作家林芙美子の評伝小説。芙美子についての愛人の噂を元に戦時下の日本を舞台に創作した。芙美子自身がその噂の真実を回想録に残し、没後40年たって見つかる。戦争という檻に閉じ込められた、芙美子と愛人の情熱と破局を描いた。そんな女が身近にいたら、もちろん嫌なのだが、、自分の気持ちの赴くまま男をくわえ込んではばかるところのない芙美子のふてぶてしさが読み所。センチメンタルに流されすぎないところがまた、女性のリアリズムを見るような気がした。
タイトルは、中国に従軍した際の芙美子の詩の一遍から
「刈草の黄なるまた 紅の畠野の花々 疲労と成熟と なにかある… 私はいま生きてゐる」。
従軍作家として強制的に派遣され、陸軍の強烈な監督と監視の下、ストーリーにそったルポや小説を書くように強制されるシーンと、芙美子の反駁は、「表現の自由」をめぐる桐野の小説観を表現しているよう。
その南方の鬱屈とした生活の中、愛人の毎日新聞記者との再会と逢瀬の官能的表現。そして、戦争の時代に女性として生きることの難しさ。家柄も、学歴もなく、私生児という出自を持つ、たたき上げの芙美子への蔑視。女性の声なき声を描いてきた桐野ならでは筆致だった。特に、女性作家差別が愛人の口から出る別れのシーン。インドネシア・バンジェルマンでダイヤモンドの原石を「二人の子どもみたいなもの」と買い求めるかわいらしさ、破局した後に身ごもったことを知ると、知人の娘にそのダイヤを惜しげも無くあげてしまう場面は素っ気ない描き方だけど、別れの悲しさがにじみ出ていた。
作中、芙美子の愛人の斎藤謙太郎は、毎日新聞記者から東大教授に転じた高松棟一郎との由。あとがきによると、戦後に書いた「浮雲」は南方での恋を描き、発表当時から芙美子の体験談?との噂があったという。あとがきを書いた佐久間文子はこの噂も創作のベースになっているのだろうと推測する。
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ナニカアル 単行本 – 2010/2/26
桐野 夏生
(著)
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第62回(2010年) 讀賣文学賞小説賞受賞
- 本の長さ416ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2010/2/26
- ISBN-10410466703X
- ISBN-13978-4104667031
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登録情報
- 出版社 : 新潮社 (2010/2/26)
- 発売日 : 2010/2/26
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 416ページ
- ISBN-10 : 410466703X
- ISBN-13 : 978-4104667031
- Amazon 売れ筋ランキング: - 668,995位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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著者について
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桐野 夏生(きりの・なつお)
1951年生まれ。93年『顔に降りかかる雨』で江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。98年『OUT』で日本推理作家協会賞(同作品は英訳され、日本人初のエ ドガー賞候補となる)、99年『柔らかな頬』で直木賞、2003年『グロテスク』で泉鏡花文学賞、04年『残虐記』で柴田錬三郎賞、05年『魂萌え!』で 婦人公論文芸賞、08年『東京島』で谷崎潤一郎賞、09年『女神記』で紫式部文学賞を受賞(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 メタボラ(上) (ISBN-13: 978-4022645548 )』が刊行された当時に掲載されていたものです)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2023年3月30日に日本でレビュー済み
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2019年12月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
私が応援している作家より紹介された作品であったが、確かに面白かった。
2019年1月30日に日本でレビュー済み
処女作以来、女の性(さが)というものを描かせたら、現代の作家では著者が随一なことは確かだと思います。しかし、いつものパターンでしょうか、出だしは少々思わせぶりなミステリー調で読者を惹き付けますが、中盤は妙に登場人物の饒舌とも言える感慨とセリフで、いつもながら間延びした退屈さを感じるのは自分だけでしょうか?
確かに週刊誌の連載と言うことで、ある程度話の展開を引っぱらなければならないのでしょうが、せっかく林芙美子という一時代を風靡した作家を主人公としながら、しかもその周辺の作家たちとのやり取りを描きながら、廻り道をし過ぎです。戦中の作家たちの海外派遣という重いテーマを描く中に、妙な恋愛と心理の相克を延々と記述しています。こういった所が「スタンダールもどき」という面を、この作家に感じてしまうのは自分の偏見でしょうか?
そして最後にはどんでんがえしのような終わり方をしてしまいます。「デインジャラス」という作品もそうでしたが、こういった所はミステリー作家としてやむを得ぬの性なのかもしれません。資料も相当に読みこんでいるのは認めますが、それだけにもっと面白い作品になったのでは、となんだかモッタイナイと感じる一作でした。
確かに週刊誌の連載と言うことで、ある程度話の展開を引っぱらなければならないのでしょうが、せっかく林芙美子という一時代を風靡した作家を主人公としながら、しかもその周辺の作家たちとのやり取りを描きながら、廻り道をし過ぎです。戦中の作家たちの海外派遣という重いテーマを描く中に、妙な恋愛と心理の相克を延々と記述しています。こういった所が「スタンダールもどき」という面を、この作家に感じてしまうのは自分の偏見でしょうか?
そして最後にはどんでんがえしのような終わり方をしてしまいます。「デインジャラス」という作品もそうでしたが、こういった所はミステリー作家としてやむを得ぬの性なのかもしれません。資料も相当に読みこんでいるのは認めますが、それだけにもっと面白い作品になったのでは、となんだかモッタイナイと感じる一作でした。
2019年2月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ざつと知ってはいたのですが林芙美子の私生活をノゾいた気がします。戦争中って戦後世代にはわからないことが多いですが垣間見た気かします。戦争ってしてはいけないですね。
2018年9月24日に日本でレビュー済み
結構長編で戦時中の回顧録がメインだけど
非常に読みやすい筆致でサクサク読めました。
個人的には戦時中の物語をテーマにした
作品は説明口調であるものが多いと感じます。
どうしても時系列や戦況を必要以上に
説明してしまい物語のテーマが薄れ
教養ものになってしまう作品が多い。
しかしこの作品はしっかりと
人間を基準として描いているため読みやすいです。
しかし参考文献の数はなかなか凄いですね。
現実と虚構をうまく融合させる
桐野夏生のテクニックが光る一冊です。
非常に読みやすい筆致でサクサク読めました。
個人的には戦時中の物語をテーマにした
作品は説明口調であるものが多いと感じます。
どうしても時系列や戦況を必要以上に
説明してしまい物語のテーマが薄れ
教養ものになってしまう作品が多い。
しかしこの作品はしっかりと
人間を基準として描いているため読みやすいです。
しかし参考文献の数はなかなか凄いですね。
現実と虚構をうまく融合させる
桐野夏生のテクニックが光る一冊です。
2011年7月5日に日本でレビュー済み
林 芙美子さんを読んだ事がないので、「桐野さんの芙美子」しか知りませんが、
とても魅力的で勇気とエネルギ−を持った人ですね・・
勿論、小説ですからということは、承知の上で肩入れします。
あの時代は、大変でしたね・・作家先生もマスコミも・・
その時代の中で、何でも見てやろう、恋もしますよ・・という姿勢は
大したものです。そんな「芙美子」の、生きる力を鮮やかに著しています。
芙美子さんの直系のご遺族は、いらっしゃらないのですね。
晋ちゃんが、亡くなっていたから書けたのでしょうか?
芙美子さんを通して、したたかに生きる女流作家と当時の世相と占領地の様子
軍の怖さや憲兵の姿がよく描かれています。
アメリカが、スパイもどきを仕立てる怖さも知りました。
また、当時の文壇の方々・新聞社の様子が垣間見られて面白いです。
「桐野さんの芙美子」の生き様に浸って欲しい一冊です・・・・
とても魅力的で勇気とエネルギ−を持った人ですね・・
勿論、小説ですからということは、承知の上で肩入れします。
あの時代は、大変でしたね・・作家先生もマスコミも・・
その時代の中で、何でも見てやろう、恋もしますよ・・という姿勢は
大したものです。そんな「芙美子」の、生きる力を鮮やかに著しています。
芙美子さんの直系のご遺族は、いらっしゃらないのですね。
晋ちゃんが、亡くなっていたから書けたのでしょうか?
芙美子さんを通して、したたかに生きる女流作家と当時の世相と占領地の様子
軍の怖さや憲兵の姿がよく描かれています。
アメリカが、スパイもどきを仕立てる怖さも知りました。
また、当時の文壇の方々・新聞社の様子が垣間見られて面白いです。
「桐野さんの芙美子」の生き様に浸って欲しい一冊です・・・・
2018年1月28日に日本でレビュー済み
不倫やらやりたい放題の主人公。
40歳くらいなのにえらい熱い不倫をしたかと思えば
口げんかであっさりと仲をきる。
女性の読者はこのような人生に憧れるのでしょうか、
それとも軽蔑か。
40歳くらいなのにえらい熱い不倫をしたかと思えば
口げんかであっさりと仲をきる。
女性の読者はこのような人生に憧れるのでしょうか、
それとも軽蔑か。
2010年11月10日に日本でレビュー済み
南方占領地域を転々とした林芙美子は戦後越南を舞台に浮雲を書き、程なく死去したが、現地を訪れたかどうかは定かでない。ナニカアルの記述を追う限りインドネシア体験を越南に置き換えたもののようだが、たいして説得力は感じられない。林芙美子の名が冠してなければどうということのない不倫小説。