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![The Amazing Bud Powell [12 inch Analog]](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/81L8Cve+G2L._AC_UL160_SR160,160_.jpg)
今さら言うまでもないが、バド・パウエルはジャズ・ピアノ史上に並ぶ者の居ないレベルの「別格級の天才」とされる。
だが、一般的にその「絶頂期」とされるのは、キャリア前半の1940年代半ば～1950年代初頭までであり、それ以降の演奏は「かつての才能が影をひそめてしまった」という意味で「後期・晩年」的な扱いをされることが多い。
そうした一般論の「是非」はいったん置いておいて、では「1950年代の初頭ってどの辺りまでが前期なのか？」と言った時に、この1953年にブルーノートが録音した「アメイジング・バド・パウエルVol.２」を、「ギリギリでここまでが前期」とする意見が多いのではないだろうか。
ただし正直に言えば、演奏の「切れ味・迫力」という意味では、「鬼神の如く」といった勢いのある「Vol.１」と比べると、明らかに衰えが見られる。
そういう意味では、この1953年の時点において、パウエルはすでに「絶頂期」とは呼べないと思う。
しかし、である。
「作曲のひらめき、インスピレーション」という意味では、まだまだ素晴らしい才能を見せてくれている。
それが、7曲目の「オードリー」と８曲目の「グラス・エンクロージャー」だ。
とりわけ「グラス・エンクロージャー」は、「Vol.１」収録の超有名曲「ウン・ポコ・ローコ」に十分に匹敵するレベルのとんでもない傑作である。
バド・パウエルと言えば「ウン・ポコ・ローコ」＝「アメイジングVol.１」みたいなイメージが付いてしまっているようで正直、歯がゆく思う時もあるが、この「グラス・エンクロージャー」もかなり挑戦的な「変わった」曲で、「ウン・ポコ・ローコ」と系統はまったく同じである。
ただ、「ウン・ポコ・ローコ」はロックな感じであり、「グラス・エンクロージャー」はクラシカルな感じがある。
とにかく、これほどの曲を作れるようなインスピレーションがまだ残っていたのだから、この時期のパウエルは「まだギリギリ前期」と見ても良いように思う。
この後、バド・パウエルの諸作からは、上記の「ウン・ポコ・ローコ」や「グラス・エンクロージャー」、あるいはヴァーヴ盤「ジャズ・ジャイアント」収録の「テンパス・フュージット」のような「音楽の神が降りたかのような、恐ろしいほどに傑出した自作曲」が姿を消す。
日本で最も人気のある代表曲「クレオパトラの夢」（1958年録音）にしても、キャッチーなリフとシンプルなコード進行を繰り返すだけの「単純な曲」に過ぎないのだ（もちろん良い曲だが・・・）。
まさしく、「グラス・エンクロージャー」は天才バド・パウエルの最後の大傑作と言えるし、その他の曲もみんな良いこの「アメイジングVol.２」は、間違いなく「過小評価されている名盤」である。
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