充実した幅広い選曲や絶妙な構成に余裕すら感じられる、粋なベスト盤。このアルバムを聴く時、77分という総収録時間は一瞬のまばたきのようなものであり、最後の「まっぴらロック」が終わった次の瞬間、また再生ボタンへと手を伸ばしてしまいたくなることうけあい。剣さんが敬愛する宇崎竜童氏が率いていたダウン・タウン・ブギウギ・バンドのベストLPに『傑作大全集』(!)、というのがあったが、このベスト盤にはそんな呼び方もまた、ふさわしいように感じられる。
思えば、03年発表のオリジナル・アルバム『777』あたりから、彼らのやりたい方向性がよりハッキリしてきたというか、より強い意志というか確信のようなものが感じられる、自信に満ちた作品が送り出されるようになってきたこともあって、このベスト盤のリリースは、まさにドンピシャのタイミングだったといえるだろう。デジパック仕様の、パノラミックなジャケット・デザインもイカしてる。
なお、この盤が初出だった音源は、ノスタルジックな曲調だが、ただ甘いだけじゃない新曲の1と、『777』収録曲の―ライヴ・ヴァージョンではなく―ラテン・ムード満点なリミックスである「実演!夜のヴィブラート」の2曲。「タイガー&ドラゴン」のエンディング部分には、謎の後説入り。役に立つかどうかはともかく、非常に面白く読める楽曲解説つき(川勝正幸、下井草秀、湯浅学、安田謙一の各氏が執筆)。ブックレット冒頭の、剣さんによるメッセージが、なぜか胸にグッときた。