北杜夫の初期作品を満喫できる一冊です。
極限状況における客観性とはどうしようもなく絶望的でありながら、全否定できない甘美さがあるのも事実。そもそも客観性とは
何なのか?その本質に斬り込む。形は同じ人間。ただ罪悪の味は千差万別。一方死は死でしかない。同じ味。ただ形はバラバラに
砕け散る。。答えのないテーマ。
さて、他の作品も面白い。生と死がダイレクトに交錯する断崖の岩場において展開する催眠的な物語「岩尾根にて」。
ある男女の背徳と、幼子の無限大の純真を、羽のない蟻と羽のある蟻に見立て現実の諦念を鋭く説いた「羽蟻のいる丘」。
どうしても形式化される学問の性質と、証明不能な霊魂の存在を対照的に描き、人間生活の不可避なペテンと小さな生甲斐を
垣間見せる「霊媒のいる町」。
執念も突き詰めすぎると餓鬼のごとく。蝶採集に貪欲にこだわったある男の悲喜劇「谷間にて」。
北杜夫の初期作品を満喫できる一冊です。
2014年4月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
V.E.フランクルの「夜と霧」やノーマン・ネイマーク「スターリンのジェノサイド」、ザスラフスキー「カチンの森」などのノンフィクションの後に読んでみた。小説なので、まるでモノクロの昔のドイツ映画を見ているような錯覚に陥る。重い主題だが、もう60年以上に起きた、遠いドイツの、日本人には理解しかねる人種差別や非人間的な電気ショックによる治療法などについては、あまりにも現実離れしているため、かえって安心して(?)読めたことは、皮肉な思いがする。そして、同時に恐ろしい気もした。