民間ながら科学警察研究所や科学捜査研究所のOBで構成されており、映画やテレビドラマの監修も務める法科学鑑定研究所による科学捜査技術の紹介本。指紋鑑定、画像解析、DNA鑑定、音声鑑定、交通事故鑑定といったドラマやニュースで聞く科学捜査の実際を、全くの初心者にもわかりやすいように解説してくれている。「捜査技術を紹介しちゃって大丈夫なの？」と疑問に思われるかもしれないが、本書を読むと「なるほど、それは知っててもどうしようもないわ」と思えるほどにその技術は洗練されている。
例えば指紋が圧倒的な個人識別能力があるということは知られているが、個人的には「ほんとかよ？」と疑っていた。パッと見指紋なんてただの模様だし、モノに触ってもブレたり強弱があって判定はとても難しいのではないかと思っていたのだ。ところが本書の解説では、指紋はただの「模様」としてではなく開始点・終止点・分岐点・接合点といった様々な「特徴点」の集合体として分析され、その個人識別能力は10兆分の1とも言われている。また、指紋を採取する技術も年々向上しており、パソコンや壁のような平面だけでなくジーンズからすらもはっきりした指紋が採取できるらしい。
もちろん実際の調査にはこの他DNA鑑定や画像解析、音声鑑定、あるいはインターネット解析といった複数の技術が使われるわけで、人間が一切の痕跡を残さずに行動ができない以上、警察の捜査から逃れるのも非常に難しくなりつつあるようだ。悪いことはできない世の中である。
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