本書は「世界文学」を、ホメロスからカフカなどの現代まで、一貫した視点から一望しようという大胆な一冊である。
「フランス文学」のような、各国文学の本は多々あれど、ここまで広く一気に見ようという野心作はなかなかない。
古い時代の作品はわりと駆け足だが、地域を超えて「死とよみがえり」のような共通したモチーフに触れられる点は強調されている。
ルネサンスにおける「人間の発見」や、フランス革命などに起因する個人の思想や理性の優位、それへの反発としてのロマン主義、あるいはまたそれと対比しての中国文学、といった、大きな流れや位置づけが論じられ、各作家をその中で位置づけている。
どことなく加藤周一
日本文学史序説
に似たような雰囲気も感じる（長さは本書の方がはるかに短いので、そこまでの網羅性や深いツッコミは出来てないが）。
写真や絵が多く、本の印刷の紙の都合上いささか（物理的に）重いので、文庫で復刊などしてくれるとなかなか価値があるのではないかと思う。
古い本ではあるが、隠れた良書。
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