やはり向田邦子は素晴らしい、の一語に尽きるエッセイ集である。調べたら初版発行が1980年となっているから、収められているのは70年代の文章なのだろうが、生き生きと活写される悲喜こもごもが脳裏にありありと浮かび、風俗は古くても内容はまったく古びていない。
さんざん待たされた挙句、やっと現れた相手に丁寧に「お待たせいたしました」と言ってしまった友人の失敗談。いつもけんかしているのに、なぜか浅草デートしている靴磨きのおばさんとビル管理人のおじさんの不思議。印象的な話は枚挙にいとまがない。
エッセイとはこうありたい、という名文ばかりだが、いかにも新聞コラムみたいな技巧的な名文臭さを感じさせないところもまた向田邦子の魅力である。これだけサラリとした、うまい文章を書ける人が、今いるだろうか。
ほとんど使われなくなった日本語の数々にも、ハッとさせられる。「ひとかたけ」「思いもうける」「経木(きょうぎ)」「一六勝負」「持ち重り」「ぼろとじくり」など、中には調べないとわからない言葉もあった。グローバル化だデジタル化だの中で、豊かな表現とともに失われてしまった感性は多いと思う。

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無名仮名人名簿 (文春文庫) 文庫 – 1983/8/1
向田 邦子
(著)
われわれの何気ない日常のなかでめぐり合いすれ違う親しい人、ゆきずりの人のささやかなドラマを、著者持前のさわやかな感性とほのぼのとしたユーモアで描き出した大人の読物。
- ISBN-104167277034
- ISBN-13978-4167277031
- 出版社文藝春秋
- 発売日1983/8/1
- 言語日本語
- 本の長さ301ページ
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登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (1983/8/1)
- 発売日 : 1983/8/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 301ページ
- ISBN-10 : 4167277034
- ISBN-13 : 978-4167277031
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,282,742位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 10,789位文春文庫
- - 18,344位近現代日本のエッセー・随筆
- - 54,720位評論・文学研究 (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
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(1929-1981)1929(昭和4)年、東京生れ。実践女子専門学校(現実践女子大学)卒。
人気TV番組「寺内貫太郎一家」「阿修羅のごとく」など数多くの脚本を執筆する。1980年『思い出トランプ』に収録の「花の名前」他2作で直木賞受賞。著書に『父の詫び状』『男どき女どき』など。1981年8月22日、台湾旅行中、飛行機事故で死去。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2018年8月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
向田さんの何事も面白がる正確に拍手!最後まで見届けて分析している。
同感して私もやってると思っています。
同感して私もやってると思っています。
2021年9月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
向田さんのエッセイは気取りがなく、女性らしさとちょっと意外なところがミックスされている感じで素敵です。作品は素敵ですが、最近の書籍の配送方法に難あり。
梱包材の省力化とかで、書籍が袋状のものに固定されずに放り込まれているため、本体とカバーがずれて傷がついています。中古本を購入すると書籍だけをきちんと包んであります。化学製品を使うことをやめるなら、紙でよいのでくるんでから配送してください。
書籍は大切な友ですから。
梱包材の省力化とかで、書籍が袋状のものに固定されずに放り込まれているため、本体とカバーがずれて傷がついています。中古本を購入すると書籍だけをきちんと包んであります。化学製品を使うことをやめるなら、紙でよいのでくるんでから配送してください。
書籍は大切な友ですから。
2015年9月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
活字が小さいのでビックリ!私が老眼になったのでしょうかね。中古とはいえキレイでよかったです。
2009年11月28日に日本でレビュー済み
私は「父の詫び状」の方が好きです。随所から、独身でいることが寂しいのではないかと伺い知れました。「向田邦子の恋文」を網羅した後だとしっくり来ます。日常で、著者が出会う人々のことが記されています。自分の身の回りにもこんな人がいる…と共感するところもありました。著者と同じ猫好きな点もあり、頷ける箇所が多かったです。
2018年5月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
向田邦子さんのエッセイは好きで、これで3冊目。
世代は違うのですが、読んでいて「あぁ、、こううことある」とか「こういう人いる!」と頷くことが多々あります。
また、向田さんの記憶力(もしかして、こまめにメモしていたのかもしれませんが)も素晴らしいと思います。
自分も見習って日常の出来事をメモするようになりました。
世代は違うのですが、読んでいて「あぁ、、こううことある」とか「こういう人いる!」と頷くことが多々あります。
また、向田さんの記憶力(もしかして、こまめにメモしていたのかもしれませんが)も素晴らしいと思います。
自分も見習って日常の出来事をメモするようになりました。
2002年7月10日に日本でレビュー済み
向田邦子の人々を観察する観賞眼には驚かされた。こんなに面白くて人々をよく観察しているエッセイは初めて読んだ。人生こんなに身近なところにいろいろ楽しいことがいっぱいあるのだなとあらためて思った。