本書は、若泉氏の『他策』を補足するものとして読むべきである。『他策』を読んだ際に、若泉氏の強烈な自意識のようなものを感じ取ってしまい、あの本だけで「密約」のことを知った気になるのは危険だという思いを抱いていた。この本は、研究者の視点から、極力客観的に若泉氏の行動を分析しており、若泉氏が「密約」のみならず、戦後日本外交史に果たした役割を教えてくれる好著である。
本書を読んで強く印象に残ったのが、若泉氏の極端なまでの生真面目さと情熱、そしてこれらに裏付けられた尋常ではない行動力である。左翼勢力の最盛期に、右翼的な学生活動を行う胆力には恐れ入る。現在、安倍総理のブレーンとして知られている谷内国家安全保障局長も、この学生活動における若泉氏の後輩ということで、現在も若泉氏のDNAは受け継がれているのかもしれない。

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評伝 若泉敬 (文春新書) 新書 – 2011/1/19
森田 吉彦
(著)
佐藤栄作の「密使」として沖縄返還交渉を進める中で密かに結ばれた「核の密約」。新たな資料と証言により謎に満ちたその生涯に迫る
- 本の長さ304ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日2011/1/19
- ISBN-10416660791X
- ISBN-13978-4166607914
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登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (2011/1/19)
- 発売日 : 2011/1/19
- 言語 : 日本語
- 新書 : 304ページ
- ISBN-10 : 416660791X
- ISBN-13 : 978-4166607914
- Amazon 売れ筋ランキング: - 285,122位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 572位文春新書
- - 46,075位ノンフィクション (本)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2012年4月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
品物は,古書としては,上である。若泉氏を鑑として映された著者の高潔な人格が偲ばれる好著である。
2011年1月30日に日本でレビュー済み
評者は若泉敬とは短い期間だが親交があった。私信をやり取りしたこともある。浪人の末に何とか入った大学の英語クラスの教師と学生という間柄ではあったが、彼は非常にジェントルで温かい心の持ち主であり、最近新訳が出たパウル・フレイレの『非抑圧者の教育学』に説かれるような<関係性>は、個人的には些かも感じさせなかった。英語クラスでのテキストはライシャワーの『ジャパニーズ』。
その頃、馬鹿な学生だった(今は馬鹿な賃金労働者であるが・・・)当方は、若泉先生が後に『他策ナカリシヲ信ゼント欲ス』に詳述されるような経歴の持ち主だとは全く持って知らなかった。
社会人になり、同書を見つけたときには驚いた。しかし、そういえば英字新聞にご自身が寄稿された論説のコピーを貰ったりしていたのだった。
三本立ての映画やドストエフスキーに淫していた当方は、先生の勧めもあり、大学へは殆ど行かなかった。先生は講義に出なくても「優」をあげるよと仰ったのだった。就職の世話もしてあげると言われた。結局何とか自力で職を見つけられたので、そのお世話にはならずに済んだ。
ライシャワーは日本社会をホモジーニアスだと書いているが、それは表面的な話だと指摘すると、教授室に呼ばれ、「君はイロイロと考えて学生生活を送っている。講義などは必ずしも出なくていい。一人で読書をし、物を考えろ」と言われたのがきっかけだった。
リアルな政治に就いて、ましてや沖縄返還密約に就いて、本書をもとにどうこう言うつもりはない。
本書は評者の個人的な若泉敬の思い出の裏面を明かすものであり、ひとつひとつの記載が興味深い。そういう事情がなければ、ここまで引き込まれることはないだろう。彼はこういう人生を生きてきたのだ。
若林豪をさらに知的にしたような容貌の小柄な若泉敬は、凄まじいネゴシエーターだったのだ。当方はにこやかな温かい人柄しか知らぬ。
彼の盟友として描かれる小泉純一郎や佐藤栄作や三島由紀夫などにはシンパシーは持たない。
コイズミに関して言えば、若泉敬がネオリベラルの同胞を売るような政策に与するとは評者には思えない、個人的には、と言うだけだ。先生、リアルとはそういうことも込みですか??
もし本書を一般の読者を益するところがあるとすれば、外交における裏ルートの必要悪に対する認識ではなかろうか? 米国は表の外務省ではなく裏の若泉を信用したようである。その成果は歴史が問おうが、少なくとも交渉事における一筋縄では行かぬリアルが感得されよう。
そういう意味では、当方が永年携る営業活動には参考になるとも言える。
★3つは、表の若泉をまだつかみかねているからだ。
その頃、馬鹿な学生だった(今は馬鹿な賃金労働者であるが・・・)当方は、若泉先生が後に『他策ナカリシヲ信ゼント欲ス』に詳述されるような経歴の持ち主だとは全く持って知らなかった。
社会人になり、同書を見つけたときには驚いた。しかし、そういえば英字新聞にご自身が寄稿された論説のコピーを貰ったりしていたのだった。
三本立ての映画やドストエフスキーに淫していた当方は、先生の勧めもあり、大学へは殆ど行かなかった。先生は講義に出なくても「優」をあげるよと仰ったのだった。就職の世話もしてあげると言われた。結局何とか自力で職を見つけられたので、そのお世話にはならずに済んだ。
ライシャワーは日本社会をホモジーニアスだと書いているが、それは表面的な話だと指摘すると、教授室に呼ばれ、「君はイロイロと考えて学生生活を送っている。講義などは必ずしも出なくていい。一人で読書をし、物を考えろ」と言われたのがきっかけだった。
リアルな政治に就いて、ましてや沖縄返還密約に就いて、本書をもとにどうこう言うつもりはない。
本書は評者の個人的な若泉敬の思い出の裏面を明かすものであり、ひとつひとつの記載が興味深い。そういう事情がなければ、ここまで引き込まれることはないだろう。彼はこういう人生を生きてきたのだ。
若林豪をさらに知的にしたような容貌の小柄な若泉敬は、凄まじいネゴシエーターだったのだ。当方はにこやかな温かい人柄しか知らぬ。
彼の盟友として描かれる小泉純一郎や佐藤栄作や三島由紀夫などにはシンパシーは持たない。
コイズミに関して言えば、若泉敬がネオリベラルの同胞を売るような政策に与するとは評者には思えない、個人的には、と言うだけだ。先生、リアルとはそういうことも込みですか??
もし本書を一般の読者を益するところがあるとすれば、外交における裏ルートの必要悪に対する認識ではなかろうか? 米国は表の外務省ではなく裏の若泉を信用したようである。その成果は歴史が問おうが、少なくとも交渉事における一筋縄では行かぬリアルが感得されよう。
そういう意味では、当方が永年携る営業活動には参考になるとも言える。
★3つは、表の若泉をまだつかみかねているからだ。
2011年1月27日に日本でレビュー済み
若泉敬といえば佐藤栄作首相の密使として米国との沖縄返還交渉に携わった話はあまりにも有名であり、
また最近のNHKでも特集が組まれ、静かなブームとなっているようである。若泉といえば現実主義者に連なる
学者でありながら熱い魂を持ち、行動的な人物であるという印象だが、本書はそのような若泉像からは距離を置き、
終始淡々とした著述に徹している。その姿勢は悪く言えば無難な著述、良く言えば客観的で冷徹な書きっぷりであるが、
新書という体裁を考えればもう少しメリハリがあっても良かったように思う。
しかし本書の価値は若泉そのものへの考察というよりは、若泉を通じた戦後日米関係史、または国際政治思想史にある
といった方が良いのかもしれない。特に後者は高坂正尭氏や蝋山正道氏からアーノルド・トインビーまで絡んでくるので
なかなか興味深い。
昨年、密約の問題が大きく取り上げられたが、もし若泉が存命であればどのようなコメントを残したのだろか。
また最近のNHKでも特集が組まれ、静かなブームとなっているようである。若泉といえば現実主義者に連なる
学者でありながら熱い魂を持ち、行動的な人物であるという印象だが、本書はそのような若泉像からは距離を置き、
終始淡々とした著述に徹している。その姿勢は悪く言えば無難な著述、良く言えば客観的で冷徹な書きっぷりであるが、
新書という体裁を考えればもう少しメリハリがあっても良かったように思う。
しかし本書の価値は若泉そのものへの考察というよりは、若泉を通じた戦後日米関係史、または国際政治思想史にある
といった方が良いのかもしれない。特に後者は高坂正尭氏や蝋山正道氏からアーノルド・トインビーまで絡んでくるので
なかなか興味深い。
昨年、密約の問題が大きく取り上げられたが、もし若泉が存命であればどのようなコメントを残したのだろか。