電力不足、そして3.11後のエネルギー問題を語る上で必須である。高い効率を誇る最新のガスコンバイン火力発電とガスコージェネレーションが日本を救うという内容で、著者によれば古い石炭火力発電をこの新鋭ガス火力に置き換えるだけで効率が5割向上する(しかも二酸化炭素の排出量も激減)とのことで、補助金を際限なくつぎ込んだ果てに大事故を起こした原発よりも遥かに優れたエネルギーなのである。
原理主義的な原子力擁護派の語るエネルギー政策とはまさにレベルが違う。六本木ヒルズのコージェネの活躍ぶりを見れば、いかにガスコージェネが優秀な切り札であるか分かるというものだ。
ただ欠点として、著者は気温の高い地域・季節にはガスコージェネよりもヒートポンプの方が効率的であるのを書いていないこと、太陽電池はガスの苦手とする暑い夏にこそ効果を発揮する点を明記していないことが挙げられる。風力発電も千葉から福島の沿岸部や北東北など適地が数多く残っている。太陽光も風力も震災に非常に強く、直下地震に弱いガスよりも電力供給リスク軽減の効果がある。脱原発派と政治的同盟を結んで「環境負担の小さい」ガス推進に協力して貰った方が賢明である。
太陽電池のイノベーションや価格低下が凄まじい速度で進んでいること、対照的に原子力の技術革新が常に楽観的な予想を裏切っていて「ハッブル現象」(どんどん遠ざかってゆく)と嘲笑されていることも認識して欲しいところ。
また、著者はドイツの再生可能エネルギーをきちんと研究していないと思われる。ドイツの再生可能エネルギー拡大策は極めて合理的で、コスト競争力の高い木質バイオマスを効率の高いコージェネで利用しているのが主軸である。従って年々雇用者数が伸びているのが現状。化石燃料の価格が高騰するほど有利になる賢い政策なのである。
『日本林業はよみがえる』梶山恵司
追記:無責任な評論家がサハリンから北海道にガスパイプラインを敷設すべきと吹聴したらしいが、国際関係史に無知でロシアの習性を知らないナイーブな意見である。彼らは必ず日中を競わせてカネを出させようとする。パイプライン完成よりも先に幾つもの洋上風力(東北)と24h稼動できる太陽熱発電所(九州・四国)が完成し、高性能な薄膜太陽電池が市場を席巻するのは確実だ。
【一部の知らない人のために蛇足】ナイーブ(naive) :フランス語では「素直な」「無邪気な」という日本語と同様に子供っぽさを良い意味でとる語義のほかに、悪い意味でとる語義もあり、その場合は「世間知らず」「鈍感」「お人好し」「バカ正直」という意味になる。英語の naive は良い意味で用いられることはまれで、フランス語の悪い意味の方の語義で用いられる。[ja.wikipedia.org]
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エネルギー論争の盲点 天然ガスと分散化が日本を救う (NHK出版新書) 新書 – 2011/7/7
石井 彰
(著)
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反原発派も自称エネルギー評論家も
言わなかった「不都合な真実」とは
3・11後、にわかに高まる「原発廃絶」の声。しかし、コストが高く安定性の低い再生可能エネルギーで原発分のすべてを代替しようとすれば、間違いなく日本経済と消費社会は崩壊する——。エネルギー供給の安定とCO2削減を両立するのは、天然ガスと資源分散型のスマートエネルギーネットワークだ。巷に溢れるにわかエネルギー評論家のウソを正し、エネルギー問題の本質を数字と歴史から説き起こす、真の専門家による啓発の書。
言わなかった「不都合な真実」とは
3・11後、にわかに高まる「原発廃絶」の声。しかし、コストが高く安定性の低い再生可能エネルギーで原発分のすべてを代替しようとすれば、間違いなく日本経済と消費社会は崩壊する——。エネルギー供給の安定とCO2削減を両立するのは、天然ガスと資源分散型のスマートエネルギーネットワークだ。巷に溢れるにわかエネルギー評論家のウソを正し、エネルギー問題の本質を数字と歴史から説き起こす、真の専門家による啓発の書。
- ISBN-104140883561
- ISBN-13978-4140883563
- 出版社NHK出版
- 発売日2011/7/7
- 言語日本語
- 寸法11.2 x 1.3 x 17.2 cm
- 本の長さ224ページ
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登録情報
- 出版社 : NHK出版 (2011/7/7)
- 発売日 : 2011/7/7
- 言語 : 日本語
- 新書 : 224ページ
- ISBN-10 : 4140883561
- ISBN-13 : 978-4140883563
- 寸法 : 11.2 x 1.3 x 17.2 cm
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2011年7月10日に日本でレビュー済み
2013年6月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本書は、エネルギー問題(≠電力問題)に関するものである。主な内容は5つ。エネルギー問題が重要な理由、化石燃料の優位性、原発vs再生可能エネルギー対立の不毛さ、天然ガスのメリット、エネルギー安全保障。これらについて、エネルギーの一部である電力ではなく、エネルギー全体の観点から書かれている。
本書の意義は2つ。1つはエネルギー問題と電力問題は異なり、混同すべきでないという「考えてみれば当たり前、でも認識されていない」ことを知らしめてくれたことにある。我々はエネルギー問題=電力問題であり、その中でも原発か非原発かという問題にどっぷり浸かっている。本書を読めばこれらが誤りであり、問題の捉え方が間違っていることを認識できるだろう。二酸化炭素排出などの対策を考える上でも良いきっかけになる。2つ目はエネルギーと人類の進化、文明の発展の関係を明らかにしたことである。現代の文明社会が莫大なエネルギー消費の上に成り立っており、効率のよいエネルギーなしでは持続不可能であるという。これも現代社会をエネルギーの観点から考えるきっかけになる。
エネルギー問題と電力問題は異なるということは、言い換えると電力問題をエネルギーに拡大して捉える必要があるということ。この考え方に立てば、二酸化炭素の排出を減らす手段、再生可能エネルギーへの注力の仕方などで現行の方法が適切ではないことが理解できる。つまり、問題をエネルギーとして捉えることで、各エネルギー問題とその対策の差ではなく「重み」から考えることができるのだ。「重み」から考えることはマスコミ報道や政策から完全に欠落している。マスコミ関係者・政治家には是非ご一読頂き、電力問題ではなく、エネルギー問題をどうするかという問いを国民に投げかけて欲しい。著者は天然ガス(コージェネレーション)+再生可能エネルギー+分散化が1つの解としたが、他にも手はあるだろう。我々は知恵を集めてエネルギー問題を解決しなければならない。
改善点は最も重要なエネルギー消費量と電力消費量の図かないこと。これは第1章の第1節にあり、本書の根幹をなす主張である。これが文章で書かれているだけではわかりにくい。資源エネルギー庁のウェブサイトにあるのだから、せめて添付して欲しいところ。
本書の意義は2つ。1つはエネルギー問題と電力問題は異なり、混同すべきでないという「考えてみれば当たり前、でも認識されていない」ことを知らしめてくれたことにある。我々はエネルギー問題=電力問題であり、その中でも原発か非原発かという問題にどっぷり浸かっている。本書を読めばこれらが誤りであり、問題の捉え方が間違っていることを認識できるだろう。二酸化炭素排出などの対策を考える上でも良いきっかけになる。2つ目はエネルギーと人類の進化、文明の発展の関係を明らかにしたことである。現代の文明社会が莫大なエネルギー消費の上に成り立っており、効率のよいエネルギーなしでは持続不可能であるという。これも現代社会をエネルギーの観点から考えるきっかけになる。
エネルギー問題と電力問題は異なるということは、言い換えると電力問題をエネルギーに拡大して捉える必要があるということ。この考え方に立てば、二酸化炭素の排出を減らす手段、再生可能エネルギーへの注力の仕方などで現行の方法が適切ではないことが理解できる。つまり、問題をエネルギーとして捉えることで、各エネルギー問題とその対策の差ではなく「重み」から考えることができるのだ。「重み」から考えることはマスコミ報道や政策から完全に欠落している。マスコミ関係者・政治家には是非ご一読頂き、電力問題ではなく、エネルギー問題をどうするかという問いを国民に投げかけて欲しい。著者は天然ガス(コージェネレーション)+再生可能エネルギー+分散化が1つの解としたが、他にも手はあるだろう。我々は知恵を集めてエネルギー問題を解決しなければならない。
改善点は最も重要なエネルギー消費量と電力消費量の図かないこと。これは第1章の第1節にあり、本書の根幹をなす主張である。これが文章で書かれているだけではわかりにくい。資源エネルギー庁のウェブサイトにあるのだから、せめて添付して欲しいところ。
2012年4月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
エネルギー問題の骨組になっている概念や事柄を多くの紙幅を費やして説明してます。エクセルギーとエントロピーはこの本の解説でもかなりよく解ります。石油が環境問題を別とすれば何故エネルギー源としてベストセラーであったか、圧倒的な使い勝手の良さと資源採掘の低コストと大きな発熱量でとても客観的に解説されていました。
著者は最も有望なエネルギー源は天然ガスであるという立場です。逆に原子力発電と再生可能エネルギーはコストパフォーマンスが低いと考えています。
再生可能エネルギー、特に太陽光発電については、自分は著者とは異なりこれからも順調に性能アップしていくのではないかと考えます。エネルギー密度が低いという問題については、人間のエネルギー消費が大きいとはいっても上限がないというわけではなく、全てのエネルギー消費を総和として見れば膨大ですが消費元では各々は小さな消費量なので、利用方法を工夫すれば必ずしもそれがボトルネックだとまでは言えないのではないかと思います。
逆にピークオイル問題に関しては著者は「オオカミ少年」と書いており、自分などは今まではともかくまだ見つかってもいない埋蔵量をこれからもあるはずだというのは言い過ぎではないかと感じました。化石燃料に関しては「最大の問題は探査開発の維持継続努力」と書かれており、技術開発で絶えず可採年数は更新されるだろうと楽観的な一方、しかしそのすぐ後では再生可能エネルギーを「安易な技術楽観論」と呼んで将来のイノベーションに期待出来ないと論じています。可採年数は現状の暫定値ですがピークオイルが起きないだろうというのはあくまで「予測」です。それは実は環境主義のイノベーションへの「予測」とあまり変わりません。
ドイツの火力発電について、
高価な再生可能エネルギーの代償として石炭火力を大量に使っているという記述がありますが、
これは多分発電コストの問題ではなく、
ドイツでは国内で石炭が採れるため、
エネルギーセキュリティーの目的で消費しているのではないでしょうか。
石炭火力と相関が高いのは原子力発電ではないかと思います。
再生可能エネルギーの導入の目的は主にエネルギーを大量に消費する先進国の倫理的な理由によるので、そのために一定程度義務的に導入するのだ、というのは同感です。
国産エネルギーというものに過度に期待するのは危険という主張は説得的だと思いました。
様々なリスク要因で供給力に変動が出るのはエネルギー源が国産でも輸入でも同様なので、
逆にリスク分散して市場の流動性があったほうが安全であるというのは正しいように思えました。
著者は最も有望なエネルギー源は天然ガスであるという立場です。逆に原子力発電と再生可能エネルギーはコストパフォーマンスが低いと考えています。
再生可能エネルギー、特に太陽光発電については、自分は著者とは異なりこれからも順調に性能アップしていくのではないかと考えます。エネルギー密度が低いという問題については、人間のエネルギー消費が大きいとはいっても上限がないというわけではなく、全てのエネルギー消費を総和として見れば膨大ですが消費元では各々は小さな消費量なので、利用方法を工夫すれば必ずしもそれがボトルネックだとまでは言えないのではないかと思います。
逆にピークオイル問題に関しては著者は「オオカミ少年」と書いており、自分などは今まではともかくまだ見つかってもいない埋蔵量をこれからもあるはずだというのは言い過ぎではないかと感じました。化石燃料に関しては「最大の問題は探査開発の維持継続努力」と書かれており、技術開発で絶えず可採年数は更新されるだろうと楽観的な一方、しかしそのすぐ後では再生可能エネルギーを「安易な技術楽観論」と呼んで将来のイノベーションに期待出来ないと論じています。可採年数は現状の暫定値ですがピークオイルが起きないだろうというのはあくまで「予測」です。それは実は環境主義のイノベーションへの「予測」とあまり変わりません。
ドイツの火力発電について、
高価な再生可能エネルギーの代償として石炭火力を大量に使っているという記述がありますが、
これは多分発電コストの問題ではなく、
ドイツでは国内で石炭が採れるため、
エネルギーセキュリティーの目的で消費しているのではないでしょうか。
石炭火力と相関が高いのは原子力発電ではないかと思います。
再生可能エネルギーの導入の目的は主にエネルギーを大量に消費する先進国の倫理的な理由によるので、そのために一定程度義務的に導入するのだ、というのは同感です。
国産エネルギーというものに過度に期待するのは危険という主張は説得的だと思いました。
様々なリスク要因で供給力に変動が出るのはエネルギー源が国産でも輸入でも同様なので、
逆にリスク分散して市場の流動性があったほうが安全であるというのは正しいように思えました。
2013年12月30日に日本でレビュー済み
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普段はレビューを書かないのですが、エネルギー業界に身を置き、太陽光発電の技術開発をしている身としてどうしても見逃せない点があったため、言及させていただきます。
まずこの本の立場は天然ガス利用を拡大すべきというところにあります。これはエネルギー業界では十年以上前から広く言われていることであり、電力会社、IPPともLNG火力発電の新設を進めています。大筋としては地に足のついた妥当な見解です。内容としての目新しさはありませんが、現実的な考え方を学ぶためには適した本と言えます。
ただ、根本的な理解不足からくると思われる記述が少なからず見受けられます(評論家にありがちなことですが)。細かい専門用語はともかく、エネルギーを語る上での根本となる部分での誤解も見受けられました。以下にいくつかの例を示します。
1.太陽光発電の問題点について、一貫して論点のずれが見られました。著者は「太陽光発電は”コストが高いために”原子力発電の代替とは成りえない」と主張しています。コスト高は全くもって正しいのですが、太陽光発電の本質的な問題点はそこではなく「出力変動」にあります。すなわち、太陽電池は日中しか発電できず、系統における供給電力量が不安定になりますが、これにより電力需給バランスが崩れると周波数変化と電圧変化が生じる、つまり電力の”質”が下がるというわけです。太陽電池の製造コストは材料開発によって低減する余地があるため、もし問題がコストだけならば原発をカバーするレベルの普及も将来的には可能でしょう。しかし、出力変動については本質的に改善しようがないため、そもそもベース電源とはなりえないのです。それをベース電源である原子力発電と同列のものとして語ること自体がナンセンスなのです(そもそも著者が「ベース電源」という概念すら正しく認識していない気がしますが)。
2.本書21ページで「出力密度」という用語を以下のように説明していました。「時間当たりの出力エネルギー量が高いかどうか」。著者は高校物理も学んでいないのかと疑いたくなるような記述です(エントロピーとエクセルギーの関係を誤解していると思われる別の項の記述を見てもこのような疑いを持ってしまいます)。「単位時間当たりのエネルギー」は”出力”の定義であり、”出力密度”は「単位面積(あるいは体積、重量)あたりの出力」のことです(細かいことを言えば、出力エネルギー量という言葉もまずい)。これらを混同しているということは、そもそも”出力”という電力を語る上で最も基本となるキーワードを理解していないことになります。一方、分散型電源は”出力密度”というパラメータなしに語ることはできません。
これらのことは、技術者にとってはあまりにも当たり前の認識であり、技術を語る上で特に言及されることすらないほどです。著者が技術の現場を経験していないことがわかる記述です。
そして何よりいただけなかったのは、定量的な議論が全くと言っていいほどなされていないことです。ところどころでデータの数字を持ち出してはいますが、それを数字として深掘りせずに定性化してしまっています。これでは論理的とは言えません。
業界に対して提言をするようなトピックスであるだけに、これらの点は非常に残念です。著者にはぜひ、技術の基本を勉強しつつ、定量的な論理展開も意識していただきたいです。内容的には☆1.5といったところですが、他のレビューとのバランスを考えて辛口評価とさせていただきました。
まずこの本の立場は天然ガス利用を拡大すべきというところにあります。これはエネルギー業界では十年以上前から広く言われていることであり、電力会社、IPPともLNG火力発電の新設を進めています。大筋としては地に足のついた妥当な見解です。内容としての目新しさはありませんが、現実的な考え方を学ぶためには適した本と言えます。
ただ、根本的な理解不足からくると思われる記述が少なからず見受けられます(評論家にありがちなことですが)。細かい専門用語はともかく、エネルギーを語る上での根本となる部分での誤解も見受けられました。以下にいくつかの例を示します。
1.太陽光発電の問題点について、一貫して論点のずれが見られました。著者は「太陽光発電は”コストが高いために”原子力発電の代替とは成りえない」と主張しています。コスト高は全くもって正しいのですが、太陽光発電の本質的な問題点はそこではなく「出力変動」にあります。すなわち、太陽電池は日中しか発電できず、系統における供給電力量が不安定になりますが、これにより電力需給バランスが崩れると周波数変化と電圧変化が生じる、つまり電力の”質”が下がるというわけです。太陽電池の製造コストは材料開発によって低減する余地があるため、もし問題がコストだけならば原発をカバーするレベルの普及も将来的には可能でしょう。しかし、出力変動については本質的に改善しようがないため、そもそもベース電源とはなりえないのです。それをベース電源である原子力発電と同列のものとして語ること自体がナンセンスなのです(そもそも著者が「ベース電源」という概念すら正しく認識していない気がしますが)。
2.本書21ページで「出力密度」という用語を以下のように説明していました。「時間当たりの出力エネルギー量が高いかどうか」。著者は高校物理も学んでいないのかと疑いたくなるような記述です(エントロピーとエクセルギーの関係を誤解していると思われる別の項の記述を見てもこのような疑いを持ってしまいます)。「単位時間当たりのエネルギー」は”出力”の定義であり、”出力密度”は「単位面積(あるいは体積、重量)あたりの出力」のことです(細かいことを言えば、出力エネルギー量という言葉もまずい)。これらを混同しているということは、そもそも”出力”という電力を語る上で最も基本となるキーワードを理解していないことになります。一方、分散型電源は”出力密度”というパラメータなしに語ることはできません。
これらのことは、技術者にとってはあまりにも当たり前の認識であり、技術を語る上で特に言及されることすらないほどです。著者が技術の現場を経験していないことがわかる記述です。
そして何よりいただけなかったのは、定量的な議論が全くと言っていいほどなされていないことです。ところどころでデータの数字を持ち出してはいますが、それを数字として深掘りせずに定性化してしまっています。これでは論理的とは言えません。
業界に対して提言をするようなトピックスであるだけに、これらの点は非常に残念です。著者にはぜひ、技術の基本を勉強しつつ、定量的な論理展開も意識していただきたいです。内容的には☆1.5といったところですが、他のレビューとのバランスを考えて辛口評価とさせていただきました。
2011年11月15日に日本でレビュー済み
著者は人間にとってエネルギーがどれだけ重要なものかというところまでさかのぼって話をはじめる. そして,石油がもうすぐ枯渇するといわれながらそうなっていないことなど,そしてタイトルにある天然ガスの可能性を論じていく.
盲点ということばがあたるほど新鮮な印象はない. 天然ガスに関していえば,日本のエネルギー問題はほかにあまり適切な解決策がないから,論争するまでもなく天然ガスに傾いていくだろう. 天然ガスが解であるのなら,こういう本を書く必要もなかったのではないだろうか.
盲点ということばがあたるほど新鮮な印象はない. 天然ガスに関していえば,日本のエネルギー問題はほかにあまり適切な解決策がないから,論争するまでもなく天然ガスに傾いていくだろう. 天然ガスが解であるのなら,こういう本を書く必要もなかったのではないだろうか.