本書は、戦後創設された特捜検察の性質を決定付けた「造船疑獄事件」と「ロッキード事件」の丸紅ルート、それぞれの捜査実態と、上記の事件捜査・公判によって性格づけられた捜査手法が大きな齟齬をきたした「東京佐川急便事件」の顛末、及び金丸信への逮捕・起訴による権威回復までの経緯を詳しく記すことで、特捜検察が示そうとする「いわゆる正義」に対する疑義を表明した一冊。
構成は、年代の新しい「東京佐川急便事件」から比較的に古い「ロッキード事件」丸紅ルート、「造船疑獄事件」へと遡っていく形をとっていて、結果として特捜検察が本質的に持っている病根が段階的に明らかになっていく効果がある。
読み進めていくと、にわかには信じられない記述に幾度となく出会う。つい最近まで、佐川急便の事件やロッキードの事件について疑いを抱くきっかけもなかった自分としては、初めて知らされる事実が多すぎて驚いてしまった。ほんの少し前まではマスコミが言うんだから事実だろう、と報道を丸呑みするだけだったことに、改めて気づかされた。特捜検察が捜査の構図を描き、時には構図通りに事実を創設、あるいは誘導、見方によっては捏造することがあるなんて、考え付くこともなかった。更に、マスコミを捜査機関の一部門のように機能させてしまう手練手管の数々、最近になって薄々は感づいていたもののやはり、といった感じだ。
真実、正義、といった言葉の実質が公権力の下にあってはどうにでも操作されうるものになり始めていることに気がついてくる一冊。そんなことはいつの世でもそうだった気もするが、いまだにそうであることを思うと暗い気持ちになる。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
歪んだ正義 特捜検察の語られざる真相 (角川文庫) 文庫 – 2007/5/24
宮本 雅史
(著)
特捜検察神話、崩れる!!
ずさんな捜査、マスコミを利用した世論の形成、シナリオに沿った調書。「特捜検察」の驚くべき実態を、現職検事や検察内部への丹念な取材と、公判記録・当事者の日記等を駆使してえぐりだした問題作!
ずさんな捜査、マスコミを利用した世論の形成、シナリオに沿った調書。「特捜検察」の驚くべき実態を、現職検事や検察内部への丹念な取材と、公判記録・当事者の日記等を駆使してえぐりだした問題作!
- 本の長さ336ページ
- 言語日本語
- 出版社KADOKAWA
- 発売日2007/5/24
- ISBN-104043827032
- ISBN-13978-4043827039
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
商品の説明
著者について
●宮本 雅史:1953年和歌山県生まれ。慶應義塾大学卒業後、産経新聞入社。93年ゼネコン汚職事件のスクープで新聞協会賞受賞。書籍編集、ジャーナリストを経て、産経新聞社会部編集委員。著書は『検察の疲労』『「電池が切れるまで」の仲間たち』『「特攻」と遺族の戦後』『真実無罪』他。
登録情報
- 出版社 : KADOKAWA (2007/5/24)
- 発売日 : 2007/5/24
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 336ページ
- ISBN-10 : 4043827032
- ISBN-13 : 978-4043827039
- Amazon 売れ筋ランキング: - 786,385位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2007年7月20日に日本でレビュー済み
東京地検特捜部といえば、ロッキード事件などで「日本の正義」という印象がありました。
しかしライブドアや村上ファンドに関わる辺りから、「本当に正義なのか」と疑問を感じていました。そういったぼんやりとした印象をはっきりと像にしてくれたのが本書です。
つまり検察が意図的にマスコミにリークし、世論を形成させ、明白な証拠とはいえない調書(自白)でもって有罪にさせるというパターンです。
そういったパターンがどのようにして形成されていったのかを、東京佐川急便、ロッキード、造船疑獄をテーマに、検察のあり方、背景などを「すべては霧の中」のため推測でしかありませんが丹念に検証した説得力ある内容です。
しかしライブドアや村上ファンドに関わる辺りから、「本当に正義なのか」と疑問を感じていました。そういったぼんやりとした印象をはっきりと像にしてくれたのが本書です。
つまり検察が意図的にマスコミにリークし、世論を形成させ、明白な証拠とはいえない調書(自白)でもって有罪にさせるというパターンです。
そういったパターンがどのようにして形成されていったのかを、東京佐川急便、ロッキード、造船疑獄をテーマに、検察のあり方、背景などを「すべては霧の中」のため推測でしかありませんが丹念に検証した説得力ある内容です。