2007年7月16日、新潟県中越沖地震で、東京電力刈羽原発3号機の変圧器が炎上し、また微量ながら放射能が漏れた。東京電力は原発を長期間止め、点検や補修を余儀なくされた。まさしく「想定外」の事故が起きたのである。本書の刊行(2007年)後3年を経た2011年3月11日、東日本大震災に伴う津波で、東京電力福島第一発電所の大事故が発生した。東京電力は、「想定外」のオンパレードが事故の原因と言わんばかりだが、果たしてそうか? 本書は、東京電力の(そして他の電力会社も)隠蔽体質こそが原発大事故の原因であると強く示唆している。
本書によれば、世間的には「優良企業」である東京電力の事故隠しの歴史は長い。刈羽原発で立地計画時には既に判明していた活断層の無視、福島原発における作業員被爆事故(1980年)、2006年から2007年にかけて明らかになった電力各社の一連の不正や事故隠しなどである。極め付けは1978年の福島第一原発3号機における、制御棒脱落による臨界事故である。いずれも、根本的な対策がなされることはなかった。今回の津波についても、社外はもとより、社内専門家からも、かねてから「想定外」の津波が発生する危険性が指摘されてきたことが明らかになっている。
なぜ、このような事故隠しや「臭い物に蓋」の体質が生まれたのか。著者は、官僚的で派閥闘争の多い企業体質、地域独占で競争がない事業環境、政治家や監督官庁、メディアとの馴れ合いにその原因を求める。特に、監督官庁である経済産業省(直接の監督機関である原子力安全・保安院を含む)との関係にはぞっとする。事故隠しを行なっても、東京電力を強く指導できないような「監督」官庁でしかないのである。東京電力の「再生」があるとしたら、監督官庁を巻き込んだ、過去に類例のないような厳しいものになるに違いない。

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東京電力・帝国の暗黒 単行本 – 2007/10/1
恩田 勝亘
(著)
- 本の長さ167ページ
- 言語日本語
- 出版社七つ森書館
- 発売日2007/10/1
- ISBN-104822807533
- ISBN-13978-4822807535
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登録情報
- 出版社 : 七つ森書館 (2007/10/1)
- 発売日 : 2007/10/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 167ページ
- ISBN-10 : 4822807533
- ISBN-13 : 978-4822807535
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,037,129位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 137位資源・エネルギー
- - 55,088位科学・テクノロジー (本)
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2011年4月5日に日本でレビュー済み
2011年6月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
原発が安いエネルギーと言われるのはどういうことか、火力と水力の特性の違い、日本を含めた世界各国が原発を導入することに対するアメリカのメリットとは、1970年代からの福島原発の事故について、など,いま話題となって知りたかったことが記されています。
2011年6月18日に日本でレビュー済み
あまりにも雑なつくりで、買って損した。これでは東京電力の経営体質も、原発の問題もほとんどよくわからない。
全般的に取材が薄く浅い。週刊現代記者時代に断片的に取材したのを無理やりつないでいる印象です。
文章もへたっぴ。これは推薦できないな。
全般的に取材が薄く浅い。週刊現代記者時代に断片的に取材したのを無理やりつないでいる印象です。
文章もへたっぴ。これは推薦できないな。
2011年7月16日に日本でレビュー済み
本書は、東京電力がいかに原発推進を図り、数多の原発事故を隠蔽し安全をないがしろ
にして、既得権益をむさぼり続けてきたかが分かるノンフィクションである。
新潟県中越沖地震が発生した際の、東京電力の対応は今回の福島原発の
事故が必然であったと思わせる。その意味で、原発の安全性に最大限の
努力をせず、ただ利益追求に走った東京電力の罪は相当に重いし、最大の
責任を負うべき組織であろう。
しかし、それと同等に罪が深いのは、管理監督をおこなっている、原子力安全・保安院
また、原発推進を旗印にしていた、資源エネルギー庁、そして、その長たる経済産業省であろう。
一体全体、この国の行政機関はどうなっているんだ、と憤ってしまう程、
今回の原発事故に関する、経済産業省の無責任体質に嫌気がさす。
いかに東京電力と経済産業省が馴れ合いの中で自己都合による判断しかして
こなかったか。未だ周辺住民が自宅に戻れない現状を見る限り、これを犯罪
といわずして、なんというのだろう。
東京電力は、本来であれば最早、会社とした成り立っていない企業である。
しかし、国と銀行と経団連の都合で血税による救済をしなければならないなら
根本から従来の体質を取り払い、全く新しい組織として生まれ変わって欲しい。
すべてが東京電力のせいにできるほど、今回の福島原発事故は単純ではあるまい。
ただし、東京電力が自らの襟をただせない様なら、即刻日本という国から
退場してもらいたい。それほどに大きな問題を含んだ会社であると感じた
本である。
にして、既得権益をむさぼり続けてきたかが分かるノンフィクションである。
新潟県中越沖地震が発生した際の、東京電力の対応は今回の福島原発の
事故が必然であったと思わせる。その意味で、原発の安全性に最大限の
努力をせず、ただ利益追求に走った東京電力の罪は相当に重いし、最大の
責任を負うべき組織であろう。
しかし、それと同等に罪が深いのは、管理監督をおこなっている、原子力安全・保安院
また、原発推進を旗印にしていた、資源エネルギー庁、そして、その長たる経済産業省であろう。
一体全体、この国の行政機関はどうなっているんだ、と憤ってしまう程、
今回の原発事故に関する、経済産業省の無責任体質に嫌気がさす。
いかに東京電力と経済産業省が馴れ合いの中で自己都合による判断しかして
こなかったか。未だ周辺住民が自宅に戻れない現状を見る限り、これを犯罪
といわずして、なんというのだろう。
東京電力は、本来であれば最早、会社とした成り立っていない企業である。
しかし、国と銀行と経団連の都合で血税による救済をしなければならないなら
根本から従来の体質を取り払い、全く新しい組織として生まれ変わって欲しい。
すべてが東京電力のせいにできるほど、今回の福島原発事故は単純ではあるまい。
ただし、東京電力が自らの襟をただせない様なら、即刻日本という国から
退場してもらいたい。それほどに大きな問題を含んだ会社であると感じた
本である。
2011年5月8日に日本でレビュー済み
3年半前に出版された本。福島第一原発で起きたチェルノブイリ級の事故直後に重版されたもの。
驚くのは新潟県中越沖地震で柏崎刈羽原発が火災を起こした際も、東電首脳陣は「想定外」という言葉を使っていたこと。しかも柏崎刈羽原発には、IAEAから防火対策を強化するべく勧告されていたにもかかわらず、化学消火器も化学消防車も装備されていなかった。またこのとき、火災のみならず、使用済核燃料プールから溢水していた。中越沖地震はM6.8の地震である。東電はいったい何を「想定」してきたのだろう。本書にはまた、福島第一事故後にツイッターでその告発文が拡散された平井憲夫氏が、1986年のチェルノブイリ原発事故直後、そしてその2年後の88年にインタビューに答えた記事が掲載されている。平井氏は1980年の従業員大量被曝事故や、原発の配管・溶接工事の杜撰さについて述べているが、いずれも現場作業を孫請け、ひ孫請けに丸投げしていることから必然的に生じる原発の構造的脆弱さである。平井氏が語った大量被曝事故は、福島第一原発1号機。「福島第一原発の第1号機は、事故が多い原子炉として有名なんです」と証言している。東日本大震災後、その1号機は水素爆発を起こした。平井氏のインタビューはいまから20年以上も前のものだ。この間、危険を承知で事故ばかり起こしている老朽化した原発を動かし続けてきたわけだ。
週刊誌の記事を束ねたような体裁で読みづらく、東電関係者、政府および経産省への直接取材をほとんどせず書かれた“雰囲気”原稿であるところは残念。また、電力業界と政界との癒着、大企業病、発送電一体の独占体制など、それだけで分厚い本になるようなテーマの表面だけをなでて終わっているのは物足りず、タイトル負けしているのは否めない。しかしながらいま読むと、チェルノブイリ直後のインタビューや、2007年の東電柏崎刈羽原発事故当時の状況についての記述には興味深いところがいくつかある。
驚くのは新潟県中越沖地震で柏崎刈羽原発が火災を起こした際も、東電首脳陣は「想定外」という言葉を使っていたこと。しかも柏崎刈羽原発には、IAEAから防火対策を強化するべく勧告されていたにもかかわらず、化学消火器も化学消防車も装備されていなかった。またこのとき、火災のみならず、使用済核燃料プールから溢水していた。中越沖地震はM6.8の地震である。東電はいったい何を「想定」してきたのだろう。本書にはまた、福島第一事故後にツイッターでその告発文が拡散された平井憲夫氏が、1986年のチェルノブイリ原発事故直後、そしてその2年後の88年にインタビューに答えた記事が掲載されている。平井氏は1980年の従業員大量被曝事故や、原発の配管・溶接工事の杜撰さについて述べているが、いずれも現場作業を孫請け、ひ孫請けに丸投げしていることから必然的に生じる原発の構造的脆弱さである。平井氏が語った大量被曝事故は、福島第一原発1号機。「福島第一原発の第1号機は、事故が多い原子炉として有名なんです」と証言している。東日本大震災後、その1号機は水素爆発を起こした。平井氏のインタビューはいまから20年以上も前のものだ。この間、危険を承知で事故ばかり起こしている老朽化した原発を動かし続けてきたわけだ。
週刊誌の記事を束ねたような体裁で読みづらく、東電関係者、政府および経産省への直接取材をほとんどせず書かれた“雰囲気”原稿であるところは残念。また、電力業界と政界との癒着、大企業病、発送電一体の独占体制など、それだけで分厚い本になるようなテーマの表面だけをなでて終わっているのは物足りず、タイトル負けしているのは否めない。しかしながらいま読むと、チェルノブイリ直後のインタビューや、2007年の東電柏崎刈羽原発事故当時の状況についての記述には興味深いところがいくつかある。
2011年10月26日に日本でレビュー済み
*
はじめに、これを読んで頂きたい。これは、原発推進派のジャーナリスト、二見喜章氏の2001年の著作に引用された、或る東京電力社員の言葉である。
---------------------------------------
東京電力のベテラン原発技術者が胸を張った。
「あらゆる産業の中で原発ほど優れた産業はありません。安全性は極めて高く、技術開発力も日進月歩で高度化・精密さを増している。技術的には100%完成していると言い切れる産業なんです。広島・長崎での原爆体験があったこと。激しい原発反対運動を経験したことがプラスに作用していて、原発では徹底した安全管理体制を採っている。原発のように幾重にもガードシステムを敷いている産業は、他にはありません。私達も含めて多くの国民が不安に思っている危険な放射能(線)にしても、『閉じ込める』技術開発に成功しておりますし、今では総合的に見て『日本の原発技術は世界一』と思っております。原発先進国のアメリカやイギリス、フランス、ドイツの原発技術者が、しばしば『日本の原発』を見学に来る事実は、そのひとつの表れでしょう。ロシア、韓国、中国、インド、パキスタンなどからは技術者が研修に来て、私達の指導を受けているのです。是非こうした現実を一般の方に知っていただきたいと思います。」
日本の原発技術が優れている事は私も実感している。
(二見喜章『原発と上手につきあおう/原発報道に異議あり』(ERC出版・2001年2月26日)40〜41ページより)
---------------------------------------
福島第一原発事故後の今、皆さんは、この東電社員の言葉をどう読まれるだろうか?
この本(『東京電力・帝国の暗黒』)は、週刊現代などで原子力問題を追ひ続けて来た1943年生まれのジャーナリスト、恩田勝亘(おんだ・かつのぶ)氏が、2007年10月、その年の7月15日に起きた新潟県中越沖地震での東京電力柏崎刈羽原発の火災事故を中心に、東京電力と原子力発電について書いた著作である。本文中には、著者が、1980年代から週刊現代に寄稿して来た記事の引用も多く含まれ、恩田氏がそれまでに取材して来た東京電力に関する諸事実や、原子力関係者の貴重な証言をも読む事が出来るので、一つの資料集としても価値の有る本である。
本書は、東日本大震災の3年以上前に書かれた本であるが、新潟県中越沖地震(2007年7月15日)に際しての東京電力の対応を検証する事で、福島第一原発の事故を予見して居た様に読める箇所が少なからず見られる事は、残念でならない。東京電力の傲慢と自惚れが、私達の祖国に何をもたらしたか、多言は要さないだろう。
(西岡昌紀・内科医/原子力の日に)
*
はじめに、これを読んで頂きたい。これは、原発推進派のジャーナリスト、二見喜章氏の2001年の著作に引用された、或る東京電力社員の言葉である。
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東京電力のベテラン原発技術者が胸を張った。
「あらゆる産業の中で原発ほど優れた産業はありません。安全性は極めて高く、技術開発力も日進月歩で高度化・精密さを増している。技術的には100%完成していると言い切れる産業なんです。広島・長崎での原爆体験があったこと。激しい原発反対運動を経験したことがプラスに作用していて、原発では徹底した安全管理体制を採っている。原発のように幾重にもガードシステムを敷いている産業は、他にはありません。私達も含めて多くの国民が不安に思っている危険な放射能(線)にしても、『閉じ込める』技術開発に成功しておりますし、今では総合的に見て『日本の原発技術は世界一』と思っております。原発先進国のアメリカやイギリス、フランス、ドイツの原発技術者が、しばしば『日本の原発』を見学に来る事実は、そのひとつの表れでしょう。ロシア、韓国、中国、インド、パキスタンなどからは技術者が研修に来て、私達の指導を受けているのです。是非こうした現実を一般の方に知っていただきたいと思います。」
日本の原発技術が優れている事は私も実感している。
(二見喜章『原発と上手につきあおう/原発報道に異議あり』(ERC出版・2001年2月26日)40〜41ページより)
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福島第一原発事故後の今、皆さんは、この東電社員の言葉をどう読まれるだろうか?
この本(『東京電力・帝国の暗黒』)は、週刊現代などで原子力問題を追ひ続けて来た1943年生まれのジャーナリスト、恩田勝亘(おんだ・かつのぶ)氏が、2007年10月、その年の7月15日に起きた新潟県中越沖地震での東京電力柏崎刈羽原発の火災事故を中心に、東京電力と原子力発電について書いた著作である。本文中には、著者が、1980年代から週刊現代に寄稿して来た記事の引用も多く含まれ、恩田氏がそれまでに取材して来た東京電力に関する諸事実や、原子力関係者の貴重な証言をも読む事が出来るので、一つの資料集としても価値の有る本である。
本書は、東日本大震災の3年以上前に書かれた本であるが、新潟県中越沖地震(2007年7月15日)に際しての東京電力の対応を検証する事で、福島第一原発の事故を予見して居た様に読める箇所が少なからず見られる事は、残念でならない。東京電力の傲慢と自惚れが、私達の祖国に何をもたらしたか、多言は要さないだろう。
(西岡昌紀・内科医/原子力の日に)
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2011年3月28日に日本でレビュー済み
2011.3.11の東日本大地震と、それに続く福島第一原発のシビアな事態の中でこの本を読みました。
冒頭で書かれている柏崎刈羽原発の事故と、いままさに進行している福島第一原発の事故が、オーバーラップし、何度も、ここれが書かれたのが2007年の刈羽原発の事故の後ではなく、ついこの一週間程度ではないかと思えてくるという不思議な感覚にとらわれます。
今日の福島第一原発の事態を、かなり正確に予言しています。同時に、これらの事態が、東電のいうような予測をこえた地震によるものではなく、東電と政府が一体となって作りだした人災であることも、はっきりと理解できます。
東京電力と保安院の垂れ流す情報に騙されないためにも、必読。
冒頭で書かれている柏崎刈羽原発の事故と、いままさに進行している福島第一原発の事故が、オーバーラップし、何度も、ここれが書かれたのが2007年の刈羽原発の事故の後ではなく、ついこの一週間程度ではないかと思えてくるという不思議な感覚にとらわれます。
今日の福島第一原発の事態を、かなり正確に予言しています。同時に、これらの事態が、東電のいうような予測をこえた地震によるものではなく、東電と政府が一体となって作りだした人災であることも、はっきりと理解できます。
東京電力と保安院の垂れ流す情報に騙されないためにも、必読。