上下2巻で3部からなる。
1部、2部は現在アメリカで行われている対照的な農業についての詳しいレポート。
3部は著者が完全な自給自足を目指して狩猟採集で食料を確保する経過のレポートで、1部2部とはおもむきを異にするので、ここには2部までをまとめた。
1部
平均的なアメリカ人は、摂取する有機物の大半をトウモロコシに依存している。
トウモロコシは、その生物学的構造から品種改良がたやすく、どの穀物より効率的に化成肥料を吸収して、有機物に変えられるばかりか、機械化にも適応したため、収穫までにわずかな労働力しか必要としない。
この特性に加えて、農政が、価格が暴落してもトウモロコシを作らせる方針を取ったために、安価なトウモロコシが市場にあふれた。
このトウモロコシを消費するために、本来草を食む牛は、トウモロコシを与えられて健康を損ない、抗生物質がなければ生育できない。この不自然な方法は、環境を劣化させるばかりか、その肉を食べる人間の健康をも蝕ばむ。
安価なトウモロコシはデンプン、オイル、ビタミンなど各種成分に分解されてから、また混ぜ合わされて、食欲をそそり、健康に役立つイメージを付加された様々な食品となって、最終的には原材料の100倍近い価格で消費者に渡る。
安価なトウモロコシを作らせるための補助金、環境や人の健康に与える負荷まで考えたら、安価トウモロコシに支えられるファーストフードは、けっして安くない。コストがたくみに隠されているだけだ。
2部
180ヘクタールの林と40ヘクタールの牧草地からなるポリフェイス農場は徹底した地産地消を貫く。ここでは牛肉、豚肉、鶏肉、鶏卵、七面鳥、ウサギ肉が生み出されるが、農場主が購入するのは鶏の飼料だけで、それ以外はすべて農場内で循環する。牧草地はバランスが取れた輪牧を行えば、畜産によって肥沃化するのだ。それには農場主の経験と知識に基づいた勤勉さが不可欠で、大規模化は望めない。
循環的な農業は、グローバル化や大規模化の対極にあり、グローバル化した有機食品市場に食品を提供している大規模農場はすでに循環的でも環境保全的でもない。グローバル化したオーガニックは幻想にすぎない。
アメリカの農政は、日本と同様、農家の保護を装いながら、農家を保護していないようだ。政治を操っているのは穀物メジャーやデュポンやモンサント、コカコーラやマクドナルドなどの大企業なのだろう。
脂肪と糖は麻薬のような作用を持つらしい。現代人は食品会社が提供する自然界には存在しないアンバランスな配合の食事をむさぼって健康に不安を抱き、食品会社が提供する健康食品で埋め合わせをしようとする。現代社会では素材よりも情報に高い価値があるらしいが、食品会社の秘伝の配合は果たしてそれだけの価値を持つのだろうか。こんなもの食べるくらいなら、素材をそのまま食べてしまったほうが合理的だろう。しかし、1calのエネルギーを作るのに1cal以上の化石燃料を必要とするトウモロコシから、エタノールを抽出して、ガソリンに混ぜる不合理さに比べたら、まだましなのかもしれない。
化石燃料による機械化は、人間を労働から開放するかにみえたが、結局人間は無意味な仕事を増やして汲々として働き続け、働き続けることによって環境を劣化させている。人間は、この不合理な営みをどこまで続けてしまうのだろう。
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雑食動物のジレンマ 上──ある4つの食事の自然史 単行本 – 2009/10/23
全米で話題沸騰! 数々の賞を受賞した全米批評家協会賞最終選考作!
料理界のアカデミー賞とも言われるジェームス・ビアード賞最優秀賞(食関連著作部門)、カリフォルニア・ブック賞(ノンフィクション部門)、北カリフォルニア・ブック賞(ノンフィクション部門)を受賞し、全米批評家協会の最終選考作に選ばれた本書は、『ニューヨーク・タイムズ』の10 Best Books of 2006、『ワシントン・ポスト』のTop 10 Best of 2006、Amazon.comのBest Books of 2006に選ばれるなど、発売早々から各種メディアで話題の書として注目され、現在もベストセラーリストの上位にランクインしています。
健康食ブームなのに増え続ける肥満や糖尿病、旬に関係なく食材が並ぶスーパーマーケット、工業化する有機農業、便利で簡単に料理ができる食品の開発、農業収入では生活できない農家、経済効率を求めた大規模農場や単一栽培……。同書に描かれている内容は、もちろん、アメリカの食と農業についてのことですが、読み進めるうちに、日本も変わらないのではと思えてきます。
本書のタイトルにある「雑食動物」とは、植物でも動物でも何でも食べる動物、つまり私たち人間のことです。何でも食べることができるので、人間はどのような環境でも生きてこられたわけですが、同時に何を食べるべきなのかと頭を悩まし続けきました。コアラのようにユーカリの葉しかたべない動物とは違い、自らの健康や、地球環境に害を及ぼすものでさえ食べることができるのですからなおさらです。
私たちがいつも口にしているものは一体何なのでしょうか? それはどこからどうやって食卓まで来たのでしょぅか? 私たちが食べるべきなのは、簡単で便利な冷凍・加工食品なのでしょうか? オーガニックフードなのでしょうか? その答えを見つけるために著者は、4つの食事――ファストフード、オーガニックフード、フードシェッドフード、スローフード──の食物連鎖を追いかける旅に出ます。
いつもの食卓に並ぶ野菜や肉など、誰もが口にしている食べ物の食物連鎖を求めて、トウモロコシ農場から食品科学研究所、肥育場やファストフード店から有機農場や狩猟の現場までを案内し、私たちが正体を知らないまま口にしているものが何か突きとめます。
そして、最後にたどり着いた完璧な食事とは?
雑食動物を英語で言うとomnivoreですが、この言葉には、雑食動物のほかに、「幅広分野に好奇心を持ち、あるものは何でも読み、勉強し、概して吸収する者」という意味があります。私たちが食べているものの食物連鎖を知るということは、私たちが何を食べるかという選択が、地球温暖化などの環境問題にもかかわっていることも知ることになります。同書は、私たちの健康のためだけでなく、自然界の健康のために、私たちが何をどのように食べるべきかという知的好奇心を刺激してくれます。
料理界のアカデミー賞とも言われるジェームス・ビアード賞最優秀賞(食関連著作部門)、カリフォルニア・ブック賞(ノンフィクション部門)、北カリフォルニア・ブック賞(ノンフィクション部門)を受賞し、全米批評家協会の最終選考作に選ばれた本書は、『ニューヨーク・タイムズ』の10 Best Books of 2006、『ワシントン・ポスト』のTop 10 Best of 2006、Amazon.comのBest Books of 2006に選ばれるなど、発売早々から各種メディアで話題の書として注目され、現在もベストセラーリストの上位にランクインしています。
健康食ブームなのに増え続ける肥満や糖尿病、旬に関係なく食材が並ぶスーパーマーケット、工業化する有機農業、便利で簡単に料理ができる食品の開発、農業収入では生活できない農家、経済効率を求めた大規模農場や単一栽培……。同書に描かれている内容は、もちろん、アメリカの食と農業についてのことですが、読み進めるうちに、日本も変わらないのではと思えてきます。
本書のタイトルにある「雑食動物」とは、植物でも動物でも何でも食べる動物、つまり私たち人間のことです。何でも食べることができるので、人間はどのような環境でも生きてこられたわけですが、同時に何を食べるべきなのかと頭を悩まし続けきました。コアラのようにユーカリの葉しかたべない動物とは違い、自らの健康や、地球環境に害を及ぼすものでさえ食べることができるのですからなおさらです。
私たちがいつも口にしているものは一体何なのでしょうか? それはどこからどうやって食卓まで来たのでしょぅか? 私たちが食べるべきなのは、簡単で便利な冷凍・加工食品なのでしょうか? オーガニックフードなのでしょうか? その答えを見つけるために著者は、4つの食事――ファストフード、オーガニックフード、フードシェッドフード、スローフード──の食物連鎖を追いかける旅に出ます。
いつもの食卓に並ぶ野菜や肉など、誰もが口にしている食べ物の食物連鎖を求めて、トウモロコシ農場から食品科学研究所、肥育場やファストフード店から有機農場や狩猟の現場までを案内し、私たちが正体を知らないまま口にしているものが何か突きとめます。
そして、最後にたどり着いた完璧な食事とは?
雑食動物を英語で言うとomnivoreですが、この言葉には、雑食動物のほかに、「幅広分野に好奇心を持ち、あるものは何でも読み、勉強し、概して吸収する者」という意味があります。私たちが食べているものの食物連鎖を知るということは、私たちが何を食べるかという選択が、地球温暖化などの環境問題にもかかわっていることも知ることになります。同書は、私たちの健康のためだけでなく、自然界の健康のために、私たちが何をどのように食べるべきかという知的好奇心を刺激してくれます。
- ISBN-104492043527
- ISBN-13978-4492043523
- 出版社東洋経済新報社
- 発売日2009/10/23
- 言語日本語
- 本の長さ302ページ
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商品の説明
著者について
著者紹介
マイケル・ポーラン
ジャーナリスト。食や農、ガーデニングなど人間と自然界が交わる世界を書き続け、ジェームス・ビアード賞、ジョン・ボローズ賞、QPBニュー・ビジョン賞、ロイター&国際自然保護連合環境ジャーナリズム・グローバル賞、全米人道協会ジェネシス賞など数々の賞を受賞。本書でも、カリフォルニア・ブック賞、北カリフォルニア・ブック賞、ジェームス・ビアード賞を受賞している。著書に『ガーデニングに心満つる日』『欲望の植物誌』『ヘルシーな加工食品はかなりヤバい』などがある。また、カリフォルニア大学バークレー校大学院でジャーナリズムの教鞭をとるとともに、食や農を中心に講演活動を行っている。妻で画家のジュディス・ベルザーと息子アイザックとバークレー在住。
訳者紹介
ラッセル秀子
翻訳家。聖心女子大学卒。米国モントレー国際大学院修士課程修了。フリーランス通訳を経て、翻訳業にたずさわる。訳書に『ツール・ド・フランス 勝利の礎』(アメリカン・ブック&シネマ、2008年)、『天使に会いました』(ハート出版、2008年)がある。また、ビジネス、医療、教育、観光、スポーツなど幅広い分野で実務翻訳を行うとともに、米国モントレー国際大学院の非常勤講師として英日翻訳を指導している。アメリカ在住。
マイケル・ポーラン
ジャーナリスト。食や農、ガーデニングなど人間と自然界が交わる世界を書き続け、ジェームス・ビアード賞、ジョン・ボローズ賞、QPBニュー・ビジョン賞、ロイター&国際自然保護連合環境ジャーナリズム・グローバル賞、全米人道協会ジェネシス賞など数々の賞を受賞。本書でも、カリフォルニア・ブック賞、北カリフォルニア・ブック賞、ジェームス・ビアード賞を受賞している。著書に『ガーデニングに心満つる日』『欲望の植物誌』『ヘルシーな加工食品はかなりヤバい』などがある。また、カリフォルニア大学バークレー校大学院でジャーナリズムの教鞭をとるとともに、食や農を中心に講演活動を行っている。妻で画家のジュディス・ベルザーと息子アイザックとバークレー在住。
訳者紹介
ラッセル秀子
翻訳家。聖心女子大学卒。米国モントレー国際大学院修士課程修了。フリーランス通訳を経て、翻訳業にたずさわる。訳書に『ツール・ド・フランス 勝利の礎』(アメリカン・ブック&シネマ、2008年)、『天使に会いました』(ハート出版、2008年)がある。また、ビジネス、医療、教育、観光、スポーツなど幅広い分野で実務翻訳を行うとともに、米国モントレー国際大学院の非常勤講師として英日翻訳を指導している。アメリカ在住。
登録情報
- 出版社 : 東洋経済新報社 (2009/10/23)
- 発売日 : 2009/10/23
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 302ページ
- ISBN-10 : 4492043527
- ISBN-13 : 978-4492043523
- Amazon 売れ筋ランキング: - 369,202位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 67,907位ノンフィクション (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2011年1月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2010年8月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
食料の安定供給という大義の元に歪に歪んだ形で、政府に保護されないと生きていけないトウモロコシと大豆の生産農家。 安値で仕入れた穀物商品からコーンシロップなどを代表とする様々な加工食品。それでも過剰に余った穀物は、無理に鮭や牛の飼料として使用する現実。安価な加工食品により肥満化する人々。
特に牛に関しては、本来を草を食べる動物なのに無理矢理にデンプン質の多いトウモロコシを食べさせることによって様々な健康上の問題が発生します。 それを牛の遺伝子改良、人工的なゲップのガス抜き、過剰な抗生剤により解体するまでなんとか生き長らえさせているのが現状らしいです。
アメリカの牛は牧草を食べて育っていると思っていましたが、日本よりも狭い不潔な糞尿だらけの牛舎で、体に合わないトウモロコシやその他の人工飼料を食べて、抗生物質を打ちながらなんとか死なずに14ヶ月という短期間で出荷されているのを知り気分が悪くなりました。
ちなみに日本で育ている和牛は出荷までに3年の期間をかけています。
著者はこのような歪な牛の飼育と真逆になる、牧草作りから糞尿の処理まで完全に循環している自然農法による牛の飼育を現場取材しています。 林の設置場所、鶏や兎や果ては蛆までを利用したシステムには目を張るものがありました。
特に牛に関しては、本来を草を食べる動物なのに無理矢理にデンプン質の多いトウモロコシを食べさせることによって様々な健康上の問題が発生します。 それを牛の遺伝子改良、人工的なゲップのガス抜き、過剰な抗生剤により解体するまでなんとか生き長らえさせているのが現状らしいです。
アメリカの牛は牧草を食べて育っていると思っていましたが、日本よりも狭い不潔な糞尿だらけの牛舎で、体に合わないトウモロコシやその他の人工飼料を食べて、抗生物質を打ちながらなんとか死なずに14ヶ月という短期間で出荷されているのを知り気分が悪くなりました。
ちなみに日本で育ている和牛は出荷までに3年の期間をかけています。
著者はこのような歪な牛の飼育と真逆になる、牧草作りから糞尿の処理まで完全に循環している自然農法による牛の飼育を現場取材しています。 林の設置場所、鶏や兎や果ては蛆までを利用したシステムには目を張るものがありました。
2010年2月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
記述の特徴として、まずさりげなく読者に投げかけて、「?」とさせておい
て、その後で「うーん、なるほど」と深い理解を得させる手法がとられ、
効果的です。
それにしてもなんかあの、この本を読んでからマク×ナル×のハンバーガー
を食べると胃の調子がおかしくなるようになっちゃって…。
多分年のせいでしょうし、それにこの本はアメリカの事情を書いているわ
けですからね。でもなんか…。
消臭剤に「トウモロコシ由来の成分」なんて書かれていると、やっぱり、
なんて思ってしまいますね。
一番えげつなかったのは、大規模養豚場では豚のしっぽを切り落としてし
まう、というくだりでした。
人が人に対していつまでも傲慢であり続けることはできない。これは歴史
が証明しているのですが、人間以外に対してはどうでしょうか。
一方、正しい意味でオーガニックであるために「配送するわけにはいかな
い。ウチに来てもらうしかない」と答える農場主。最初はこの意味が良く
分かりませんが、あとで胸のすくような見事な展開が見られます。
て、その後で「うーん、なるほど」と深い理解を得させる手法がとられ、
効果的です。
それにしてもなんかあの、この本を読んでからマク×ナル×のハンバーガー
を食べると胃の調子がおかしくなるようになっちゃって…。
多分年のせいでしょうし、それにこの本はアメリカの事情を書いているわ
けですからね。でもなんか…。
消臭剤に「トウモロコシ由来の成分」なんて書かれていると、やっぱり、
なんて思ってしまいますね。
一番えげつなかったのは、大規模養豚場では豚のしっぽを切り落としてし
まう、というくだりでした。
人が人に対していつまでも傲慢であり続けることはできない。これは歴史
が証明しているのですが、人間以外に対してはどうでしょうか。
一方、正しい意味でオーガニックであるために「配送するわけにはいかな
い。ウチに来てもらうしかない」と答える農場主。最初はこの意味が良く
分かりませんが、あとで胸のすくような見事な展開が見られます。
2020年8月30日に日本でレビュー済み
雑食動物のジレンマとは何でも食べれるからこそ毒キノコにあたってしまうような、雑食動物だけが持つ何を食べていいかわからない不便さがあることを指した言葉である。
作者は工業的農業、有機農業、酪農、狩猟と、歴史を遡って人類が食料を得る為に獲得した手段の現在を自分の足で調べていく。
この本の面白さは作者が全部自分の足で現地に行き、体験している点だ。時には自分で牛を一頭買いそれが食肉されるまで追ったり、自然的農業の農家に行き鶏をしめたり、野生の豚やキノコを狩りにいく。そして食べる。
アメリカのとうもろこし中心(というかとうもろこし一点主義)の工業的農業の実態は確かに衝撃的だ。だが、その告発だけで終わらないのがこの本のいいところだ。
工業的農業によって生み出されたマックのドライブインの食事を家族とした作者は、食料の歴史を遡り、最後に全て自分が直接狩猟したものでつくる”完璧な食事”を作り上げる。
もちろん食事は全て自分で採らなければダメだと結論ずけるわけではない。だが、現在の食料生産の在り方を考え、私達はどうやって作った何を食べるべきかという雑食動物のジレンマと改めて向き合わなければいけない、というのが作者の主張だ。
アメリカほどひどくはないだろうが、日本も大差ない状況ではないだろうか。
いくつもの衝撃とどんどん読んでいきたくなる面白さ、そして最後に突きつけられる大きな問題意識。アメリカで数々の賞を受賞した肩書きに恥じぬ、最高のノンフィクションの一つだと思う。
よくマックなんかに通う人に特に読んでもらいたい。
作者は工業的農業、有機農業、酪農、狩猟と、歴史を遡って人類が食料を得る為に獲得した手段の現在を自分の足で調べていく。
この本の面白さは作者が全部自分の足で現地に行き、体験している点だ。時には自分で牛を一頭買いそれが食肉されるまで追ったり、自然的農業の農家に行き鶏をしめたり、野生の豚やキノコを狩りにいく。そして食べる。
アメリカのとうもろこし中心(というかとうもろこし一点主義)の工業的農業の実態は確かに衝撃的だ。だが、その告発だけで終わらないのがこの本のいいところだ。
工業的農業によって生み出されたマックのドライブインの食事を家族とした作者は、食料の歴史を遡り、最後に全て自分が直接狩猟したものでつくる”完璧な食事”を作り上げる。
もちろん食事は全て自分で採らなければダメだと結論ずけるわけではない。だが、現在の食料生産の在り方を考え、私達はどうやって作った何を食べるべきかという雑食動物のジレンマと改めて向き合わなければいけない、というのが作者の主張だ。
アメリカほどひどくはないだろうが、日本も大差ない状況ではないだろうか。
いくつもの衝撃とどんどん読んでいきたくなる面白さ、そして最後に突きつけられる大きな問題意識。アメリカで数々の賞を受賞した肩書きに恥じぬ、最高のノンフィクションの一つだと思う。
よくマックなんかに通う人に特に読んでもらいたい。
2013年8月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
自分はいったい何を食べているのか ファストフードはなぜ安いのか 誰に、何に、誤魔化されてはいけないのか ヒント満載のドキュメンタリーです
2016年12月13日に日本でレビュー済み
アメリカ人の体は、何とトウモロコシでできているそうだ。
それは、冷凍・加工食品に含まれている添加物の大半が、トウモロコシからできているせいだという。それなら、添加物づけの日本人の体だって、きっと同じようなものなのではないか。
トウモロコシからつくられるブドウ糖果糖液糖(高果糖コーンシロップ)こそが、肥満や糖尿病の原因だ。そう著者は指摘する。ブドウ糖果糖液糖なら、日本の大半の加工食品にだって入っている。日本で肥満や糖尿病が増えているのは、もしかしてそのせいなのか。
私たちが口にしているものは一体何だろう。それはどこからどうやってきたのだろう。素朴な疑問を抱いた著者は、食べ物のルーツを探す旅に出る。
第1部では農場の飼料用トウモロコシが肥育場の牛の餌となり、マクドナルドのハンバーガーになるまでを追う。第2部ではオーガニック(大手有機食品企業と小規模な有機農家の両方)食材の出どころを訪ね、ディープな有機農家(農場主のサルトン氏は非常に魅力的な人物だ)で農作業をし、鶏をと殺し、料理して食卓にのせるまでが描かれる。
第3部ではなんと自らハンティングに行き、キノコを採りサクランボを摘む。自分で手に入れた食材で、本来の食のあるべき姿である「完璧な食事」をつくる。
上下巻あり、読みごたえたっぷりだが、こういった翻訳本で省略されがちな参考文献まですべて丁寧に訳してあるのが嬉しい。読後は誰もが自分の食生活についてしばし考えることになるだろう。いや、しばらくは何も食べられなくなるかもしれない。
それは、冷凍・加工食品に含まれている添加物の大半が、トウモロコシからできているせいだという。それなら、添加物づけの日本人の体だって、きっと同じようなものなのではないか。
トウモロコシからつくられるブドウ糖果糖液糖(高果糖コーンシロップ)こそが、肥満や糖尿病の原因だ。そう著者は指摘する。ブドウ糖果糖液糖なら、日本の大半の加工食品にだって入っている。日本で肥満や糖尿病が増えているのは、もしかしてそのせいなのか。
私たちが口にしているものは一体何だろう。それはどこからどうやってきたのだろう。素朴な疑問を抱いた著者は、食べ物のルーツを探す旅に出る。
第1部では農場の飼料用トウモロコシが肥育場の牛の餌となり、マクドナルドのハンバーガーになるまでを追う。第2部ではオーガニック(大手有機食品企業と小規模な有機農家の両方)食材の出どころを訪ね、ディープな有機農家(農場主のサルトン氏は非常に魅力的な人物だ)で農作業をし、鶏をと殺し、料理して食卓にのせるまでが描かれる。
第3部ではなんと自らハンティングに行き、キノコを採りサクランボを摘む。自分で手に入れた食材で、本来の食のあるべき姿である「完璧な食事」をつくる。
上下巻あり、読みごたえたっぷりだが、こういった翻訳本で省略されがちな参考文献まですべて丁寧に訳してあるのが嬉しい。読後は誰もが自分の食生活についてしばし考えることになるだろう。いや、しばらくは何も食べられなくなるかもしれない。
2010年10月5日に日本でレビュー済み
現代人の食事の問題点に対しての考察が深い。扱っている問題は、我々が日々感じていることが中心であるが、とにかく、著者自身が現場に行き、実践することにより、動植物の命を絶ち、口にすることの意味を推敲しているところは好感がもてる。
身動きできないような狭い場所に閉じ込められ、踝まで糞尿に浸かった畜産牛の話や、牧草地にアクセスできるようにはなっているが、決して外出しない有機畜産牛の話など、ショッキングな話も書かれているが、いわゆる暴露本でもないし、やみくもに自然食に陶酔している訳でもない。ファーストフードでもなく、スローフードでもない食事本来の姿を見つめ直そうということが主たるメッセージである。
一つ気になるのは、やはり、米国人の食事は極端ということだ。禁酒法で制限せざるを得ない程に多くの国民が暴飲したり、毎日のようにマクドナルドに通ったり、バケツのようなカップに清涼飲料水やアイスクリームを入れてみたり、その反動でマクドナルドを訴えたり、捕鯨にヒステリックになったり、ベジタリアンになる人が多かったり。
よその国の食文化をアレコレいうつもりはないが、米国の食文化は輸入やチェーン店の進出により確実に日本の食文化にも影響する。雑食動物の一種である日本人は、一般的な雑食動物としてのジレンマに加えて、米国産のものを口にするか否かというジレンマも抱えていることを再確認できる。
身動きできないような狭い場所に閉じ込められ、踝まで糞尿に浸かった畜産牛の話や、牧草地にアクセスできるようにはなっているが、決して外出しない有機畜産牛の話など、ショッキングな話も書かれているが、いわゆる暴露本でもないし、やみくもに自然食に陶酔している訳でもない。ファーストフードでもなく、スローフードでもない食事本来の姿を見つめ直そうということが主たるメッセージである。
一つ気になるのは、やはり、米国人の食事は極端ということだ。禁酒法で制限せざるを得ない程に多くの国民が暴飲したり、毎日のようにマクドナルドに通ったり、バケツのようなカップに清涼飲料水やアイスクリームを入れてみたり、その反動でマクドナルドを訴えたり、捕鯨にヒステリックになったり、ベジタリアンになる人が多かったり。
よその国の食文化をアレコレいうつもりはないが、米国の食文化は輸入やチェーン店の進出により確実に日本の食文化にも影響する。雑食動物の一種である日本人は、一般的な雑食動物としてのジレンマに加えて、米国産のものを口にするか否かというジレンマも抱えていることを再確認できる。