ドキュメンタリーとして、物語として、深く掘り下げていて大変面白かった。
はやぶさのことは知っていてものぞみを知らない人
はやぶさの成果に感銘を受けた人は絶対に読むべきだと強く推奨する。
はやぶさを危機から救った技術、例えば1ビット通信はのぞみをその困難な旅路から救うために急遽作られた技術及び運用の賜物だ。ほんとうの意味で日本の宇宙開発通になるために避けては通れない良書である。
どれほど日本の宇宙開発の現場が苦しいか、そしてその困難に堂々と立ち向かっているか、プロジェクトチームについて外から淡々と記述されており、そのことが余計に読む人自身をプロジェクトの渦中に投げ込む一冊である。
既に結果は2003年12月に出ている。だがこの著書は探査機はじめ宇宙衛星運用に「失敗」や「成功」など二元論で語ることのできない、終わることのない闘いがあることを教えてくれる。
美辞麗句も飾りも誇張もなく読みやすい。そして非常に内容の濃いドキュメンタリーである。
終始淡々と描かれ、記録然とした本書は、そこに生きた探査機と地上のプロジェクトチームに起きたドラマを読む人の中にパドル展開させてくれるのだ。
☆以下一部ネタバレ☆
はやぶさの運用で一躍時の人となった川口淳一郎。彼がのぞみを空前にして絶後の魔術軌道「極方向跳上げ」スイングバイさせる様は本当に感動させられた。
「運用停止」破棄が決定されたのぞみ。
その時に怒りを露わにする彼の姿には技術屋として思わず落涙させられた。「あと数日チャンスはある、なぜNASAの決めた基準などに従ってここで諦めなければならないのだ!」と。
日本一諦めの悪い人たちが、ここにいたことを、そしてそのことこそがはやぶさの帰還を可能にしたことを知るための良書である。

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恐るべき旅路 ―火星探査機「のぞみ」のたどった12年― 単行本 – 2005/5/21
松浦 晋也
(著)
- 本の長さ256ページ
- 言語日本語
- 出版社朝日ソノラマ
- 発売日2005/5/21
- ISBN-104257037008
- ISBN-13978-4257037002
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登録情報
- 出版社 : 朝日ソノラマ (2005/5/21)
- 発売日 : 2005/5/21
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 256ページ
- ISBN-10 : 4257037008
- ISBN-13 : 978-4257037002
- Amazon 売れ筋ランキング: - 986,474位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2018年12月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
松浦先生渾身のノンフクィション。
どうして政府は、これだけ能力の高い集団ISASをNASDA統合して、解体してしまったのか? 理解に苦しむ
どうして政府は、これだけ能力の高い集団ISASをNASDA統合して、解体してしまったのか? 理解に苦しむ
2012年2月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
はやぶさの帰還に日本中が沸き立ちましたが、その成功に影に「のぞみ」という先達がいたことは
余り知られていません。この本は、その「のぞみ」の生い立ちと、辿った運を、詳しく記録した
唯一の本です。
「のぞみ」の行く先は火星でした。しかし、打ち上げには成功したものの、その直後から様々な
トラブルに見舞われます。スイングバイ中のバルブトラブルによる推進力不足、電源の故障に
よる送信機のトラブルなど。結局、火星に1000kmまで迫りながら、火星軌道へ投入できません
でした。そのトラブルの種は、(結果として)打ち上げ前からまかれていたものでした。この事実
を踏まえて、本書では、前半の2/3ページを、打ち上げまでのいきさつに割いています。
火星は一説では呪われた星と呼ばれているらしく、アメリカ以外の国で火星探査を成功させた例
は殆どありません。目新しい所では、ロシアの探査衛星「フォボス・グルント」が失敗しました。
火星探査衛星を打ち上げ能力が低いM-Vで打ち上げる、という計画自体が無謀だった様にも
思えます。
ですが、この本を読むと、かなり良い線をいっていたことが分かります。ほんのちょっとした
トラブルが積み重なって致命的な結果となったみたいです。世間的には「のぞみ」は失敗とされて
いますが、探査機の勘所を養うという意味で、工学実験機としては成功だったのでは無いでしょう
か。
「のぞみ」の系譜は「はやぶさ」、「あかつき」、「はやぶさ2」と引き継がれていきます。
日本の未来は、科学技術にかかっていることは間違い無い所で、このチャレンジする姿勢は、
非常に重要です。「はやぶさ2」だけで無く、「のぞみ2」が早く実現すると良いのですが。
所でこの本ですが、現時点(2012年2月)では絶版となっています。再版を強く希望します。
余り知られていません。この本は、その「のぞみ」の生い立ちと、辿った運を、詳しく記録した
唯一の本です。
「のぞみ」の行く先は火星でした。しかし、打ち上げには成功したものの、その直後から様々な
トラブルに見舞われます。スイングバイ中のバルブトラブルによる推進力不足、電源の故障に
よる送信機のトラブルなど。結局、火星に1000kmまで迫りながら、火星軌道へ投入できません
でした。そのトラブルの種は、(結果として)打ち上げ前からまかれていたものでした。この事実
を踏まえて、本書では、前半の2/3ページを、打ち上げまでのいきさつに割いています。
火星は一説では呪われた星と呼ばれているらしく、アメリカ以外の国で火星探査を成功させた例
は殆どありません。目新しい所では、ロシアの探査衛星「フォボス・グルント」が失敗しました。
火星探査衛星を打ち上げ能力が低いM-Vで打ち上げる、という計画自体が無謀だった様にも
思えます。
ですが、この本を読むと、かなり良い線をいっていたことが分かります。ほんのちょっとした
トラブルが積み重なって致命的な結果となったみたいです。世間的には「のぞみ」は失敗とされて
いますが、探査機の勘所を養うという意味で、工学実験機としては成功だったのでは無いでしょう
か。
「のぞみ」の系譜は「はやぶさ」、「あかつき」、「はやぶさ2」と引き継がれていきます。
日本の未来は、科学技術にかかっていることは間違い無い所で、このチャレンジする姿勢は、
非常に重要です。「はやぶさ2」だけで無く、「のぞみ2」が早く実現すると良いのですが。
所でこの本ですが、現時点(2012年2月)では絶版となっています。再版を強く希望します。
2005年8月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
副題には「のぞみのたどった12年」とあるが、その胎動は1970年から始まっており、前半部は打ち上げまでの紆余曲折が書かれている。のぞみ失敗の萌芽はすべてここに凝縮されており、要約すると「みんなビンボが悪いんや」ということになる。しかしながら、貧乏を知恵で克服する過程は実にスリリングで、読んでいると技術者魂に火がついてしまう。
あと、前半の山場である「あなたの名前を火星へキャンペーン」で、最初は不満タラタラだった関係者が、ハガキに書かれたメッセージを読んで次第にモチベーションを高められていくシーンもいい。日本の宇宙開発における的川氏の存在が、いかに重要かがわかるエピソード。
しかし、その盛り上がりも、打ち上げ後に次々と襲いかかるトラブルへの対処に比べたらものの比ではない。まったく、地味~な軌道計算が、こんなにカッコよく描かれていいのか。地味が得意(?)な谷甲州でも、こんな描写は書けまい、というくらいカッコいい。これを学生に読ませたら、軌道計算屋志望者が街にあふれるよ!
もちろんその後の、かの有名な1bit通信から、スイッチON/OFFによるリミッター焼き切りまで、ギリギリまで粘って先へ進もうとする技術者たちの奮闘は、本当に涙なしには読めない。最終的に火星周回軌道への投入は失敗したわけだが、ここまでやったんなら、これだけの経験が積めたのなら、いいじゃんと思う。この経験はきっと「次」に活かされるわけだし。一国民としては「次」の実現を世論で後押しする、それだけだ。
あと、前半の山場である「あなたの名前を火星へキャンペーン」で、最初は不満タラタラだった関係者が、ハガキに書かれたメッセージを読んで次第にモチベーションを高められていくシーンもいい。日本の宇宙開発における的川氏の存在が、いかに重要かがわかるエピソード。
しかし、その盛り上がりも、打ち上げ後に次々と襲いかかるトラブルへの対処に比べたらものの比ではない。まったく、地味~な軌道計算が、こんなにカッコよく描かれていいのか。地味が得意(?)な谷甲州でも、こんな描写は書けまい、というくらいカッコいい。これを学生に読ませたら、軌道計算屋志望者が街にあふれるよ!
もちろんその後の、かの有名な1bit通信から、スイッチON/OFFによるリミッター焼き切りまで、ギリギリまで粘って先へ進もうとする技術者たちの奮闘は、本当に涙なしには読めない。最終的に火星周回軌道への投入は失敗したわけだが、ここまでやったんなら、これだけの経験が積めたのなら、いいじゃんと思う。この経験はきっと「次」に活かされるわけだし。一国民としては「次」の実現を世論で後押しする、それだけだ。
2006年10月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
打ち上げ以降、次々と現れるトラブル。それらに一つ一つ対処していって、本当にギリギリのところで何とか息をつないでいた「のぞみ」。しかし本当にあと一歩のところで「失敗」になってしまう。凄まじい過程の後の、この「のぞみ」の最期には、読んでいてこみ上げてくるものがあるだろう。
話に少々難しい部分があったり、冒頭の組織の話などは読んでいてだるい部分はあるが、誰にでもかなりお勧めできる本だと思う。
話に少々難しい部分があったり、冒頭の組織の話などは読んでいてだるい部分はあるが、誰にでもかなりお勧めできる本だと思う。
2005年7月11日に日本でレビュー済み
日本初の火星周回衛星となるべく打ち上げられた「のぞみ」の苦難の道のりを辿った一冊。
満身創痍となりながらも、関係者の身を削るような努力により、火星へ到達するも、プロジェクトはそこで終了してしまう。
何ともやりきれません。
関係者の気持ちを想像すると、いてもたってもいられなくなります。
この「のぞみ」プロジェクトを失敗作として葬り去ることなく、何とかして次のプロジェクトに繋げていくことが、
投下した税金を無駄にしないためにも、必要だと痛感しました。
日本には素晴らしい人工惑星技術が育っているのです。
5つ星を付けたいところですが、惜しむべきは校正と装丁です。
「用の東西」等と書かれると、「この出版社何やってんだ!」と言いたくなります。
また、表紙が漫画チックで、一瞬トンデモ本かと思ってしまいました。
残念です。
満身創痍となりながらも、関係者の身を削るような努力により、火星へ到達するも、プロジェクトはそこで終了してしまう。
何ともやりきれません。
関係者の気持ちを想像すると、いてもたってもいられなくなります。
この「のぞみ」プロジェクトを失敗作として葬り去ることなく、何とかして次のプロジェクトに繋げていくことが、
投下した税金を無駄にしないためにも、必要だと痛感しました。
日本には素晴らしい人工惑星技術が育っているのです。
5つ星を付けたいところですが、惜しむべきは校正と装丁です。
「用の東西」等と書かれると、「この出版社何やってんだ!」と言いたくなります。
また、表紙が漫画チックで、一瞬トンデモ本かと思ってしまいました。
残念です。
2005年9月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
科学者とはどうしてこうも地味で、そして粘り強いのか・・・!?
本書は探査機「のぞみ」の航海を辿った科学ドキュメンタリーであると同時に、読者に「科学者とはどのような人間か」そして「科学における失敗とは何か」を考えさせる人間ドキュメンタリーとしても仕上げられている。
われわれ国民の負託を受けたプロジェクトが、どのような経過で産声を上げ、紆余曲折を経て開発を完了し、長期運行の挙句、結果的に破棄せざるを得なかったのか。本書はまさに我々が最も知りたかったこの点に対し、概ね客観性をもって「説明責任」を果たしてくれる一書である。
要求される条件や成果は常に世界(欧米)のトップレベル、しかしそれを欧米の数分の一の経費で実現せねばならない日本の科学者。「技術立国日本」を支える彼らのストイックなまでの奮闘振りは、読む側に「感動」と、そして同時に何かに対する「幻滅」と「怒り」を感じさせる。80年代世界を震撼させた、日本というかつての技術大国よ、どうか「子供を退屈させるな!」と言いたい。
本書は探査機「のぞみ」の航海を辿った科学ドキュメンタリーであると同時に、読者に「科学者とはどのような人間か」そして「科学における失敗とは何か」を考えさせる人間ドキュメンタリーとしても仕上げられている。
われわれ国民の負託を受けたプロジェクトが、どのような経過で産声を上げ、紆余曲折を経て開発を完了し、長期運行の挙句、結果的に破棄せざるを得なかったのか。本書はまさに我々が最も知りたかったこの点に対し、概ね客観性をもって「説明責任」を果たしてくれる一書である。
要求される条件や成果は常に世界(欧米)のトップレベル、しかしそれを欧米の数分の一の経費で実現せねばならない日本の科学者。「技術立国日本」を支える彼らのストイックなまでの奮闘振りは、読む側に「感動」と、そして同時に何かに対する「幻滅」と「怒り」を感じさせる。80年代世界を震撼させた、日本というかつての技術大国よ、どうか「子供を退屈させるな!」と言いたい。
2005年11月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
取材に基づいて、計画の一部始終を現場の様子や人物像を交えながら描いている。専門的なことは噛み砕いて説明してあり、理解しやすい。ああ、こんな風に進められるんだ、こんなことが起こってたんだ、と納得できる一冊。
最大の難点は「恐るべき〜」という表題だろう。別におどろおどろしいホラー調の文章が出てくる訳ではないので、元ネタ(SF)を知らない方もご安心を。
最大の難点は「恐るべき〜」という表題だろう。別におどろおどろしいホラー調の文章が出てくる訳ではないので、元ネタ(SF)を知らない方もご安心を。