この本で日本に初めて紹介された学説がいくつかありますので、
(常に世界中の論文をチェックしている方は別としまして、)
「目新しい記述がなく」という批判は当たりません。
むしろ発刊時にあれだけの物議を醸せば、
一年半以上も経過した現在、
その内容が周知されたものと考えられます。
三国志の全てのエッセンスが濃縮されていますが、
歴史書であるため奇を衒った学説は採用されておらず、
定説や考古学的発見を中心に構成されます。
その点、『三国志 きらめく群像』などのエッセイ、
『ろくでなし三国志 本当はだらしない英雄たち』などの妄想本と比較すれば、
刺激が少ないのは当然です。
(それでも小説しか知らない人には新鮮でしょう。)
ただ、「赤壁」の原因の一つに宗教をあげられている点は、
著者独自の分析だと思われます。
この本で内容が薄いということは、
三国志という時代自体の内容が薄いということになってしまいます。
本書の問題は、学説から事実を整理し、
時系列として歴史の流れが綺麗にまとめられ過ぎていることです。
綺麗にまとめられることで見えなくなる問題もあるはずです。
他の学説との比較、
『三国志演義』との対比があってもよかったと思います。
そうでないと初学者には分別が難しいでしょう。
しかし、正史のような紀伝体、
三国志を解説した多くの歴史書のようにテーマ毎でもなく、
歴史の流れをまとめ、
一つの時系列モデルを構築している点は興味深いです。
ありそうでなかった三国志の歴史書といえます。

無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
正史「三國志」完全版 単行本 – 2010/2/1
岩堀 利樹
(著)
- 本の長さ313ページ
- 言語日本語
- 出版社文芸社
- 発売日2010/2/1
- ISBN-104286073475
- ISBN-13978-4286073477
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
商品の説明
著者について
神戸大学卒業。
三国史及びマキァヴェッリ『君主論』(取り分け、チェーザレ・ボルジャ論)を探求する。
三国史及びマキァヴェッリ『君主論』(取り分け、チェーザレ・ボルジャ論)を探求する。
登録情報
- 出版社 : 文芸社 (2010/2/1)
- 発売日 : 2010/2/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 313ページ
- ISBN-10 : 4286073475
- ISBN-13 : 978-4286073477
- Amazon 売れ筋ランキング: - 102,066位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。

著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
カスタマーレビュー
星5つ中3.5つ
5つのうち3.5つ
5グローバルレーティング
評価はどのように計算されますか?
全体的な星の評価と星ごとの割合の内訳を計算するために、単純な平均は使用されません。その代わり、レビューの日時がどれだけ新しいかや、レビューアーがAmazonで商品を購入したかどうかなどが考慮されます。また、レビューを分析して信頼性が検証されます。
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2012年8月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
約30年前からの三国志ファンで、Amazon で購入したが、著しく期待はずれだった。
わずか300ページかそこらで、三国志の諸問題を語り尽くすのは、確かに無理だろう。
ただしタイトルにある『完全版』云々は、この本の内容を全くあらわしていない。
さらに『正史』と題するのも、私見では不当である。
広範な場面を扱ってはいるが、それぞれの記述は短く、深い分析は全く見られない。
また、著者の創作としか思えない、正史のどこにも記述のない会話が多数挿入されている。
あるいは著者は、そこらを『野史』から採ったと言い訳できるつもりかもしれないが、
『野史』という名の書物があるわけでもなし、読者には検証不能である。
私には無価値な本であった。タイトルと最初のふたつの書評に騙されたと感じる。
いまいましいが、社会勉強をしたことにする。
わずか300ページかそこらで、三国志の諸問題を語り尽くすのは、確かに無理だろう。
ただしタイトルにある『完全版』云々は、この本の内容を全くあらわしていない。
さらに『正史』と題するのも、私見では不当である。
広範な場面を扱ってはいるが、それぞれの記述は短く、深い分析は全く見られない。
また、著者の創作としか思えない、正史のどこにも記述のない会話が多数挿入されている。
あるいは著者は、そこらを『野史』から採ったと言い訳できるつもりかもしれないが、
『野史』という名の書物があるわけでもなし、読者には検証不能である。
私には無価値な本であった。タイトルと最初のふたつの書評に騙されたと感じる。
いまいましいが、社会勉強をしたことにする。
2010年2月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
東漢の質帝崩御(西暦146年)から曹操誕生、晋による三国の統一、そして陳寿の死(西暦297年)までが、正史および野史をベースに扱われています。「演義」(作り話)ではなく歴史上の三国志が編年体(ある意味、小説風)で描かれていて読み易いです。内容には中国の学者の研究が多く取り入れられており、冷徹な事実が書かれているのですが下手な小説より心を動かされます。もちろん、『資治通鑑』などよりも事実に則した内容となっています。陳寿自体を内包し、士族に焦点を当てた初めての和書といえます。
「なにが正史・完全版だ」と思って読み始めましたが、これまでの三国志本とは次元が異なりました。特に後半は圧巻です。小説などで単に感情論で片付けられていた物事に明確な目的があったことが発見できます。例えば、劉備の東征(夷陵の戦い)や派閥争いのために無実の者を殺す諸葛亮、孫権の晩年の言動(後継者問題)など。
今まで、事実を書くことは日本出版界のタブーなのではないかと思われるほど三国志の事実を記した書物は稀有でしたが、ようやく事実の全体像を紹介する本を出してくれました。細かいミス(誤植?)はありますが、三国志(特に「三国史」)の全体像を把握するには最適の本といえます。著者には、ぜひ本書の解説本を出してもらいたいです。
「なにが正史・完全版だ」と思って読み始めましたが、これまでの三国志本とは次元が異なりました。特に後半は圧巻です。小説などで単に感情論で片付けられていた物事に明確な目的があったことが発見できます。例えば、劉備の東征(夷陵の戦い)や派閥争いのために無実の者を殺す諸葛亮、孫権の晩年の言動(後継者問題)など。
今まで、事実を書くことは日本出版界のタブーなのではないかと思われるほど三国志の事実を記した書物は稀有でしたが、ようやく事実の全体像を紹介する本を出してくれました。細かいミス(誤植?)はありますが、三国志(特に「三国史」)の全体像を把握するには最適の本といえます。著者には、ぜひ本書の解説本を出してもらいたいです。
2010年2月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
三国志に関して本当のことを書いたらダメですよ。これまで三国志で金儲けしていた人達から妬み・嫉みで揚げ足とりな中傷をされてしまいます。でも、本書を読むとそれが著者の狙いの一つでもあるようです。だから愉快なタイトルにしてあるのでしょうね。日本の学術書を参考にしていないことも大正解です(どうせ中国の研究をパクっているだけですから)。
それにしても痛快無比。歴史上の三国志(つまり「三国史」)も実に面白い。やっと日本人は三国史に触れられたのですね。「正史」か、それとも「小説」かなんて議論が本当にバカバカしく思えてきます。
それにしても痛快無比。歴史上の三国志(つまり「三国史」)も実に面白い。やっと日本人は三国史に触れられたのですね。「正史」か、それとも「小説」かなんて議論が本当にバカバカしく思えてきます。
2012年12月17日に日本でレビュー済み
三国志正史は列伝形式と言われ、人物毎の伝記になっています、
その人物については深く知ることができますが、人物毎の記述になっているため、
矛盾があったり、その時代の全貌が見えにくい弱点があります。
その列伝体に対して、紀伝体と言う記録方法があります、
こちらは時系列に起こった事柄を並べていく形式で、
文章で書いた年表と解釈して貰ってよろしいかと思います。
学生時代に正史を読んだ方であれば、
正史を列伝体でまとめたいと言う思いに駆られた経験もあるのでは無いかと思います、
そして恐らくは略100%の人が挫折するでしょう、
理由は記述が膨大であることと、矛盾点が多く情報の取捨選択の際の判断材料が無い等の点です。
しかしながら、本書は列伝形式であった三国志を起こった事柄を時系列に並べ、
紀伝体と言う形式でまとめた一冊です。
正史三国志は膨大な量があるのですが、本書は通常の書籍一冊でしかありません、
正史内で重複する事柄があるとは言え、それらを削ってもここまで減りません、
紀伝体に執着するにあたり、バッサリと情報を殺ぎ落としています、
その状態で事柄のみを追って行くため、
正史の時にはあれだけ個性を放っていた各人物の個性は殆ど見えません、
本書では各人物の魅力については半減どころではなく激減しています。
三国志では三国志内での矛盾が多数あり、
更には正史では無い野史との記述の違いや。野史にしか記述の無い事柄がたくさんあります、
そのため紀伝体にまとめるには、膨大な情報からの取捨選択が必要になりますし、
更には、その理由なり解説が必要と思われますが、本書ではその辺が一切ありません。
例えば、華雄の官職一つとっても、
本書では原書正史および演義通りの都督、
しかし、ちくま書房の正史では盧弼の三国志集解に則り都尉となっており、
(その三国志集解は潘眉の説に則っています)
近年では華雄の官職は都尉とされるのが一般的ですが、
完全版まで名乗るのであれば、
都尉とする説があり近年それが有力であるのに対し、
何故に都督としたのか?その理由の提示なり説明が欲しいのですが記述は何もありません。
更には本書では華雄は猛将であるとの記載もあります、
華雄は演義では猛将としての活躍がありますが、
正史では孫堅伝にのみ記述があり、
その内容も"陽人で戦死、梟首とされた"ぐらいで、猛将である根拠は見られません。
これらほんの一例ですが、
一事が万事こんな感じで展開し薄っぺらい"オレ三国志"が展開されて行きます。
正史に比べて情報量は圧倒的に薄く、検証や考察があるわけでも無く、
正史として読むには不適と言わざるをえません、
本書は言うなれば"中二病的発想より発する紀伝体による三国志(不完全版)"と言ったところでしょう、
演義や小説、マンガ、ゲームなどでの三国志色物本はありますが、
よもや正史での色物本が出るとは思いませんでした。
蛇足ですが、前書き後書きのリア充アピールがなにげにウザイです。
その人物については深く知ることができますが、人物毎の記述になっているため、
矛盾があったり、その時代の全貌が見えにくい弱点があります。
その列伝体に対して、紀伝体と言う記録方法があります、
こちらは時系列に起こった事柄を並べていく形式で、
文章で書いた年表と解釈して貰ってよろしいかと思います。
学生時代に正史を読んだ方であれば、
正史を列伝体でまとめたいと言う思いに駆られた経験もあるのでは無いかと思います、
そして恐らくは略100%の人が挫折するでしょう、
理由は記述が膨大であることと、矛盾点が多く情報の取捨選択の際の判断材料が無い等の点です。
しかしながら、本書は列伝形式であった三国志を起こった事柄を時系列に並べ、
紀伝体と言う形式でまとめた一冊です。
正史三国志は膨大な量があるのですが、本書は通常の書籍一冊でしかありません、
正史内で重複する事柄があるとは言え、それらを削ってもここまで減りません、
紀伝体に執着するにあたり、バッサリと情報を殺ぎ落としています、
その状態で事柄のみを追って行くため、
正史の時にはあれだけ個性を放っていた各人物の個性は殆ど見えません、
本書では各人物の魅力については半減どころではなく激減しています。
三国志では三国志内での矛盾が多数あり、
更には正史では無い野史との記述の違いや。野史にしか記述の無い事柄がたくさんあります、
そのため紀伝体にまとめるには、膨大な情報からの取捨選択が必要になりますし、
更には、その理由なり解説が必要と思われますが、本書ではその辺が一切ありません。
例えば、華雄の官職一つとっても、
本書では原書正史および演義通りの都督、
しかし、ちくま書房の正史では盧弼の三国志集解に則り都尉となっており、
(その三国志集解は潘眉の説に則っています)
近年では華雄の官職は都尉とされるのが一般的ですが、
完全版まで名乗るのであれば、
都尉とする説があり近年それが有力であるのに対し、
何故に都督としたのか?その理由の提示なり説明が欲しいのですが記述は何もありません。
更には本書では華雄は猛将であるとの記載もあります、
華雄は演義では猛将としての活躍がありますが、
正史では孫堅伝にのみ記述があり、
その内容も"陽人で戦死、梟首とされた"ぐらいで、猛将である根拠は見られません。
これらほんの一例ですが、
一事が万事こんな感じで展開し薄っぺらい"オレ三国志"が展開されて行きます。
正史に比べて情報量は圧倒的に薄く、検証や考察があるわけでも無く、
正史として読むには不適と言わざるをえません、
本書は言うなれば"中二病的発想より発する紀伝体による三国志(不完全版)"と言ったところでしょう、
演義や小説、マンガ、ゲームなどでの三国志色物本はありますが、
よもや正史での色物本が出るとは思いませんでした。
蛇足ですが、前書き後書きのリア充アピールがなにげにウザイです。