ミルザー・ガーリブは、1797年にインドのアーグラーで生まれ、1869年にデリーで亡くなった、トルコ系の貴族階級に生まれた詩人である。父も叔父も軍人で、そのことに強い誇りを持っていたようだ。
インドの詩は「ラーマーヤナ」や「マハーバーラタ」を別にすると、情けない話タゴール位しか読んだことがなかったので、もっと勉強したいと思っていた。このガーリブはインドで人気がある詩人という触れ込みだったので読んでみたのだが、・・難しい。これは私個人だけではなく、一般的にも難解な詩という評価のようだ。ただ、この詩集には注釈も解説も丁寧に付けてあって、そのあたりは優れていると思う。
また、ネットや辞書でガーリブを調べてみたのだが情報が少なく、本当にインドで人気があるのか?世界水準なのか?とちょっと不安になった。「日本では知られていないが優れた国民詩人」であると私が思っている、ハンガリーの詩人ぺテーフィや、ウクライナのシェフチェンコもちゃんと載っている百科辞典にまで載っていない・・。
この後読んだパキスタンの詩人・ファイズの詩集の解説に名前が出てきたので、やはりインド文化史上では重要な詩人なのだなとは思ったが。
ムガル帝国時代の詩人ミールをネット検索してみた所、同じような結果だったので(ちなみにミールは東洋文庫から詩集が出ている)単にインド詩人は全体に日本における認知度が低いということなのかもしれない。
さて、内容はといえば・・半分以上が恋愛の歌であるということや、詩そのものの難解さ、「俺の詩がわからないのはお前らの責任だ」的な感じの鼻持ちならないタイプの貴族詩人だったらしいということもあり、正直、大地から生まれた土塊のような民衆詩人が大好きな人間からすると、あんまり好感は持たなかった。ドイツの詩人ハイネなどは、「お前の詩はできるだけ 誰にでも通じるようにせよ」と自分自身に言ったものだったが・・。それでいて彼は、詩の芸術的な美しさを最大限大切にした。これこそ真の詩人の姿ではないかと、個人的には思う。
インドのノーベル文学賞詩人・タゴールもカルカッタの貴族出身だが、彼はインドと世界を憂い、民衆と深い関わりを持った民衆詩人だった。良くも悪くも、人間、生まれじゃないんだなあと思う。そもそも人類愛の権化であるブッダも、出自は王子である。
幼少時から近親者を大勢亡くし、失恋もし、13歳で好きでもない相手と結婚し、夫婦仲も悪く、相続絡みの訴訟で負けたり一通り人生の苦しみを体験しながら、その苦しみを逞しく耐え、詩に昇華したと言われればちょっと同情するけれども・・。しかし、庶民は貴族の彼よりもっと悲惨な暮らしをし、そこには無名の芸術家たる明るい母たちがいた訳だし、詩人の中で考えてもダンテ等の詩人の正義のための苦闘と比べると、そんな苦しみと克服は大して崇高でもないと思ってしまう。
ただ、この詩人の詩が悪いとは思わない。人生を変える詩ではないが、面白い詩だ。
インド詩の多様性を知ることができるという意味でも、こういう詩集はどんどん出て欲しいと思う。ティッルバルバル等、他のインド詩人の作品も刊行されることを願います。

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ガーリブ詩集―詩集 単行本 – 2006/2/1
片岡弘次
(著),
ミルツァ・アサデュラ・カーン・ガーリブ
(著)
- 本の長さ487ページ
- 言語日本語
- 出版社花神社
- 発売日2006/2/1
- ISBN-104760215832
- ISBN-13978-4760215836
商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
インドの啓示書のなかでヴェーダ聖典と並び称されている『ガーリブ詩集』。没後135年を経てインドとパーキスターンでますます愛され支持されているガーリブの詩の魅力の全貌をあますところなくつたえる。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
片岡/弘次
1941年埼玉県生まれ。東京外国語大学大学院アジア第二言語修了。1971‐73年パーキスターン留学(カラーチー大学)ウルドゥー文学専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1941年埼玉県生まれ。東京外国語大学大学院アジア第二言語修了。1971‐73年パーキスターン留学(カラーチー大学)ウルドゥー文学専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
登録情報
- 出版社 : 花神社 (2006/2/1)
- 発売日 : 2006/2/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 487ページ
- ISBN-10 : 4760215832
- ISBN-13 : 978-4760215836
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,924,672位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 2,540位中国文学研究
- カスタマーレビュー:
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